ウマ娘の新アプリがリリースされました   作:たかなしゆういち

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転機は突然にやってくる

 

 11月23日、勤労感謝の日

日本の祝日の一つであり、元々は農作物の収穫をお祝いする宮中行事が由来とされている

 

 働く人々に感謝を示すこの日は多くの人が休日となる、が

 

 「アタシ達トレーナーやサービス業には関係ないですがねぇ!?」

「どうした、急に」

 

 トレセン学園のトレーナーに祝日は関係ない

毎週のように開催されるウマ娘達のレースのために日々の練習を吟味するトレーナーには、平日の祝日も自分の担当を鍛え上げるいつもの日である

 

 「というか三橋(みはし)、祝日が関係ないのはいつものことだろうに。なんでそんなに荒れているんだ」

「昨日は11月22日だったのよ…」

「…それが何か?」

11月22日(いい夫婦の日)…地元の友達から入籍報告が来たのよ、えぇ」

「まー気にすんなって」

「そのうちアンタも周りが結婚しはじめるのよ!」

 

 

 

 

 「ふ、フフ、流石に…緊張してきますわね…!」

 

 今週末、未勝利のウマ娘のレースに出場する『スノウエンゼル』の為に集中的に指導する

残るチームメンバー四人にはお願いして自主練、もしくは【ウマ娘トレーニングサポーター】制度のサブトレーナーにお願いした

 

 「東京でレースが出来ると、移動を考えなくて済むのがありがたいですわね」

「それには同意するわ、チームメンバーも一緒に移動するのもお金がかかって仕方がないもの」

 

距離2000

彼女の適正にとってはもう少し距離が欲しいところ

だがあまり贅沢を言っていられない

中央のトレセン学園では、未勝利のままトゥインクシリーズには居られない

デビューした年から来年の9月までに勝てないと、地方へと移籍するか、障害走に出るか、そして退学するかだ

(珍しいところでは、サポート科に移るウマ娘も居ないわけではない)

 

 「思い切って大外から捲りに行くのはいかがでしょう?」

「…いえ、今後トップ層を目指す事を考えたらバ群から抜け出す技術を磨いて行くほうが…」

 

 

 「お疲れ様でーす!差し入れ持ってきましたー!」

 

 チーム室で話し合っていると、扉が勢いよく開かれ『クローバーレース』が入ってきた

 

 「ノックをしなさいと言ってるでしょうが…!」

「うひゃあ?!すみません!つい勢いでっ!」

「お疲れさまですわ、クローバーさん」

「机に並べてちょうだい。それと、貴方はこれから出かける筈よね、勉強道具を持って」

「わたしだけ、なんで〈賢さ〉トレーニングなんですかねぇ…」

 

 ぼやきながら手に持った荷物を机に置き、中身を取り出すクローバーレース

出てきたのは駅前などによくあるスイーツショップのシュークリームだった

 

 「皆からの差し入れです、トレーナーもどうぞ」

「ありがとう御座います!ワタクシ絶対に勝ちますわ!」

「頂くわ」

「お飲み物はいかがなさいます?ワタクシ、紅茶を淹れようかと思いますの」

「そうね、私も同じのでいいわ」

 

 行ってきますわ、と言い紅茶の準備を始める為に席を立つスノウエンゼル

そして近づいてくる笑顔のクローバーレース

 

 「…何か言いたげね」

「いやぁ、今日勤労感謝の日じゃないですか」

「そうね」

「肩でもお揉みしましょうかーって」

「お小遣いのアップのお願いなら聞かないわよ」

「言いませんよっ?!そもそも貰ってないじゃないですか!」

 

 会話の応酬をしているうちに後ろに回り込まれ、両肩に手が置かれる

 

「力加減には気をつけなさいよ?」

「頑張って覚えますね?」

「……まさか被験体じゃないでしょうね?」

「ハハハ、マサカ」

 

 

ーーーとあるトレーナー室から悲鳴があがった

 

 


 

 

 秋らしさ、というものを感じたと思ったら冬の到来を予感させる冷たい風に晒され、コートが手放せなくなったこの頃

 また、コンビニやスーパーでは早くもクリスマスのPOPや正月飾りが並び、年末が来るのだと視覚的に訴えてくる

 

 『この世界』では『駿大祭(しゅんたいさい)』なるものがあるのだが、今回はタイミングが合わず見送りになった

 

 「…お疲れ様でーす」

 

 祝日で仕事がお休みということもあり、三橋トレーナーより『クローバーレース』を任された

が、いつも元気な彼女だが笑顔のまま少しだけテンションが低い

 

 「まぁ取り敢えず入って、荷物置いて」

「お邪魔しまーす」

「…それで、ちょっと元気無さそうだけど」

「まぁ少し?失敗しまして。ほんとはマッサージをしたかったんですけど、禁止令くらっちゃいまして」

 

失敗、マッサージ、禁止令

単語だけ拾うと何があったのかが朧気ながら察した

 

 「でもでも、良いニュースがあるんですよ!〇〇さん!」

「ほう」

 

 

 「なんと、来年デビューすることになりました!」

 

 

「そう、か。遂に」

「ハイ!」

 

 いつかは来るだろうな、とは思っていた

毎年数多のウマ娘が夢を見て、そして殆どが失意に沈む、トゥインクルシリーズ

 

 それでもウマ娘達はトゥインクルシリーズを目指す

ウマ娘用の球技があるにも関わらず、歪な程にトゥインクルシリーズに固執していると言ってもいい

 

 だが、それが『この世界』のあり方だ

私はただ、彼女を応援するだけである

 




まだ11月23日だから滑り込みセーフ
教訓、普段からチマチマ進めておくべし…
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