天井裏から見る世界   作:鞍馬エル

26 / 39
IFルートです
くるみと幼馴染の場合
なお、りーさんとも親交はあります


 悪夢
 アタシの幼馴染


「今日も学校かぁ

…よし、帰るか!」

 

スパコーン!

「アホかお前は!

今学校に向かってるところだろうが!なんで帰る選択肢があるんだよ!!」

 

「…痛いっちゅーねん

全く我が幼馴染はすーぐ手が出る。困ったものだ

あと、人生は選択の連続だと思うんだ。くるみ」

 

「お前が変な事を言わなきゃ別にアタシもこんな事しないだろ?

…というか、いきなりなんだよ?」

 

この忌々しいまでの青空!

しかも何故か帰宅部であるはずの俺まで6時半過ぎから学校に向かうという不具合!

その理由が幼馴染であるくるみの朝練に合わせて

 

…いやホントなんでやろうなぁ

自分ひとりで行きゃ良いだろうに

もっと家でのんびりできるというのに、お袋も普通に

 

「いってらっしゃい、くるみちゃん。ハルの事頼むわね?」

なんて送り出すんだから、やってられん!

しかもなんで俺がくるみに世話される前提なんだか

 

…いやマジでふざけんなし

 

俺はそう改めて思うと大きなため息をこれみよがしについた

 

「な、なんだよ。そりゃいつもいつも悪いとは思ってるけど」

そう言って、しおらしくなるくるみ

 

「…どうせまた先輩絡みの話なんだろ?

ホント聞き飽きたんだが」

 

「…悪いとは本当に思っているんだ

けど、こういうのを相談できるのってハルしかいないし」

 

「なんでこんな子に育ったんでしょうねぇ、ホント

運動神経良いし、明るく活動的

なのに何でくるみは対人関係拗らせてんのやら」

 

「ゔっ、そんな事言われたってアタシがわかる訳ないだろ!」

 

「ダウト

わかってて解決しないくるみちゃんには今日のお昼購買のパンになりますねぇ!」

俺の言葉に息を呑むくるみ

 

「ま、待ってよ!

それは少し卑怯じゃない?」

 

「おいおい、素が出てるぞ?」

くるみは少しキャラを作って学校生活を過ごしている

何故かは知らん。幼馴染と言ってもそこまで踏み込むつもりはない

 

「ごめん!謝るからお昼の弁当食べさせてよ!」

くるみは相変わらず朝っぱらから騒がしい

 

「…まぁ構わんけど

つか、そろそろ学校だろ?

俺は裏門から行くからな」

 

「…あ」

くるみは何か言いたそうにしていたが、知らん

こっちからすれば毎日毎日迷惑なんだからな

 

 

----

 

「…あ」

ハルは足早に裏門へと向かって行った

…いつもこうだ。ハルと少しでも早く、少しでも長く一緒にいたい。そう思ってアタシは身勝手だと分かっているのにハルと朝練の時間に登校する

ハルは帰宅部でそんなに早く来る必要なんて、ないのに

 

----

 

高校に入ったばかりの頃はこうじゃなかった

確かにハルは口でこそ嫌がっていたが、それでも私との時間を楽しんでくれていた

 

 

…あの時、私があんな事を言わなければ

 

----

 

「どした?最近朝練に行くの楽しそうだな?」

 

「あ、分かる?実はカッコいい先輩がいてさ

で、私に色々とアドバイスしてくれるの。それでタイムが少しだけど良くなって」

 

「…ふーん」

あの時私は舞い上がっていて、ハルの顔を見てすらいなかった

もう少しよく考えるべきだったと今では思う。勿論手遅れなのだけど

 

ハルが私の朝練の時間に合わせて登校する必要なんてどこにもない

確かにハルは私のお昼を作ってくれるけど、それはあくまでハルの好意に過ぎない

…最近ではウチの両親がハルのお母さんに材料費と手間賃を渡しているから、ハルは断れなくなっているけど

 

なんていうか、寂しい

 

昔は確かな好意を感じた

でも今は義務で作っている様に感じてしまう

贅沢な話だし、おかしな事だと言うことも理解している

 

 

アレを言わなければ、私とハルは昔みたいな関係でいられたのかな?

 

「いやホント先輩ってカッコイイの

ハルも陸上部に入ったら?」

 

ハルが最も嫌うのが『誰かと比較される事』

いや、正確には『勝負にもならないのに比べられる事』だ

 

あの一言は私はそういう意味での発言でなかったとしても、ハルにそう聞こえたとしておかしくなかった

 

 

…それ以来ハルは私が『先輩の事を好き』と完全に決めてかかっている。

そんなつもりなんてない

 

私が誰よりも好きなのはハルなのに

何度言ってもハルは笑って流すだけ

 

 

ハルは運動が苦手で、私と違う事にかなり劣等感を抱いていると少し前におばさんから聞いた

中学の頃はそれでも何とかしようとしたらしいけど、どうにもならなかったとも

 

ヘラヘラ笑ってたアイツ。私が知らなかっただけでアイツも努力していたんだ

体育祭や体育の授業でアイツのチームの連中はいつも声に出すことはなかったが言っていた

 

『また要らない奴がいるのかよ』

…確かに勝敗を競うものである事は否定しない

でも、それもまた授業なんだ

 

アイツはある時、わざと大怪我をして体育祭を休んだ事がある

 

「いやまぁ、足手まといが居たらさ。やだろう?」

そんな目で笑うなよ

…何でアイツがそんな目にあうんだ?

 

誰だって苦手なものはある

勉強が苦手な奴がそういう扱いを受けるか?

何で運動が苦手なだけでそこまで言われなきゃならない!?

 

 

昔私はそう憤った

なのに、あの時確かに私はハルと先輩を比べてしまった

 

 

あれから一年以上経ったのに未だにハルとの関係はギクシャクしたまま

 

…いや、それは私だけ

ハルは『もうそれで良い』と諦めてしまっている

 

 

確かに今もハルと一緒にいる時間は多い

でも、学校では一緒にいる事はない

 

私のロッカーにこっそりとハルが弁当を入れてくれるだけ

先輩に憧れがあった事は否定しない。でもそれは憧れであって、恋でも愛でもないんだ

 

私のそんな感情は全てハルに向けられているのだから

 

 

 

そして、最近ハルと親しい女子がいる。その事実が私の情緒をおかしくするんだ

 

若狭悠里

園芸部の部長で、私みたいな性格じゃなくて本当に芯のある、それでも優しさを持った人物

…認めたくはないけど、体の一部の発育においては全く勝ち目がない

 

なんで、同い年なのにこんなに違うんだろうなぁ

…一応その手の体操とかもしてるし、それなりに気を遣って食事とかもしてるんだけど、効果はあまりない

 

 

高校に入ったばかりの頃はなんだかんだ言っても私がハルに抱きついたりしても、苦笑混じりで受け入れてくれた

勿論

 

「もう少し考えてもろて」

と嗜められたけどな!

 

それでもボディタッチくらいは笑って済ませられる間柄だったんだ

今となっては、そんな事すら出来ない

 

 

ハルのご飯は食べられる

でも、そこにハルの笑顔はない

 

ハルといる時間はある

でも、ハルは私を見てくれない

 

ハルは私の話を聞いてくれる

でも、肝心なところは信じてくれない

 

 

辛いんだ

部活内ではどうも私が先輩狙いみたいな噂が流れていて、先輩は満更でもなさそうな顔をしている

 

私の気持ちを理解しているかの様に囃し立てる部活の人間が本当に煩わしい

 

私が先輩に憧れているのは間違いではない

けど、それは先輩の教え方に対するものであって、そこに色恋沙汰の感情などカケラも存在しないのだ

 

 

ハルは運動神経が悪いのもあって、基本内向的な

人間だ

元々図書館に篭るタイプの人間だった

 

そんなアイツを私はいつも連れ回していたんだ

 

 

----

 

良く不釣り合いなんて言われてたけど、私からすればどうでも良かった。周りの声なんて無責任なものなんだ

真面目に受け取るだけ損なんだから

 

別にハルが早くないのは間違いない

けど、ハルはいつだって真剣だった

 

 

それを笑う奴、「もっと真面目に走れ」なんて平気でいう奴

 

アタシはそんな奴等がどうしようもなく憎かった

 

 

 

それこそ

 

殺してやりたいほどに

 

 

アタシがハルの事を庇えば良かったのかな?

多分茶化して

 

「くるみ、あんな奴の事が好きなの?」

とかしたら顔で聞いてくるだろうけど、

 

「え、そうだけど?」

とでも答えられたなら、今とは全く違ったのかな?

 

 

----

 

そしてその時はきた

 

 

 

「ね、ねぇくるみ

何かおかしいよ?みんな」

 

うるさいが一応同じ部活の知人だ

あわせておくか

 

「な、何だよコイツらは!?」

…さぁ、どうするんだ?

 

「に、逃げよう!」

…なるほどな

今何とかしようとしている連中なんて眼中になし、か

 

「アタシは校舎に行ってくる!

先生たちがいると思うから」

我が事ながら白々しいにも程がある発言だ

 

----

 

 

アタシは教師って連中なんて信じちゃいない

ハルがクラス内で色々された時も全く役に立たなかった

 

…いや、まだそれなら許せた

事もあろうに

 

「新田も悪いんだぞ、気をつけろ」

とあの教師は皆の前で言ったんだ

 

ハルが何をした?

体育祭に向けてハルもアタシと一緒にトレーニングしていたのに

 

それでも結果が出なかった

それで負けた

 

だからアイツらはハルの物を隠したり、階段で後ろからハルを押したり

 

 

それだけの事をされてもハルは何一つ言わなかった

そして、よそのクラスから露見した

 

それを受けての教師の発言

アタシは教師を殴ろうと立ちあがろうとした

 

 

…けど

 

「別にいいから

くるみが怒っても仕方ない(・・・・)

とアタシの服の裾をハルは引っ張った

 

 

後日よそのクラスから聞いたけど、うちの担任は

 

「生徒に注意して今後改めるとの事です」

と報告したらしい

 

…おかしな話だ

少なくともアタシやアタシの知人達からの話だと、アイツらは何も言われていないみたいだったけど

 

 

そして、アイツらのやり方は更に陰湿なものへと変わった

 

「校内でやるから問題になる

じゃあ、下校中にすれば問題ない」

 

理解不能な事だった

しかし、とうのハルやハルの両親はハルの事に無頓着

ハルが傷だらけで帰ってきたとしても

 

「気をつけなさい

()だって安くはないのよ?」

耳を疑ったよ

 

傷だらけで、ところどころから血が滲んですらいたハルを見て、ハルの母親が発したのはそれだけだったのだから

 

 

そしてハルには妹がいた

でも

 

「相変わらずとろくさいわね

もっとしっかりしてくれないと私も困るんだけど?」

というだけで心配なんてしやしない

 

アタシが知る限り、ハルの傷の手当てを妹がしたところを見た事はないし、それをしているアタシを忌々しそうに見ていたのもよく覚えている

 

 

 

だから

 

アタシは別に誰がどうなろうと知った事じゃない

 

 

校舎に入ろうと昇降口に来るとすでに様子のおかしな奴等が数多くいた。悲鳴、怒号に混じって、肉を裂く様な音がする

 

…どうにも奴等は『人を襲う』のだろうとは感じた

 

(ここからじゃダメか)

アタシは入り口を変える事にした

 

 

…あと、武器もいるな

 

 

別に誰がどうなろうと関係ない

ハルさえ居てくれれば、それで

 

----

 

ハルは昔から危険察知の能力はずば抜けていた

そして人混みは何よりも嫌う

 

死ぬとは思えない

…既に放課後だから、恐らくハルは屋上にいるだろうと思う

 

 

…あの女と一緒に、だろうが

 

まぁいいさ

ハルが生きているならそれで良しとしよう

 

アタシはそう思い直すと、グラウンドの花壇にあったシャベルを片手に屋上へと向かった

 

同級生?後輩?先輩?

それがどうしたんだよ

アタシが本当に必要なのは、ハルこと新田治孝のみ

 

あとはあくまで『ハルがいる』事が前提なんだからな

 

----

 

此処から始まるは異なる世界

近い様で遠い世界

未来は不確定

 

この先に待つのは地獄か

それとも

 

 




という訳でくるみルートです(別名修羅場ルート)

ゆっくり更新していきたいと思います

湿度マシマシのIFルートりーさん見たい?

  • 見たい
  • 怖いから勘弁
  • ジェジェノサイドでなければ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。