大体いつもpixivで2、3日くらい経ってからこちらに載せるんですが、今回は気分で早めにしました!
次回は少しだけ間が空いたらすみません。結衣ちゃんの誕生日祝いの作品を書きたいと思ってるので、その後に新作が出るかもです!
コメント、評価があるとモチベーションが上がるのでお待ちしております笑
ジューシーに焼ける肉の香りに鼻腔がくすぐられる。
焦げてしまう前に紙皿へと乗せて次の肉を焼いていく。
バーベキューが始まってから数十分、俺は焼く係を遂行していた。
「……そろそろかな」
新たな肉が焼けたのでそれをちょうど近くにいた丸山の紙皿に乗せてやる。
「あっ、ありがとうございます比企谷さん」
可愛く微笑むPastel*Palettesーー通称パスパレのメンバーである丸山彩は熱さを和らげるため息を吹きかけてからその肉を口に運ぶ。
「……ん〜、おいひ〜!」
ただ焼いているだけだが、そう喜ばれると自然と口角が上がって悪くない気分だ。
俺は今この時、鍋奉行改めバーベキュー奉行で行こう。
じっと構えて良い色合いの肉をさっとトングで掴む。……よし完璧!
料理漫画とかでたまに見かける、音で絶妙な焼き加減を判断するとか現実でも可能なのだろうか。
よほど耳が良いとか料理を極めしものなら出来なくもないのか?
「モカちゃん、お肉ばかりじゃなくて野菜も食べないとダメだよ?」
「ふぁふぁっふぇふぁーふ!」
「彩ちゃんもよ?」
「……んくっ。う、うんもちろんだよ千聖ちゃん!」
「こら、こころ食べながら走らない! 喉に詰まらせたら危ないでしょ!」
「はーい!」
「カノンさん、これどうぞ!」
「イヴちゃん、ありがとう」
しっかり者と見守られる者の比率が絶妙すぎるなぁとどうでも良いことを考えながらトングを動かし続ける。
しかしパスパレメンバーが途中参加して大所帯になったもんだ。
『まんまるお山に彩りを! Pastel*Palettesボーカル、丸山彩でーっす! よろしくお願いします、比企谷さん!』
日菜に耳打ちされ、ポージングを決めつついきなりアイドルみたいな挨拶をしてきた丸山に対し、冷めた視線を向けてしまったのが数分前。
『日菜ちゃん、急にやったから比企谷さん引いてるよ〜!』
『あはは、でも良かったよ、彩ちゃん!』
丸山が日菜と抱き合っている傍ら、もう一人の初対面の人が近づいてきた。
『ジブンは大和麻弥って言います。上から読んでも下から読んでもヤマトマヤになるんで覚えやすいと思いませんか?』
『そ、そうだな』
『比企谷さんのことはよく日菜さんとイヴさんがお話ししてくれるので存じていたんですが、こうしてお会いできて光栄です! よろしくお願いしますね!』
『ああ、よろしく』
何はともあれ、初対面同士の挨拶も済み、こうしてバーベキューに突入したわけだが、どこを見渡しても女子高生ばかり。
居心地悪いとかは無いけれど、兎にも角にも焼く係をやることにして正解だった。
新たに絶妙な焼き加減になった野菜を紙皿へ移すと、横から人が近づいてきた気配を感じてそちらに視線をやった。
「ふぃふぃふぁふぁふぁん、ふぉふふぁふぇふぇふ!」
「や、飲み込んでから喋れよ」
「……んくっ、比企谷さん、おつかれです」
「ん、次の肉が欲しいのか?」
聞くと、青葉は首を横に振る。
「比企谷さん、焼いてばかりで食べれてないんじゃと思いまして、代わりますよ?」
「あー、いや、ありがたい申し出だけど気にするな。むしろ俺は今日これをやるためだけにここにお呼ばれした気がするからな」
こういうのを男の仕事、と考えてるわけでは無いけれど、手持ち無沙汰になったら場違い感半端なくなって困りそうなので、丁重にお断りさせていただく。
と、青葉は少し考える素振りを見せてから自分の皿に乗っている肉を摘み上げ、ひょいっと俺の口元に近付けてくる。
「……何してんだ?」
「むふふ、頑張ってる比企谷さんにあーんのごほーびです」
さあどうぞ、とさらに箸を前へと突き出す。
……ほんと、最近の女子高生はその行為をする恥ずかしさというものがないのかね。
後さりげなく、あーんがご褒美になると思ってるところが男を甘く見ている。
や、割と可愛い女の子にされる行為ならオタク男子にとって大抵はご褒美だけどな!
だがしかし、俺はそんじょそこらのオタクと違って特殊な訓練を受けたオタクなので、あーんごときで嬉しくなったりは少ししかしない。少しはするのかよ。
「比企谷さん、どーしました?」
「や……」
かと言って、今この肉を口にするのはやはり少し気恥ずかしさが勝る。
どう断ろうかと思案していると、羽沢が驚いたような声を上げた。
「も、モカちゃん、何してるの……⁉︎」
「なにって、次の肉が欲しければあーんして食べさせろ。そしたらくれるって比企谷さんが……」
「おい、真実味がありそうな冗談やめろ」
「えっ、そうなんですか⁉︎」
「ほら、羽沢が誤解してるじゃん」
あとなんだ青葉、そのしてやったり顔。
絶妙にイラつく表情だなそれ。
とりあえず羽沢の誤解を解こうとしたが、それを青葉が手を俺の口元へ持ってきて制止してきた。
「いや〜、ほんとはあまり食べれてない比企谷さんを労おうとしてただけなんだけど、そういえばこれはつぐの役目だったよね〜」
また適当なことを言って場を濁そうとする〜。もう、青葉さんったらお茶目さん!
俺は焦げそうになっていた野菜類を青葉が持っていた皿に乗っけてやる。
「あっ、比企谷さん。押し付けないでくださいよー」
「羽沢に野菜も食べろって言われてただろ」
先程のやりとりをガン無視して青葉とやいややいや言い合いをしていると、スッと眼前に肉が差し出された。
「あ、あーん」
その肉を箸で摘んでる主、羽沢を見ると顔を朱に染めており、恥ずかしいのか小刻みに腕が震えていた。
青葉に目を向けるとニヤリとした笑顔が憎たらしい。
「比企谷さん、つぐの肉が食べれないというのかー!」
「なんだよその上司が部下にアルハラする時の常套句みたいなやつ」
大体それ焼いたの俺だし、というツッコミは喉付近まで出掛かっていたが飲み込んだ。
と、不意に周りの気配の静けさに気づく。
いつのまにかパスパレメンバーや奥沢たちまでコチラに意識を割いていた。
……いや、これ、どうしろと?
現状羽沢から差し出された肉を受け入れるか否かの二択だが、これで後者の選択肢は……俺の、そして羽沢のためにも取りたくはない。
まあ言ってしまえばただ食べさせてもらうだけ。
なにも恥ずかしいことではない。多分。
俺は羽沢の持つ箸に顔を近づけはむっと肉を口に含み、咀嚼した。
「……ん、ありがとな」
「っ……! は、はい!」
見られながらの羞恥行為とかどうでも良い。
羽沢が笑顔を見れただけで俺の選択は間違いじゃなかったと思えたから。
[newpage]
あれからも流れで何度か羽沢に食べさせてもらったが、餌付けされるというのも案外悪くない。
人に世話されるのマジ最高。将来は専業主夫になりたいという夢は未だ捨てきれない。
や、けど今回の場合は肉焼いてたの俺だから働いてないってことは無いけれど。
そうしてあらかた食べ尽くし、片付けをしてから今はみんなで日向ぼっこ。大きなレジャーシートを広げて小休憩中である。
「千聖さんたちは今日はもう仕事ないんですよね?」
「そうね。今日は午前中のみで夜はホテルに泊まって明日また写真集の撮影があるわね」
明日も仕事なのにバーベキューに参加するとかパスパレのみんなは体力あるなぁ。
俺はこの奥沢と白鷺の会話ですら子守唄にして眠れそうなレベルで、すでに体力が削られてるというのに。
適当に足を伸ばして雑談をしている者、走り回って追いかけっこをしている者がいるなか、俺はシートの端を拝借して寝転がっていた。
日は照っているが、木々が多いためかそこまでの暑さは感じられない。
むしろ風も微妙に吹いていて涼しいくらいだ。
要は昼寝に最適な環境。
うつらうつらしていると微かな声が耳に届き、俺は曖昧な返事をしたと思う。
× × ×
「八幡、そろそろ行くわよ!」
「……んあ?」
大声で名前を呼ばれ重くなった瞼をゆっくり開ける。
日が眩しく、顰めっ面になりながら状況を確認して、思い出した。
「……ああ、俺寝てたのか」
「くすっ、比企谷さん、ぐっすりでしたよ?」
羽沢にそう言われ、恥ずかしさを誤魔化すように咳払いをする。
まあ昨日は日を跨ぐ付近までレポートをやって、五時間も寝れてなかったから眠くなっても仕方がない。
改めて辺りを見渡す。と、俺を中心にここに集まってるメンバーに囲まれていた。
「えっと……、これどういう状況?」
「これからみんなで川に遊びに行くのよ!」
「まあ、ほんとは少し前に行く予定だったんですが、比企谷さんが気持ちよく寝てたので……」
「ああ、そりゃ悪かった」
弦巻の発言に奥沢が補足する。
つまり俺が起きるまで待機していたというわけか。
わざわざ待たないでむしろ置いていってくれて構わなかったのに、とはこの状況で口が裂けても言えない。
「んじゃ、行くかぁ……」
言いつつ伸びをしてあくびを噛み殺す。
完全復活、とまではいかないが、多少の疲れが取れた気はする。
「こころちゃん、どっちが先に川につくか競争しよう?」
「ええ、良いわよ日菜!」
言うと二人はすぐさま走り出していく。
「二人ともー、慌てて転ばないでねー」
奥沢の声かけに手を挙げて応える弦巻と日菜。
あっという間に二人の姿が見えなくなってしまう。
「それじゃ、あたしたちも行きましょうか」
ここから川までは遠くは無い。
道中で松原に足の具合を確認してみたが、ずっと休んでたおかげで歩くのに支障はないとのことだった。
ひとまずそのことに安堵し、先に行った弦巻たちを追いかけるように俺たちも川へと向かう。
× × ×
わーわーきゃーきゃー。
擬音で表すとこんな感じだろう。
眼前ではキャピキャピ女子高生たちが川で仲睦まじく、はしゃいでいた。
俺はその様子をプールの監視員が如く、持ってきたレジャーシートに座って荷物番をしながら、彼女たちをぼーっと眺めている。
いや、だって、さぁ……。
ここにいるメンバー、羽沢、弦巻、奥沢、松原、青葉、そしてパスパレの五人。
しめて十人の女子高生の輪に入るのは流石に難易度高すぎる。、
俺はそこまで図太くならないし、肝も据わってないので。
まあこうして木陰でぼんやりしているのも案外悪くはない。
大学に入ってからはレポートやらバイトで割と休む暇はなかったし、休日もなんだかんだで外出が多いので、意外と何もせずにいられるのは久しぶりな気がする。
あくびを噛み殺しつつ、水鉄砲で遊んでるみんなを眺めていると、不意に羽沢と目が合った。
「比企谷さーん!」
呼んで、羽沢がこちらに手を振ってくるので自然と振り返す。
彼女が今身につけている水着は以前買い物に行った時に購入したものだ。
さっき似合ってるかを聞かれた時は曖昧な答え方をしてしまったのだが……うん、やはり似合っている。
……ってか俺、さっきから無意識に羽沢ばかり目で追ってたな。
そのことに気づき一人恥ずかしくなり、慌てて目を逸らす。
「八幡、いくわよ!」
聞こえた瞬間、水鉄砲が俺の顔面に直撃した。
「ぶはぁっ……!」
油断してた驚きと衝撃で後ろに倒れ込むと、笑いが聞こえてくる。
「八幡、やっぱり一緒に遊びましょう!」
「や、俺水着履いてきてないし……」
体勢を立て直すと、いつの間にかこちらにやってきてた弦巻にぐいぐいと手を掴まれる。
そしてもう一人近づいて来ていた人物に反対側の手を握られた。
「わ、私も比企谷さんと遊びたいです」
多少強めに引っ張る弦巻。
片や、遠慮がち手を握る羽沢。
それぞれで俺を立ち上がらせようとしてくる。
ここで断るのは簡単だ。けれど、今まで幾度となく"なるようになれ精神"で行動して来た俺は、重い腰を上げた。
「少しだけな」
「は、はい!」
言うと、羽沢と弦巻にそれぞれ片腕ずつ拘束、もとい抱きしめられるようにされ、柔らかいものが密着する。
「ちょっ……」
流石にまずいと思い脱出を試みるが、川に到達する方が早く、俺は弦巻の一際強く引く力に驚き、まえのめりによろけて川にダイブした。
「……ぷはっ」
全身びしょ濡れ。
濡れてもズボンくらいでそれならすぐに乾くだろうと思っていたがとんだ計算違いだ。
衣服が肌に張り付いて気持ち悪い。
が、それよりも、だ。
「おい弦巻」
「? なにかしら?」
俺の呟きに何かを察したのか、スッと現れた青葉に拳銃型水鉄砲を譲渡される。
ふむ、よく分かってるじゃないか。
俺はその中の水の量を確認し、弦巻に銃口を向けて引き金を引く。
「わっ……!」
「いきなり引っ張り込んだら危ないじゃねぇか」
次いで、もう一人の戦犯である羽沢にも銃口を向けた。
「えっ、わ、私も……⁉︎」
「ああ、悪く思うなよ」
言って、引き金を引き、羽沢に水が命中する──かと思いきや、それをボールで防がれる。
「ふっふっふっ〜、つぐはこのボディーガード、青葉モカがお護りします」
「も、モカちゃん!」
「邪魔するな青葉、俺は成し遂げなくちゃいけないんだっ!」
連射し、それを青葉が次々にガードしていく。
新たに水を入れ、もう一度撃とうとすると、別方向からの射撃を受けてしまう。
「比企谷さん、女の子をいじめるなんて酷いわよ」
「……白鷺」
水鉄砲を構えてる白鷺に対し、俺は標的を変えて迎え撃つ。
と、その横に新たな人物が並び立った。
「チサトさん、助太刀します! お姫様を守る……、これぞブシドーですね!」
や、それは武士というより騎士だろ、というツッコミをする前に水が飛んでくる。
が、俺はちょうど流れてきた浮き輪を盾にしてそれを防ぐ。
「つぐ、あたしたちも応戦だー」
「う、うん!」
図らずも四人と一人の構図。
四字熟語で表すと四面楚歌。
だが、これだけでは終わらない。
「八幡、やったわね!」
復活した弦巻が、アサルトライフル型っぽい水鉄砲を両手で構えこちらに向けていた。
「わわっ、麻弥ちゃん、比企谷さんピンチだよ〜!」
「そうですね、ではジブンたちでお助けしましょう!」
「あはは、じゃああたしも! ……ほら、美咲ちゃんも!」
「ええっ、あたしもですか……?」
言いながら参戦してくる四人。
そして白鷺に勧誘された松原含め、六対五の構図。
男がいるこちら側の人数が少ないのはちょうど良いハンデだろう。
水を掛けて掛けられて、いつのまにかチーム分け関係なく、ヘトヘトになって次々脱落者が現れるまで乱戦状態は続いたのだった。
[newpage]
みんなで満足するまで川で遊び尽くした後は、全員でカレーを作って食べ、今ようやく落ち着ける状態になっていた。
「モカちゃんのあがりー」
そして現在、俺、羽沢、弦巻、奥沢、松原、青葉の六人でトランプ中である。
ちなみにパスパレメンバーはカレーを食べ終えた後、マネージャーが迎えに来たので一緒にホテルへと戻っていった。
「モカちゃん、強いね」
「いやー、花音さんの表情が読み取りやすくて」
「ふぇぇ……、そ、そんなことないよー」
しかし今別荘の中で遊んでるけど、これテント張った意味あったか?
や、まあ、良いんだけどさ。
寝る時はテントに行くらしいし。
そんなことを考えていると、今回のババ抜き勝負はいつの間にか俺と羽沢の一騎打ちになっていた。
「比企谷さん、絶対負けませんよ!」
「お、おう」
不意の真っ直ぐな瞳に、たじろいでしまう俺。
だが勝負は勝負。簡単に負けてやるわけにはいかない。
羽沢が左のカードを指でつまむ。
俺は表情を変えない。
次いで右のカードに手が触れた。
そこで俺は口角を少しあげる。
すると、羽沢は笑みを浮かべそのカードを俺の手から抜き取った。
「やった!」
「なん、だと……」
俺はわざとだらしく、手を床につく。
と、青葉が近づいて来て耳元で囁く。
「比企谷さん、策士ですねー」
「うっせ、ほっとけ」
どうやら俺の先ほどの所作は青葉に読まれていたらしい。
いやこういうのはバレずに自然とスマートにやるからカッコ良いんじゃん。
気付いたとしても黙っててくれる方が嬉しかったなぁ。
最下位の俺がトランプをまとめていると、奥沢が口を開く。
「そろそろ順番にお風呂入りますか?」
その提案にそれぞれ頷く。
「じゃあ比企谷さん、お先にどうぞ」
「本当に俺からで良いのか?」
「はい、多分あたし達の方がそれなりに時間かかるので」
まあ、全員が賛成してるなら俺がこれ以上とやかくいう必要はないだろう。
ありがたく一番風呂をいただくとする。
と言っても、のんびり入浴して待たせるのも申し訳ないので、さっと身体を洗い、少しだけ浴槽に浸かり十分ほどで風呂場を後にした。
「あれ、比企谷さん。もう出たんですね」
「おう」
俺の姿を確認するとすでに入浴準備を済ませていた羽沢と青葉が入れ替わりに風呂場へと向かう。
「つぐ〜、洗いっこしよー」
「うん、良いよ」
すれ違う二人をなんとなく目で追う。
と、青葉が立ち止まり振り返った。
「あっ、比企谷さん。覗きに来ても良いですよー?」
「ま、モカちゃん、だめだよっ!」
「や、行かないから、いちいち羽沢を動揺させないでやってくれ」
俺の返答、もしくは羽沢の反応に満足したのか、青葉は素直にお風呂場へ消えていく。
その後をチラッとこちらを一瞥してから羽沢も追いかけた。
「ったく、青葉はなにがしたいんだ?」
「比企谷さん、青葉さんと仲良いんですね」
「や、あれはそんなんじゃ無いと思うが」
奥沢に言われて少し考えるも、確かに他の知り合いJKたちに比べ、話しやすさはある、かもしれない。
まあ青葉はマイペースだし、会話のテンポがほとんど青葉に持っていかれてる気がしなくもないが、そこは一旦目を瞑るとして。
「……ってか、弦巻は眠そうだな」
「ですね。まああれだけ一日中はしゃいでれば仕方がないかもですけど」
うつらうつらして肩に寄りかかってくる弦巻を優しく揺らす松原。
「こころちゃん、もうすぐお風呂だから頑張ってね」
「ん〜?」
目を擦り、体勢を立て直そうとした弦巻だったが、すぐに頭が松原の肩に吸い寄せられた。
「花音さん、すみません。お風呂に入れるまで少しそのままでいてあげてください」
「うん、大丈夫だよ」
まあ弦巻のことはこの二人に任せておけば問題無いだろう。
特にやることも無くなった俺は奥沢たちに挨拶だけして、とりあえず自分のテントに行くことにした。
× × ×
ふと目を開ける。
手探りでスマホを手繰り寄せ時間を確認すると、俺がテントに入ってから約一時間経過していた。
どうやら、いつの間にか眠っていたみたいだ。
「……喉乾いたな」
テントから這い出て、並んでる二つのテントを見やる。
特に物音を感じないので、おそらく全員寝ているのかもしれない。
起こさないように気配を殺しつつ別荘の中へ向かおうとすると、敷いたままにしてあるシートの方に人影が見えた。
「……羽沢、か?」
「あっ、比企谷さん。起きたんですね」
パジャマ姿で空を見上げていた羽沢が俺の呼びかけに反応し、優しく微笑む。
「私も寝ようとしてたんですけど、なんか目が冴えちゃって。今日の夜はこの辺りの星空が綺麗だよって日菜先輩が教えてくれてたので眠くなるまで眺めてようかな、と」
「そうか」
言って俺は別荘の中に入っていく。
そして冷蔵庫から飲み物を二つ手に取り、外へ出る。
「飲むか?」
「あっ、ありがとうございます」
手渡すと「ここどうぞ」と言われたので、素直に腰をおろす。
そしてなんとなく一緒に顔を上げてみた。
「綺麗ですね」
「……だな」
普段中々空を見上げる機会なんてないので、家から見た時との差なんてのは正直分からない。
けど、今見えてる星空は確かに綺麗と言っても差し支えはなく、少なくとも今日この場に居なければ見ることは適わなかった星空である。
特に何も言葉を交わさず夜空を眺める。
そうしていると不意に肩に重みが掛かった。
「っ……、羽沢?」
「ん、……すぅ」
羽沢が瞼を閉じ、穏やかな寝息を立てていた。
「マジか」
起こしてテントに戻るように伝えればいい、だけなんだがここまで気持ちよさそうに、安心しきっている寝顔を見せられると起こすのも憚られてしまう。
けれど、このままの体勢だと起きたときに身体が悲鳴をあげてしまうかもしれない。
「……仕方ない」
俺は眠っている羽沢を支えつつ、ゆっくり横にしてやる。
そして俺のテントから掛け布団を持って来てそれを羽沢に被せる。
「…………」
これで大丈夫、と思ったが、流石に誰もいないとはいえ女の子一人を外で眠らせるのは危険極まりないので、仕方なく俺も少しだけスペースを空けて横になる。
うん、決して他意はない。
あくまで羽沢を守るために仕方なく隣にいるだけだから!
…………言葉を連ねれば連ねるだけ、他意があって怪しさ満点になってしまうなんとも不思議なことである。
まあ実際は本当に一人にすることへの罪悪感があるだけなのだが……。
「俺も寝るか」
今日は短時間睡眠を何度かしてきたが、やはり疲労が溜まっているのかそれなりに睡魔がある。
一度羽沢に目を向ける。けれど、あまり女性の寝顔を無許可で見るのはいただけないと思い直しすぐさま目を閉じた。
そして疲れのおかげか簡単に意識が途切れかける。
この状態を青葉にだけは見られるわけにいかないので、早めに起きようと心に誓ってからゆっくりと完全に意識を手放すのだった。
*ちょっと分かりやすいように章分けしてみました!