『クローバーレース』と出会ってから
今、自分がいる世界について何も調べなかった訳では無い
本家アプリで登場したウマ娘がこの世界ではどのようになっているのか、と
芦毛の怪物、皇帝、世紀末覇王などの輝かしい記録
それと淀の悲劇や沈黙の日曜日の暗い記憶
ウマ娘から入り、レースの世界に触れ始めたが
彼等の歴史の全てを網羅しているほど深くは知らない
それでも僅かながらも覚えている知識と
『彼女たち』の残してきた足跡を比べて
この世界のレースに関しては、ほぼ史実通りの結果であると断定した
救いであったのは、レースの事故や病気などの『我々が望まなかった』悲劇が
実質の『トゥインクルシリーズからの引退レース』、に置き変わったことだろうか
(一線を引いたウマ娘達のレース『ドリームトロフィーリーグ』に移っていった)
この世界が史実と同様に進んでいたのならば
『私』の世界では見つけられなかった『クローバーレース』も
この世界ではイレギュラーの存在なのであろうか?
ウマ娘も満足できる食事提供力を誇るトレセン学園近辺のファミレスにて
四人用テーブルを埋め尽くす食事の量に見慣れてしまい
自分の常識がこの世界に染まりつつある事を認識した模擬レース後のある日
「悔しいぃーっ!!」
残念会を開いていた
1400m 短距離 左周り 晴れ 良馬場
経験も浅く、本格化していないウマ娘にとってはこれでも少し長い距離
スタートは可もなく不可もなく、『差し』を得意とする彼女は
後方で脚を溜めるべく後ろに下がったまでは良かった
前を走る『先行』勢のバ郡を上手く抜けられず大外から全てを追い抜こうと決めた時には遅かった
末脚は良かったが差しきれずに2着となった
とっとと大外周ると決めていれば勝てたかもしれない
(三橋トレーナー総評)
素人意見かもしれないがこの出来の2着なら
次回に希望を持てそうだが
以前訪れた神社にて『勝て』と発破をかけた手前、2着でも頑張ったと言いづらい
「グググ…まぁいいです。今は英気を養ってトレーニングです」
レースから少し時間が経ったが
燻っていた悔しさが私への報告で再燃したようでヤケ食いを始めている
「次のレースとかは決まっているのか?」
「モキュモキュ…再来週にもありますけど、学園併設のコースなんですよね」
〇〇さんに見てもらえない…
と、ぼやく彼女
最新VRを使ってレースをするということは
当然その人数分の機械が必要だ
そしてその間はトレーニング出来る人数が減ることになる
学園生全員がVRの機械を満足に使うには数が足りない
本格化が始まっていない学生ならば二ヶ月に一回使えればいい方とのこと
ならば直接学園に見に…という訳にはいかない
未だ我々サブトレーナーでも入るには許可が必要だ
彼女の勝利を見るのはまだ先になりそうである
「とにかくトレーニングです!実力つけて次は勝つんですからね!」
「その意気だ。という訳で早速やるぞ」
「え、確かに食べ終わりましたけど今日走ったりするのは止められてますよ?」
「大丈夫だ」
そう言って三橋トレーナーより頼まれていた物を出す
「〈賢さ〉トレーニングだ」
「異議あり!学校の勉強とレースの賢さは別だと思います!」
「赤点スレスレで下手を打てば補習で練習が出来ないと聞いたが?」
「〜〜〜っ!」
声にならない叫びで拒絶を示すがお構いなく彼女の前にテキストを広げる
長丁場になるだろう
取り敢えずドリンクバーよりオレンジジュースを二人分取りに行くのであった
「ちなみに選択問題形式はやらないぞ」
「何故⁉︎」
「勘で正解され続けても為にならないとのお達しでな」
「運も実力の内です!」
「じゃあ第一問」
「〜〜〜っ‼︎」
本日二度目の抗議を受け流し、慣れはじめた〈賢さ〉トレーニング、もとい学生の宿命である勉強を開始した