そんな訳ないでしょう
「『緊急用物資』ねぇ」
「この状況で放出する事なくそのままって事は」
私の言葉に
「使うべき奴が死んだか
或いは指揮系統が完全に喪失してるか。だろうな」
「職員室は?」
「…さて分からん
が、今俺達は屋上にいる訳なんだが佐倉教諭が屋上に逃れて来れたのも神山教諭の言葉あっての事らしい」
「…なんかおかしくない?それ
逃げ場がないよね?」
「逃げ場がない上に物資の貯蔵も中途半端になる可能性が高い
…となるとこの学校に救援のアテがあるか?若しくは」
「それだけの物資のアテ。しかも一般生徒が立ち入る事のない場所にあるって事よね、それ」
頭の痛くなる様な話だと思う
しかも屋上に逃げろと言ったのが神山となると
「数を絞って生存確率を上げるつもりだったのかな?」
「…普通にあり得るから困るな、そりゃ」
新田はおどけている様な態度と口調だったが、その目だけは冷たい色をしていた
ゾクッ!
思わず背筋が凍りつく様な目つき
僅かな瞬間だったから見逃しそうなものかも知れない
だが、私にとって既に
幾ら動揺したいからといって、泣いていたところを優しくされたとあっては少なからず異性として意識してしまうのは仕方ない事だろう
幼馴染の恵飛須沢と恋人同士という話も聞かないし、なんなら最近疎遠だとも聞く
誰かと付き合っているという話も聞いた事がない
(私ってこんなに安っぽい女だったっけ?)
とは思わなくもないが、なんだかんだで頼りになるし非情なところも今現在においては寧ろ必要な事だろう
まぁ、外見は決して万人受けする訳ではないだろうが、それはそれで
なんなら2人でふざけ合いながらお互いのファッションを決めるのも悪くないだろうし、自分がコーディネートした服なんかを着てもらうのも悪くないだろう
(あれ?普通に考えたら新田アリかも知れなくない?)
「…ねぇ、新田」
「どした?」
「私も武器を持った方が良いのかな?」
「知らんて
戦えるのは確かに今の状況では好ましいかも知れんけどな
なんでも暴力で解決するのは寧ろ問題を複雑化させかねない。例外はあるが、まともな神経の奴なら暴力を振るうごとに自分の心も傷付けるもんだからなぁ」
突き放した様なぶっきらぼうな言い草とは全く異なり、しっかりと私の事を考えた上での発言が返ってきた
「…慌てて考えるな
そういうこと?」
「そりゃそうよ
俺はさして気にするつもりなんてないけどさ。柚村は知り合いの成れの果てだとしても心を動かさずに
「…難しいね、それ」
「だったらやめとけ
躊躇ってたら、そこで終わるぞ?多分な」
「分かったよ。もう少し考えてみる」
「そうしとき
…ところで荷造りは終わってるよな?
そろそろ戻らんと」
「そこら辺は大丈夫
少し重くなったけどね」
「悪いとは思うが、持ってやれんよ」
新田はすまなそうにするが
「そりゃそうだろうね
大丈夫、私だってそんな事は言わないから
…んじゃ屋上まで行こうよ
私の
「こんな外面の騎士とか汚職騎士だろうに」
私の言葉に新田は苦笑しながら購買部の外へと向かった
「…なんでこんなものが購買にあるんだろうね、ホント」
私は新田の後を追いかけながら、ポケットの中に入れた小瓶の中身の事を考えながらぼやいた
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「…そういえば他の生存者って?」
「佐倉教諭は言ったよな?
あとは…丈槍とくるみと若狭さんだな」
「ゆき!生きてたんだ、良かったぁ」
新田の言葉に思わず安堵する
「知り合いか?あの天然ぽわぽわと」
「ぽわぽわって
まぁ分からなくはないけど」
新田のゆきに対するある意味的確な表現に私は苦笑する
「なんつうか、まぁ頑張れ?」
何やら不穏な事を言ってくる新田
「え、何それ?」
「…女ってのは怖いもんなんだろうなぁ
全く俺が言うのもなんだけど、状況考えてからいがみ合えば良いってのに」
そこには明らかな怒気があった
「あー、うん
出来る限りなんとかしてみるよ」
「…
…こんな極限状態で、しかもグループのまとめ役としては私から見ても疑問符が付く佐倉先生という
独りで生き残る事は出来ないだろうが、別の意味で苦労する事になりそうだと直感した
ついでに多分新田は『異性に強く言えない、けど溜め込むとヤバい奴』なんだろうと今までのやり取りから察する事が出来た
「負担かけている私がいう事では無いと思うけどさ、無理はしない方が良いと思うよ?」
「…善処するわ」
どうやら新田もなんだかんだでかなり疲労しているらしかった
そりゃそうだと思う
(助かったと思ったら、更に別の窮地に陥る、かな?
仕方ないとはいえ、なんとかなるよね?)
私は今後の事を考えながら屋上へと向かった
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「ねぇ圭」
「なに?」
私と美紀は普段通い慣れている筈の道を普段よりもはるかに時間をかけて移動していた
明らかにマトモでない人や
「…ちっ、どっか行きやがったか」
「残念だよな?せっかくのえものだったってのによ」
「お前らなぁ。頼むから少し
確保するの大変なのは分かってんだろ?」
「わりぃ。つい、な?」
「んな事言ってもよぉ?」
こういったヤバい人達も存在した
「こちとらたった3人だぞ?
拘束し続けるにも手間と人手がいる
だが、無理に増やせば面倒な事になると言うのに」
「面倒だあ?」
「そいつが信用できるか?
出来たとしても女や金、武器を目の前にして本当に理性的に動けるか?
…ああ、お前らも女についてはそこまで言えんかったな」
「うっせ」
「なんか方法ねぇのかよ?」
物騒な会話をしているのは恐らく大学生の男の人達
言葉通りならば、3人なのだろうが
1人は茶髪の少し軽い雰囲気の人
1人は金髪のガタイの良い人
そして最後の1人は眼鏡をかけた神経質そうな黒髪の人
隠れて話を聞くところ、多分黒髪の人が頭脳役なのだろう
「…あるにはあるがな
足の腱を切ってやれば良い」
ゾッとする発言をなんの躊躇いもなくその人は口にした
美紀は慌てて口を自分の手で抑えたが、かなり怖い
「…ああ?そうしたら動けなくなるだろうがよ」
「別にお前ら取っ替え引っ替えしてんだから問題ないだろ?
足手まといになるから置いていくしかない。だから後腐れないだろうよ?」
「相変わらず容赦ねぇな、お前」
金髪の人が苦笑いしている
「は?お前らがもう少し考えて動くならやりようは幾らでもあったんだがなぁ?」
「すまんすまん
お前にもキチンと女あてがうからよ」
「お前らがそんなに殊勝とは思ってねぇよ、俺は」
…絶対にこの人達に捕まったらマズい
私は美紀と頷き合うと気付かれない様にしてその場を後にした
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「健気なもんだ」
「惜しい、もう少し歳がいってたらなぁ」
「良いのかよ?」
黒髪の男は一応確認する
「まぁ、楽しめそうではあるけどよ
多分保たねえだろ?」
「俺達ハードプレイだからな!」
「…ま、構やしねぇが
一応どこの高校かも確認出来たしな」
「目ざといな」
「さっすが」
「やかましいわ」
圭と美紀は逃れられたのではなかった
見逃されただけ
「なら近くの大学に行くか?
確か聖イシドロスだったか?」
「おし、車出すわ」
「先にスタンド寄れ。ポリタンクだけでも欲しいからな」
「…こういう時は行動早いのな、お前ら」
黒髪の男は欲望の為に動く時は頭をしっかり働かせる友人達を見て苦笑するしかなかった
「巡ヶ丘ねぇ
…ま、せいぜい頑張って生き残るんだな。後輩達」
黒髪の男はそう呟いてその場を後にした
彼は巡ヶ丘高校の出身、つまり圭や美紀の先輩にあたる人物だった
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「生き残りがいたのね」
「そりゃ、まだいるだろうさ
まだ1日も経ってないんだからさ」
「…」
屋上に貴依を連れて戻った治孝は真っ先に悠里に心配され、それこそ涙ながらに抱きつかれた
治孝からすると
(…あー、まぁ精神的にキテるよな。普通)
と考えて悠里が落ち着くまで頭と背中を撫でる事となった
その側で葛藤しているのが佐倉だったが、治孝は
(どうせまだ生き残りがいるから助けたい、なんて思っているんだろうなぁ
…下手な倫理観や正義感なんていっそ捨ててしまえば楽になるだろうに。難儀な事やな)
勿論治孝はそんな事を言われたところで何をするつもりなぞない
貴依はそうではなかったが、人によっては泣き喚き、何もかも『してもらおう』とする
少なくとも、ここに居る者達は生き残る為に何かをしようとする。その意志はあるのだから
…それはそうとして、涙ながらに俯いているくるみ
(随分と久しぶりだな、コイツがこんなに泣いているのは)
なんだかんだと言っても幼馴染だ
泣く事もあったが、いつの間にかそんな事もなくなっていた様に思える
(…いや、俺がくるみに執着するのをやめたからか?)
優しいだの身近な異性だのという事はあの時に殆ど捨て去った
(結局、俺はくるみを自分の都合の良い存在としか思ってなかったんだろうよ
…とんだ間抜けもいたもんだ。そのくせ相手には自分だけを見てほしいなどと言うのだから)
くるみも想い人が出来た
ならば、自身も新しい恋に生きてみるべきなのだろうが
(…それでもくるみが俺の中心なんだから笑えねぇな)
武器を取り上げたのも、感情的になりやすいくるみが悠里を傷付けない様に
…いや違う
くるみが誰かを傷付けてしまう事でくるみもまた傷付くから、取り上げたに過ぎない
芯はぶれていないはずなのに、それがいつしかおかしな事になっている
おかしい事は自覚している
虐められていた人間がどうして虐めていた者達がいる部活へと好んで入るだろうか?
剣道をしたのも精神鍛錬などという理由では無い
部活の名目で殴る事の出来なかった者達に仕返しが出来るからに過ぎなかった
彼女の隣にいられるだけの自分になりたい
復讐などするつもりはなかった
…だが、さして効果もないままに3年を無為に過ごしたのだ
勿論、それなりのものを学んだのは事実だが、それが彼女を振り向かせられるだけのもの足り得なかったのも事実
…勉学にその分傾倒する事になったが、それはくるみにとって然程価値のないものだったらしい
くるみに見てもらいたいから努力し続けた
それがどれだけ歪んだものであったとしても
だが、それもあの日終わった
(…今更どのツラ下げてくるみを慰めるってんだ、俺は)
くるみに泣いて欲しくない
笑ってて欲しい
…でも一度距離を取ってしまった事で治孝はその事に大き過ぎる罪悪感を抱いてしまった
……それと同時に、ほんの僅かではあるが安堵もしているのを治孝は理解してしまっていたからこそ『こんな自分はくるみに相応しくない』と己を断じた
だから治孝は悠里を慰める事はあっても、くるみを慰める事は出来なかったのである
そして、この事実はよりくるみを精神的に追い詰める事となってしまう
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日常は砕かれ、あるのは悍ましい者達の跋扈する世界
その中で箱庭とも言える安全圏を得た少女達と少年
だが、その精神からは徐々に余裕は失われていく
まるで風船に空気が送り続けられるかの様に張り詰める空気
いがみ合う者達
明日への不安
昨日はの絶望と憧憬
今日を生きることの難しさ
手にするは
護るべきは
それとも
治孝は完全に精神的余裕を無くしつつある
ケアできる筈のりーさんもくるみも精神的にいっぱいいっぱい
頑張れ、めぐねえ
大人として
教師として
子供達を守る時だ
湿度マシマシのIFルートりーさん見たい?
-
見たい
-
怖いから勘弁
-
ジェジェノサイドでなければ