なお本ルートの治孝もかなり壊れていますので一応ご注意下さい(手遅れ)
(ごめん、ハル
アタシお前の事を考えてなかった
どうすれば許してくれるんだよ?)
悠里から突きつけられた残酷な現実
それにくるみは耐え切れず跪き涙を流し、呼吸は乱れ、視界はチカチカとしていた
それでも気付く
気付いてしまう
治孝がそばに来ている事を
だが、声はかからない
治孝の温もりも感じない
昔ならば
「大丈夫か?くるみ」
とか
「あーもう、泣くなよ」
と何らかのアクションはあった
それがない
(…そっか、アタシハルに嫌われたのか)
助けて欲しいと
許して欲しいと
側にいて欲しいと
みっともなくとも動く事も出来た
だが、幼い頃から一緒にいた治孝が自分から離れていくのを感じてしまい、実感してしまった彼女はどうすれば良いのかすら分からなくなったしまった
くるみにとって治孝はそばにいて当たり前の存在であるのと同時に、彼女が歩き続ける為の道標でもあったのである
(…もう、どうでも良いや)
くるみが思ったのはそんな投げやりな事だった
----
(あら?随分と打たれ弱いのね、彼女)
治孝が何も声をかけない事を理解したのか、くるみの雰囲気が明らかに悪い方向へと変わったのを悠里は見てとった
(お荷物が増えたかしら?
もう少ししっかり芯のある人だと思ったのだけど)
悠里は僅かながらにくるみに失望したが
(…まぁ良いわ。どうせ佐倉先生が何とかするでしょうし
それより今ハルくんと来た生徒と今後の話をしないとね)
悠里としてはバックアップを悠里が主体として
不本意ではあるが、拠点確保などは治孝とくるみを主体として行なうのがベストであると考えていた
別に悠里が戦えない訳ではない
ないのだが、その場合に残るのは由紀と
文字通り死活問題なのだから、『やってみてから判断する』などと言うのは余りにリスクの高すぎる行為
現状において、唯一のセーフティである屋上を失えばいつ確たる拠点が手に入るか分からないのだ
そんなリスクは流石に許容できる訳なかったのである
だが、新たなメンバーが来たとなれば新しく編成を考えられなくもないだろうと悠里は判断。それ故に貴依との話をするべく動き始める
若狭悠里
彼女はキチンと現実と向き合おうとしていたのである
----
(…ええ、これどうするのよ?)
貴依は内心ドン引きしていた
それもそうだろう
若狭悠里と新田は今後の事を考えて動いている
それに対して
恵飛須沢は何があったのか涙を流して俯いている様で、佐倉先生はそれに気を取られている
ゆきもそうだ
つまり現在自分を含めて6人もの人間がいるにも関わらず、現実的に動いているのは僅かに2人。自分と動いて3人
ようやく半分と言ったところだったのだから
「初めまして、かしら?
私は若狭悠里よ。よろしくね」
「…あ、ああ。私は柚村貴依
こちらこそ宜しく」
挨拶をしてきた若狭だが、私は妙にこの人物が恐ろしく感じてしまう
何の変哲もない唯の挨拶の筈
なのに何だろう?
このグループの中で1番敵に回してはならない人物の様に感じてしまう
悠里の噂は聞いた事がある
廃部待ったなしの園芸部に所属しており、男子からは
物静かで基本的に人当たりは良い
なのに、周囲の人間とは明らかに一線を引いていた様に貴依は思えた
学校で有名人と言われているスポーツや勉学に秀でた者達が彼女に告白したと良く噂になっていたが、誰の告白も受けなかった
その為か同性からのやっかみはことの他多く、彼女が立て直そうと躍起になっている園芸部への勧誘が上手くいっていなかったらしい
貴依からすれば馬鹿馬鹿しい話だが、別にそこまで親しくもない悠里を助けようとも思わなかったのもまた事実
「私が料理?
うーん、まぁ出来なくはないけどあんまり得意とは言えないかな?」
「そうなの?ごめんなさい
今こんな状況でしょう?何が出来たり得意だったりするか把握しておかないと…その」
「…まぁ、唯一残った大人が佐倉先生だからねぇ
言いたい事はわからなくもないよ」
どうやら若狭さんも佐倉先生については不安に思っているらしい
佐倉先生は間違いなく生徒の事を思う素晴らしい教師だとは思う
だが、生徒の事を考えすぎている為か教師である立場を偶に忘れた様な行動を取る事がある
「先生ではなく友達や先輩みたい」
と貴依は聞いた事があるが、的確な表現だろう
だからなのか、彼女の指導に従おうとしない生徒はそれなりにいる
貴依の友人である由紀も毎回補習を受けて平然としているところからそこまで問題視していないらしい
それ故に困る
この様な異常事態において、指導力や統制能力の欠如はそのグループの存亡に直結するのだから
「ハルくん、いえ新田くんもそこはかなり気にしていたわ」
「そりゃそうだよね」
若狭さんの話を聞きながら私はふと思った
(あれ?でも新田って確か恵飛須沢と若狭さんに不満があるみたいな事を言ってなかった?)
どう見ても残酷な現実に立ち向かおうとする健気な人物にしか見えないのだが
「ところで一つ良いかしら?」
「うん?どうしたのさ」
「気になっていたのだけど
なんで貴女の匂いがハルくんから仄かにするのかしら?」
え?
待って
もしかして
「えっと、若狭さんって新田と付き合っているの?」
「…質問しているのは私だと思うのだけどまぁ良いわ
付き合ってはいないわよ?」
ええ
私は何とか声に出すのを堪えたが
つまり何か?
若狭は付き合ってもいない新田の事に執着してるって事になるの?
それって下手すればスト
「…ストーカーなんてする訳ないじゃない」
ヒェッ
私の思考を読んだかの様に的確な事を言う
「顔に出ていたわよ?」
と澄まし顔で言うが、その目は笑っていない
屋上に逃げ込んだ事は後悔していないし、新田の背中を追いかけたのも間違いとは思わない
だが
(なぁ新田。アンタ本当に大丈夫なの?)
と思わず貴依は思ってしまった
なお、それから僅か1時間後には
「…(白目)」
「ありゃ、口に合わんかったか?」
料理など出来そうに見えない治孝によって乙女のプライドを粉々に打ち砕かれる模様
余談ではあるが
「ハーくんって料理うまいんだね」
「生徒よりも料理の下手な私って」
「…予想よりも手強いわね」
とそれぞれの感想を口にしている
あとくるみは
「とりあえず食えや
お残しは許さんからな」
「もがががががが」
と治孝に料理を詰め込まれていたりする
----
「んですこーし質問なんすよ佐倉センセ」
「…あの、何故私は縛られているのでしょうか?」
「や、さっき職員室に行って色々調べてみたら面白いものが見つかりましてね?
是非とも巡ヶ丘高校の教員である佐倉慈教諭に些細を伺いたい訳です。他意はありませんよ?他意はね?」
と凄絶な笑みを浮かべる治孝に無言ではあるが慈のフォローをしようともしない悠里と貴依
----
時間は少し遡る
治孝は食事の後、屋上を悠里と貴依に任せて職員室へと単身向かった
勿論危険だと止められたが
「態々
…それとも何か?誰か俺に下着を見せてくれるってなら連れて行くけど?」
「どういう事?それ」
「下着を見せる事と職員室に向かう事
私にはその関係が分からないわ、ハルくん」
治孝の奇妙な発言に戸惑う貴依と悠里
どうも奴等は頭を使うことはないらしい
なんで上を使おうと思ってな?
「「上?」」
「そ、天井裏から職員室に向かうって事」
「…でも危なくない?もう夜だよ」
「そうね
いつ校内の電気が落ちるか分からない以上、危険ではないかしら」
貴依と悠里は危険である事を理由に思いとどまらせようとする
「実は気になる事があってな
その確認も兼ねて行きたいんだ」
「気になる事って?」
「何かあったのかしら?」
なおこの会話をくるみはぼーっと聴いている、様にも見える
そのくるみの側に慈と由紀はいた
「柚村を助けた時間って何時ごろか覚えてるか?」
「えっと18時過ぎじゃなかったっけ?」
「うちの学校の最終下校時刻は?」
「18時半ね」
治孝の質問に貴依と悠里は答える
「んで、俺らが購買に着いたのが18時20分くらい
出た時には半を少し過ぎてたな
…で、柚村。アイツらって居たか?」
「…殆ど居なかったよね、確か」
「どういう事なのかしら?」
「今俺の中に一つの仮説がある
それを確認するには職員室に行くのが1番だ」
「何かあったっけ?」
「あっただろう?監視モニターが、さ
ねぇ佐倉先生?」
「え!?
…ええありましたけど」
治孝の予期せぬ問いかけに驚きながらも答える慈
----
近年学校へも不審者が侵入する事件が多発している事を受けて、巡ヶ丘高校でも試験的に監視モニターの導入が決定されていた
…と言っても昇降口と正門のみであったが
治孝は基本的に周囲を気にしながら過ごしていた
そこでそれらを見つけたのである
まさか学校が関わっていないだろうと思っていたし、実際職員室に行った時さりげなく視線を巡らせる事である程度掴んでいた
治孝の様なものにとって周囲を注意深く観察するのは日常生活の一部であり、それをしなければ寧ろ落ち着かないまであった
そんな治孝だからこそ、生徒が気がつく事のあまりない事にも気が付いたと言えるだろう
----
「外を見るという事かしら?」
「それもあるな」
「て事は別の理由もあるんだね」
治孝の話に悠里と貴依は興味を持つ
ある意味では当然だろう
現在、屋上における人間関係はそれこそ『複雑骨折している』と言っても過言ではない
治孝に嫌われて絶望の中にいるくるみ
そんなくるみを内心で侮蔑しながら、治孝の心を欲する悠里
この危ういバランスが治孝の存在により何とか保たれている事を嫌でも理解した貴依
単純に頼りになると思っている由紀
自身の大人としての立場が無くなりつつある事に不安を覚えながらも、
何よりも果断とも思える行動力と苛烈とも言える制圧力を併せ持つ治孝は現在の彼女達にとって必要不可欠な存在となっていたのだから
であればこそ、そんな治孝に下手なリスクを負わせたくない
それは治孝に対する感情の違いこそあれど、悠里と貴依が共通する思いであったといえるだろう
「校外の様子が見たいのが1つ
学内に生存者がいるのか?が2つ、だな
とりあえずは」
「本当に大丈夫なのね?」
「流石に「行ってらっしゃい」と言える程私は薄情にも非情にもなれないよ
新田は私の命の恩人なんだしさ」
悠里は再度確認し、貴依はそれでもと心配する
「心配しないでもろて
なに、他人の隙をうかがうのは得意だからさ」
そう笑って治孝は階下へと降りて行った
----
そして治孝が職員室で見つけたのが『職員用緊急避難マニュアル』だった
勿論治孝はその物騒極まるものを見過ごす訳もなく、開いてみた
それが大人の悪意とエゴの詰まったもの
が、治孝は
「…ま、こんなもんだよな」
と興味なさげに呟くだけ
元より人の善意や好意を既に治孝は素直に受け止める事すら出来ないほどに彼は人として壊れていた
中学に進学して部活動に誘われた時
入った彼を待ち受けていたのは『
「ま、そんなもんか」
彼は既に誰かを頼る事も泣き言を言う事すら疲れていた
彼にとっての支えは
しかし、彼女の平穏な生活を乱すつもりは治孝にはなく、部活との名目で彼女と下校する事は殆どしなかった
ヒトというものは面白いもので『誰かが見ている』『自分だけが見ている訳ではない』と理解すると、途端に善性を発揮するものなのだろうと当時の治孝は冷ややかな目で周囲を見つめていた
稽古は真っ当だった
当然だろう。上級生や別の部活動をしている者達
なによりも顧問の目があったのだから
…だが、部活動前つまり顧問がまだそこにいない時の治孝への扱いは中々に愉快なものだった
----
委員会などで遅刻すれば、治孝の場合
彼等と仲の良い柔道部員の協力の元、治孝を柔道部の所へ連れて行き面白半分に技をかける
畳で面白半分に治孝を下にひいた上で押しつぶすなど
それらを他の部活動をしていた者達がどの様な目で見ていたのか?
それは分からない
だが、一つだけ確かな事がある
それらの行為は治孝が二年生の時から行われていた。勿論見ていた者もそれなりの数になろう
しかしながら
終ぞそれが問題として上がる事はなかったのだ
偶に心配して声をかけてくる者達はいた
だが既に何処か壊れていた治孝は『何がおかしくて何が正常なのか』すらあやふやな状態になっていた
勿論、治孝と親しいくるみや妹である陽美は異常に気が付いていたが、その手の者達は『隠し事をするのはとてもうまい』
更に言えば、それを傍観していた者達とて仮にそれが明らかになれば自分達が今まで傍観していた事すら明るみになりかねない
二年生や三年生ともなれば、嫌でも進路の事を気にせねばならなくなる時期だ
そんな時期に自分にとって明らかにマイナスの評価が下る事を出来る者が果たして居ただろうか?
少なくとも治孝の周囲にはそんな奇矯な者はいなかった
----
故に治孝は他者に対して期待する事を無意識のうちに避ける様になっていった
悠里の場合は治孝に対して真剣に、誠実に向き合い続けた事と治孝自身がくるみと距離を置く事により精神的にかなりキツかった事もあって
そして治孝が何よりも嫌うのが
『綺麗事ばかり言う者達』
屋上にいるメンバーの場合、佐倉慈が治孝の中では該当していた
勿論高校の教員の殆どがそれに当たるのだが
故にこそ失望もしないし、絶望もしない
元々失望や絶望する程彼等に期待などしていなかったのだから
----
とはいえ、である
この様なものが職員室にあったという事は教員の中にこの様な事態を想定している者。ないしはその可能性を示唆されていた者がいる可能性は決して低くない
なので
「…あの
質問にはキチンと答えますし、誤魔化すつもりもないのでこの縄を解いて貰えませんか?」
なお、流石に女性である慈を自身が拘束するのは憚られたので困っていると
「どうしたのかしら、ハルくん
何か手伝える事があるならなんでもするわよ?」
と悠里から言われたので、かいつまんで説明すると
「…流石にそれは放置出来ないわね
分かったわ。柚村さんと2人でなんとかするわ」
と快諾されている
「…それはそれでどうかと思うが」
と言い出した筈の治孝ですら驚くばかりの判断の速さであった
貴依は最初戸惑っていたが
「あー、うん
それなら仕方ないかもね」
と渋々ながらに協力する事を約束した
…というのも
件のマニュアルの序文にこうあった
日常の自由は非日常の贅沢であり、常識は障害となる
非常時において多くの人命を救う為には少数の犠牲はやむを得ず、寛容といたわりの精神は美徳とならない事を心せよと
そして屋上の状況を照らし合わせると悍ましい学校側、いやこのマニュアルを制作した組織の思惑が見えてくるのだ
大多数の生徒を切り捨てて僅かな者だけが生き残るという悍ましいにも程があるものが
故に貴依も可能性がある以上、これを放置すべきではないと考えたのだ
一応由紀にはくるみと共に屋上にある建屋の中でくるみの介助を頼んでいた
それぐらいの配慮はしていたが
という訳で次回はめぐねえ尋問回となる予定です
今回めぐねえにはキチンと『大人らしく、教師らしく』あってもらうつもりです
(責任から)逃さねぇよ?
なので空気になる事は多分ないでしょう
そのかわりどれだけ傷つこうが、泣き喚こうが明日の為に働いてもらう事になるでしょうが
因みにどちらかと言うとくるみが現在要介護対象になっております
がっこうぐらし!名物(?)ゆきセラピーで回復するのを待ちましょう
…まぁ、気がついた時には幼馴染が悠里に取られている可能性もあったりするのですが
湿度マシマシのIFルートりーさん見たい?
-
見たい
-
怖いから勘弁
-
ジェジェノサイドでなければ