ウマ娘の新アプリがリリースされました   作:たかなしゆういち

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【閑話4】それぞれの聖蹄祭

 

 「待たせたな!皆の者!今日は人間界の最新の娯楽を学んでいくぞ!」

 

 〔待ってた〕

 〔¥500 今日の悲鳴代〕

 〔魔 王 降 臨〕

 〔またヒゲの赤いオジサンが傀儡人形に…〕

 〔✕今日は→◯今日も〕

 〔今日は従者おらんのけ?〕

 

 「毎度毎度悲鳴をあげると思わぬことだな!後『スピッツチアー(駄犬)』は『聖蹄祭(せいていさい)』に掛かりっきりだ!今日の我輩は誰にも止められぬぞ!」

 

 〔おらんのか残念…〕

 〔一人で大丈夫?クリアできる?〕

 〔むしろ聖蹄祭に行って仕事ぶりを見に行くべきでは?〕

 〔イベント時のトレセン学園の混み具合はヤバイぞ、魔王の貧弱な身体じゃ無理だ〕

 〔そうか?人と人の間をすり抜けられるスリムボディぞ?〕

 〔ふむ、スリム…(一点を凝視しながら)〕

 

 「人間界だから3Dモデル(コレ)は仮の姿じゃい!!魔界に戻ればオマエラを魅了させることなど造作もないわ!」

 

 〔期待しないで待っとくわ〕

 〔¥300 牛乳代〕

 〔【母君】あら、私に敵うかしら?〕

 〔魔王様の母君?!いらしてくださったのですか?!〕

 〔おまいら襟元を正せ、女王の御前であるぞ〕

 

 「おかあ…?!コホン、これからは我輩の時代である!母君は魔界でヌクヌクとしているがいい!!」

 

 〔【母君】そう…なら実力で示しなさい。私より早くゴールできるでしょうね?〕

 

 「なっ…!オンラインで入ってきただとぉ?!」

 

 〔わざわざゲーム買ってきたんか…〕

 〔(一緒に遊びたいだけなのでは…?)〕

 〔今日も母娘の仲は良好っと〕

 


 

 トレセン学園の秋のファン感謝祭、『聖蹄祭』は、10月31日のハロウィンと、11月3日の文化の日の間で開催される

 トレセン学園生がファンをもてなすのだが、レースに出場するウマ娘は土日のレースのために調整や移動をするため、レース直前の日は学園には居られない

 なので、レースがあるウマ娘は影響の少ない日を事前に告知し、聖蹄祭に参加してファンと交流を行う

 

 当然告知された日はファンが詰めかけるのが目に見えている

際限なく学園に入れることが出来ないため、事前申請の上で抽選となる

 (ファンによる人気投票で出場が決まる『宝塚記念』『有馬記念』の投票と同じシステムを用いて、一人一票のみ転売不可)

 

 そんな高倍率必至の入場権だが、【ウマ娘トレーニングサポーター】の制度で『クローバーレース』のサブトレーナーとなった私は、関係者扱いとして入場することが出来た

 

 2000名ものウマ娘が在学し、レース場をも内包するトレセン学園の広さに驚き、ハロウィンの仮装で行き来する人とウマ娘の多さに戸惑い、屋台ブースにあるお菓子や人参焼き、焼きそば、ラーメンと様々な匂いについお腹がなったり…

 

 他にも体育館では学生による演劇や、演奏、校舎内の教室ではウマ娘が給仕するカフェや展示物、そしてレース場にはライブ会場が組まれ、入れ替わり立ち替わりしてライブを行っている

 

 今回の主目的であったクローバーレースが出演するライブは無事見ることが出来た

ただそのライブでハプニングがあったが…

 

 「まさか、センターに当たった飾りに巻き込まれるとは…」

「やっぱりおかしいですって、『トレセン音頭』。飾りを頭にぶつけるなんて、しかも隣も巻き込む可能性があるのは」

 

 ライブの演出でセンターに落ちた飾りが跳ね上がって、少し離れたクローバーレースの頭へと吸い込まれた

 最初から当たると分かってて心構えが出来ていたセンターのウマ娘と違い、意識の外からぶつかったので混乱した彼女は、暫くの間周りと動きが合っていなかったがなんとか最後まで踊りきっていた

 

 「〇〇さーん、オレンジジュース〜」

「はいはい」

 

 柔らかい素材とはいえ頭を揺さぶられたのは事実

幸いにも次の予定が無かった彼女を休ませる為、現在は彼女の住む寮『美浦』寮の近くのベンチで彼女のご機嫌取り中である

寮の周辺には展示ブース等が無いので人気が少ないので、ベンチに横たわっていても咎められることも無いだろう

 

 「…まぁ、役得?かも?」

「何か言ったか?」

「なんでもないでーす」

 


 

 「すごく並んでるねぇ」

「うん…」

 

 トレセン学園に通う『ムラクモヒメ(ヒメちゃん)』に誘われて、『せいてい祭』に来た

 お父さんとお母さんと一緒にヒメちゃんのいる教室でやっているカフェだけど、たくさんの人が並んでいてすぐには入れそうも無かった

 

 「やっぱり『セレーネグリマー』目的かなぁ」

「グリちゃん?やっぱり強いの?」

「何言ってんのよ、勝負したらウチのヒメちゃんがぶっちぎるのよ」

「母さん、そもそも二人の距離適性が合ってるかもわからないよ」

「ん…、どっちも頑張ってほしい」

 

 そんな事を話していると、オオカミの頭の帽子(?)をつけて、お菓子を大量に持ったウマ娘が近づいてきた

 

 「あっ!お久しぶりッス!」

「おや、アーちゃん。元気そうでなりよりだよ」

「ちょっと、何でこんなカワイイウマ娘と知り合いなのよ⁉︎早く教えなさい!」

「え、えと…この間ヒメちゃんとの練習の時に一緒に練習してた…」

「【ウマ娘トレーニングサポーター】仲間の〇〇さんのところのチームメイトで…」

「『スピッツチアー』ッス!初めまして!風紀委員で見回りをしてるッス」

 

 まだまだ長い行列が続く廊下で、アーちゃんはお母さんにあいさつをするとこちらを向いた

 

 「ナギト君ナギト君、何か言いたい事があるんじゃないッスか?」

「えっ?!…っと」

 

 急に言われて言葉に詰まる

目の前のアーちゃんは、灰色の毛皮を身に着け、所々穴が空いたり破けた服を来たオオカミ男(女?)の格好をしていて…

 

 「カッコいいね」

「おおっ!わかってるッスね!…じゃなくてッスね…」

 

 一瞬眼をキラめかせた後、表情をいつもの笑顔に戻して僕の目の前に持っていた大量のお菓子をチラつかせた

 

 「えと、えと…トリックオアトリート…?」

「仕事中なのでイタズラは勘弁してほしいッス!だからコレをどうぞ!」

 

そう言って差し出されたのは黄色と紫のハロウィンカラーの棒付きキャンディーだった

 


 

 私、『ムラクモヒメ』はジュニア期で纏められたクラスで、ハロウィンの衣装を着てカフェを開いています

 知らない人への対応は苦手ではあるのですが、今後レースで走り続けるにはファンへの対応が大事になるので頑張って相手と喋れるようになるチャンスです

 

 「あ、貴方も鬼に、なりませんか…?」

「ありがとう御座います!!ありがとう御座います!!」

 

 今の私は和服に角を付けて、『鬼』の格好をしているのですが、お団子とお茶を運んだテーブルにてこのファンサービスを求められ続けられています

何かの漫画らしいのですが私はよく知らないのですが、最初に求められたお客さんから口コミやSNSで広まったようで以降ずっとお願いされました

 私以外にメディアに取り上げられるような同期はいるのですが、それでも私を指定してくれるファンが来てくださるのは嬉しい事です

 

 「あ、ヒメちゃん!私ライブ近いから抜けちゃうね?」

「うん、グリちゃん、頑張ってね?」

「終わったら私のトレーナーさんと少し回ってから戻るから!」

 

 慌ただしく出ていったのは私のクラスメートでルームメイトでもあるグリちゃんこと『セレーネグリマー』です

 全体的に白く、飾りも白い羽だけのシンプルな天使の衣装でしたが、ウマ娘の中でも上位の美貌も合わさり確実に一番の指名数です

 

 「ヒメちゃーん!ご指名で〜す!」

「は、はーい!」

 

 まだまだ長い行列が出来ています

お茶を淹れて、料理を準備して運んで、今日は大忙しです

 

 

 「お、来た来た」

「わ!キレイ…!」

「やっぱりウチのヒメちゃんが一番ね!」

「随分と親バカだねぇ…」

「…⁈あ…⁈ようこしょいらっしゃいました!」

 

 次のお客さんは【ウマ娘トレーニングサポーター】の制度でお世話になっている村中さんのご家族でした

 急によく知る方にテンパってしまい、噛んでしまいました

 

 「ぁぁあああ貴方も鬼になりませんか‼︎」

 

 違った!さっきまでのファン対応の流れでそのまま!

 

 「ウチにはすでに鬼嫁ガッ⁈」

「ダレノコトカシラ?」

「鬼?角を付ければいいの?」

 

 テーブルの下で何か音がしたようですが、何でも無いよと言われ、オーダーを貰って調理スペースへと戻りました

 

 「お帰りー、あれ顔真っ赤だよ?赤鬼にジョブチェンジ?」

「うぅぅ、失敗したよぅ…」

「まードンマイ?」

 


 

 私は今、クローバーレースと共に十分に休憩をし、三橋(みはし)トレーナーに一度診せてからトレセン学園内を歩いている

 

 「〇〇さん、次は何処に行きますか?」

「そうだな…少し休みたいからカフェのスペースにでも行きたいが…」

「教室の方は混んでますからトレセン併設のカフェの方が良いですかねー。ヒメちゃんにも会いたかったけど…しょうがないですね」

 

 トレセン学園内は広いので、彼女に先導してもらいカフェへと歩く

つかず、離れず、右に左に

私の前をフラフラと歩き、ユラユラと尻尾が踊る様を見ていたら、急に此方に振り向いた

 

 「〇〇さん」

「どうした?」

「次のファン感謝祭は春ですよ?」

「そうだな」

 

 「来て、くれますか?」

 

 「勿論」

 

 その日、秋に咲く満開の花を見た

 

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