ウマ娘の新アプリがリリースされました   作:たかなしゆういち

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今も誰かの為に、誰かが走っている

 

 テレビはクリスマス特集、ラジオではクリスマスソング、駅周辺の大きな樹にイルミネーションを施し、スイーツ店ではクリスマスケーキの店頭販売を行い、ファーストフード店やコンビニではチキンのいい匂いが漂い、デパート、オモチャ屋、その他様々なお店で大切な人に贈るプレゼントの販促が行われている…

 

 今日はクリスマスイブ

聖なる人物の誕生前日

 

 厳かな雰囲気で過ごす所もあるが、イベント事は大体騒いでいる(人が多い)この日本では、賑やかで輝いた場所で仲間と家族と恋人と楽しい時間を過ごす…

 

 

 「クリスマスなんて…クリスマスなんて…!」

「うだうだ言っている暇があるのなら手を動かすんだ、石川」

 

 社会人である私、いや私たちはそんな楽しい時間を維持するべく動いている

 

 当然の事だが、何かしらのイベントを行うという事はその為に働く誰かがいるという事で

 料理を作る人、荷物を運ぶ人、商品を売る人、会場を運営する人、警備をする人などなど…

我々が当たり前と思っている『普通』の生活には多くの人が携わっている

 

 

 「ほら、『ボス』も言っているだろう?この世界は誰かの仕事があるからこそ回っているのだと」

「たとえそうでも自分は恋人が居ないからってイブに仕事を割り当てられるのは嫌ッス!」

「止めてくれそれは私にも効くんだ」

「先輩はまだいいじゃないですか!ウマ娘ちゃんに慕われて、ちょくちょく連絡取り合っているじゃないですか!」

「ただのお手伝いだ、親戚の子の面倒を見る感じだ」

「自分にとってはめっちゃ羨ましいです!」

 

 その後も後輩から【ウマ娘トレーニングサポーター】の担当ウマ娘である『クローバーレース』について根掘り葉掘り聞かれた

 

 


 

 

「サンタだ!捕まえろ!」

「プレゼント!プレゼントちょーだい!」

「今年こそ、その速さの秘訣を教えて貰おうか!」

「その正体、暴いて見せるのだ!」

「ちょっとだけ!ちょっとだけ針を刺して血を抜くだけだから!」

 

 

 私、『ムラクモヒメ』はトレセン学園の生徒会室で、前後が逆のサンタ衣装を身に纏って待機しています

 

 トレセン学園は冬休みに入っており、寮住みの生徒の中に実家に帰るウマ娘も居ますが、クリスマスイブにパーティーを行うとの事で残っている生徒も沢山居ます

 

 今、有志による生徒がサンタ衣装を着て、お菓子やプレゼントを渡し回っているのですが…

 

 「待って待って待って‼︎コレコレ!サンタ代行なの私!」

「えー⁈また騙された!」

「残念…でもサンプルは多い方がいいか…ちょっと失礼」

「ひっ…誰か助けてー‼︎」

「ハイハイハイハイ!風紀委員ッス!危険物の持ち込みは禁止ッスよ‼︎」

 

 遠くで誰かが捕まったようで、悲痛な叫び声と、よく知っている『スピッツチアー』の声が聞こえて来ました

前日渡された『サンタ代行許可証』ですが、サンタは実在する、と言う夢は守られそうですが、自分の身の危険からは守れそうもありません

 

 [今年度も、中等部のウマ娘、そしてサポート科の過激派からの追跡が激しい]

 

 帽子の中に隠された無線機から連絡が入ります

陽が沈み、周囲が暗くなって遠くにいる人が見えづらくなった時間帯が私の出番

 

 [作戦は伝えた通りだ。クリスマスツリー周辺のウマ娘の視線を…ツリーから逸らす]

「はい、わかっています…」

 

 衣装に組み込まれたマイクで指揮を取るクリスコーチに返答します

 

 今一度、『サンタ代行許可証』が走っている途中で落ちないか、確認します

 ですが、前後逆のサンタ服を着て走る『背走サンタ』の姿を見られて私だとバレるのも正直嫌です

 脚質は追い込みなのですが、常に全力の逃げを覚悟しなければならなそうです

 

 [そろそろ…時間だ]

 

 アップは事前に済ませてあります

プレゼント袋を持って生徒会室の出口の扉に向かい、ドアノブに手をかけます

 

 [では…作戦開始(mission start)

 

 その日、トレセン学園七不思議の『背走サンタ』が現れたという噂が飛び交った

 

 


 

 

 トレセン学園内の美浦寮のキッチンで、『クローバーレース』と『スノウエンゼル』と呼ばれるウマ娘が座り込んでいる

 

 「うっし!お手伝いお疲れさん!」

 

 彼女らの住む美浦寮の寮長が彼女らに労いの言葉をかける

疲労困憊な二名のウマ娘とは違い、自分の調理を行いつつ指示を飛ばしていたのにも関わらず、今も後片付けを行っている

 

 「ワタクシ…トレセンのお料理スタッフには改めて敬意を払いますわ…」

 

 シチューやスープなどで使う野菜をひたすら切り刻んでいたスノウエンゼルが真っ白に燃え尽きていた

 

 「アーちゃん…どうしてわたし達を置いていったの…?」

「しゃーないだろ、『スピッツチアー』は風紀委員の仕事なんだから」

 

 こちらも食材の運搬やその皮剥き、調理の器具の洗浄、その他雑用を一手に引き受けてグロッキーな『クローバーレース』が恨めしそうに呟く

 

 「ちゃんと『有マ記念』の時はテレビの前に置いてやったろ?」

「それは感謝しておりますわ!いつかワタクシもあの歓声をこの身に受けますわ!」

「勝ったの超ベテラントレーナーの所のウマ娘でしょ?…勢いつけて抱きしめてたけど無事かなぁ…」

「それと、後でツリーの所に行ってみな、アンタら宛にプレゼント届いてると思うぜ?」

「あら?それは楽しみですわね!」

「えー?本当ですか?」

「残りの洗い物はいいから行ってみな?」

 

 


 

 

 トレセン学園の練習場で今も尚練習しているウマ娘が居る

ライトに照らされたターフを

 

「…ハァッ!ハァッ!……はぁ、ふぅ…トレーナー、タイムは?」

「…!」

「…よし、ホープフルステークスも期待しててね!絶対勝ってくるから!」

「………」

「…あぁ、パーティー?…まぁ、気になるけどレース前だからね。万が一にも食べすぎましたー、なんて、駄目でしょ?」

「…」

「寂しくはない…訳ではないけど、同室のヒメちゃんは忙しそうだしね。そ・の・か・わ・り…レース後はいーっぱい、甘やかしてね?」

「…⁈」

「ほらクールダウンするよ?背中、押してくれる?」

 

 


 

 

 仕事を終え、自宅に帰る道中のケーキ屋にてショートケーキを購入した

 

夕食の準備をしようとすると、【ウマ娘トレーニングサポーター】のアプリによる通話の着信が入った

 

 「お仕事お疲れ様です!〇〇さん!今大丈夫ですか!」

「あぁ、今自宅に戻った所だ」

「そうでしたか、ちょうど良かったです!」

 

 スマホから『クローバーレース』の元気な声が聞こえてくる

日付はまだ変わっていないが…この様子だと届いているらしい

 

 「プレゼント、有難うございます!これでバッチリレースに勝って来ますね!」

 

 

 12月に入ると【ウマ娘トレーニングサポーター】のアプリ内に、プレゼント購入の項目が追加された

 自分の担当へ、アプリ内にて表示された大量の商品を『マニー』ポイントで購入してサブトレーナー名義でクリスマスに届ける、と言うものだった

 

 今回、彼女に贈ったのは、ハンマーや鑢、固定器具などが揃った質のいい『蹄鉄のメンテナンスキット』を贈った

 メンテナンスの仕方の説明も付属していて、普段の練習に使うシューズの蹄鉄の着脱、整備、調整で活躍する

 

 来年、彼女はトゥインクルシリーズをデビューする

彼女には悔いの残らないよう、走り切って欲しい

 

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