5月28日、メーア探偵事務所にて
フリーゲン「春が過ぎ去り、ライノの花が散っていく。」
ヴィント「暑くもなく、寒くもない。何かを調べるには良い季節だね。」
フリーゲン「お前は年がら年中、何かを調べてるだろうが。だが、何かをするには良い季節だっていうのには同意だ。」
今日は特に依頼が無いが、先の女学院の件で事件が解決した数日後、校長がお礼を言いに来た時に二十万ミラ入った封筒を渡していたので、しばらくは余裕があるのだ。
クレア「だからといって、あまりダラケているのもどうかと思いますよ…(呆れ)」
フリーゲン「と言ってもよ、2つあった猫探しの依頼は速攻で終わったし。」
ヴィント「軍からの依頼も無い。ならば、ダラケるしかなくないかい?」
二人の言葉にクレアは「ハァ〜…」とため息をはく。すると、ソファーでジュースを飲んでいたミリアムが二人に話しかけた。
ミリアム「じゃあさ、フリーゲン。僕の仕事を手伝ってよ。」
フリーゲン「あん?お前の仕事?」
ミリアム「うん。“おじさん”に頼まれて明日、バリアハートの領邦軍の砦に侵入するんだ〜。」
フリーゲン「待て〜い!!何、普通に『侵入するんだ〜。』って言ってんだよ!!」
ミリアム「え〜?でもフリーゲンだって、依頼の内容によっては侵入するでしょ?」
痛い所を突かれてフリーゲンは何も言えなくなった為、話題を変える作戦に出た。
フリーゲン「ところでよ、“おじさん”っていったい誰の事なんだ?まあ、お前に命令出来る立場だから帝国政府の誰かだろうが……。」
ミリアム「うん!ギリアス・オズボーンっていう名前だよ!」
フリーゲン「はっ?」
ヴィント「ほう?ギリアス・オズボーンといえば“鉄血宰相”の異名を持ち、帝国正規軍の七割を掌握している人物だね。後は、“鉄道憲兵隊”と“情報局”を作ったのも彼らしいよ。」
フリーゲン「話題変えようと思ったら、余計にヤバそうな情報が出てきたじゃねぇか〜。」
ミリアム「そんな事よりフリーゲン!僕の仕事手伝ってよ〜!」
ちまたで有名な“鉄血宰相”の名前が出てきて、余計な事をした〜と思っていたフリーゲンの服の裾を掴んでミリアムは仕事に同行するように懇願する。それを見たフリーゲンは……
フリーゲン「ああもう!分かった分かった!手伝ってやるよ!」
ミリアム「よろしくね!」
クレア「すいませんフリーゲン。ミリアムちゃんが失敗しないように、サポートしてあげて下さい。」
フリーゲン「おう、任せとけ。」
―5月29日、〈翡翠の公都バリアハート〉
フリーゲン「さて、予定時間の通りにバリアハートに到着したが、まずは何をする?」
ミリアム「さっそく砦に突撃しちゃおう!!」
―ゴツンッ!!
ミリアム「あ痛っ!」
作戦も何も無い考えに呆れたフリーゲンは、ミリアムの頭にゲンコツをくらわせた。
フリーゲン「バカか、お前は?何の準備も無しにいきなり敵陣に侵入するやつがあるか。」
ミリアム「えぇ〜?さっさと砦に侵入してやる事をやった方が良くない?」
フリーゲン「それで捕まったら元も子もないだろうが。潜入する時はな、守りが薄いもしくは敵の裏をかいて潜入するんだ。」
ミリアム「それもメーア所長から教えてもらった事?」
フリーゲン「おうよ。つーわけでまずは宿にチェックインだ。」
ミリアム「アイアイサー!」
「あれ?フリーゲンさん?」
ミリアムに潜入ミッションのやり方を教えたフリーゲンは、バリアハートにある宿にチェックインする為に移動しようとした時に声をかけられたので振り返った。
すると、そこには以前ルナリア自然公園で出会ったリィンとあの時とは違う〈Ⅶ組〉のメンバーがいた。
フリーゲン「おお、リィンじゃねぇか。1ヶ月ぶりくらいか?」
リィン「はい。それくらいになりますね。」
?「えっと、リィンさん?こちらの方達は?」
リィン「あっ、すまない。こちらはフリーゲン・S・レフトさん。帝都のアルト通りで私立探偵をやっている方だ。」
?→エマ「じゃあ、この方が前の実習でお世話になった人なんですね。初めまして、私はエマ・ミルスティンと申します。」
マキアス「アルト通りの私立探偵の事は、僕も知っています。初めましてマキアス・レーグニッツです。」
ユーシス「ユーシス・アルバレアだ。私立探偵とはどれ程のものか、いつか見せてもらうぞ。」
フィー「フィー・クラウゼル。フィーで良いよ、よろしくね。」
フリーゲン「エマにマキアスにユーシス、そしてフィーだな。よろしくな。」
全員の自己紹介を終えたタイミングで、リィンは気になっていた事をフリーゲンにたずねた。
リィン「ところで、その子はいったい?」
フリーゲン「ああ、こいつはクレアの知り合いでな。バリアハートを観光したいって言うんで一緒に来たんだ。」
ミリアム「よろしくね〜。」
?「ほう〜、私立探偵か。なかなかに興味深いね。」
フリーゲン「おっと、まさか四大名門の中でも1番の切れ者であるルーファス・アルバレア様に出会えるなんてな。」
フリーゲンがミリアムの事を紹介した後、〈Ⅶ組〉の背後から豪華な服を身に纏った金髪の青年が前に進み出てきて、フリーゲンに興味を持った。
?→ルーファス「いやいや、そこまで切れ者じゃないさ。」
フリーゲン「しかし、何で〈Ⅶ組〉の面々と一緒に?」
ルーファス「彼らのクラスで〈特別実習〉を行こなっているのは知っているようだね?今回、2回目の〈特別実習〉はこのバリアハートで行われる事になったんだ。」
ミリアム「あっ、それでルーファスが迎えに来たんだね?」
フリーゲン「ミリアム、タメ口はヤバいって!!すっ、すいません……(汗)」
ルーファス「構わないよ。彼女の言う通りだからね。ところで、話を聞いていたら君達もこの後に宿を取ろうとしているらしいね。良かったら、君達の部屋も取ろうか?すぐそこのホテルなんだが。」
フリーゲン「えっ?いや〜、そんな恐れ多いというか何というか……。」
ルーファス「フフッ、大した手間じゃないから大丈夫だよ。」
ミリアム「だったら、部屋取ってもらおうよフリーゲン!」
フリーゲン「お前な…(汗)それじゃ、お言葉に甘えてよろしいですかね?」
ルーファス「任せたまえ。」
その後、ルーファスが取ってくれたホテルの部屋でフリーゲンとミリアムはノンビリしていると、部屋の扉がノックされ、扉を開くとそこにはリィン達がいた。
フリーゲン「おっ、どうした?」
リィン「これから〈特別実習〉に向かうので、念のために報告しておこうかと思いまして。」
フリーゲン「律儀だな〜。まっ、気を付けてな。」
リィン「はい。」
エマ「行ってきますね。」
ユーシス「失礼する。」
リィン達が〈特別実習〉に向かったのを見てフリーゲンは扉を閉め、ミリアムの方を見る。
フリーゲン「さてと侵入ルートもだいぶ絞れてきたし、複数の集合場所も決めたし、俺達もそろそろ動くか。」
ミリアム「りょ〜かい!」
―オーロックス峡谷道・脇道
フリーゲン「よっしゃ。この峡谷道の脇道なら領邦軍に見つからねぇばすだ。俺は念のためにここにいて見張ってるから、砦にはお前1人で行けよ?」
ミリアム「任せといてよ!ガーちゃん!」
相棒である〈アガートラム〉を出現させ、ミリアムは彼の腕に乗ると急上昇してオーロックス砦へと飛んでいった。
フリーゲン「大丈夫かな〜?不安だな〜。」
〜♪〜♪〜♪
フリーゲン「ヴィントからか?もしもし?」
クレア『もしもし、クレアです。今、大丈夫?』
フリーゲン「クレアか。大丈夫だが、どうした?」
クレア『たった今、情報局のレクターさんから通信が来たんだけど、クロイツェン領邦軍だけでなく、各地の領邦軍が軍備増強を行っているようなの。』
フリーゲン「つう事は、今回のミリアムへの依頼はどこまで軍備増強が行われているか、を知る為のものか。」
クレア『恐らくそうだと思うわ。』
クレアの通信で今回ミリアムに来た依頼は領邦軍の内情を知る為だと知ったフリーゲン。その時、峡谷道一帯に警報が鳴り響いた。
クレア『フリーゲン、何が起こったの!?』
フリーゲン「どうやら、あのおバカがやらかしちまったみてぇだ。あいつと決めた第2集合場所に向かう為に一旦切るぞ。」
クレア『分かったわ。気を付けて。』
通信を終えたフリーゲンはハードボイルダーに乗り、オーロックス峡谷道から急いで第2集合場所へと向かった。
―第2集合場所・北クロイツェン街道
フリーゲン「お〜い、ミリアム〜。どこだ〜?」
ミリアム「ここだよ〜!」
フリーゲン「このバカが!!」
―ゴツンッ!
ミリアム「あ痛っ!」
フリーゲン「見つからないように気をつけろっつたろうが!!何、発見されてやがる!!」
第2集合場所である北クロイツェン街道で特務スーツに身を包んだミリアムを発見したフリーゲンは、すかさずミリアムの頭にゲンコツを落とした。
ミリアム「ごめんごめん!!でも、ちゃんと追手は巻いたから結果オーライじゃない?」
フリーゲン「そうとも限らねぇぞ。オーロックス峡谷道を走ってたら、〈Ⅶ組〉の奴らがいたからな。お前、そいつらに見られた可能性あるぞ。」
ミリアム「そういえば、峡谷道を通ってる時に見かけたね。という事は逃げた方角も分かってるだろうから、早くここから逃げた方が良いね。」
そう言ってミリアムは特務スーツから普段着ている服に一瞬で着替え、フリーゲンと共にバリアハートのホテルに戻った。
まさか次の日〈Ⅶ組〉の1人―マキアス・レーグニッツが砦に侵入したという、でっち上げられた罪で捕らわれるとも知らずに……。
◇後編に続く