ウマ娘の新アプリがリリースされました   作:たかなしゆういち

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その『場所』を羨む

 アプリ【ウマ娘トレーニングサポーター】では原則担当ウマ娘の変更は出来ない

なんらかの理由により担当の『契約解除』をする時でも最終確認を3回念押しで聞いてくる(最終とはいったい)

 

 『ゲーム』だから

ゲームだから我々は残酷になれる

ガンシューティングなどで敵を屠る

敵を蹴落とし一位になる

味方を使い捨て、自分の目的を達成する

育成を中断して放置する

 

 それらは別に悪いことではない

そう遊ぶ、遊べるようにデザインされたゲームで法律が、倫理が、などと言っても無意味である

もとよりお金を払って購入したゲームをどう遊ぼうかは当人達の自由である

(他人の生活に被害が及ばない限りは、であるが)

 

 それでも、ゲーム内のキャラクターに感情移入する人も中にはいることも忘れてはいけない

自身がゲームだから、データでしかないから、と、思っていても相手がそうであるとは限らない

 育成物のゲームで自身のお気に入りのキャラを一点集中して育てたり、例えその界隈で『弱い』と評されているキャラでも勝つ術を模索する者がいたり…

 自身の『好き』を貫き通すことも遊び方の一つである

 

 ゲームの遊び方に強制は無い

【ウマ娘プリティーダービー】で育成を途中終了してもゲーム内キャラには影響など出ないし、【ウマ娘トレーニングサポーター】も数あるアプリの一つであるので担当をほったらかしても問題は無い

 

 それは『ゲーム』だからである

複数のゲームをしているならば関わるキャラも多くなり、いちいち気にしていられないことではある

 我々は、『ウマ娘』の世界で彼女らのトレーナーとなっているが、現実に彼女らの将来を預かり導く立場となったら、その責任の重さはどれ程になるのだろうか

 


 

 社会人になってからは友達を自宅に呼ぶなど指で数える程度しかない自分ではあるが、ここ最近は『クローバーレース』がやってくる機会が増えることもあり、部屋の掃除をこまめに行うことが多くなった

そのおかげで急な来客だったとしてもそんなに慌てることはないのだが、今日に限っては家にあげてしまった事を少し後悔した

 

 それは三橋(みはし)トレーナーのオフに合わせてサブトレーナーとして問題がないかの形式的な訪問を兼ねたプチ飲み会の筈だった

 「むぐ…あたしだって…勝たせてあげたいわよぉ…でもどうしたって才能の差が…差が…ぁぁぁああ‼︎才能が憎い‼︎」

「三橋さん、落ち着いて」

「社会人はねぇ!飲まなきゃ!やってられないのよ‼︎」

第一印象はいかにも出来るビジネスウーマン、といった印象の三橋トレーナーであったが、缶ビールやら酎ハイやらを飲み続ける姿はドラマのテンプレみたいな悩めるOLといった感じだ(私はアルコールに弱いので少量に留めた)

 

 

「……なのに『最新AIに任せればもうトレーナー要らなくない?』なんてふざけんじゃ無いわよっ‼︎電気が無きゃ動かない無機物に仕事取られてたまるか‼︎車であの子達をレース場まで連れていけんのか‼︎」

 流石にここで自動運転が発達してそういう未来があるかも、なんて口を挟みなどしない

沈黙は金、聞き役に徹してお酌をして時間切れを狙う

 

 

 「そうですね、三橋さんは頑張ってます」

「うぅぅ…何が『ふとひらめいた』よ。いきなり育成プランにイレギュラーねじ込んで仕上げはバッチリなの?才能?それが天才ってやつなの?」

「トレーナーになれるだけでもすごいですよ、クローバーレースも他の担当の子達も三橋さんの事を信頼していますよ」

 

 

 「フフ…フ…あいつめ、『カナちゃんは結婚しないの?』だとぉ?大きなお世話だっつーの勉強は出来なかったけどお嫁さんになる才能がありましたってかぁ…!?」

 やめてくれ、結婚の話は私にも効く

「ヘーキだし、担当(うち)の子が居るし寂しくな…誰がママじゃ!?誰が!!」

 後日談だが母の日に担当の子達からプレゼントを貰い、とても複雑な表情をしていたことをクローバーレースより聞くことになる

 

 

 終始一貫性のない会話を捌きつつ、愚痴を大量に吐かせてお開きとなった

明日も午後から練習だという三橋トレーナーをタクシーへと送り込む

 飲み会開始から数時間しかたっていないし、お酒の量もまだ常識内

それなのに三橋さんの愚痴の多さはトレーナーの激務、同業者との苛烈な競争、そしてウマ娘を預かる者としての責任の重さからくるものか

 

 三橋トレーナーはトレーナーとして五年ほど勤めいているとのこと

担当したウマ娘の中には卒業した者、途中で退学した者、重賞レースに出た者、まだ一回も勝てていない者もいるのだそうだ

 これからもトレーナーを続ける限り、自分の担当の悲喜交々(ひきこもごも)を目にしていくのだろう

 ウマ娘(かのじょ)達の隣で支え、共に戦い続ける強い覚悟に、三橋トレーナーの立場を羨ましく感じた

アプリ内のトーク機能で、今後も協力を惜しまない旨を伝えた

 

 翌日夕方、クローバーレースより『わたしが大人になったら一緒にお酒を飲むこと』と、連絡が届いた

 どうやらウマ娘はハナが効くらしい

彼女のモチベーションの維持の為、了承する他無かった

 

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