乃木若葉を庇って死んだら東郷美森に転生していた件   作:てんぱまん

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【第四話】新入部員勧誘の件

 

昼休み

 

「そういえば今日から仮入部が始まる日だよね?」

 

「そうね、友奈ちゃん。新しい部員が入るといいわね。」

 

「うん!いっぱい来てくれると嬉しいな!......。...それでさ...それはそれでいいんだけど...そのちゃんのそのおっきなたんこぶ、どうしたの...?」

 

友奈は園子の頭の上に出来ている立派なこぶを見てそう言う。

 

「あ、あはは~...気にしなくていいんよ~。全然大丈夫だから~。」

 

「ちょっとお仕置きしただけよ。そのっち、いけないことをしたから。」

 

千景は優しい口調で言いながらも、鋭い目つきで園子を睨みつけている。

 

「いけないこと...?そのちゃん一体何したの...。」

 

「はは~...本当に大丈夫だから~。」

 

「ついに東郷も拳が出たのね...。今までは吊しで許してたけどここまでのこぶを作るって...。一体どれくらいの力でやったら...」

 

「もうこの話は終わりにしましょう?ね、夏凜ちゃん、友奈ちゃん?」

 

『うっ...!は、はいっ...!』

 

これ以上触れては自分たちの身も危ない...本能的にそう感じた二人はそれから黙って固まった。

 

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放課後

 

「園子さん!?その頭のたんこぶ、どうしたんですか!?どこかにぶつけたとか......」

 

「いやいや、別に大丈夫なんよ~。気にしないで~。」

 

「気にしないでと言われましても...。...!......ひいっ!?」

 

その時、樹は園子の後ろに立っている東郷に気づいた。これまでに感じたことのないほどのオーラを纏っている。...間違いなく彼女は、怒っている。

 

「あ、はは...わ、わかりました~。お大事に~...。」

 

なんとなく察した樹は、冷や汗をかきながら園子にそう告げた。そして、もうその話を勇者部員は誰一人として掘り返すことはなく、部活が始まった。

 

「んで、今日は勇者部が普段どんな活動をしているか説明すればいいのよね?」

 

「はい。部活を見学しに来た一年生たちに、詳しく丁寧に教えます。」

 

「初日はやっぱりそうしないとね!よーし、私に任せて!勇者部についての情熱は一番!説明くらいお茶の子さいさいだよ~!」

 

「友奈に任せておけないわ...。」

 

「ええっ!?なんでよ夏凜ちゃん!」

 

「あんたの擬音だらけの説明で伝わるわけないでしょ!?確かに情熱は伝わるかもしれないけど、内容については全く!」

 

「そんな~...。」

 

友奈は肩をがっくし落とし、イスに座る。

 

「落ち込む必要はないわ、友奈ちゃん。......夏凜ちゃんは、あなたの『情熱を伝えられる』ってところは認めてあげてくれてるんだから。」

 

「ここはやっぱりいっつんに任せた方がいいと思いま~す!」

 

「園子に同感だわ。」

 

「任せてください!...私、この日のために徹夜で考えてきましたから!」

 

「どうりで樹の目の下が目立って黒いと思ったわけだわ...。」

 

そんなことを話していると...

 

「失礼します!」

 

ひとりの少女が、部室に入ってきた。この日は新入生が部室に入って来やすいように扉を開けたままにしておいた。彼女は緑がかった髪色で、髪の長さは肩くらいまである。そして異様に目をキラキラさせている。なんとも新入生らしい。これからの中学校生活がとても楽しみだという気持ちが伝わってくる。彼女はハキハキとしたデカい声で続けて言った。

 

「ここが、勇者部の部室に間違いないでしょうか?」

 

「は、はい...!そうです...!」

 

自分よりも年下なのに敬語になってしまう樹。初めての後輩に緊張しているようだ。

樹の言葉を聞いた彼女は、パアっと目をときめかせ、花が咲いたかのように笑顔になる。

 

「こ、ここが勇者部の部室...!実は私、小学生のころからこちらの部活に入りたいなと思っておりまして!活動内容に関して、大変憧れておりました。それはもう、多種多様な分野までご活躍されて!先輩方のホームページを見てはそれはそれは仲良しで、楽しそうな部活で...。早く中学に入学できないかなと心待ちにしておりましたっ!!」

 

勇者部への憧れが止まらない彼女の話は止まりそうにない。

 

「ちょ、ちょっと落ち着いて!」

 

夏凜が彼女をなだめ、落ち着かせようとする。が...

 

「あっ!あなたは...三好夏凜さんですね!?いやぁ、あの節はお世話になりました!飼い猫の白次郎を見つけてくれて!」

 

「えっ...?............ああっ!あの時の!?!?」

 

「はいっ!思い出していただけましたか!?」

 

「え、なになに~?にぼっしーの知り合い~?」

 

「いや...いつだかの依頼で迷い猫を探して欲しいって内容で...。整った白い毛が特徴の猫を、届けたうちにいたのが...いや、受け取ったのが...確かこの子!」

 

「そうです!そうです!...いや、それ以前から勇者部のみなさまのご活躍は知っていたのですがね...それからはもうどっぷりですよ!やっぱり勇者部の人たちってかっこいいな~って!もうなんでもできちゃうんじゃないかなあっと...」

 

「あはは、こりゃ止まらないね~。」

 

「東郷、何とかしなさいよ。」

 

「えっ...私!?」

 

「わっしー、こういうときはね......」

 

園子は千景に耳打ちする。

 

「本当に?今度こそ大丈夫でしょうね...!」

 

「今度は嘘じゃない!」

 

園子の言葉を信じ、東郷はヌッと前に出る。そして笑顔でたったの一言。

 

「ごめんね、それくらにしてもらえると...。」

 

と、そこまで言ったとき、その新入生の顔を見て千景は驚いた。

 

(何!?この顔は!?!?)

 

それはまさに、恐怖に怯える顔。何か見てはいけないものでも見てしまったか。冷や汗をだらだらかき、目を見開いて東郷をじっと見つめている。そして...

 

「は、はい......ごめんなさい...。でしゃばりすぎました...。」

 

(えっ、私普通に笑顔で言っただけなんだけど?怖くしたつもり一切ないんだけど!?)

 

「東郷、やりすぎよ。それくらいにしときなさい。この子、勇者部に入らなくなっちゃうわよ?」

 

「え...いやそんなつもりは......。」

 

その時、千景はハッと気づいた。

 

(まさか...!『東郷美森』の笑顔は人を恐怖させる最恐の兵器とでも言うの!?いやそんなわけが...。人が笑ってる姿を見て恐怖するなんてそんな...。...ホラー映画のピエロとかじゃないんだし...。きっと...きっと私が悪かったのね...。そういうことにしておきましょう...。)

 

ようやく落ち着いた新入生は、園子が注いでくれたお茶を飲んで今度はゆっくり話し始めた。

 

「先ほどは興奮して喋りすぎてしまい、大変申し訳ありませんでした...。申し遅れました。私、横手と申します。縦横の『横』に握手の『手』で横手です。」

 

「うん...それくらい言われれば分かるわ...。」

 

「横手ちゃん、だね。私、部長の犬吠埼樹!よろしくね!」

 

「あなたが部長さんですね!よろしくです!」

 

「いっつんのタメ語、なんか新鮮~。」

 

「私は三年生の結城友奈!よろしくね~!」

 

「同じく三年の乃木園子だぜ~!」

 

「私も三年の東郷美森...。」

 

「そんで私も三年の三好夏凜。ちなみに樹は二年生よ。」

 

「二年生が部長...!珍しいですね~。大食い女子の方は卒業なさったんですか?」

 

「風先輩のことかな?うん。今はもう高校生だよ~!」

 

「勇者部に誰がいるのかも、全部わかっちゃうくらいホームページ見てくれてるんだね!...中にはお姉ちゃんがたくさん食べることをちゃんと書いてた投稿も合ったし...。」

 

「そりゃあそうですよ樹部長!あれだけ憧れて...。」

 

「ストッープ!また始まるところだったわ今!」

 

「あ、すみません...。」

 

「でも横手って...どこかで聞いたことがあるような...。」

 

友奈がそう言って顎に手をやったとき、

 

「あの子も、あなたが連れてきたの?」

 

千景が扉付近を指差して横手に問う。

 

「えっ?いや私はひとりで...。」

 

扉付近にいた人物は、のぞきこむようにして部室内の様子を伺っていた。

 

「入ってきて大丈夫だよ~!」

 

友奈にそう言われ、ようやくその人物は動いてゆっくりと入ってきた。黒髪のショートカットで、丸眼鏡がよく似合っている。身長は低めの可愛らしい人形のような少女だった。

 

「あっ、あのっ......ここは...勇者部...ですか......?」

 

「うんっ!そうだよ!あなたも入部希望?」

 

友奈の問いに、彼女は目を泳がせ、戸惑う。戸惑うことなんかないはずなのに。『はい』か『いいえ』で済む話だ。そもそも、この中を覗いていた時点でほぼ入部希望なのは確定だろう。すると彼女は、思い切って声を出すようにして発言した。

 

「あのっ......!この中で、てん...............」

 

「失礼しまーす。」

 

その時だった。またしても一人、ここにやってくる。そしてその人物はなんと...。

 

「だっ...」

 

「だっ...」

 

「だっ...」

 

『男子だあっーー!?!?』

 

一同は声を揃えて驚いた。正式に入部すれば、初めての男子部員となる。

 

「?...そんなに驚くようなことですか?」

 

「あ、いや...今までいたことなかったから!ちょっとびっくりしちゃっただけ!」

 

「そうですか...。ここ、勇者部の部室で合ってます?教室の前には家庭科準備室って書いてあったんで。」

 

「うん。合ってるよ~!」

 

「ならよかった。俺もここ入部希望です。」

 

彼は淡々とそう言い、前髪をいじる。ストレートの綺麗な髪質で、サラサラしている。毎日手入れを欠かしていないのであろう。とても整っている。顔も俗に言うイケメン...だろうか。それに声もイケボだ。気だるそうでクールな雰囲気を醸し出しているが、千景にはかっこつけているようにしか見えなかった。

 

(見るからに私の苦手なタイプね、この男子...。こんなチャラチャラしてる感じ出しといて意外となんでもできるのよね、こーゆータイプは。)

 

あからさまに偏見すぎる意見である。

 

「こほん、では早速私からこの部活の説明をしたいと思います!」

 

樹がそういった時、スッと例の男子が手を上げて樹の進行を止めた。

 

「その前に、先輩方のお名前は?」

 

「あっ...そうだよね、横手ちゃんにしか自己紹介してなかった。」

 

樹はそう言って再び彼女から名乗り始めた。その間、千景の心の中では...

 

(やっぱりこいつ、やな感じ!!仲良くできそうな気がしないわ!スカしてるって言うか何というか...こう...腹の奥がフツフツしてくる!生理的に合わない!!)

 

「...東郷?......東郷の番よ。」

 

「あっ...私は東郷美森。三年生よ。よろしく...。」

 

自己紹介している間、彼はじっと話している人の目を見ている。その際、千景は気づいた。彼の目から光を感じない。何か、他の人とは違う。さっきの横手と真反対だ。千景は直感的にそう思った。

 

「では改めて、説明に入ります!まず、みんなはなんでこの部活に入ろうと?」

 

「私は.....!」

 

「あんたはもういいわ。さっき十分聞いたから。」

 

「了解です!夏凜先輩!」

 

横手はそう言い、ビシッと敬礼をする。

 

「え、ええっと...............私は......その...この部活の......活動内容に...惹かれて......楽しそうだなぁ、と......。」

 

「あなたも!?やっぱりそうよね!!」

 

「ちょっと黙ってなさいあなたは!!」

 

「すみません!了解です!夏凜先輩!」

 

「......俺は、自由そうでいいかなって思ったから。」

 

そんな彼の言葉に、樹は引っかかった。

 

「自由...?」

 

「はい。ここなら部活動という名目で校外に出れるし、いろんな部活にも助っ人として参加できる。...まあ保育園に訪問とか演劇とかはダルいなぁとは思ったけど。一番自由度があるのはここかな、と。楽でよさそうだな~なんて。そんな感じです。」

 

『......。』

 

彼が話し終わったとき、部室内に沈黙が襲った。

 

「......あれ、なんかヤバいこと言いました?」

 

「いや、なんというか...君は......」

 

「あなた!それ本気で言ってるの!?」

 

またしても横手がぐいぐい出てくる。人差し指をビッと彼に向け、

 

「勇者部はね、あなたみたいなやる気のない人が入るような部活じゃない!!出直してきなさい!!こっちから願い下げよっ!!!」

 

「は?正式に入部してない同級のお前になんでそんなこと言われなくちゃいけねぇんだよ。第一、俺はやる気ないなんて言ってない。与えられた仕事も活動もちゃんとやる。それは当たり前だろ。入部するって言ってんだから。」

 

「じゃあなんで『自由』とか言ってるわけ!?部活は遊びでやってるわけじゃないの!そもそも、さっきからなんなのよその態度!失礼じゃない!?」

 

「『自由』ってのはあくまで活動内容の話。校外に行ってボランティア活動するのも、他の部活じゃできないことだ。そして俺は普通に話してるだけ。これが素なんだよ。」

 

「そこまで~!!二人ともやめて!落ち着いて、ね?」

 

樹が間に入り、二人の口論を止めた。

 

「...まあ、彼の言うこともわかるわ。私も最初そんな感じだったから...。」

 

「ええっ!?夏凜先輩そうだったんですか!?」

 

「ツンツン夏凜ちゃんの頃だね!」

 

「あのときの夏凜さんはひどかったです...。それはもう本当に...。」

 

「二人とも言い過ぎじゃない!?」

 

「私はそのときのにぼっしー知らないからもっと聞きたいな~。」

 

「ダメよ園子!新入生たちが困るでしょ!」

 

「部長さん、早く説明始めてくれませんか?さっきから無駄な時間ばかり過ぎています。」

 

「あ、ごめん...。それじゃまずは.........」

 

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新入部員は全員で三人。女子二人と男子一人。男ひとりはいづらくないのかと千景は彼に聞いたが、別に大丈夫だと答えた。だが...

 

「せめて言うとするならば、ひとり同じ学年にやかましいのがいるのが気にくわないってことくらいですかね。」

 

「はあ!?それ私のこと!?本人の前でそれ言う!?」

 

「ほら。」

 

横手と彼は馬が合わなそうであった。時間は経ち、夕方。仮入部で来ている新入生たちは先に帰って行った。

 

「ふぅ...説明は予定通りにうまくできてよかったです!」

 

「それはそれでいいけど...癖が強いわねみんな。」

 

夏凜はサプリを飲み込み、煮干しの入った袋を取り出しながらそう言った。

 

(学校でそんなことしてるあなたがそれ言う...?)

 

千景は内心そう思った。

 

「そーいえば...男の子と静かな女の子の名前聞いてないよね?横手ちゃんも、下の名前聞いてない...。」

 

『......。あっ。』

 

友奈のその一言に、一同は肝心なことを忘れていたと今ようやく思った。

 

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「はぁ~...。みんなおもしろい人たちばかりで楽しかったね~!これからもっと部活が楽しくなりそう!」

 

園子は深呼吸して千景にそう言う。二人は外の空気を吸おうということで屋上に出ていた。沈みかけている夕日が海に反射して、二人を照らしていた。二人はそんな夕日を見つめていた。

 

「そうかしら...。私は心配だけど...。」

 

「そうだよ~!賑やかになること間違いなし!」

 

「その『賑やか』が良い方に向けばいいけどね。」

 

「...特にさ、あの横手ちゃんって子...テンションも声も、なんだかミノさんに似ててさ。ちょっと思い出しちゃったんだよね、あの頃の思い出。」

 

「?......ミノさん...?」

 

そのとき、園子はハッとして千景の方を振り返った。

 

「あ...ごめんね!つい...。」

 

「いや、いいのよ。それよりそのミノさん?って子は...あなたの友達なの?」

 

「...!」

 

「話しぶりからして、この東郷って子の友達でもあるのよね?」

 

「......。」

 

「その子のことも教えてくれないかしら...。『東郷美森』のことをもっと知るために。...あなたと東郷美森さんにとってとても大切な友達なんでしょう...?」

 

「......。そこまでわかっちゃうなんてね、今の一言で...。」

 

園子は小さくそう呟いた。

 

「え...?」

 

よく聞こえなかった千景は聞き返す。

 

「いや、なんでもないよ。...ミノさんの話か~。そうだねぇ、昨日話したこと覚えてる?」

 

「『週末にまたいろいろと教えるからあなたの家に来い』...だったかしら。今日は金曜だから行くのは明日...でいいのよね?」

 

「うん、そう。......その時にまた詳しく教えてあげる。...いや、もともとそれを話すつもりだった。」

 

「...!」

 

「私とわっしーの関係を語る上では、彼女抜きでは語れないからね。」

 

園子はそう告げて歩き始める。

 

「さ、そろそろ帰ろ!ゆーゆたちが待ってる!」

 

「あ、う、うん...。」

 

何か、ただ事ではないことが隠されている気がする。千景の勘はそう言っていた。

 

(第五話に続く)




オリキャラはいやだ!オリキャラは邪魔だ!と思う方々、申し訳ありません!ですがこれは許してほしいです!何の意味もなくオリキャラは登場させません!これだけは約束します。
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