天井裏から見る世界   作:鞍馬エル

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いつも通り温度差が酷いけどまぁヨシ!




 交差する思い

わ、若狭さんと恵飛須沢さんの間の空気がとても悪い

 

先程までは上機嫌だった若狭さんは屋上に避難してきた恵飛須沢さんを見るなりあからさまに表情を歪ませました

丈槍さんが間を取り持とうとしますが

 

「人の大切な異性(ひと)に手を出す奴と、ねぇ?」

 

「あら?おかしいわね

私が聞いた話ではその大切な人を1番傷つけたのは貴女だと思っていたのだけど、違ったのかしら?」

新田君が2人から武器を取り上げてなければ、それこそこの瞬間にも殺し合いが始まったとしてもおかしくない剣呑な雰囲気

 

「アタシは何度も言ってる!

アタシの好きなのは先輩なんかじゃなくて」

 

「だとしても、よ

それを信じられない状況にしたのは貴女に原因があると思わないかしら?

私もハルくんと親しいと思うけど、彼はそこまで物事を曲解して受け取るの?しかも1番信用していた(・・・・)貴女の言葉をね」

 

新田君が食料確保の為に購買に向かった事がきっかけとなり、完全に2人は険悪な雰囲気で話をしている

…話が出来ているのは不幸中の幸いと言えるのかもしれない。でもこの様な極限状態での不和は明らかに危険だと思う

…でも

 

「なんだよ、さっきから

アタシとハルの問題でアンタには関係ないだろ!?」

 

「関係はあるわよ

私、新田君が好きだもの」

 

 

…え?

 

「は?」

 

「うぇ?」

 

いきなりの若狭さんの発言に私達は間の抜けた言葉しか口から出なかった

 

 

「好きな人をずうっと拘束されているのを見て、不快にならない事があるのかしら?

仮にあったとしても、私はそうはならないしなりたくもないわね」

 

「ハ、ハルが好き、だって」

 

「おかしいかしら?

貴女が彼をあそこまで束縛していなければ、とっくの前に私は彼に想いを告げていたわ

もし、それで断られたとしても諦めるつもりなんてない

自分をもっと磨き上げていつか彼に私を見てもらうの

曖昧な状況で安堵している貴女には理解出来ないかも知れないけど」

 

「ハルと付き合いたいのかよ」

恵飛須沢さんの言葉に

 

「ええ、そうよ

貴女にわかるかしら?

園芸部は職員会議で毎年の様に廃部が議論されていたわ。…そうですよね?佐倉先生」

 

「え、ええ」

突然話を振られてしまい、動揺しながら答える

 

「だからなんだって」

 

「先輩から受け継いだ園芸部

でも勧誘しようにも運動部や他の文化部に比べると結果を出しづらい。それでもと必死に活動していた私の拙い勧誘に少し戸惑いながらも応じてくれた彼の存在がどれだけ救いになったのか

分かるはずもないわよね?貴女は彼を拘束しておいて、自分は何一つ罪悪感を抱く事なくしたい事をしていたのでしょう?」

 

「ち、ちがっ」

恵飛須沢さんは否定しようとするが

 

「…そうかしら?

私からすればそうとしか見えなかったのだけど

私は花壇とかに水をやったりしないといけないから、結構早く登校するのだけどいつも彼は私が登校する時には居たわ

貴女は部活があったでしょうけど、彼は暇な時間を過ごさねばならなかった。彼が良く行く図書室も早朝は開いてないわ

私と出会ってからはいつもの様に手伝ってくれて助かっているけども」

若狭さんは目を伏せる

 

「おかしいと思わないのかしら?

部活をしてない生徒が早朝から学内にいる。それが周囲の者達からどの様に見えるのか?

本当に貴女はそれすら分からなかったの?」

そう話すと私に若狭さんは視線を向け

 

「佐倉先生

私は彼から一度だけ愚痴を聞いた事があります

『教員から詰問された』と

これは事実ですか?」

 

「そ、それは」

私は思わず口籠る

事実だからだ

 

あの時期校内で物の紛失が頻繁に起きており、当然だが学校側は神経を尖らせていた

…特に新田君は『人付き合いもそこまでなく、どちらかと言えば孤立していた』事と『用事もないのに早朝から放課後下校最終時間ギリギリまで学内にいた』事から職員会議でもかなり疑われていた

 

何せ彼の人物像を知るのは彼と親しいと噂があった恵飛須沢さんくらいだったのだから

妹さんもいたが

 

「身内の証言などあてにすべきではない」

との意見からそれは除外されていたのだ

 

一部の教師達は新田君に話を聞くべきだと主張していたと記憶している。学事主任や教頭先生に校長先生達からの反対もあってその様な事はないと思いたいけど

 

「…やっぱりそうだったんですね」

若狭さんは心底落胆した様に顔をまた伏せた

 

「な、なんだよそれ

アタシはそんな話聞いてない!」

 

「当たり前でしょ

他ならぬ貴女の誘いで一緒に登下校しているのに、それが原因で疑われたなんて言えると思うのかしら」

 

「っ!」

…止めるべきなのだろうけど、止められない

 

 

何せ新田君に疑惑の目が注がれた大きな理由として

 

恵飛須沢さんのロッカーに彼が物を入れている事があったのだから

 

 

本人は全く気にしていないみたいだったし、新田君も人目を気にしていたみたいだったそうだ

…だからこそ疑いの目を向けられたとも言えてしまうのだが

 

 

高校入学して暫くの間は彼女と新田君は一緒に行動していたという話もあったそうだ

だが、ある時期を境にそれはなくなったとも

 

 

 

因みに紛失、いや盗難騒ぎの犯人は既に捕まっており退学処分を受けている

まさか独断で彼に詰問していたなどという事はないと思っていた為に謝罪する事もないと思っていたのだけど

 

 

「少し考えればわかる事よね?

用事のない人間が学内に長い時間いる。それがどれだけ周囲から奇異の視線を向けられるか、なんて

それでハルくんの事を貴女は大切にしていると

彼の事を想っていると本気で言えるのかしら?」

 

「だ、だけど

ハルはアタシに優しくて

アタシもハルが一緒にいてくれる事が本当に嬉しかったんだ」

恵飛須沢さんは泣きそうになりながら口にする

 

「なら何故貴女はハルくんの事を好きと素直に伝えないの?」

 

「アタシだって何度も言ったさ!

…でもハルは全然本気にしてくれなくて、それでアタシは悲しくなって、どうすれば良いのかわかんないよぉ」

 

「…」

恵飛須沢さんは遂に泣き出してしまいました

それでも若狭さんの彼女を見る目には冷ややかなものしか感じられません

 

「くるみちゃん」

丈槍さんも戸惑っている

 

「…若狭さん」

 

「私は謝るつもりなんてありませんよ?佐倉先生

ハルくんは口に出す事こそないと思いますけど、それこそ口に出した時には彼女との関係を終わらせる時だと思うので」

 

 

そうかも知れない

でも、流石にこのまま一緒に生活するとなると

 

「私は今、本心から話をしました

別に彼女の事は嫌いですけど、だからと言ってやたらむやみに場を弁えない事はしません。私も死にたくはないので」

 

「そう、ですか」

彼女は先程までの熱の入った態度と一変して、冷静に私と話している

 

 

 

時間をかけるしかないのだろうか?

私はこれからの事を考えながら憂鬱な気分になった

 

 

 

----

 

な、なんなんだ。いったい

 

私は今女子トイレの個室の中に避難している

学校から帰ろうと玄関口まで降りたところで、いきなり外から悲鳴がして

ほんの僅かな間に様子のおかしい連中が増えて、それで

 

 

思わず逃げ場がないのに上に逃げてしまい、こうして女子トイレの個室に逃げ込んだ

 

でも明らかに失敗だったのだろう

 

 

何せ外の様子が分からないから、音だけが頼り

でも何も持っていないから襲われたとしても何も出来ずに終わるだけ

 

携帯があるにはあるが、意味を為さないだろう

それに充電が切れてしまえば、ただのお荷物

 

 

…それに

 

ズルズル

 

「ひっ!」

頻繁に何かを引き摺る音(・・・・・・・・)が私の冷静な思考と判断を奪う

 

 

 

----

 

 

少し前には

 

「ねぇ!誰かいるんでしょ?

開けてよ!ねぇ!!」

ガチャガチャ

 

(お願いだから騒がないで

隣が空いてるんだからそこに入ってよ)

薄情かも知れないがその時の私はそう思った

 

というよりも個室トイレに2人も入ってしまえば身動きすら満足に出来ないだろうし、それこそ迂闊に物音を立ててしまうだろう事は容易に想像できる

 

だが、そんな事はどうやらお構いなしらしかった

 

 

 

しかし、外で騒いでいる人物は良く考えるべきだった

騒ぐ事で

 

ナニを引き寄せるのか?ということに

 

 

ズルズル

ズルズル

 

「ひっ!

な、何よ。こっちに来ないでよ!

助けて、ねぇ誰か

そして思い出したくもない湿度のある物音がすると、外は静かになり

 

何かを引き摺る音が一つ増えた

 

 

 

----

 

だが、私にも分かっている

確かに用はたせるかも知れないが

 

水は本当に追い詰められたら飲まなければならないだろうが、心理的抵抗はどうにもならない

食料など、慌てて逃げてきた為に鞄すら何処かに落としてしまったせいで何も無い

 

 

 

 

このまま此処にいた場合訪れるのは緩やかな、そして確実な死

 

でも私は決断出来ない

外で何が起きたか想像出来るのだから

 

----

 

 

そんな葛藤をしている私の耳に

 

「憂さ晴らしには丁度良い、か

くるみも若狭さんもいい加減にして欲しいな」

 

ドスッ

 

バキッ

 

「動きが緩慢なら問題にならんな

殺したところで痛む良心などありもしないしな」

 

物騒な音と独り言が静かな校舎内に少し響く

 

(え、この声って

もしかして新田なの?)

 

同じクラスの新田治孝

 

 

普段は何を喋るわけでもなく、図書室にいる事が多いと聞いている

クラス内では孤立しているけど、私はさして気にする事なく偶に話しかけている

 

 

でもこんなにヤバい奴だったとは思わなかった

 

 

 

けど、今となってはその危険さは頼りになる事と同義でもある

勿論断られる可能性もあるけど、このまま居ても待つのは緩慢な死のみだろう

 

なら

 

 

 

----

 

「に、新田だよね」

 

「…ああ、誰だっけか?

見覚えはあるんだが」

私が恐る恐るトイレから出て来て後ろから話しかけると新田は心底面倒くさそうに振り返ってこう言った

 

柚村(ゆずむら)だよ

柚村貴依(ゆずむらたかえ)

 

「そうだったか?

んで、正気か?それとも」

そう言うなり、新田は私に向かって先端が赤く染まった(・・・・・・・・・)木刀を突きつけた

 

「いやいやいや

普通に会話してるでしょ!?正気だって」

 

「……そうか」

私の言葉に新田は木刀を下げたんだけど

 

(なんでそんなに残念そうなの、コイツ!?)

余りの豹変ぶりに驚く

 

「何を驚く事があるのやら

人は誰しも仮面(表の顔)を被って生活してるものだろうに」

それは分かるけど

 

「限度があるんじゃない?」

我がごとながら呑気なものだと思うけど、極限状態にあった私からすればそれこそ新田が白馬の王子様に見えていても不思議ではない

 

まぁ私は幸いと言うか、不幸というかそういう事はなかった訳だが

 

ただ、日常の残滓が新田との会話で思い出されたのは事実だった

 

 

だから

 

「っ!」

安堵の涙が出てくるのを止める事が出来なかった

 

 

「…」

新田は微妙な顔をしながらも、そんな私の頭を抱きしめてくれた

 

 

----

 

「あはは、悪かったよね?」

1分くらい経ってから私は新田から離れて苦笑いしながら謝罪した

言うまでもなく顔は真っ赤になっている事だろう

 

仕方ない事(必要経費)だろうよ

情緒不安定な人間をこれ以上増やしたとなるとコミュニティが崩壊しかねない」

 

「!

他に生きている人がいるの!?」

 

「(無言で自分を指差す)」

 

「…あ」

私は別の意味で真っ赤になった

 

 

 

----

 

「…んで、いつまで柚村の自爆芸に付き合わなきゃならんのだ?」

 

「いやホントごめんって」

若干、いやかなり不満そうな新田に謝りながら私は新田の隣を歩く

 

「で、どうするの?」

 

「現在生存者は俺を含めて5人。柚村を含めれば6人になるな

だが、男女の比率は歪極まりないから困りものだな」

 

「って事は」

 

「お察しの通り、男が俺1人に対して残り全員女性ときた

…肩身が狭いったらないんだがなぁ」

新田はかなり不満らしい

 

「正直なところとして、柚村がいたのは助かった

何せどうしても女物も用意せにゃならん。が、俺にはその手の知識はないからなぁ」

 

「あった方がおかしいと思うけどね」

 

「違いない」

話をしながらも新田は持っている木刀や何処から調達したのか分からないバールを使って死体の山を築き上げて行く

 

正直怖いし、吐きたくなる

…けど新田の目は言っているのだ

 

 

足手まといになるなら置いていくと」

 

 

----

 

購買に着いた私と新田

新田は私に

 

「とりあえず量の多いだろう女物や食料を頼むわ

俺の服関係は2、3着有れば良いから」

 

「…分かった。なるべく急ぐよ」

 

「『慌てず、急いで、正確にな』」

何処かで聞いたような事を言う新田

 

「はいはい」

私は脱力しながら購買の中を調べた

 

 

----

 

「…あー、これ確かに男子の新田にはかなりキツい場所かも知れない」

成程学校の購買だけあって、品揃えも豊富

そして何より

 

「女子生徒用の制服や体操服に水着

はまだ分かるんだけど、下着まで何で売ってるんだろう?」

いやまぁ理由は何となく察しがつくし、必要なのも分かる

 

が、それを下手をすれば男子生徒(異性)に見られかねない購買に置いておく神経は貴依にも理解出来なかった

加えて

 

「電気ケトルとか携帯用の充電器

これ本当に学校の購買に必要なの?」

規模こそ小さいし、品数も一つ当たりの在庫数も大した事はないが学校の購買としてはそれこそ破格ではないか?

と思わせる様な商品のラインナップだった

 

 

そして彼女は見つける

 

購買の1番奥

まるで人目についてはならない様にして置かれていたダンボールの数々に

 

 

----

 

「お、戻ったか?」

治孝は貴依に声をかけるが

 

「…ねぇ、こんなのがあったんだけど」

彼女は先程までのリラックスした様な声と打って変わった様な緊張を含んだ声を治孝に向けた

 

「…どうやら穏やかではなさそうだな」

治孝もそんな彼女の様子を見てただ事ではないと察する

 

 

 

そして少女と少年は見てしまう

 

人の

大人の

汚らしさを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




購買にもある程度の備え(・・)があってもおかしくないよね?

購買の扉は治孝がバールにて打ち壊したので今後は完全に出入り自由です



…ところで話は変わりますが、最近のゲームって
一度で戦闘が終わらない事ありますよね?

湿度マシマシのIFルートりーさん見たい?

  • 見たい
  • 怖いから勘弁
  • ジェジェノサイドでなければ
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