学生の多くが憂鬱になるであろうイベント、期末テスト
トレセン学園も教育機関であるので、ただ走るだけでは卒業することが出来ない
本格化という現象によってウマ娘達の走れる期間というものがあるため、その間の学業については優遇措置が取られるが、課題提出やテストが全く無いという訳でもないので、トレーニング、勉強、LIVEのダンス練習と学生は忙しいのである
アプリではない【ウマ娘トレーニングサポーター】の制度により(いつのまにか)『クローバーレース』の担当となった私は、大変な学生生活を応援すべく可能な限り彼女の要望に応えたいのであるのだが…
「ちゃんと歌って〇〇サブトレーナーさん!練習付き合ってくれるんでしょ?」
「…ハイ」
「いきますよ、サビの手前からです」
「…ハイ」
−−−♫
「きみの愛バがっ!!」
−−−ずきゅんどきゅん走り出しー
−−−ばきゅんぶきゅんかけてーゆーくーよー
−−−こんなーレースーはーはーじめてー
私は今、近くの運動公園の広場にて、恥ずかしさを懸命に押し留めて『ウマぴょい伝説』をセンターで踊っているのである
(尚、クローバーレースは二着の立ち位置)
ウマ娘達はウイニングライブでファンへの感謝として様々な楽曲のLIVEを行う
では、レースの後にだけLIVEが行われるかというとそうではない
春と秋に行われるファン感謝祭、有志によるLIVEイベントでの全国行脚、周辺地域、またはウマ娘に密接な関係のある地域から、町おこしのイベントの余興の一つとしてミニLIVEの依頼と、ウマ娘達のLIVEを見る機会は沢山ある
故に、トレセン学園では生徒たちに一定以上の踊る技術を求めている
元々ウイニングライブで必要となるし、応援してくれる者達が居てこそレースが成り立っているので、ファンサービスを疎かにするとお偉いさんから雷が落ちる、らしい
因みにLiveの練習と期末テストは関係がない
では何故毎度赤点スレスレな彼女と勉強をほっぽりだして一緒に踊っているのかというと、虎ならぬウマ娘の尾を踏み抜いたからである
「おじゃましまー」
「はい、どうぞ」
テストが近いというのもあって走るのを程々に、恒例となりつつある我が家での勉強会
最近暑くなってきたので冷たい飲み物の用意は万全だ
彼女のいつものは決まってはいるが、形式的に聞く
「オレンジジュースでいいよね?」
「ん…麦茶で」
「???!!!」
「何で信じられない物を見た感じになってるの?!偶には麦茶ぐらい飲むよ!!」
『
あまりの衝撃で漫画であったならば、きっと今の私は劇画調で描かれていただろう
その後、ご機嫌ナナメどころか直滑降した彼女の要望を叶える事によって勉強する約束を取り付けた
その要望が、ダンスレッスンだった
しかしながらダンスの講師でもない、“踊ってみた”系の配信者でも無いダンス初心者の私が教えられる筈がない
付け焼き刃でしか無いが『ウマぴょい伝説』のサビパートのセンターだけをどうにか頭に叩き込んで、クローバーレースが二着時の動きをする練習を行っている
音源は私のスマホから、そしてクローバーレースの物は後日、動きの確認に使う為に私達を撮っている
そう、私の歌と踊りは撮られている
電子記録媒体に残るのである
見目麗しいウマ娘が踊っているものならば多くの関心を得られるだろうが、冴えない自分の未熟な踊りを見たいものなど居ないだろう(自分だって見たくない)
しかし彼女はご機嫌である
何回も通して踊った映像を確認しながら頷き、再びカメラをこちらに向けてセットする
「じゃぁ、次はわたしが三着の踊りをするね。〇〇さんは引き続きセンターで」
「…ぜぇ…ぜぇ…少し…休ませて…」
「しょーがないなー、十分だけですよー」
そう言って先程撮ったダンスを見返し始めた
耳と尻尾が忙しなく動いているが息も絶え絶えな私はそれ以上の情報を汲み取ることが出来ない
芝に直接座り込み、息を整えつつ空を見上げる
雨続きで暫く見えなかった青空も、今後は暑さを伴って目にする機会が増えていくだろう
「もうすぐ夏ですね」
「…そう…だな」
「時間が経つのがあっという間ですね、初めて会った時から」
「………うむ」
「ちょっと過ぎちゃったけど一周年のお祝いでもしませんか」
私の認識では、彼女と対面したのはついこの間の春の事である
一年前の出来事と言えば、【ウマ娘トレーニングサポーター】がリリースされた事だろう
体験したことのない、彼女との出会いの話を追求されないように、何事も無いように祝事に賛同した