皆さんこんばんは。サイレンススズカです。
今年のお盆休みは、トレーナーさんの実家にお邪魔しています。
私が勝手についてきただけなんですけども、皆さんに快く受け入れてもらっています。
トレーナーさんの実家は家族が多くて、トレーナーさんのお兄さんお姉さんはもう結婚して、子供も居てとても賑やかです。やっぱり、小さい子のエネルギーには押されちゃいますね。
晩御飯を作ってもらいました。本当は、私も手伝いたかったのだけれど、キッチンがちょっと狭くてダメでした……これだけの人数がいるので、料理は沢山ありました。ウインナー、唐揚げ、コロッケ、天ぷら、焼き魚、お刺身……全部美味しそうです。スぺちゃんならペロリと食べれちゃいそうですけどね。
美味しいお料理を食べて、お酒を飲みながら、久々に集まった家族の方々との会話……トレーナーさんもとても楽しそうです。
夜は更けて、食卓のお皿も大分片された頃でした。トレーナーさんは突然玄関へ向かって行きました。
「トレーナーさん。どこへ行かれるんです?」「○○、どこ行くんだ?」
お兄さんと同じ事を言ってしまって少し恥ずかしくなりました
「ちょっと散歩に」
~~~~~⏱~~~~~
Mama~ just killed a man~
トレーナーさんは最近は骨伝導?のイヤホンで音楽を聴くようになりました。
「音楽を聴きながら外の音も聞こえるから便利だ」と言っていましたが、音漏れでハッキリと外に音楽が聞こえてしまうぐらいの大きさで聴くのでしたら、普通のイヤホンにすべきだと思いますけど……トレーナーさんはそれでもこの聞き方が好きなようです。
Put a gun against his head~ Pulled my trigger, now he's dead~
つかつかと一人で歩みをすすめてしまうトレーナーさんに後から後からついていきます。
行き先も、何処まで行くのかも、トレーナーさんは答えてくれません。ついていく事しかできません。
途中、トレーナーさんはコンビニに入って、お酒と人参ジュースを買って来ました。そしてまた、つかつかと歩いていきます。
~~~~~⏱~~~~~
トレーナーさんは近くの小高い山?丘?の所まで来ました。結構急な階段を登って、頂上までやって来ました。トレーナーさんは少しぜぇぜぇ言いながらベンチに腰掛けました。
コンビニの袋から、飲み物を二つ取り出し、カシュッと子気味良い音を立てて
「「乾杯」」
ごくりごくりと勢い良く飲んでいるトレーナーさん。さっきもお酒を飲んでいたのに、またそんなに飲んでしまって……潰れてしまったら、大変なんですからね?
隣に座ってトレーナーさんを眺めていると。
「やっぱり綺麗だな……」
っ!///
「ここの景色は……」
景色の方だと聞いて、私は悲しく、弄ばれた純情を返して欲しいと思いました。
顔を前に向けると眼下には、街並みの灯りがきらきらと、ゆらゆらときらめいていました。白、緑、オレンジ、赤……人々の営みもまた星のように輝いて……綺麗……
「その通り……ですね……」
「ああ……綺麗だ……」
私達は、しばらく景色を静かに眺めました。
「そういえば、お盆ってさ、死者の魂が帰って来るんだよね…」
「はい、そう言い伝えられていますね」
「だとしたら……スズカも、帰ってきてるのかな……?」
「何を言っているのですかトレーナーさん。私も一緒に帰ってきているじゃないですか?」
「もし、仮に、その話が本当だとしたら……また話せるのかな……」
「またも何も、今こうして話しているじゃないですか」
何だか話が少しかみ合わなくなってきて、困惑してしまいます
「いや、きっと実家の方に帰っているんだろう。そりゃそうだ」
「トレーナーさんの実家に帰っていますよ?」
強引についてきただけなんですけど…ね…
「あれから…向こうの家には挨拶すら行けてないな……行けるわけない…俺が行ったって嫌がられるだけだよな……」
「そんなことありません。決して、決してありません」
だから、気に病まないで
「あぁ……スズカ……またあの走りが見たい……また話がしたい……」
トレーナーさんが望むなら、いくらでもレースだって、お喋りだってできますよ
「スズカが死んだのは俺の責任だ……俺のせいだ……だからきっと……」
違います!それはトレーナーさんの責任じゃありません!事故です!事故なんです!だから仕方のないことなんです!
「きっと、スズカも恨んでるよ……そうに違いない……」
恨んでません!だから、どうか自分を追い詰めないでください……
私は慰めたい一心で彼の体を抱きしめました
トレーナーさんは私の胸の中で
「なぁ、スズカ……聞いてくれよ……あれから他にも担当を持ったけど、やっぱり、スズカの事が忘れられないんだ。いつも心の中で夢を、あの走りを追い求めてるんだ」
と。そう言ってもらえるとやっぱり嬉しい
「スズカ……帰って来てくれ……頼むよ……なぁ……」
彼はポツポツと話し続けます
「また、あの何者も寄せ付けない異次元の走りをさ……最高にカッコイイ逃亡者を見せてくれよ……」
トレーナーさんが望むのであれば。いつでも。……できるのであれば……
「あぁ……スズカ……スズカぁ!ああ!」
感極まったのか、目尻には涙が溜まって、それもすぐに流れていきました
「うわぁあぁぁ!ああああ!」
大声で泣き始めてしまったトレーナーさん。どうか、泣かないで
「どうして!どうしてなんだ!スズカの体は問題無かったハズだ!転んだとしてもちゃんと受け身を取れたハズだ!どうしてスズカなんだ!」
「ああぁ!スズカ!どうして!どうして……」
……ごめんなさい、トレーナーさん。受け身、できませんでした。
「すまない……スズカ……俺がちゃんとしてないばかりに……不調を気づけないばっかりに……」
いいえ、トレーナーさんのせいじゃ無いんです。だから、大丈夫です。大丈夫……
「スズカ……許してくれ……赦してくれ……」
私は泣きじゃくるトレーナーさんを抱いたまま、届かない声をかけ続けていました。