天井裏から見る世界   作:鞍馬エル

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夢の果ての裏側

救いとは万民に与えられる者にあらず
こぼれるものというのは存在するというお話


 救いのない壊れた世界

 奪うだけで全てが上手くいった

 

暴力こそ此処の全てだと思っていたんだ

 

 

 

----

 

政府の広報ヘリとやらが巡ヶ丘市の上空にて救助をする為に指定された場所に集まる様に呼びかける

 

 

忌々しい事だ

 

男は不快そうに吐き捨てる

既に男の束ねるグループは助けが来ない事を前提としてそれなりの体制を作り上げていた

彼は少し粗暴であるが、チンピラでもヤのつく自由業の人間でもない。普通に一般社会の中で生きていた人間

 

そんな彼がヤツらに襲われた際、近くにあったあらゆるものを駆使して己が身を守る事に成功した

してしまったのだ

 

見知らぬ人間を平気で騙し、囮として動かし、偽報を掴ませる事で余裕(思慮)のない人物は徹底的に使い潰した

そこに男女の区別や年齢など関係ない

少し知恵の回る者は男を利用しようと近づいてきたが、彼もまた相手の考えを察して奈落に落とす事で自身の公平性を強調する事に利用する

 

仲が良いから

 

それも良いだろう。が、そこに能力や覚悟が伴わないのであればあっさりと切り捨てる非情さもまた必要だ

手の届く範囲を無理に伸ばせば必ず何処かに歪みを齎すだろう

歪みは不協を招き、不協はそのグループの団結に亀裂をいれる

 

そんな事を一々していれば、そのうち何処かで致命的な事態を引き起こす事につながるだろう

 

重大な事故はそれよりも規模の小さい事故や、ヒヤリハットなどの積み重なりで起きるのと然程に変わらない

であるからこそ、小さな芽のうちに摘み取らねばならないのだ

 

 

そうやって、彼は痛む頭を抱えながらも少しずつ生存圏を確保していったのだ

忌々しい事に『事態が落ち着いた』などと食料品などを探し回って手に入れている実働班に比べて生活班。つまり拠点での安定した食事の提供などを主目的とした者達。は危機感を持てない者も少なからずいた

 

結果、生活班の中でも目に余る者については無理矢理にでも実働班に同行させ、現実を直視させるなどの対応をする事になった訳だが

 

 

理想で言えば、全員戦力としてある程度の水準を満たして欲しくはあったが、それはあまりにも人によってはリスクの高い判断として保留にしていた

そこまでして何とかグループとしての纏まりを維持し続けてきたんだ

 

 

何度も助けを求めようとした

が、誰を何を頼れば良いのか分からない

 

こんな状況で初対面の人物を信じるなど文字通り自殺行為

事実善性の人物はそうやって他者から食い物にされて死んでいった。だから彼は他人を容易く信用するつもりはない

 

 

こう言っては何だが、女性の身でありながら武器を振るう事を躊躇わない者というのはこの様な状況では貴重だ

どうしても、生活班にいる以上ヤツらという脅威に対する危機感や危機意識は薄れがち。結果、節制するのを

 

まだ余裕があるから大丈夫

とあっさり止める者も少なからずどころかそれなりにいた

 

当然文字通り命懸けで物資を集めている実働班からすれば、たまったものではない

結果、性別間の溝となってしまうのは困るのだ

 

物資を集める実働班

その物資や拠点を維持する生活班

その両輪が正しく機能するからこそ、ギリギリのところでも踏みとどまれているのだから

 

 

 

そうやって、維持する事に全神経を傾けてきたと言うのに、

 

今更になって助けが来るのか!?

 

 

当然だが、彼のグループにいる者達はあくまでも『助かりたい』からグループにいるだけである

多少情がわいたとしても、目の前にある平穏な生活への道を無視できるものではない

 

 

故に割れた

 

 

生活班の殆どと、実働班の一部は指定された場所に向かう事を主張

逆に実働班として、グループ内での立場を持っている者達は合流に反対した

 

安全圏に逃れられるなら問題ないとする前者。あれが虚言でないと言い切れない事から合流は早計だと反論する後者

だが、後者の本音は違う

 

彼等は実働班でヤツらを殺しながら、会った生存者からあらゆるもの(・・・・・・)を奪っていたのだ

 

 

ある時は助ける条件として人数制限(・・・・)があるとして殺し合わせ。またある時は助ける代わりに相手が持っている物や情報を全て引き出し、そして殺した

 

そう言った事をした理由は簡単だ

混乱の中で生きてこれた。つまり相手は少なくとも自衛手段を持っている可能性が高い。そして、合流した場合はほぼ間違いなく実働班に加わる事になるだろう

それだけならば問題ない。が、その人物が仮に自分達よりも強かったら?自分達よりも理性的だったなら?

その場合自分達の立場が脅かされる可能性が出てくるという事

 

それは好き勝手にやっている者達からすれば到底受け入れられない事だった

物資を持って帰れば称賛される

その功を『自分達だけの権利』としたかった

 

 

そんな彼等からすれば、元の生活に戻るなどあり得ない選択肢だ

 

 

 

そして、それは起きる

 

 

 

合流の時間までの猶予があまりない事を合流派の者達は危惧し、グループからの離脱を試みた

彼等、彼女達からすれば至極真っ当な話であり、反対している者達も受け入れてくれる

 

そう、思っていたのだ

 

 

 

しかしながら、グループリーダーの制止を振り切って反対派は動く

 

裏切り者には、死を

自分達の権利や立場を脅かそうとしている合流派を彼等は許さなかったのである

 

 

 

そして、惨劇は起きるべくして起きた

 

救助を求める側である以上、合流派の実働班は必要最低限の武装しか持たない。当たり前だと思っている

救助を求めるのが自分達だけでない可能性もある。加えて救助隊の面々に物々しい雰囲気で接すれば面倒な事になるだろうと判断していたのだから

が、それでも何があるか分からないからこそ、自衛手段としての武装はしなければならない

 

対して、反対派は元より攻撃(殺害)するのを目的としている。その武装が最低限であるはずもない

更に合流派は非戦闘員である生活班の人間が大半。酷い言い方だが、足手まといの方が多かったのである

 

 

反対派はライトボウガンなどの豊富な遠距離攻撃手段を用いて合流派を強襲。初撃において脅威となる実働班の人間を排除、ないしは負傷に追いやると

 

後は凄惨なマン・ハント(人狩り)となる

 

 

泣き叫んで逃げる女性の足を傷つけ、命乞いをさせてから無惨に殺す

ライトボウガンを片手に嗤いながら無駄な抵抗を嘲笑う

気の弱い女性だけ(・・)を残して他の者を全て殺す

 

そこには人間というモノの持つ底なしの悪意だけが存在した

 

 

 

しかし、最早助かる道がないと悟った者達の中には殺された実働班の武器を振るい、命を捨てて抵抗する者もいた為に反対派の中にも被害は出てしまう

そして、恐怖に駆られた女性は悲痛な叫び(・・・・・)をあげて絶命する

 

 

そう、叫んだ(・・・)のだ

 

 

自分達の悪意(暴力)に酔っていた彼等反対派はその代償をすぐに支払う事となる

 

 

 

 

近くにいた彼らが殺到したのだ

 

移動手段であった車の鍵は助からないと確信した女性の1人が鍵を抜き、何処かへと投擲している

つまり、彼等反対派は徒歩で逃げなければならない。しかし、少なからぬ手傷を負い冷静さを多少取り戻した者達ならば兎も角、ひたすらマン・ハント(人狩り)に興じていた殆どの者は彼らの襲撃に対応する事が遅れてしまう

 

 

そして僅かな時間の後、そこには彼らと化した反対派と合流派の遺体だけが残された

 

 

 

 

 

 

全くもって救いのない話だが、この様な光景は巡ヶ丘市内において多数(・・)現出し、結果聖イシドロス大のスミコ達穏健派を始めとした極一部の者しか救助されないという結果となった

 

 

 

----

 

 

情報を発信するマスコミは頭を抱えていた

 

巡ヶ丘市を恐らく発端とした今回の変事。勿論彼らからすれば絶好のネタになるはずだった

が、それも政府側の制止を振り切って現地取材を強行した取材クルーが全滅するまでの話。不謹慎な話ではあるが、怪我人が出たくらいであれば寧ろ話題になるとタカを括っていたのだが撮影クルーなどが死亡するというのは前代未聞

しかも、政府側からは

 

事態の把握が充分でない事から一切の活動自粛を求める

 

と各社に警告までされておいて、である

取材中の死亡事故(・・)であるならば遺族に対しても説明や弁明は出来る

ところが、情報については『一切の開示を認めない』との通達(実質命令)が取材中のクルー全滅から僅かな時間の後に連絡が入ると局内は混乱。勿論、ある程度の情報は手に入っていたものの渦中の巡ヶ丘市内に対しての立ち入り取材であった事から政府側の批判が殺到

 

 

何せ、巡ヶ丘市隔離の為の封鎖網を構築している最中での出来事であり、取材クルーは取材の為に設置されていたバリケードを一時撤去(・・・・)していたのだ

 

これには封鎖作業を指揮していた自衛隊が激怒。あくまでも『仮設』であったものの、彼らとなった者達は『緩慢に動く事』しかできない事と『頭を働かす事』が出来ない事から仮設であっても問題ないとしていたのである

それを許可を得る事なく勝手に撤去しただけでなく、結果としてそこから封鎖網が崩壊。安全を確保していたはずの地域に彼らの進出を許してしまったのだから

 

当然ながら、計画していた『巡ヶ丘市封鎖作戦』は一からのやり直しとなる。更に安全を確保していた為にある程度住民が戻っていた事が災いし、住民達が襲われて感染者が更に拡大してしまう

そうなると、また封鎖網の構築などを一から計画し直さねばならず件の局からの報告より前に市民からの『救助要請』により発覚した事も相まって事態は混乱する事となった

 

なお、作戦指揮にあたっていた自衛隊指揮官は

 

余計な事を!!奴等の勝手でどれだけの市民が犠牲になるというのか!?

と憤るのもやむなしだろう

 

 

作戦では巡ヶ丘市を完全に外部から隔離した後に市内の生存者を探すべく近隣の自衛隊駐屯地からヘリコプターを複数機投入。救助活動にあたる事としていた

 

この包囲網崩壊の代償は非常に大きく、巡ヶ丘市に対する救助活動は一年以上延期される事になってしまう

というのも、混乱を助長しない為にある程度情報を絞ったのだが今回の一件で彼らに襲われ、負傷した(・・・・)住民の一部がその事実を届けていなかった

彼等は『些細な怪我』として問題視していなかったのだが、その中の数人が所謂『出張族』と呼ばれる人間であった事が災いする。彼等は他の地に出張ないしは戻り、そこで彼らとなってしまう

それにより、安全を確保したはずの場所で彼らが増殖するという悪夢の様な事態が発生。更にそこからも他の地区に拡大

 

各自治体や各地域の自衛隊、警察機構などの懸命な対策にも関わらず、『人権軽視』などと言った批判が起きてしまう。適切な対応を取ろうとする政府側に対して一部の知識人(傍観者気取り)達による面倒ごとへの対応にも少なくないリソースを注ぎ込まねばならなくなる事態へと発展した

 

なお、その混乱を引き起こした報道界は「そんな事は知らん」とばかりに声高に政権批判の論調を展開

一部のお気楽な野党はこれに便乗し、あわや政権転覆の事態にまで発展しかけたりする

何せ現政権は省庁再編(大臣の椅子を減らす事)や議員数削減など、政治のタブー(・・・・・)を相次いで実施している

現実を楽観視している政治家や官僚からすれば即座に退陣してもらいたい政権といえるだろう

 

事実党本部の役員からは

 

やり過ぎではないかな?

忠告(警告)を受けていたりするが、そんな些事(くだらない事)に時間と労力を費やす事が出来るほどに政府は暇ではなかった

 

自衛隊の幕僚長などは

 

そこまで言うなら、一度現地視察でもしてもらうとしましょうか?

勿論、一般隊員達に混じって(リスクは覚悟して)もらいますが

 

と嫌悪感を露わにしていたりする

 

 

余りにも煩わしかったので、反対する野党の党首と党三職に現地視察(・・・・)を提案《・・》した総理だった

 

視察後、人が変わったかの様に全面協力してもらえたので溜飲を下げる事にしたが

 

 

 

 

そして、未だに警察署や自衛隊基地の前でデモ活動をする連中に対しては『非常事態宣言』を発表し、以後の活動について『公務執行妨害罪』の適応を可能とする環境を作り上げた

はっきり言って、彼等は邪魔でしかないのだから

 

権利の侵害などと喚き立てる連中については対応するだけ時間の無駄(・・・・・)と判断し、非常事態宣言に合わせて彼らの情報を解禁。国民に対して警戒を呼びかける事とした

が、政府の危惧していた様に『些細な怪我』をした市民に対する通報や私刑が横行する様になり治安の急激な悪化に繋がってしまう

重要なのは『彼らにつけられたか、否か』なので、繰り返しそれを広報したのだが自己(勝手な)判断を優先する市民が後を立たなかったのである

 

 

そして、その政府の見解に対してしたり顔で反論する『自称専門家達(コメンテーター)

政府内では

 

報道規制も視野に入れるべきではないか?

 

との議論すら真剣にされる様になる

 

 

----

 

そんな状況をなんとか乗り越えて、巡ヶ丘市内の生き残っている住民の救助活動が行なわれた

 

とはいえ、感染の有無が判明しないと行動の自由を許すわけにもいかず、隣接する市に保護する事を決定。救助された住民の同意も取り付けている

 

 

さて、此処で問題視されたのが『あの混乱の最中に家族となったグループ』である

しかも、当時高校生なのは百歩譲って許容するとしても、その娘達が同級生や後輩と言うのは理解不能

 

 

そして、そんな歪極まる家族達に対応した職員が思わず愚痴をこぼすのも仕方ない話だろう

 

 

…それが仲間内だけならば、良かったのだが

 

そんな格好のネタを仕入れた報道関係者は嬉々として調べようとあらゆるコネを使おうとした

…が、よくよく考えると仮に取材行為が露見した場合自分達が警察や自衛隊にマークされる可能性があると考え、推測のままにそれを記事にする事を選択する

 

何せ一度騒動が終息に向かっていたのを当時の報道関係者が包囲網を崩して二度目の混乱を齎したのだから、妥当な判断と言えるだろう

 

 

 

マスコミ視点では、だが

 

 

 

 

この報道をTVにて知った若狭一家の担当官は激怒した

当たり前である。守るべき保護対象の個人情報が一部とはいえ漏洩していたのだから

しかも、夫妻はともかくとして娘達は精神的にかなり参っているのを担当官はよく知っている

 

速やかに担当官は上役である総務大臣に連絡を入れた

 

 

巡ヶ丘市における当時高校生以下の生存者は若狭一家以外だと、同グループに所属している丈槍由紀のみ

その稀少性と特殊性から担当官は広範な権限を有している。事によっては省庁の垣根すら越えることも想定されていた。その為担当官の総務省内の上長は存在せず、総務大臣直属の職員という扱いとなっていたのである

 

 

総務大臣は担当官の連絡を受けて、即座に総理官邸に連絡。総理は緊急の閣議を行なう事をその場で決定

連絡を受けたのが夜の8時であり、閣議が開催されたのが翌日の早朝8時半という異例のスピードだった事からも総理がどれだけ危機感を持っていたのか解ろうというものだ

 

 

そこで総務大臣は担当官からの報告と、若狭一家の起居する施設職員への聞き取り調査の報告を行なった

 

施設職員は若狭一家の生活しているアパートメントの1階通用口の一室にて交代で常駐する事となっており、緊急時には時間外であろうとも召集に応じる責任を負っていた

その為、業務内容と比較すると過大な給与が出ていた。言い換えればそれだけ重要視されているとも言えるのだが

 

 

担当官は総務大臣に連絡後、直ぐに施設職員への聞き取りを行なった

そこで判明したのが、昼勤務担当職員が名前こそ伏せていたものの愚痴を某ファミレスにてこぼしていたという事実だった

 

言うまでもないが、業務内容について口外するのは守秘義務違反であり懲罰の対象となる

担当官はそれを聞くと、即座にそのファミレスへと赴きオーナーからも聞き取り調査を行う事とした

 

因みにこの時点で昼勤務担当職員の解雇は決定事項であり、担当官には警察官一名と法務省職員二名の同行者が付いている

そこで判明したのが、当時その職員の近くに座っていた身なりの良い男が怪しげな動きをしていた

という事だった

 

オーナーの許可を得て、監視カメラの映像を確認するとそこには法務省職員の見慣れた姿(・・・・・)が映っていたのを確認する

 

 

法務省職員は

 

タチの悪いブンヤです

個人情報保護などよりも、部数を稼ぐ事しか考えない男ですな

 

と苦々しく語った

 

 

この人物の所属する企業は

 

報道の自由の為であれば、あらゆる取材は正当化されるべき

と言わんばかりの行動を取り続けているところである

 

問題があったとしても、それが裁判沙汰にでもならない限り知らん顔

にも関わらず、自分達の取材行為が認められなければお抱えのコメンテーターや法律家などによる露骨な世論誘導を辞さない

 

 

彼等の行状をよく知る者は

 

我儘小僧に影響力と資金力を与えた結果

と口を揃えて批判する程だ。それが同じ報道業界の人間であったとしても

 

 

 

巡ヶ丘市より救助された者達に対して

 

 

救助されたのは喜ばしい事であるが、いつまで国民の税金で養わねばならないのだろうか?

 

との論陣を展開した実績(・・)のある企業

なお、これが展開されたのは救助されてから僅かひと月足らずの事である

 

政府側としては彼女達を起点としてパンデミックが起きる事をかなり問題視しており、最低でも半年は経過観察などをすべきであると考えていた

勿論、ウイルス対策など建前で何より危惧しているのは第一波と第二波において各地で起きた『感染者狩り』と称される私刑だ

 

恐怖心に駆られた一部の市民や、感染を建前にして(・・・・・・・・)鬱憤を晴らそうと画策した市民が少なからずいたのである

 

ましてや、巡ヶ丘市は件のウイルスの発生地であると市民から認識されてしまっている以上そこから救助された者達に対する風当たりが強くなるのは容易に想像が出来よう

しかも、生存者の大半は年頃の女性ともなれば陰惨な事態が起きる可能性も考慮せねばならない

 

故にこそ、救助されたという記憶が市民の中で風化するまでの間は政府としても観察処分の名目で保護すべきだと動いていた

そんな中での若狭一家の歪な家族の在り方が外部に洩れたとなると、これ幸いにと報道機関が話題にする事だろう

 

既に施設のある自治体に対しては『市民からの苦情』が殺到しているとの事

本来ならば役所の開庁時刻は8時45分くらいからなのだが、非常時という事で開庁時刻を8時からとした上で、本来ならば閉庁している時間にも職員を常駐させている体制を敷いていた

そこに番組を視聴した市民からの批判や苦情、人によっては情報開示を求める電話が殺到し、朝になるとそこに住んでいない者達すら押し寄せる事態となっていた

勿論、回線はパンク寸前であり本来必要とされる市民からの電話が繋がりにくくなっていると閣議前に報告があったのである

 

 

警察側は私服警官をその施設内に常駐させる事を施設側と役所側そして政府に申し入れ、既に新体制として動いていた

 

 

余計な事をしてくれる

 

で、どうなのかね?相当憔悴しているとの報告もあるが

 

閣議において全員が不愉快そうな表情を隠そうともしない

何せ軟着陸させる為の苦労がたった一人の行動でご破産になったのだから

 

皆イライラしながらも対策を講じるべく話し合いを続けた

 

 

そこで決まったのが、避難民についての情報管理の再度徹底と施設内からの外出制限である

はっきり言えば軟禁に等しい措置であったが、こればかりは既にここまで事態が動いてしまった以上機能するかも分からない『市民の倫理や理性』に任せるよりも『避難民の自重』を求めた方が遥かに信頼できると考えたからだった

 

加えて、入院中の女性教諭と女生徒については民間医療機関から警察病院への移送を行なう事ともする

 

 

地獄から逃れた筈の者達にする仕打ちではなかろうに

 

ある大臣のこぼした言葉に誰もが沈痛な表情を浮かべてしまう

そして彼等は誓った

 

 

この状況を作り出した連中にはいつか必ず報いを与えてやろう

 

 

 

----

 

 

新田(しんでん)野菜なるブランド野菜が一部で話題になっているとの情報を得た男は直ぐに取り扱っている道の駅へと向かった

 

 

道の駅とは地元の名産品や観光地などを紹介する施設であり、大きな所になると宿泊施設があるところも存在する

男としては何の問題もなく、取材が出来ると思っていた

 

 

何せこちらは全国的に有名な報道局なのだ。喜んで情報を差し出すだろう

そう考えて、週末には海外旅行にでも行こうか?と考えながら車を走らせた

 

 

は?

 

男は耳を疑った

 

ですから、生産者についてお伝えできる事はない

そう申し上げましたが?

 

(ふざけるな。こっちが取り上げてやろう(・・・・・・・・)と言うのに何故協力しない)

男は内心怒り狂いながらも、努めて冷静に話を進めようとする

 

いえいえ、せっかく有名になる機会があるのですから生産者にとって悪い話ではないと思いますよ?

せめて連絡先くらいは教えていただけるでしょうか?

 

男の発言に

 

あんたもしつこいなぁ

教える事はないっちゅうとるやろ?生産者さんからも一切の情報を第三者に渡してくれるな。と言われているんでね

 

店員もしつこく居座る男に不快感を隠そうともしなくなる

何せ、産直売り場は絶賛営業中なのだ。態々レジ前に居座られても邪魔なだけ

しかも、なんの事前連絡も無いのだから『常識のない人物』と認識されたとて仕方ない話ではある

 

 

しかし、男は『自分が優遇されて然るべき』と考える根っからの業界人

。他の仕事を経験する事もなく、ただ『安定するから』という理由でこの仕事を続けていた

 

しかし、である

それ故に仕事に対する意識は低く、しかも取材先にて問題を色々起こしていた

話題性の高いものを手に入れる事は出来るが、そうでなければ早々に解雇(クビ)になっていてもおかしくないのが男の立場だったりする

 

 

彼の1番大きな話題になったのが

 

巡ヶ丘市から生還した同級生達を洗脳した悪徳高校生についてだったりする

 

仮にこの事実を出荷元の窓口である圭が知ったならば、普段の穏和な態度が一変する事間違い無い話だろう

実のところ、この店員はおぼろげながらに圭達の事情、つまり訳ありである事を理解している

であるからこそ、圭や圭の補佐役である美紀に対しても終始丁寧な対応を心がけているのだ

 

トラブルを持ち込むつもりなど彼には毛頭ないからこその判断

加えて元々若狭一家の生産する野菜は地元農協に押さえられていた。それを彼が無理を言ってまで道の駅に販売して貰っている

 

 

その為、店員の男性は未だに喚き立てる男を排除(・・)する事にした

いや、正確にはしていただろうか?

 

 

 

男は何とかして情報を得ようと利用客からすら情報を手に入れようとしていたのだが

 

 

少し良いかな?

 

男は取材の邪魔をされたと不機嫌そうに振り返ると

 

営業妨害の件で署までご同行願えるかね?

そこには警察官の姿があった

 

 

既に道の駅側は被害届を提出している以上、威力業務妨害罪が適用される事となる

再三にわたって店員は男の取材行為に対して

 

お客様や営業の邪魔になる

と言ったにも関わらず、それを続けて行ない利用客相手に謝罪を始めようとした。利用者からすれば全くもって迷惑な事でしかなく、取材に応じたとしても報酬を出すわけでは無い事は明らかだ

 

 

そして、相手が相手である以上警察側が退く事はない

政府や警察はこの時を待っていたとも言えるのだから

 

 

 

男が逮捕されたと知った男の所属する報道局は直ぐに不当逮捕(・・・・)されたと論陣を展開

一方で道の駅側に対して示談金を支払う事で事態を速やかに終わらせようと試みる

 

しかし、である

論陣を展開した翌日には、逮捕された人物や報道局のしてきたグレーの部分が他所の報道局から暴露される事となり、更に以前男が取材で知った(・・・・・・)と報道した巡ヶ丘市の生存者一家。それについての報道について盗み聞きを根拠にしていた事が世間に知らされる事となった

更に当時の巡ヶ丘市内の情報も併せて開示されるに及ぶと

 

何という世紀末

この世の地獄かな?

この中で子供達が生き残ろうと必死になったのか

え、大人が居たのに子供達だけでどうにかしようとしたの?なんで?

 

と世間から驚愕の声が上がり始めた

そして、その上で娘となった者達の精神状態にも少し触れられると

 

え、ちょっと待って。これ下手すりゃ自殺してたって事!?

救助もなく、悪意ある人間が闊歩している状況だったのか

何でこれを当時報道しなかったんですかねぇ?

 

と当時の件の報道局の報道のあり方に批判や非難が集中する事になる

更にこの件により、彼女達は縁もゆかりもない場所での生活を余儀なくされてしまったとも付け加えた

 

…勿論、この一件も理由の一つではあるが、それだけでない事については黙して語る事はない

 

 

結果、件の報道局や逮捕された人物に対して同情的だった世論は一転。大きすぎる反感をもらう事になった

 

男については、正しく『叩けば(余罪)がいくらでも出てくる』人物であった為に警察は嬉々として余罪追求の手を休める事なく打ち続ける

 

 

 

…まぁ、被害者である治孝は終ぞ表に出る事はなかったし、出すつもりも無かった訳だが

 

そして、若狭一家の暮らす廃村にしばらくのちに聖イシドロス大の穏健派と呼ばれていた者達も移住

新田野菜の増産に貢献したとされる

 

 

が、新田野菜については報道業界の中でアンタッチャブル(触れざる禁忌)と認識され、どこの局も扱う事はなかった

 

 

 

 

 




巡ヶ丘市内に残った者の中には『自主的に残った者』と『逃れられなかった者』がいました
政府側もおぼろげながらそれを理解していましたが、未だに彼らの徘徊する巡ヶ丘市内における救助活動の展開については実働部隊である自衛隊側の被害に繋がるとして打ち切る決断をしております


悠里や治孝、くるみ達の足元には無数の死体が転がっている事でしょう。恐らくそれを彼女達が忘れる事は生涯ないと思います
それでも(未来)に進んでいこうとする彼女達を政府の要人達は見守る事でしょう

ご一読いただきありがとうございました
あとは余談になりますので、読み飛ばしていただいても構いません














…というか、りーさん曇らせの為に書いていた筈なのに光側に寄りすぎた気がしてならない
くるみはそれなりに曇らせたし、圭も美紀も曇らせた
めぐねえについては足りなかったと後悔しきりで、由紀については原作が原作なので、難しかった
というか、ほわほわゆきちゃんを曇らせるとかやった瞬間にグループ崩壊待ったなしの気がする

本作において学園生活部は存在せず、代わりに若狭一家というグループで出来てしまった
そのせいでゆきちゃんの出番が無くなったのは完全な予定外
やはりノープランで書くには限度があるみたいですね

太郎丸については結局合流する事なく終わってしまいました
廃村で野良犬を飼って、その仔に太郎丸の名前をつけようか?とも考えましたが今更すぎるので没に
元々残酷な描写をもっと書く予定だったのでR-18タグを入れていましたが結局意味なかったですね。精進します
なお、当初の予定では圭が男達に暴行されて壊される描写を予定していたのですが、悩んだ結果ダイス先生に未来を託しました
結果圭の生存が決まり、みーくんの曇らせ要素はかなり減る事に繋がってしまい、私の中の第二目標であった『みーくん曇らせ』すら達成できない事態を招いてしまったのは痛恨の極みです

どうやら、本作におけるダイス先生は残酷な展開をお望みではなかったみたいですね


完結した感想としては予期せぬ事があったとはいえ、先駆者諸先輩方と異なるであろう若狭一家という謎ワードが出来たので良しとしたい
治孝くんについては、ぶっちゃけると殺す気満々でした

あくまで本作の最大目標は『りーさんを曇らせる』事にあったので、りーさんにとっての心の支えである治孝くんには盛大に散ってもらう事でりーさんに消さない傷を遺して貰おうとしたのです
が!何を当時の私は血迷ったのか、治孝くんを生かす判断をしてしまったのです
これにより、りーさん曇らせの特級爆弾は炸裂する事なく残り続けました。なので、最後の最後に彼には退場してもらう事としました

とはいえ、収まりが良く無かったので最終話のIFルートを書く事になった訳ですが
やはり無計画は良くないですね

また機会があれば、今度はもう少し良質な曇らせを書けるよう精進したいと思う次第です

では重ねてありがとうございました

湿度マシマシのIFルートりーさん見たい?

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