ハイエルフはオラリオにて生を愉しむ   作:H-13

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エタりませんでした


精霊の寵子

オラリオに、激震が走る。

 

正確に言えばエルフに対し、リヴェリアの名を使いロイマンがギルドの力を持って発信した情報によって揺れたのだ。

 

『ロート・リヨス・アールヴが近々オラリオに来る。』

 

朝一にリヴェリアが伝え、昼過ぎにはオラリオ中に情報を広めたその手腕は確かにギルド長として君臨するに相応しいモノであった。

 

 

「崇めるなとは言わない。だが、混乱を我々が求めている訳では無い。ギルド主導で叔父には時間を作らせる為に押し掛けることはしないで欲しい。」

 

リヴェリアの直筆によって書かれた紙が張り出されれば、エルフは納得した。然しその孕んだ熱はどう足掻いても冷めることは無いのだ。

 

それはフレイヤ・ファミリアの【白妖の魔杖】【黒妖の魔剣】筆頭に豊穣の女主人の【疾風】や高レベルに上り詰めたエルフですら例外では無い。

 

親から、生まれ育った処の長老から。童話に出てくる古代の英雄と同列かそれ以上の存在として語り、吟遊詩人が歌い讃える。そんな存在である。

 

曰く、天空の覇者

 

曰く、王森の守護者

 

曰く、終焉の番人

 

 

一つですら偉業と称えられるその全てが実話。文字通りの大英雄。

 

その根本を支えるのは唯一無二の「精霊の寵愛」

 

アルヴの王森に存在する精霊の全てが祝福を与え、愛し、育んだソレは確りとロートに現れていた。

 

 

 

 

 

だからこそ、成人男性二人とその荷物を持った上での長距離高速飛行が実現する。

 

ロートがイメージし、身体に巻き付く精霊達がソレを出力する。燃料はブーストされまくったロート自身の魔力である。

 

 

「目指せ!オラリオ!」

 

「レッツゴー!!!」

 

リヴェリアが頑張っているというのに成人(三桁歳)男性の2人は呑気なものである。姪へのお土産である酒やら布やらも沢山持ちながら最低限の生活を送れるように準備を整えていた。

 

 

高度100m。物理的にロートの背中に括り付けられたリオではあったが確りとロート自身が保護の膜を張ることによって物理的な障害は皆無となる。だからこそ一世紀ぶりの久しぶりの空の旅にテンションMAXなのだ。

 

本来ならば直線距離ですら丸々一月馬かなにかに乗って移動する距離を1日で移動する。

 

水分は精霊に頼めば補給出来るし、風や諸々の抵抗は無いのだから食事も移動しながら行える。

 

リヴェリアも、ヘディンすらも届き得ない膨大な魔力量。そもそもハイエルフとして平均値から大きく上に跳ね上がっている魔力量を更にブーストするのは精霊である。

 

だからこそ、日が沈む前にオラリオが見えて来てしまうほどに休み無しで移動が続けられる。

 

「意外に近かったですね。」

 

「意外とな。此の儘リヴェリアの所まで行くぞ」

 

 

何気に初の試みであった長距離長時間飛行に加えて単独以外での飛行もあってかロートの顔には薄らと疲れが見える。

 

オラリオを囲む城壁を軽々と飛び越え、点々と見えるエルフの魔力に微笑み、見つけた。

 

一直線でとはいかない。鳥が宙を旋回する様にぐるりと黄昏の館の上を飛びながら、着地する場所を把握して、漸くふわりと地面に足を付けた。

 

 

丁度黄昏の館の正門入り口。門番としてそこに立っていた2人のエルフは即座に跪いた。二つ名持ちのレベル2。壁を突き破った戦士だからこそ、目の前の御方が誰か名乗らずとも分かった。

 

リヴェリアがロキに掛け合い、確りと言い含めたエルフを今日明日と門番に据え置いたのはこの為である。

 

オラリオでは感じる事の無い濃い王森の気配。渦巻く精霊の魔力。一部のエルフから下界と評されるオラリオの空気。そこまで貶さなくともと内心思うがこれではそう評するのも分かってしまう。

 

「やぁ。立って立って。折角来たのに此処でもそれじゃ肩の力が抜けないよ、僕の肩なんだけど。よし、じゃぁそっちの君はリヴェリアを呼んできて欲しい。それで君は門番続行だ。良いね?」

 

物理的に縛り付けていたリオを外しながら軽くジョークを垂れ流すのは信仰の対象であるロート自身。こういった手合いに関しては最早慣れたを通り越して流れる様に対応する一面はまさに王族なのだろう。

 

「「はッ!!」」

 

「うんうん、しっかりしてる。もう少し強ければ近衛でもやって行けそうじゃない?」

 

「見たところまだ青い。まだまだでしょう。」

 

「厳しいね〜」

 

「近衛ではその位に厳しくなければ。」

 

普段の二割増程のキレの良さを見ながらうんうんと頷くロートの問いには、付き人としての言葉を返す。

 

その辺のさじ加減や息の合い様は伊達に一世紀以上を共に過ごしている訳では無いのだ。

 

「叔父上!」

 

バタバタバタバタ!幼子に返った様な様子で飛び出してきた見知った顔に苦笑いを返しながら確りと抱き留める気概を見せた。

 

「久しぶりだね。頑張っているかい?」

 

保護者の様な、親代わりの様な。最年長であろうリヴェリアが見せる懐いた犬の様な表情は門番の彼からは見えなかったのは幸いであろう。

 

長い耳をピコピコと動かしながらぎゅーっと抱き締め、久しぶりに吸い込むアルヴの王森の香りに安心する。

 

「はい!……ぁ、んん゛!励んでおります。」

 

反射的に口から出た素直な肯定の言葉を丁度出てきたロキが聞いてしまい噴き出す。

 

リヴェリア自身も直ぐに気が付けば言い直すも最早遅い。

 

年長者であるロートとリオは微笑ましい様なものを見る目。ロキは爆笑し、門番であった2人は驚愕の表情を浮かべ、リヴェリア自身は耳先まで真っ赤にしながらポカポカとロートの胸元を叩いて悶えている。

 

「久しいな。ロキだったか?リヴェリアが世話になっている。私も短いながら世話になるかもしれんがよろしく頼もう。」

 

「うぷぷ…ッ!笑い死ぬとこやったわ。可愛いとこもあるやんリヴェリア。そんで?ちょっとやったか。ウチがリヴェリアを引っ張り出した時の恩返しにはピッタリやな。自分ちだと思ってゆっくりしていってな!」

 

紛うことなきポンコツ・ハイエルフとなったリヴェリアの頭を撫でながら、未だに腹が捩れるとでも言いたい神に向かってそう伝えた。

 

下界に染まった神には数日か、数週間か。その程度に思えていたがまさかその少しが10年単位だとは思うまい。不老と長寿。そんな地上に降りてくる前の様な感覚で話されては溜まったものでは無いのだ。

 

「るぉぉきぃぃぃぃ?」

 

地獄の底から這い上がる様な声音を発するのはロキが笑い殺されそうになった元凶。ギリギリ3桁歳に届かぬロキ・ファミリアのママ。

 

盛大な追いかけっこがロートとリオの前で繰り広げられ、最終的には笑い過ぎたせいでしゃっくりが止まらなくなったロキが小石に躓いた事により捕獲された所で終わりを迎えた。




さらっと不法侵入してるロート達()
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