乃木若葉を庇って死んだら東郷美森に転生していた件 作:てんぱまん
翌日
「お邪魔します...。」
「よくきたね、ちーちゃん。それじゃあ行こうか。」
「えっ?どこに...?ってかあなたの家で話すんじゃ...。」
「いやあ、やっぱりね?聞くより見た方が早いかなと思って。今から大橋に行きまーす!」
「大橋...!?」
千景は園子に言われるがまま彼女の車に乗っけられ、まあまあな時間をかけて瀬戸大橋までやってきた。そして、その大橋の姿を見た千景は驚愕する。
「......!!!......なっ、なにこれ...!!!!」
「びっくりした?...この大橋も300年以上前からあると考えると感慨深いよね~。」
「いや...!300年前はこんな異様な感じで壊れてなかったわよ!もしかして......乃木さんと高嶋さんの戦いで.........」
「ううん、違うよ。」
「えっ...。」
「それも今から話すから。取りあえずこっち、ついてきて。」
またしても千景は彼女の言うままに後を追う。するとある場所に到着した。
「!......ここは...?」
「ここはね今まで戦ってきた勇者と巫女たちを祀るお墓。......歴代の英雄たちが眠る、英霊碑だよ。」
「英霊...碑...!」
二人は中心に立ち、千景は辺りを見渡す。
「土井球子…伊予島杏…上里ひなた…乃木若葉…高嶋友奈…!花本さんもいる…!私の知ってる人たちばかり…!」
千景は本当に時代を超え、転生したのだと改めて実感した。一番実感の湧く光景が、目の前に広がっていた。だが…
「でもやっぱり…私の名前はないのね。」
どこを探しても千景の名前はなかった。
「結局、私が生きていた事実は…なかったことにされて…」
「そんなことないよ。」
「えっ…?」
「だって、私があなたのこと知ってるんだもん。ちーちゃんって子が300年前にいて、勇者として世界のために戦った。私のご先祖様たちは、ちゃんとちーちゃんがいたことを後世に伝えられたんだよ。」
「…!」
確かに、園子は自分のことを知っている。しかしそれはなぜなのか。乃木家の末裔だから?だったらこの英霊碑の中に自分の名前を追加してくれよと思った。
「なんであなただけは…私のことを知っているの?これほどまでして、大赦は私の存在を歴史から消しているのに、なぜあなただけは…」
「私だけじゃないよ。勇者部のみんなも、全員あなたのこと知ってる。」
「えっ…!?」
「ま、その話はまた今度にするとして…」
「なんでよ!?すっごい気になるじゃない!!」
「まあまあ、話す機会もそのうち訪れるだろうしね。」
園子はそう言うとある一つの石碑の前に立ち、千景の方をくるっと向いて話し始めた。
「ちょっと私とわっしーの昔話をしようか。ちーちゃんが転生してきたあの日にも少し話したけど、私たちは特別でね、ゆーゆたちよりも前…ちょうど二年前に勇者をやってた。だからゆーゆたちから見たら私たちは先輩。先代勇者にあたるんだよ。」
「それであなたは…満開の後遺症で二年間、動けない状態になった。東郷美森さんは足と記憶を失った。そこまでは聞いたわ。」
(聞いた限り満開は、私たちで言う切り札の代わり…ということらしいわね。)
「…その時、私たちは三人でお役目についていた。私とわっしー、そしてミノさん…三ノ輪銀と。」
「…!それが昨日の…!でも、彼女は讃州中学にいないわよね?どこか別の中学に………。」
その時、千景は気づいた。園子の後ろにある石碑の文字に。わざわざ園子がその前にまで移動した訳が今、わかった。
「……!!!ま、まさか…。」
「そうだよ、ちーちゃん。彼女は勇者のお役目の中で命を失った。大怪我を負った私たちの代わりに大型バーテックスを三体、一人で相手して相打ちに…。」
「大型バーテックスを…三体…!?」
千景の時代ではそんなこと考えられない。あの若葉でさえも絶対無理だ。
(技術の進歩…?それとも乃木さん以上のバケモノだったのかしら…。)
「ちーちゃんたちの時代じゃ考えられないようなことでしょ?それくらい勇者システムは進歩していたんだけど、まだまだ完璧と言うには程遠かった。この大橋もね、最後の戦いでこうなっちゃったの。すっごい激しい戦いでね…それから私とわっしーは離れ離れ。さっきちーちゃんが話してたことに繋がる。それから二年後、ゆーゆたちが勇者になってね…。…私たちは、いわゆるプロトタイプのようなものだった。」
「えっ…そんなひどいこと…!」
「だから私も大赦を恨んだし嫌いだったよ。だから、私たちが変える。これからの時代を引っ張っていくのは勇者部!」
園子からは強い意志が感じられた。一方千景は、自分たちの時代以外の勇者からも戦死者が出ていたことに驚いていた。球子と杏に止まらず、自分も、そして何百年経った後にもまた一人。
(大赦は何してるのよ…。死者がこんなに出てるって言うのに、ちょっとはそれは糧にして工夫しなさいよ…!土井さんと伊予島さんの死を、無駄にしないでよ…!!)
「…ちーちゃん?」
無意識に険しい表情になっていたようだ。園子が心配して千景の顔をのぞき込んできた。
「!…ごめんなさい、大丈夫よ。」
千景はそう言い、三ノ輪銀と書かれた石碑の前まで歩き、しゃがんで手を合わせて目を閉じた。
「……三ノ輪銀、さん。…ありがとう。あなたのおかげでこの世界がある。繋いでくれて、ありがとう。」
「……。ミノさん、きっと喜んでるよ。」
「えっ…?」
「初代の先輩勇者さんに感謝されたんだからね〜!」
「いや、私は…。」
(そうだ、私は何もしてない。むしろみんなの足を引っ張った。迷惑ばかりかけた。)
「...そんな大層なものじゃないわよ。」
千景はそう言って立ち上がった。
「少し、他の人たちにも挨拶していっていいかしら?」
「うん、私も挨拶したい〜!ちーちゃんのお友達でしょ?」
「……友達…。うん…友達…。」
千景は前世の記憶で残っている、若葉の泣き顔を思い出した。
(友達…と、思っていいのよね…?あなたたちのこと。)
そうして銀の石碑の前から離れようとしたときだった。突如として頭がズキッと痛む。
キィィィイイイイィィィィィン!!!
(((...すーみっ!)))
「………!!!!!」
千景は頭を抑え、その場に倒れ込むようにして手を地についた。
「ちーちゃん!?大丈夫!?」
園子はバランスを崩した彼女の背中をさすり、千景を支える。
「はあっ…!はあっ…!何、今のは…!!」
「どうしたの?一体なにが…。」
「誰かの、声がした…!私は聞いたことがない、知らない人の声で…『須美』って呼ぶ声が…。」
「え…!?」
いつも余裕を醸し出して強者感バリバリの園子がこの時は心の底から驚いていた。
「...わっしーはね、昔『東郷美森』という名前じゃなかった。勇者になるために鷲尾家に養子として引き取られて、『鷲尾須美』として生きていた時代があったの。だから私はその時の名残で『わっしー』って呼んでるんだよ。ほとんどの人は『鷲尾さん』って呼んでたけど、一人だけ『須美』って呼んでた子がいた。」
(まさか…!)
「…きっとその声は、ミノさんの声だよ。ミノさんだけはわっしーのことを『須美』って呼んでた。」
「えっ…じゃあつまり、これは……『東郷美森』の記憶…?」
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「ね〜ね〜ちーちゃん、せっかく大橋まで来たんだからどっか遊びに行かない〜?」
「そんなこと言われたって、私お金持ってきてないし…。」
「お金なら私がいくらでも出すよ〜!」
「いやいやいや!何言ってるの!ダメよ!!」
「遠慮しないで~。」
「遠慮とかじゃなくて!人としての問題よ!」
「そう~?じゃあ......ちょっとお茶しようよ。近くのカフェでさ。お金はまた学校の日に返してくれたらいいから。それならいいでしょ?ね?」
「......。わかったわ...そこまで言うなら...。」
園子の押しに負け、千景は彼女のわがままに付き合って上げることにした。乃木家の車に乗り込み、おしゃれな雰囲気のカフェに立ち寄った。彼女たちは二人席に座って注文する。
「ちーちゃん何飲みたい~?」
「なんでもいいわ。」
「じゃあキャラメルフラペチーノ二つで~。」
園子は店員にそう告げ、かしこまりましたと言って店員はその場を離れた。
「いつもそれを頼んでるの?」
「いいや、初めて頼んだよ。たまにはいいかな~って。」
「そう...。」
会話が止まる。何か気まずい。早く飲み物来ないかな、それか何か話題を出さないと。そう思っていると園子が口を開いた。
「なんでわざわざカフェ?って思ってるでしょ。」
「えっ?あ、ああ...。」
(本当はこの沈黙を何とかしたいと思っていたのだけれど...。確かに、なんでカフェに行こうと言ったのだろう。)
「私さ、まだちーちゃんのこと何にも知らないからさ~。あなたがどんな子で、故郷はどこで、どんなお父さんとお母さんがいて、どんな思い出を持っているのか。ほら、今まで聞いたところでも勇者になった後の話ばっかりだったじゃない?」
「......。」
「いろいろ聞かせてよ~。」
「.........嫌。」
「えっ...?」
「............ごめんなさい、私...昔のことは思い出したくないの。特に、故郷や両親のことは...。」
「!......そう...なんかごめんね!嫌なこと聞いちゃって...。」
「いや、いいのよ。私こそごめんなさい...。でも趣味くらいなら話してもいいわ。」
「えっ!なになに~!?」
園子は興味津々になって耳を傾ける。
「ゲームよ...!」
「ゲーム?」
「そう!」
「どんなのが好きなの?」
「ジャンルは問わないわ!アクション、ホラー、ファンタジー...冒険モノから恋愛系まで...!おもしろかったらなんでもやる!」
「ふ~ん、本当に好きなんだね。ゲームのこと話してるちーちゃん、すごく楽しそう。」
「えっ...?」
「まるでわっしーが日本のこと話してるときみたい。」
園子がそう言ったとき、ちょうど注文した品が届いた。
「わ~!おいしそ~!!」
園子はすぐにそれを口に運ぶ。そして、
「う~ん!おいし~!!ちーちゃんも飲んでみなよぉ!ほらほら!!」
彼女に促され、千景もそれを飲む。すると、
「!......おいしい...!」
「おおっ~!でしょでしょ~!!」
「うん...!来てよかったわ...!」
千景の笑顔を見て、園子は微笑む。カップを置いたとき千景はふと園子に言った。
「私.........カフェ来たの初めて...!だから、友達とこうやって飲むのも、初めて...!あ............」
「?...どうしたの?」
「友達...と、呼んでいいのよね...?あなたのこと...。」
千景のその言葉を聞いた園子はポカンとしている。
(あれ...?やっぱりまだ早かったかしら!?いや、そもそも私は東郷美森さんの体を乗っ取っているようなもの...友達と認めてくれるわけがないわ。)
と、千景は思ったが
「今更何言ってるの、ちーちゃん。当たり前だよ。」
「えっ...!?」
「ちーちゃんはもうとっくのとっくに私の友達!」
「...!」
千景は思わず泣き出しそうになる。
(そんな顔で、見ないでよ...。あなたの笑顔は眩しすぎる...。乃木さんとこうも違うなんて...!)
「懐かしいなぁ。」
千景の顔を見、園子は頬杖をつきながら言う。
「わっしーと初めて最初にこうやったときもね、ちーちゃんみたいな反応してたの。意外とちーちゃんとわっしーって似てるのかもね!」
「そう...なのかしら...。」
「...私ね、勇者になる前は友達がいなかったの。」
「...!そうなの...?」
千景にとっては意外だった。こんなに明るくて話しやすそうな子が、友達がいなかったなんて。
「家柄のせいなのか、こういう変な性格だからか、周りからちょっと距離置かれててね。」
「そうだったの...。」
「そんなときにわっしーとミノさんに出会った。彼女たちのおかげで今の私がいる。本当、感謝だよ。」
園子はそう言いきってスプーンでカップの中身をかき混ぜる。
「............!!」
この時、『この人になら話してもいいかもしれない...。』千景はそう思った。思い切って、自分の過去を話してもいいかもしれない。彼女ならきっと、自分の痛みをわかってくれるはず...。
「あのね!そのっち!」
「...うん?」
「私は-----」
千景はすべてをさらけ出した。クズ親の話、周りからずっといじめられていた話、それによってできたゲームの趣味...外が暗くなるまで、ずっと園子に自分のことを話した。話している途中で涙が出てきたときもあった。だが園子はたまに相槌をうちながら黙って聞いてくれた。千景の思った通り、彼女は千景の気持ちを理解してくれた。
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数時間後 帰り道 乃木家所有の車内
「......今日はいろいろとありがとう。たくさん話せて楽しかったわ。おかげでとても心が軽くなった。」
「いやいや、私は特に何もしてないんよ~。」
「...............私、あなたにもっと早く会いたかった。」
「......。」
「なんなら私、この時代に生まれたかった...!周りもみんな優しい...!あんな親から生まれなければ私は......」
「もう思い出さなくていいんよ。」
「...!」
「今となっては、前世のお話でしょ?いい思い出だけ覚えていればいい。嫌な思い出って、忘れるのは難しいけど思い返さなきゃいいんだよ。...私はそうしてる。」
...嘘だ。千景は直感でそう思った。じゃないと、こんな悲しそうな顔でそんなこと言わない。だが千景は口に出さなかった。言えるわけがなかった。そして代わりにこう聞いた。
「............なぜあなたは、私にここまでよくしてくれるの?あなたにとって、私は...あなたの親友を乗っ取っているようなものなのに...もう二度と東郷美森さんは戻らないかもしれないのに...なんであなたは私に優しくしてくれるの?」
「う~ん、なんでだろうね?確かにちーちゃんの言うとおりだけど。」
園子はちょっと考えると、ニコッと笑って千景に言った。
「...別にちーちゃんが、悪い人じゃないからかな!」
「それが理由...?」
「なんか上手く言い表せないや!あはは~~」
「何よそれ......ふふっ...。」
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この日、家に着いた頃にはすっかり夜になっていた。
(もうこんな時間か...。でもなんだかんだ言って今日は楽しかったわ。早くお風呂に入って寝ましょう...。)
千景は床につく用意をさっさと済ませ、自室に戻った。
(さて......また明日はすることがあるわ。)
明日は日曜日。一日中暇だ。誰かと何かをするわけでもない。転生後、初めての一日自由。彼女はすでに明日やることを決めていた。
「この部屋を徹底的に調べる!まずそれをしないと、『東郷美森』は務まらないわ!」
どうにかして彼女の趣味と合わせるためにもそれは必須であった。試しに机の引き出しを一つ、開けてみる。まだ開けたことのない場所だ。するとそこには...
「なに...これ......?」
『友奈ちゃん秘蔵コレクション①』と書かれた箱の中に、一つのUSBメモリが入っている。そのとき、千景は本能的にこれはヤバいと感じた。ゾゾゾッと背中に悪寒が走る。
(これは..................私が見ていいモノなのかしら......!!)
千景はすぐさま箱を閉じ、バン!と引き出しを閉めた。とりあえず今日は寝よう...。何も見なかったことにして布団にくるまった。
どうせ明日、すべて見ることになるのだが...。
(第六話に続く)
日常系を騙ってるくせにシリアスなお話ばかり多くなってしまって申し訳ない...。次回からシリアス減ってネタ急増するんで温度差気をつけてくださいね!