起きて目覚まし時計の針が指し示す時間を見て、愕然とした
私の職場はお盆前に忙しくなる傾向があり、いつもより遅く仕事を終えて帰宅して、晩御飯もそこそこにして寝て朝早く起きる
幸にして連日の猛暑の日々だが、長い時間を建物の中で働くのでどうにかこうにか休みの日まで体を持たせたが(この時期に外で働いている方には頭が下がる思いである)この日は約束事があった
約束の内訳は五時半に、私がサブトレーナーとして担当している『クローバーレース』と共に夏合宿を行っている
時計の針は五時近く
急ぎ身支度と機器の準備を行い、アプリにて連絡を取る
[落ち着いてください]
[今は朝の五時ですよ]
…はて?
返ってきたのはこのような文であった
“外は明るいのに?”
[夏の朝は早いですからね]
“こんなにも静かなのに?”
[朝ですからね]
[それに元々静かな場所がいいとそこに決めたのでしょう?]
“朝の五時?”
[お仕事お疲れ様です…]
[今日は二度寝しても良いんですよ…]
携帯の時計は数字の『5』が一番左であった
次第に寝起きで鈍っていた頭が働き始め、今が朝であることを少しずつ受け入れ、朝早くから連絡した事を謝罪した
夏は本格化したウマ娘が劇的に成長する季節である
故に、夏はチームトレーナーは毎年御用達の合宿施設へと赴いたり、個人のトレーナーや見習いトレーナー、本格化を迎えていないウマ娘達はトレセン学園が主導する合宿で纏めて管理している
私が育てているチーム『モサラー』の今年度の夏合宿は、他チームとの合同で行う事にした
それぞれが5、6人程が所属するチームで、本格化が始まって数年経ったシニア級、去年本格化したクラシック級、今年本格化してデビュー戦、もしくはこれからデビュー戦のジュニア級、本格化してないウマ娘が各チームにバラけている
当然、それぞれの練習強度が変わってくるため、チーム単体で夏合宿を行なってもウマ娘を見るトレーナーが足りなくなるので、今年度はお互いに合意して同じ実力のウマ娘が隣にいる状況を作り合宿を決行した
「三橋トレーナー、どうして『メガドリームサポーター』が使用できないんですか?」
「あんなオーバーテクノロジーを複数動かすのにどれだけの電力が居ると思っているのよ」
夏の茹だるような暑さの昼を避けるべく、朝と夕方の二回に分けた練習の前半、波の音だけが響く砂浜にて担当の『クローバーレース』が開口一番に聞いてきた
「学園主導の合宿場には実装されてるじゃないですか!」
「あれは理事長がお金を出しているし、夏合宿終了後は『ドリームトロフィーリーグ』(『トゥインクルシリーズ』を引退したウマ娘達の為のリーグ)に使われるから政府からも補助金が出て大規模の電力が使えるのよ」
そんな言い合いをしていると、私のチームの『スピッツチアー』と、他のチームのまだ本格化前のウマ娘が集まって来た
「揃ったわね、じゃあ今日も練習を始めましょうか」
「ヨロシクッス!今日は何をヤルんスか!?」
本格化を迎えていないウマ娘の中でも小柄な『スピッツチアー』が手を上げつつ質問をしてきた
「ダンスの練習です」
またぁ?!とか、えぇ?!等の声が聞こえてきそうなほど表情を歪めるウマ娘達
「黙らっしゃい!本格化も来てないのにハードな練習をしすぎるのも駄目なのよ!毎年合宿所近くのお祭りで、前座も兼ねて踊るんだし今のうちに『GIRLS’LEGEND U』や『うまぴょい伝説』を完璧にしときなさい!」
「センセー誰も何も言ってません」
「茶化す余裕あるわねクローバーレース、さぞかしセンターもバッチリのようね。じゃあお手本として貴方からよ」
うへぇ、とか情けない声を出し尻尾を跳ね上げるクローバーレース
彼女からの懇願の視線を無視して音源を用意する
「『Winning the soul』ね」
「それ本格化前のウマ娘が演る出し物に含まれて無いじゃないですか?!」
「隠れて練習してるの知ってんのよ」
「じゃぁマイクスタンド必要っスね、どうぞ」
「流木でやれと?!」
この後容赦なく音源を流し、手渡された流木で行うマイクパフォーマンスにダメ出しをしまくった
尚、他のウマ娘には『GIRLS’LEGEND U』や『うまぴょい伝説』をやらせた
余りにも疲れて朝と夕方を誤認して跳ね起きたのはガチ
暑さに負けないようにしないと…