ウマ娘の新アプリがリリースされました   作:たかなしゆういち

103 / 106
〈外伝〉一歩踏み出せ、そうしたらまた一歩進み出せ

 

 とある冬の休日、布団の中で目が覚める

学生の頃から使っている目覚まし時計を見ると時刻は朝8時前

普段なら会社に遅刻が確定している時間だが休みなので問題はなし

 

 「…お腹空いた…」

 

 布団から出ないと空腹を満たせないので渋々布団から出るが、ご飯を作る気力が起きないのでドライフルーツが入った市販のシリアルとヨーグルトで簡単に朝食を済ます

 暖房を入れて遅い朝食を食べてる途中、音がないのも寂しいので動画投稿サイトを開いてゲームのプレイ動画を流す

そうしてゆっくりと食べ終わったらもう9時前だった

 

 

 特段なりたい自分、というものを見つけられずに惰性で過ごした大学生活

そんな人間が就職活動で企業にアピールできるわけもなく卒業ギリギリになって恩師のおかげででどうにか就職することができた

 

 大学進学、就職、全て流されるままだった

何かを成し遂げたいという情熱を持たないまま特段語る事もない生活をし、漫画やゲームと共に大人になり、最近はその趣味すら億劫になり始めていた

 

 

 お昼

学生の頃に熱中していたスマホゲームのログインボーナスを取得し、すぐさま閉じる

 『ウマ娘プリティーダービー』でもやろうかと考えたがイベントは走り終えたので貰えるものも無いので画面の電源を落とす

 寒いので外に出る気力もわかず、布団の中に再度入り込む

スマホでニュースの記事を眺め、そして眼を閉じた

 

 

 目が覚めると、朝から動かしていないカーテンからは夕陽が差し込んでいた

折角の休日を何も成すこともせず無駄に過ごしたと自己嫌悪するが、何をしたいかと言われると特段思いつきもしないのでこの件については考えるのを止めた

 

 

 冷凍食品のパスタをレンジで加熱して夕食の準備を始める

テレビで動画投稿サイトを呼び出し最新動画を眺める

 一つ目についたのはゲームの新情報の発信動画

それは『ウマ娘』から派生したゲームアプリの情報だった

 

 「『ウマ娘トレーニングサポーター』…?」

 

 温まったパスタを口にしつつ、発表内容を確認する

スマホのゲームは何かと高順位を目指すものが多く、課金前提な物も多いので新しいものをインストールする事もなくなってきたが、このアプリには少し興味が湧いた

 

 


 

 

 アプリの配信日は仕事だったので帰宅してからじっくりとダウンロードする

様々な個人情報の設定からかなりの量がある性格診断テスト(みたいな物)を()て、私が担当するウマ娘がアプリによって選ばれた

 

 

 ホーム画面の下のアイコンから通知が来た旨のメッセージがポップアップし、ウマ娘世界のSNSである『Lane』(有名なSNSの一つの緑のアイコンのアプリのような物。『ウマ娘トレーニングサポーター』ではこれで担当とやり取りをする)を開くと私の担当するウマ娘から連絡が来た

 

 [はじめまして]

 [わたし、クローバーレースって言います!]

 [これからよろしくお願いします!]

 

 

 「…『此方こそよろしく』…硬すぎるか?いやでも…」

 

 

 架空の相手なのに返信に困り、数分悩んだ末に普段使わないスタンプを一緒に送ることにした

すると、一分も経たないうちにお返しの可愛らしいスタンプが返ってきて少し嬉しくなった

 

 


 

 

 休日にランニングをするなんて少し前の私からは考えられかった

少しだけ走ることに、そしてその行動を見られることに抵抗があるものの、私の担当ウマ娘のためと奮起して学生時代のジャージを着て近くにあったランニングコースを目指し走る

 

 

 

 そしてたどり着く前に休憩を挟んだ

 

 

 

 あまりの体力の無さに打ちひしがれ、痛む脇腹を押さえつつ歩いているとスマホから通知が入った

 

 

 [焦ることはないですよ]

 [三橋(みはし)トレーナーも言ってましたけど、今日はコースの確認がメインです!]

 

 

担当ウマ娘の成長のためのサブトレーナーだと言うのに、これではどちらがトレーナーか分かったものではない

 

 彼女(クローバーレース)にお礼の返事をし、目的の場所へと歩き始める

 

 今日の天気は晴れ

空が青いということが、気持ちの良いものだと思うのはいつぶりだろうか

いつのまにか目的地はの足取りは早くなっていった

 

 


 

 

 チュートリアルミッションとして担当ウマ娘へのプレゼントを行うべくアイテム購入欄を開いたのだが…数が多い

 食べ物やアクセサリーだけでも数百種類を余裕で超え、ネットでの攻略情報も同じ物をあげても反応が個別に違うらしくて当てにならない

 

 悩みに悩んで…彼女の名前から連想したクローバーの髪飾りを選択した

 

 [ありがとうございます!]

 [大切にしますね!]

 

 贈った後にお礼のメッセージが届き、安堵する

たとえAIによる定型分の返答であっても反応がイマイチよりかはマシだ

 

 少し時間が経った後に、髪飾りを着けたクローバーレースの自撮りが送られてきた

ネットで調べると、この反応はウマ娘からの好感度が大幅に上がった反応と予測されていた

 

 


 

 

「や、最近元気じゃないか」

「部長、お疲れ様です」

 

 『ウマ娘トレーニングサポーター』を始めてから数ヶ月のある日、会社にて部長に話しかけられた

 

 「随分と精力的になったが、何か良いことでもあったか?」

「良い事…いえ、特には…」

「そうか?前まではなんというか…ただ仕事をしている、といった感じだったから」

「そう…かもしれませんね。最近、ちょっと楽しいんですよ」

 

 休日にランニングをするようになってからは、日々の充実感が増した

今まで気にしたことは無かったが、郷土料理を出す飲食店、少しオシャレなカフェでのデザート、道端に咲いた草花、羽を休める鳥達、その他何気ない日常の一コマ

 写真を撮って彼女(クローバーレース)に送れば反応を返してくれるのが嬉しくて、新たな写真を撮るべく外に出る回数が増えた

 

 

 今度は神社に行くのも良いかもしれない

御朱印という物を集めるのも楽しそうだし、神社で必勝祈願にもなりそうだ

 Laneにて次の休日の行き先を伝え、その日が待ち遠しくなるのだった

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。