乃木若葉を庇って死んだら東郷美森に転生していた件   作:てんぱまん

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【第六話】東郷家大探索!の件

 

ピピピ...ピピピ...

 

「.........朝ね...。」

 

千景はいつも通りの時間に起き、アラームを消す。そして布団から起き上がってスムーズに布団を畳み、鏡の前で私服に着替えた。それから洗面所に行って身だしなみを整え、朝ご飯にする。

 

(もうこの生活も慣れてきたわね。...この体になってから毎日いい目覚めだし、朝早く起きれるわ。きっと、東郷美森さんは規則正しい生活を送っていたのね。とても健康的な。私みたいに夜更かししてゲームなんかしてなかったんだわ。)

 

千景は朝ご飯を食べ終えるとサッと洗い物を済ませて自室に戻った。

 

「さて...今日の本題はここから...!」

 

千景はそう言うと、ゴクリと唾を飲み込んでから昨日開けた引き出しとはまた別の引き出しを開ける。

 

(ここは教科書やノート類が詰まってる感じか...。その下の引き出しには授業で配られたプリント...。)

 

ありえないほど綺麗に整理されている。とても几帳面な性格だったようだ。

 

「それにしても...やっぱり何か感じ悪いわね。人のいえを漁ってるみたいで...。泥棒にでもなった気分だわ。」

 

千景の気持ちはいい感じではなかった。普通に考えて人の家を荒らしているようなものだ。もちろん、東郷にだって見られたくないものの一つや二つはあるだろうに...。昨日のようなものが。

 

(それでも私は、東郷さんのことを知るためにやらなくちゃいけない...!こんなことをしてでも、これから生きていくためには...!)

 

「東郷さんに...彼女に合わせないと!『東郷美森』にならないと!!」

 

千景は転生した日からずっと、『私は東郷美森。もう郡千景ではない』と自分に暗示し続けていた。なにせこの体は中学生。0歳から始まったわけではないのだから。

千景は東郷のノートを広げる。ノートの取り方の癖、筆跡など隅々まで見た。......と、そんなことをしていれば当然...

 

「......ん?...なにこれ......。」

 

ノートの端っこに『私の友奈ちゃん』の文字。それを見た瞬間、千景にまたしても昨日感じた悪寒がゾゾッと走る。

 

 

パタン!

 

 

千景はすぐにノートを閉じた。

 

(また見てしまった...!きっと、きっと...次のページからヤバいのが...!)

 

「だけど、私はこれに背いたままでいいの!?東郷さんのすべてを知ってからこそ、真の東郷美森になれるんじゃない!彼女の秘密を知り、それを何が何でも理解する必要があるんだわ!!」

 

千景はそう叫んでノートを再び開く。そして先ほどのページをめくる...すると

 

「............~っ!!!!!」

 

...千景の予想通り......いや、遥かに予想を超えてきた。

 

「こっ、これはっ............ヤバい...!ヤバすぎるっ......!!!私の東郷さんへのイメージが......どんどん変わっていってしまう......!!...見た目はおしとやかで、おとなしそうで、気配りできて、優しそうで、なんでもできて文学少女的な雰囲気を醸し出してるのにっ......!ノートの取り方も、生活もキチッとしてて、スタイルも完璧なのにっ......!これだけで.........これだけでイメージが変わる!!...超変態イカれ激ヤバ野郎に!!!」

 

ノートにはびっしり、『友奈ちゃん』の文字だけで埋め尽くされていた。一体これを書き上げるのにどれくらいの時間を有したのだろう。筆跡も先ほどとは違う、恐怖を感じさせるような震えた字だった。きっとヤバい方面で、よほど興奮しながら書いたのだろう...。まるでノートが呪われているかのように感じた。

 

(ノートの白い部分が見えなくなるほど、書かれた『友奈ちゃん』の文字...!こんな人と関わってきて、友奈ちゃんは大丈夫だったの...?私に対する態度を見る限り何もされてはいないだろうけど.........。もしかして、私がこの体に転生して正解だった?なんかこの先起きるはずの犯罪を止められた気がするわ。...こんな呪われた風のノートだって、いじめられていたときか、乃木さんを死ぬほど恨んでたときくらいにしか書けないわよ...。)

 

書けるんかい。

 

「このノートはどこか違う引き出しに入れておきましょう...。全く、なんでこんなものを他の普通のノートと一緒のところに入れておくのよ。」

 

そう独り言を言いながら千景は別の引き出しにそのノートを入れる。

 

(そもそもこれは、いつ書いてたの...?授業中に友奈ちゃんへの愛が爆発して、抑えた結果がこれってことかしら...。)

 

千景はぶるっと身震いする。このルックスでこんなことをしていればそりゃギャップがすごい。

 

「一通り机周りは調べたわね...。次は押し入れを見ようかしら。」

 

押し入れの上段には布団が入っている。一方、下段には...

 

「これは......アルバム?」

 

ダンボールの中に古びたアルバムが出てくる。ちょっと中身を見てみることにした。

 

「......。昔から顔は美形ね。写真を見る限り、育ちもとってもいい感じなのに...。いつからこんな変態になったのかしら。......あら、胸も当時でこんなに...。小学生の時点で私の前世よりあるわよこれ...。」

 

そしてページをめくっていくうちに、千景は気づく。

 

「でもやっぱり.........小学校高学年からの写真はないのね...。」

 

先日、園子から聞いた話。養子に出されてから...勇者の話が関係し始めた頃からピッタリと、アルバムの写真は途絶えていた。

 

(でもまあ、写真全部見た結果として幼い頃の彼女は可愛かったわ。)

 

千景はアルバムを閉じ、ダンボールに戻した。そして次に本棚の上に飾られているプラモデルを見る。

 

「戦艦に、日本の昔ながらの戦闘機...本当に愛しているのね、日本のことを。...!この戦艦なんて、私見たことあるわ...!確かあのシューティングゲームに登場した最強クラスの戦艦...!さすがマニアなだけあるわね、東郷さん。見る目あるわ。」  

 

千景は勝手に東郷のことを上から目線で誉める。そして他にも、東郷の日本好きは下の本棚を見てもわかることだった。やたら歴史関係の本が入っている。どれも何度も読み返したらしく、ボロボロだ。千景はその中の数冊を少し読んでみた。

 

「...普通に難しい。そもそも女子で歴史好きって結構希少よ。」

 

続いてタンスを覗いてみる。ファッションセンスは特に普通だった。千景が見ても変には思わなかった。だが、一つだけ気になったものがあった。

 

「...。なにこれ...?軍服...のような......。」

 

これだけ異様だった。他にもマントや帽子、怪盗が着けるようなマスクも出てくる。

 

「まとめてしまってあったってことはこれでセット...?いやいや!いくらなんでも怪しすぎない!?...強盗でもやったのかしら...いや、こんな格好したらかえって目立つか...。じゃあ劇や何かで使ったのかしら?保育園に行ったときとかに...。きっとそうよね!」

 

と、思っていたが。その服から一枚の新聞の切り抜きが出てきた。どうやら挟んでいたらしい。

 

「.........っ!!!」

 

それを見た千景は絶句する。その新聞の記事には一枚の写真も載っていた。その写真に写っていたのは...。

 

「この服を着た......東郷さん......!?!?」

 

しかも縄で犯罪者を捕まえたらしく、お手柄!仮面のヒーロー!などと書かれていた。

 

(なによこれえええっ!?!?この服着て普通に外出歩いてたわけ!?しかもこの服でひったくり犯を捕まえた!?めっちゃくちや目立ってるじゃない!!...恥ずかしっ!!!!!)

 

千景は両手を地につき、ズーン...と絶望の表情で下を向いた。

 

「終わった............。私、こんな人に合わせなくちゃいけないの.........?いやもう絶対無理っ......!何考えてるかわからないものこんな人......!!いくらなんでもイタすぎる.........。イタすぎるわっ...!!!」

 

(苦手なタイプかもしれない...『東郷美森』...!)

 

だがそう落ち込んでもいられない。もう東郷美森として生きていかなくてはいけないのだから。

 

「はぁ...。それでもなお、まだあれが残ってる...。」

 

千景はそう呟いて昨日閉めてから開けていない引き出しを見る。

 

「今見るしかない...!勝負は今!ここで決めるッ!!」

 

決心をつけ、勢いよく引き出しを開けてUSBメモリを取り出す。と、その時だった。

 

(.........ん...?)

 

ほんの少し目を外にやったとき、窓からひとりの少女が東郷の家と隣の友奈の家をじっと見ていた。

 

(あれって...。新入部員の...?メガネのあんまり喋らなかった女の子...よね...?)

 

「どうして...ここが家だって知ってるの...?」

 

千景は怖くなった。だがそのうち、彼女は特に何もせず立ち去った。

 

(きっとたまたま...よね!たまたま家の前を通っただけ...。気のせいよきっと。)

 

「とりあえず今は...!このUSBメモリの中身を...!」

 

千景はパソコンを起動し、部屋を暗くして押し入れにあったプロジェクターを取り出した。そしてパソコンとプロジェクターを接続する。

 

(どうせならプロジェクターで...大画面で...ね。)

 

今までこんなことを言っていながら、見た目も中身も高嶋そっくりの結城友奈に千景も少しは惹かれていた。だからこそUSBメモリの内容に期待していた。

 

(パソコンは指紋認証機能で、パスワードは問題なし...。よし、見れる!!)

 

USBメモリのファイルを開き、中身を物色する。そしてそれは、千景の望み通りに...

 

「おおっ!WOW!オオオオオオオオオオッ!!WOOOOOOOOOO!!.........ってこれ!普通に盗撮じゃない!!!」

 

ツッコミよりも前に、興奮が勝ってしまった。しかし千景はすぐに正常に戻る。それから写真を一枚一枚ゆっくり見ていく。

 

「完全に本人了承なしの撮影ね...。これほんとに、ガチのストーカーよ。こんなの見つかったら友奈ちゃんに絶縁されるでしょ。......それにしても、いいアングルで撮るわねぇ~...東郷さん...。高嶋さんだったら私完全アウトだわぁこれぇ~...。......って!何誉めてるの私!?いけないことだから!!正気に戻れ!私!!」

 

鼻の下が伸びていた。鼻血も出ていた。千景はティッシュを取って鼻に詰める。

 

「くっ...!東郷さんは変態で、やってること犯罪なのにっ...!どうしてだ.........この気持ち...彼女の気持ちがわかってしまう!!これだけは!!」

 

これ以上の視聴は危ない。そう判断した千景はプロジェクターとパソコンの電源を切った。

 

「ていうか...横文字嫌ってるくせに意外とプラモやらパソコンやらいろいろあるじゃない...。」

 

と、そのタイミングでお腹がグ~となる。

 

「!?!?......あら!?もう夜!?昼抜きになってたからやけにお腹が減って...。」

 

いろいろやっているうちに夜になっていた。なんだかんだ言って楽しかった。でないと時間の流れがこんな早いわけがない。千景は夕食を摂りに自分の部屋を出て行った。

 

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深夜 布団の中

 

「明日からまた一週間が始まるのよね。でも、なんか平和すぎて.........。」

 

不安はあるが、彼女は毎日が楽しみだった。つまらない日が、嫌な日がない。言うことなしの『最高』だった。

 

(第七話に続く)

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