ウマ娘の新アプリがリリースされました   作:たかなしゆういち

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理解される/されない

 うららかな日差しから夏を思わせる熱量を少しずつ感じ

来たる夏の暑さに早くも恐れている今日この頃

 

 テレビのニュースではG1レースの特集がありとあらゆるテレビ局で報道しており、前走のレースやら各々のデータを比較したボードやらが映し出され、コメンテーターやらYouTuberやらVtuber等による一着予想が白熱し、『この世界』でのウマ娘のレースの人気ぶりに『自分がいた世界』とは違うんだな、と、改めて認識した

 

 なりふり構わず全力を振り絞って走り切ったその後で、ウイニングライブを行いファンに応える歌って踊れて身体能力が高くビジュアルも高水準なウマ娘

 (並のアイドルでは太刀打ち出来なさそうだが、引退後はメディアから距離を置く者が多いので人間のアイドルも変わらずに活躍している)

 

 ウマ娘の本格化のほんの数年間だけの煌めき、その強い輝きが織重なってドラマを作り、筋書きのない物語に魅せられて競争場へと足を運ぶ

今日も何処かでレースが行われ、人々を熱狂させているだろう

 

 

 レースで勝つためにはトレーニングしか無い

 今日はトレセン学園周辺のウマ娘専用のレーンを使いチームで走り込みを行うプランだ

ウマ娘の影響は学園外にも及んでいて、周囲一帯がウマ娘のトレーニングに都合の良いように開発されている

(『元の世界』での景色を知らないので、元々の住民に何か変化があった事実を指摘することが出来ない以上、深く考えないことにする)

 学園から貸し出される電動アシスト付き自転車と、ヘルメットなどの防具を一緒に持ってきてくれた『クローバーレース』に礼を述べ、準備をする

 

 と、そこに今日一緒にトレーニングすることになったウマ娘がこちらにやってきた

 「初めまして!自分、『スピッツチアー』ッス!ヨロシクッス!」

栗毛でとても元気のいいウマ娘だ

髪のハネ具合やせわしなく動く尻尾、人懐っこい笑顔、高い声、背の低さによりどこか小型犬を連想させた

 「同じ【ウマ娘トレーニングサポーター】の自分のサブトレーナーも呼びたかったんスが…運動が苦手で断られたんスよねぇ…」

 偶には陽の光を浴びせたいんスが…

と、零す彼女

 三橋(みはし)トレーナーのチーム〈モサラー〉(名前に関しては先代の引き継ぎだから、と強く主張された。名前を聞いて変な顔でもしてしまっただろうか?)に所属する本格化前のウマ娘だそうで、既にデビューしている三人のウマ娘は三橋トレーナーがバイクで並走し、そして私が自転車で並走し本格化前の二人を見る

 

 聞いてもないのに歴代の風紀委員長に憧れているとか、『カッコイイ』を極めたいとか、何故か『カワイイ』ばっか言われて複雑、等とスピッツチアーの話を聞いていると、脚に何か当たった

「準備できたよ」

そう素っ気なく言ってクローバーレースは前を歩いて行き、スタートラインに向かった

スピッツチアーもぴょこぴょこ着いていき、彼女に並ぶ

 私も慌てて自転車に乗り、そして脚に当てられたのが尻尾だったことに気づいた

 

 

 見通しのいい直線を一定のペースで走り続ける

前を走るウマ娘二名には、腕にトレセン学園支給のバイタルウォッチ(のような物)が付けられていて、走った距離、速度、心拍数などの情報が測られており、自分が後ろで彼女達のドリンクなどを運ぶのと同時に、データの蓄積と三橋トレーナーのPCへの送信をしている

 本格化前で速度は控えめ、一定のペースで走る練習なので電動アシストの力で着いて行けてはいるのだが…

速度が時速30kmに近くなると自分の事で目一杯となってしまっている

 

 本来ご家庭の自転車に搭載される電動アシストをウマ娘のトレーニングについて行けるようにスポーツタイプに搭載され(そして魔改造され)た事により、自転車で体感した事のないスピードをコントロールしなくてはならない

 トップ層のレースで約1分で1000m(ほぼ時速60km)

公道などのウマ娘レーンでも制限速度時速50km

三橋トレーナーがバイクを使うのも至極当然

それより遅めのペースで走るとはいえ、流れる景色に恐怖を感じた

 綺麗に整備された道に感謝しつつ、普通の自転車に乗る時もヘルメットだけは絶対に装着しようと心に誓った

 

 

 戦々恐々しつつもどうにか往復を終えて、心身共に疲れ果てて座り込む

走った時間としては一時間ちょっとたが、ウマ娘側の疲労もかなりのものだった

 準備運動や、テーピングなどが行える広いエリアでは、三橋トレーナーが三人のウマ娘のケアを行なっている

 彼女達は次のレースも近く、一人は重賞を走るのだそうだ

デビュー前の二人も診るだろうが、後回しは致し方なし

 「〇〇さんー喉渇いたー」

ジャージの上着を脱いで半袖となったクローバーレースが絡んで来た

格好に関しては白い半袖で汗をかいている状態には言わなきゃいけないことがあったのだが、此方も汗だくでだらしない格好な上に思考が纏まっていなかったので、無言でスポーツドリンク(トレセン学園特注品)を渡すだけになった

 スピッツチアーにもスポーツドリンクを渡していると、ちょっとだけ不機嫌なクローバーレースから無言の圧力を受けた

 今まで走った後の行動は把握している

自分の荷物から冷えたオレンジジュース(100%)を取り出し、紙コップに注いで渡した

「少量ずつ、交互にだぞ」

「ふっふーん、分かってるって」

 途端に上機嫌になった

水分補給に糖分過多のジュース系はよろしくないので三橋トレーナーとの相談の結果の妥協点だ

 

 喜ぶ彼女に心癒されていると、手元のオレンジジュースをじっと見つめるスピッツチアーに気づく

紙コップをもう一つ出し、注いで可愛らしい小犬系ウマ娘に差し出した

 「いいんスか⁈頂きます‼︎」

目を輝かせ、尻尾をはためかせ、両手で飲み始める

皆んなが『カワイイ』と、言うのも納得である

 ちびちび飲んでいる姿を微笑ましく見ていると、腕を軽く叩かれた

叩かれた方向を見ると、クローバーレースが隣に立ってスピッツレースを見ているだけである

 

 座っている自分の腕に再び軽い痛みが走る

クローバーレースが尻尾をこちらに振り回してきたのだ

見上げた彼女の横顔は上機嫌では無かった

 

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