冬の空は綺麗だと言う
冬は空気が乾燥して、大気中の湿気や不純物が少なくなるからだそうだ
普段より澄み渡った青空を見上げて、冬といえば鍋だな、なんて取り留めのない事を考えながら慣れしたんだ通勤路を歩いている
一人分の料理というのは存外面倒なものだ
材料をきっかり一人前を買うのも難しく、手間暇かけてもできる量は一食分なのが手間に思えてしまって、一回で二、三人分作って複数回に渡って食べ切る方が良いと考えている
(保存をしっかりしないと病院のお世話になりかねないが)
しかし、一緒に食べてくれる人がいれば、ましてやよく食べるウマ娘ならば料理の余りの処遇を気にしなくても済む
豆乳を使った鍋か、白菜と豚肉を何層にも重ねた具材を敷き詰めた鍋か、寒さに対抗すべく辛いモノを使った鍋か
いつも年末を寂しく過ごしていた私ではあるが、今年の年末への期待は少しだけ晴れやかだった
「おう、片付けは終わったな?じゃあ正座だ」
ここはトレセン学園、二つある学生寮の一つ『美浦寮』の食堂である
トレセン学園の昼食は、学園内のカフェテリア他、在校生約2000名を相手に作られた飲食ブースで食べるが、朝食、夕食は寮内で作られる
寮のスタッフが纏まった量を作ってはくれるが、育ち盛りなウマ娘の中には物足りなくなる子も多く、その際は寮内の広めのキッチンにて自分で調理して食べることも可能である
そんなキッチンに繋がっている食事スペースにて、机と椅子を退かして広げた空間で、美浦寮の寮長と、正座したウマ娘が三人。三人はとある一つのチームに所属している者達であった
「「「申し訳ありませんでした」」ッス」
「ヨシヨシ、謝れて偉いぞ。………で、何する気だったんだ?」
ウマ娘三人が綺麗に土下座をするのを見届けた寮長が、今回の顛末を聞き出そうとする。
事件のあったキッチンは、先程まで行われていた掃除が完了して綺麗ではあるが、材料が飛び散り、食器他様々な物が乱雑にばら撒かれ、目も当てられない状況だった
「鍋を…作ろうとしてたんです」
クローバーの髪飾りを着けた『クローバーレース』と呼ばれるウマ娘が罰が悪そうに声を絞り出す
「その…四苦八苦しながらも材料を切り終えたまでは良かったと思うのですが」
白く、長い髪を料理の邪魔にならないように後ろで纏めていた『スノウエンゼル』と呼ばれるウマ娘が続けた
「先輩方の手つきが危なっかしかったんで、ずっとフォローに回ってたんスけど…材料を入れて火をかけたまでは変な事は無かったはずなんスけどねぇ」
三人の中でも一番小さい『スピッツチアー』と呼ばれるウマ娘がぼやいた
「「「まさか鍋が爆発するとは…」」」
「その原因を一番知りてぇんだがなぁ…」
「美味しいですわ!寮長!とっても満たされますの!!」
「ご飯なしを覚悟してたッスけど!優しさが身に染みるッス」
「塩加減がバッチリ!流石料理上手!」
「ヒシアマ姐さん程じゃねぇよ。ただの塩むすびなんだが、まぁ喜んでもらえて嬉しいよ」
机を戻して四人でテーブルを囲み、容疑者三人がキッチン清掃中に寮長が握ったおりぎりを頬張る
「しかし、サポート科の方々から頂いた、科で栽培したという人参を食すことが出来なかったのは申し訳ありませんでしたね…」
「おい、ちょっとそれは聞いてないが?」
「大先輩から『鍋か?じゃあこの五六四印の出汁をプレゼントしてやるよ』って貰ったのに、感想を言えず終いッス」
「ぜってー重要参考人じゃねぇか」
「わたしは空きの土鍋に猫が丸まっているのを見ていただけなのに…」
「アンタは料理放棄してんじゃないよ?!」
「でも猫ですよ?!撮るでしょ?!」
「………………料理中は料理に集中!」
寮内にて起きた爆発事件は、奇跡的に怪我人ゼロではあったものの、真相は迷宮入りとなった
(猫は無事、トレセン学園の理事長の下へと帰っていった)
「それで、罰って形で料理の修行も兼ねてクリスマスに寮住みのウマ娘達用の料理を作ると」
「「「はい…」」」
私のチームメンバーから寮内でトラブルを起こした、という報告を受けトレーナー室で顛末を聞いている
「まぁ、いい機会じゃない。覚えといて損はないわよ」
「
「基本的なものは一通り作れるわよ、凝ったものは自信ないけど」
「へぇー、おっとなー。でも恋人はできな…」
「アタシからも特別指導してあげようかしら?」
「何も言ってないです何も言ってないです」
明日のクローバーレースのトレーニングの予定を、少しだけ変更した
各ウマ娘のフレーバーテキスト的技能はダイスを振って決めてたりする
1D100で高いと良し、みたく
それぞれどんな数字を出したかは秘密