達磨少女、拾われる。 作:大人しい子を甘やかし隊
この世は常にエキセントリックでサスペンス。日陰には事件が潜んでいて日向には狂乱が罷り通る。イカれた世界にはイカれた奴らが蔓延っている。明日の命を考える前に今日。昨日に感謝する暇すらなく太陽は登って沈む。
今日の私は日課の賞金稼ぎ。人の命を
私は全身義体と言うか目覚めたらロボットになっていて、世界は絶滅戦争後の遥か先、回復した自然が世界を覆い尽くそうとしている様な時代。人は1人じゃ生きられないなんて言うが、人でない私はどうにか1人でやって行けていた。エネルギーは太陽光と空気中の水素で賄えたし、部品も潤沢だったからだ。
さて、今日のターゲットは──盗賊団。人々が集まるコロニーを襲う血も涙も無い連中だ。私と違うのは、人の心すら無くしてる点だろうか。
私は2100年モデルのオートマチック拳銃『ファイブスター』を両脇のホルスターにしまい、防弾チョッキにフード付きジャンパーにカーゴパンツと言う2200年最新のアーバンなファッションに身を包む。
どこかの地下ライブハウスを改装した隠れ家を出ると、辺りは抜け殻のビルが周囲を取り囲む。昔は都会の景色に妙な威圧感を覚えていたものだが、今となっては懐かしい。この景色には物悲しさしか感じない。
若干おセンチになるのはご愛嬌。私は拾ったバイクに乗り、静かな街を抜け出した。
──すっかり暗くなってしまった。
辿り着いたのは朽ちた構造物と木々によって天然の迷路と化した旧い市街地だ。盗賊が寝ぐらとするには丁度いい。緑は目の保養にもなる。虫は好きじゃないが。
そして盗賊団はこんな夜中にまで乱痴気騒ぎをしていた。酒に女に肉。私には必要の無いものだが、絶滅戦争から数百年経った今でも人にとって必要なものであったそれらを心ゆくまで楽しむ奴らが居た。
中にはまだ幼い少年なんかも居て、女達と同じように扱われていたりした。全く、人の歪みは大自然の力を以ってしても治らない。人の業の深さにはつくづく驚くばかりだ。私も元人間だがね。
さて、酒を呑んでいるのだから、奴らが寝入った所で襲撃を掛けよう。何、大した事にはならないさ。
私は両手に拳銃を取った。
──何だ! 敵か!?
──クソッタレ、何だアイツ!
──銃弾が弾かれたぞ!
──人質を……。
──戦利品に近付くな! アイツに狙われてるぞ!
……思ったよりも賑やかになってしまった。敵は至る所から出て来るわ、ミニガンやらロケットランチャーやら物騒な物を持ってるわ、流石近辺を荒らし回ってた盗賊団なだけはある。10発装填可能な50口径のファイブスター二丁も既にそれぞれ2回撃ち切ってしまった程だ。30人以上はやってるんだがなこれでも。
両手で休みなく銃をぶっ放し、一人で弾幕を作りながら敵陣を喰い破る。機械の身体だからこその無茶を押し通しながら、私は私の後ろへ逃げていく被害者達を見送りながら、残党を処理していく。数は多くとも、幾ら義体化しようとも限度はある。酔える身体だったのが運の尽きだったな。酔えなくても死ぬだけだが。
──こうなったら……これを!
と、死に損なっていた敵の一人が何やら近未来的なコンテナのコンソールを操作していた。久しぶりのミスだ。ちょっと気が緩んでたか。
私は引き金を引いて今度こそ殺し切り、開きつつあるコンテナを注視する。他の連中は皆殺した。後はアレから何が出て来るか。
「対象を排除します」
そうして開いたコンテナの影から歩み出したのは、女性の声で語る白い義体、いや機体だった。ああ、不味いなこれは。スラスターの量が一眼見て尋常じゃない。
私は咄嗟に切り札を切った。この世界では超貴重品。特大のダイヤモンドより価値のある品だ。
その名はEMPグレネイド。あらゆる電子機器にダメージを与える電磁パルスを発生させる品だ。強い奴は出会い頭で潰す、これが常套手段ってね。私はEMPグレネイドの上下を捻り、起動状態にして放り投げる。手のひらサイズで使い捨ての高級品、頭の良い奴は何を考えたのやら。私は当然逃げる。私だって機械だ。
だから勝負は終わる。始まる事すらなく。
──ありがとうございました。
助け出した被害者達は、盗賊団が集めた武器や食糧を根こそぎ回収し、その足でコロニーへと戻って行った。私がついて行こうとしたら、中には賞金稼ぎをやっていた者も居た様で、これだけ居れば問題はないと断られてしまった。ここで暴れていた盗賊団も今潰した所だ。確かにその通りだろう。
……そうして人気の無くなったコンクリート&ジャングルの中で、私は少々の弾薬を頂きながら、動き出す前に停止した白い機体に目を向ける。電子機器の類は軒並み損壊し、部品取りにすら使えないだろうそれは見た目の綺麗さに反して回収する価値は薄い。
けど、久しぶりに見た人型ロボットだった。私も気になっている。近付いて色々と触ってる内に、何かおかしい事に気付く。それは機体をコンテナの外に運び出した時の事だ。
その機体は妙に軽かった。中にワイヤーやフレームが詰まっている筈の機体は大体見た目通りに重いのが通例だが、中には比較的軽いものもある。そう言ったものは殆どが最新技術によるもので、私の様なしがない賞金稼ぎには手が届かない代物である。
だからこそ私は気になった。その中身が。
まるで少年の様に昂る気持ち。いつ以来だろうか。クリスマスのプレゼントのラッピングを開く様な気持ちは。
腰のツールバックから取り出した特殊なドライバーでネジを外し、装甲を外すと塗装のされていない地の黒いフレームが見える。私はその黒いフレームに手をかけ、ゆっくりと開いた。
何が、何があるのだろう。そこには──
「貴方は、私を殺しますか」
──手足の無い、一人の少女が鎮座していた。
……いや、勘弁してくれないか。
書き溜めは無いので不定期更新になります。
追記
思う所があったので2話を削除しました。
ちょっと練り直します。