天井裏から見る世界   作:鞍馬エル

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湿度マシマシで参りますぞー


 見えなかったもの

新田治孝はそれなりに本を読む

 

それは歴史書や文学小説、思想や宗教などの国や人のある意味では根幹ともなり得るものや趣向を変えてライトノベルなどもそれなりの数読破していた

 

 

それ故に今の現状がとても

そう、とても面倒くさい事になっている事にもキチンと気が付いた訳だ

 

 

 

まぁだからといって、基本的に話をする対象の少ない治孝

元々数少ない話し相手。そのツートップともいえる2人がよりにもよって仲の悪い事に戸惑いを隠せなかった訳ではあるのだが

 

この男自己評価が低過ぎる為に相手の好意こそ認識してはいるが、親愛ではなく友愛としか捉えられない哀しき者であった訳である

 

 

とは言っても

 

「仲が悪いんだ

ふーん、そうなのか」

と割り切れる程に薄情でもない

 

彼の中の好感度一位と二位

それがくるみと悠里。割と人間関係にドライな部分のある治孝と言えども流石にこの2人にまで冷たくしようとは思わないし思えない

 

 

新田治孝という人物にとって恵飛須沢胡桃は想いを捨ててなお、彼の人生の大半を占めていたのだから

そして、その残りの部分に強烈な印象を与えたのが若狭悠里

 

 

新田治孝の思考と行動の約8割はこの2人に占められていると言っても過言ではない

 

 

くるみが悠里を敵視し、警戒するのも無理はない

くるみは長い時間をかけて治孝の大半を手に入れたと言うのに、悠里は高校で出会ってからの僅か数年で己の立場を脅かすに至ったのだから

 

勿論、くるみによる盛大な自爆(勘違いを生む言動)も原因ではあるのだが、くるみからすれば到底容認できるものでもない

治孝の心理的な壁を打ち壊したのが彼女ならば、彼の心理的抵抗を増やしたのもまたくるみだった

 

 

よく言えば、献身的な幼馴染

悪く言えば、幼馴染を拘束し続ける女

 

 

----

 

くるみは終ぞ知る事はなかったが、治孝の家族から見た彼女の評価はそれぞれ異なっていた

 

両親は息子と仲の良い幼馴染

治孝の妹はそうでなかった

 

兄を誑かす忌々しい女

というものだった

 

 

治孝の妹新田陽美(はるみ)は兄治孝を毛嫌いしている

治孝や治孝と陽美の両親ですら(・・・)そう思っていた

 

だが違う

彼女が毛嫌いしているのはいつもいつも兄に纏わりつく女(恵飛須沢胡桃)とくるみにいいようにされている情けない兄だった

 

 

間違えてはならないのは彼女は兄である治孝の事が嫌いなのではない

実の家族であり、唯一無二の兄妹である自分を蔑ろにしている

…いや、そうさせられてしまっている兄が嫌いだったのだ

 

 

くるみにとって、治孝の妹という1番身近な異性である陽美は警戒するべき存在だった

くるみが意識した訳ではないが、くるみの無意識の内に妹陽美と治孝が一緒にいる時間を減らしてしまい、それが陽美からすれば

 

兄を奪った嫌な女

という印象を植え付ける事となる

 

 

陽美からすれば別に付き合ってもいないただの幼馴染が兄とさも当然の様な顔をして共にいる事は耐えられなかったのだ

 

治孝の趣味である読書とて、元は幼い陽美が兄へと

 

「なんで?」

 

「どうして?」

と様々な事に疑問を投げかけたからこそのものである

 

幼い頃の陽美にとって兄治孝は『自分の知らない事や知りたい事を何でも知っている頼れるお兄ちゃん』だったのだ

 

 

陽美もまた巡ヶ丘高校に通っており、治孝やくるみ達の後輩にあたる

 

 

…仮に兄の事を毛嫌いしているのであれば、態々同じ高校に進学する事は中々考えにくい

陽美はいつまでも兄に付き纏うくるみにうんざりしながらも、少しずつでこそあるがその想いを認め始めていた

故にこそ学内でどの様な事になっているか気になっていたのである

 

 

 

…ところが、である

ある意味ではくるみに少しずつ歩み寄ろうとしていた陽美を待っていたのは

 

くるみが同じ部活の先輩の事を好き

というとんでもない爆弾だった

 

 

曲がりなりにも小さな時からのくるみをそれこそ嫌と言うほどに知っている陽美は嘘ではないかと思い、それとなく兄に聞いてみた

 

だが返ってきたのは彼女の望む答えではなく、絶望と失意や困惑などの負の感情に溢れた兄の言葉

 

 

 

故に陽美は決意したのだ

あんな女(くるみ)に兄を託そうとした自分が馬鹿だったのだ

兄はいつまでもあんな女と一緒にあるべきではない

 

 

にも関わらず、未だにくるみの昼ご飯の弁当や部活の練習の為の登下校にすら付き合う兄

ならばと思い、兄に近しい異性の存在を彼女は求めた

 

 

そして其処に出てきたのが若狭悠里だったのである

 

兄の理想の女性像はあの女

だが、全く違うタイプでありながら、恐らくあの女と同じくらい歪んでいる(・・・・・)悠里ならば或いは負の鎖を断ち切れるのではないか?と

 

 

故に彼女は兄に良く思われていない事を理解しながらも、それとなく悠里の所属している園芸部の話題を口にしたり、その園芸部が既に廃部寸前である事などを話した

少しでも縁がある相手の窮状を兄が放って置けるわけがない

 

その確信の元に

 

 

----

 

両親

特に治孝と陽美の母親は治孝がくるみの為に作った弁当の対価を向こうの家から貰った事で、多少なりとも夫に知られる事ないお金を手に入れていた

 

どうにも母と父の関係が思わしくない様にも思えてならなかったが、父は小中学時代のくるみと兄の関係の延長線上のものと思いさして問題視していなかった。

母は小銭とはいえ自分のお金を稼ぐ手段となっているくるみを好ましく、いや好都合と思っておりそれとなく高い材料を兄が作る弁当に入れようとしていた。当然兄とあの女の関係について懐疑的である筈もない

 

 

 

無能な味方は有能な敵よりも始末に負えない

陽美はその言葉が正しい事を痛感させられた訳である

 

----

 

そんな陽美にも当然だが友人がいた

 

直樹美紀と祠堂圭

 

 

彼女は事あるごとに2人にくるみの名前を出して愚痴っていた

 

 

 

 

陽美自身は既に混乱の中死亡していたが、彼女の遺した負の遺産とでもいうもの

それがこれからの生活に大きな

 

大き過ぎる影を落とす事になる事をまだ誰も知らない

 




という訳で実は兄の事が嫌いなのではなく、兄を歪ませたくるみと歪んでしまった兄が嫌いだったという妹ちゃんの話でした


さて、くるみの味方はいるのかなぁ(ど畜生)

しっかりくるみにはないてもらいましょう(なくの変換は御自由に)


ゾンビよりも人間の方が遥かに恐ろしく、悍ましいという話

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