素敵な衣装であんな顔して体当たりしたら死人が出るんよ
(爆死した)
「あ、カナカナ〜。ニュースみてニュース」
新年開けて数日たった日の夜、トレセン学園で私と同じくトレーナーをしている桃井と一緒に彼女の自宅で飲み会をしていた
「何かあった?」
「お〜美味しそうなツマミ〜♪…はむ…ん〜♪」
「いや答えなさいよ…」
私が今し方作ったツマミに夢中な飲兵衛は放っておくことにして、言われた通りに部屋の賑やかしをしていた大きめなテレビに目を移す
『とっても嬉しかったです!現役時代ずっと応援していて今でも勝負服姿のカードは持ち歩いています!サインも書いて頂いて最高の新年になりました!』
『着物姿がとても素敵でした!この写真は家宝にします!』
『とれせんがくえんに、はいりたいっていったら、ガンバッテっていってもらえました』
『昔っから商店街全員であの子を可愛いがってな?もう孫みたいなもんよ。レースに出るって時はみーんな店番ほっぽりだしてテレビに齧り付くから、終いにゃデッカいテレビを外に出して全員で応援したんだよ』
『…と、このようにこの神社に町おこしの一環として、あの「ナイ…』
テレビでは雪が積もる神社にて、参拝に来たと思われる老若男女へのインタビューが流れていた
ナレーションと共に、私にとって懐かしい顔のウマ娘が、緑と白の縞模様の着物に臙脂色の袴姿で参拝客にお守りや屋台の食べ物を渡す映像が流れていた
「チャン
「その呼び方されたらいつも複雑そうな顔をしてたわね」
「双方の年齢は関係ない、チャン姉はチャン姉だからチャン姉なのだ」
「まぁ後輩に慕われたのは事実ね、いつも誰かしらの面倒を見てた気がするわ」
「チャン姉のトレーナーも北海道に行ったんだっけ?」
「次代の担当バがG1とって引退した後に、あの子の元にすっ飛んでいったわよ、引き継ぎを最低限だけ終わらせて」
「愛だねぇ…」
「あそこまで振り切れるとむしろ尊敬までいくわ」
「バレッち、そろそろ本格化?」
「…『クローバーレース』…よね?データから見ても今年デビューになりそうよ」
「人口知能様々だねぇ、事前に育成計画が立てやすくなったし。あ、カナカナ、葉っぱが描いてあるお酒取って〜」
「はいはい」
お店でもやるのかと言うほど棚にずらっと並んだ酒瓶の中から注文された物を手渡す
彼女はそれを慣れた手つきで自分のグラスに注ぐと瓶を此方に返した
戻してね、と言う事だろう
いつもの事だし普段飲まないお酒を貰っているので丁重に元の場所に戻す
「この前すっごい笑顔でシューズと蹄鉄付ける為の道具を手入れしてたよ〜。意外と職人気質?」
「違うわよ。あの子、【ウマ娘トレーニングサポーター】でお世話になっている人から貰った道具を使うのが嬉しくて仕方ないのよ」
「なるほどぉ…思い入れのある物って、大切にしたくなるもんねぇ」
「今までシューズを全く調整してなかったわけでは無いけど、今じゃ一日に一回はやってるわ」
「愛だねぇ…」
「愛…愛でいいの?」
「ん〜“レアさま”も、【ウマ娘トレーニングサポーター】を勧めてみようかなぁ…」
「“レアさま”…去年チームに入れた子?」
「そそ、茶髪で片目隠して紅の目をした子」
「あぁ、もしかして特徴的なしゃべり方をする、『ディアレッド…」
「アイ』だねぇ…」
「…『私』を英語で?」
「『
「…貴女の好物」
「
「海老で釣る物「そろそろ“おこ”だよ?」
「そろそろお開きね」
「え〜〜!もう〜?」
愚痴る子供な大人を無視して後片付けに入る
これ以上飲ませないために机の上の酒瓶を回収して棚に置く
ずらっと並んだ数々のお酒
その棚の一番上は全て彼女への贈り物となっている
彼女がサブトレーナー時代から関わった人達や教え子からのプレゼント
いつか、桃井トレーナーがG1を取ったら皆んなで飲もう、と贈られた願いの集まり
それらは、まだ、未開封のままだ
「カナカナ…今日は泊まってぇ…」
「こんな寒い日の夜に出たくはないから有り難く泊まらせて貰うわよ」
彼女のチームに入ったウマ娘は、途中退学も多いトレセン学園を一人の例外もなく卒業して去っていった
重賞を取ることが出来なくても、根気強くウマ娘達と向き合って、勝利の喜びを分かち合って、互いに涙して別れを惜しんだ
彼女の少し頼りなさから放って置けないからか、ニヘラと笑った笑顔に絆されるからか、芽が出なくても絶対に諦めない強い心からか
今日も彼女は、憎めない
「そして朝食は冷凍食品以外を食べたい…」
「少しは自炊頑張りなさいよ⁉︎」