ウマ娘の新アプリがリリースされました   作:たかなしゆういち

47 / 106
【閑話8】その運命は鬼か女神の悪戯

 

 「2月といえば何でしょうか、ハイ、ヒメちゃん!」

「手も挙げてないのに回答権が⁈…ええっと節分?」

「ハイッ!バレンタインデーですね!」

「こっちの返答聞いてない⁈」

「ヒメ先輩、ウチの先輩がご迷惑をおかけしてるッス…」

 

 私、『ムラクモヒメ』は、二月が始まったトレセン学園での昼休み、今年デビュー戦予定のクレちゃんこと『クローバーレース』、クレちゃんのチームメイトで後輩のアーちゃんこと『スピッツチアー』と昼食を取っていました

 最初は和気藹々(わきあいあい)と食べていたのですが、食べ終わるとクレちゃんは「さて…」と呟き、真剣な顔をして冒頭の話を切り出して来ました

 

 「前回の失敗を考えるに、足りなかったのは私達の料理技術(スキル)!なのでバレンタインに向けて全生徒に解放された学園内調理室で特訓をしたいと思います!」

「ぶっちゃけまスが、自分は普通に出来る方ッス。お菓子は余りやってないッスけど」

「私も…お菓子はあまり作った事無いけど、小さい時お手伝いとかしてたから…」

「特訓に付き合って下さい、お願いします!」

 

 椅子に座った体勢から素早く私達に見えるように土下座を行うクレちゃん

 周囲からその様子を見て何事かと少しざわめき始めました

 

 「わっ、わっ⁈手伝う!手伝うからクレちゃん顔上げて!」

「そうッスよ⁈手伝いますから!」

「あ゛り゛か゛と゛う゛…」

 

 涙声で感謝をするクレちゃん

私は知りませんでしたが、クリスマスパーティーの料理の手伝いをした時に、トラブル続きで迷惑をかけたのを気にしていたそうです

 

 結局、私達三人に加え、私のルームメイトのグリちゃんこと『セレーネグリマー』と、クレちゃん達のチームメイトの『スノウエンゼル』と共にお菓子作りを行うことに決定しました

 

 


 

 

 その日、トレセン学園のとあるチームに所属する『美浦寮』の寮長と『栗東寮』の寮長が、放課後に行われたチームミーティングを終えて生徒達に解放された調理室に顔を出すと、そこにはあちこちにチョコが飛び散らかり、ボウルやらヘラなどの調理器具も床に転がる惨状を目にした

 

 『美浦寮』の寮長はこの光景に既視感(デジャブ)を感じた、感じざるを得なかった

 

 

 「『それじゃあ君たち、話してくれるかな?』」

「おう、正直に話したほうが身のためだぞマジで。この確認終わったらジャージに着替えて洗濯機回しに行って良いから」

 

『美浦寮』の寮長は、隣でものすごい笑顔の『栗東寮』の寮長が、この惨状の容疑者五名へと話しかけている事に同情した

 

 苦々しい顔をする『クローバーレース』、困った顔をする『セレーネグリマー』、しょんぼりする『スノウエンゼル』、無言で俯いている『スピッツチアー』と、それを心配する『ムラクモヒメ』

 美浦寮長は、彼女らを一通り見渡して…

 

 「つー訳でクローバーレース、何やらかした?」

「どうしてわたしが何かやらかしたと決めつけるんですか⁈」

事情聴衆を行った

 

 「お前のクリスマスの時のトラブルメーカーぶりを思い出してみな?」

「一回鍋を爆発させたり、切った食材が勢いつけて誰かに当たったり、猫が尻尾にじゃれついて通行の邪魔になったり、新品のドレッシングの開封を失敗してぶちまけたり、猫に食材持ってかれた(複数回)ぐらいじゃないですか!」

 

 残当では?

この騒動を遠くから見ていた生徒達はそう思った

 

 「それで、今回は?」

「………猫との激しい戦闘の結果、ピタゴラ的な連鎖が起きまして…」

「自分の…!自分の力不足なせいで…‼︎」

 

 終始、俯いていたスピッツチアーが泣き出す

それを隣に居たムラクモヒメやスノウエンゼルが慰める

 

 

 事の始まりは、料理が苦手なクローバーレースとスノウエンゼルを、得意組が分かれて手伝っていた

 スノウエンゼルをセレーネグリマーが、クローバーレースを仲の良いムラクモヒメとスピッツチアーが担当してお菓子作りが始まった

 

 超がつく程の優等生のセレーネグリマーはお菓子作りでも優秀であった

 不慣れなスノウエンゼルを的確にサポートし、かつ自分の作業を並行して進める有能ぶりを発揮した

 

 が、調子が良かったのはここまで

 

 

 「…どうしても、料理しようとする時に限って…猫が現れたんです…」

「アーちゃんは悪くないんです!何回も来るから他の人の迷惑になるからって外に連れ出そうとしただけです!」

「そしたらビックリして逃げ出した猫が私とスノウの所まで駆けてきて」

「ワタクシ、ボウルに入ったままの溶かしたチョコを驚いて投げてしまって…」

「それがわたし達の所へと飛んで来て…」

「避けようとして、クレちゃんに盛大にぶつかって、道具を散らかしちゃって…」

「自分があの時猫を捕獲できていれば…!!」

「アーちゃんは悪くないよっ!!」「そうですわ!」

 

 再び泣き出すスピッツチアー

そして宥めるチームメイト

 

 その後も猫が逃げ回り、ようやく調理室から居なくなった後に残ったのがこの惨状という事らしい

 

「あー、悪意は無いから、そのフジ大先輩の笑顔モード、やめな?」

「……ふぅ、しかし、お咎めなしには出来ない」

 

 二人の寮長が話し合う

ほぼ偶発的な事故に近いが、彼女らが暴れ回ったのは事実

ここの掃除は確定事項として二人で意見を出し合っていた

 

 そして一つの結論に至った

 

 


 

 

 「さぁっ!始まりました寮対抗戦、節分にちなんで今回は『鬼ごっこ』になっております!あ、申し遅れました、実況は私『アオバマル』となります!」

「寮長よりも先に名前がついた『ネオメタバース』が解説します。我々の活躍は『〈外伝〉受け継いだもの』をご覧下さい、あっちが初出なので」

「相変わらずぶっ込みますねぇ!今回は有志の鬼役がお互いに相手寮生を捕まえて、残った人数が多い方が勝ちのサバイバル戦となっております!」

「舞台はトレセン学園屋外全て、当然敷地から出た時点で即失格。生き残ったウマ娘には豪華な恵方巻きが贈られます」

 

 「早速鬼役を紹介しましょう!美浦寮からはクローバーレース、スピッツチアー、スノウエンゼル!」

「チーム『モサラー』所属の三人です。本格化前が二人居ますが、チームワークでカバー」

「対する栗東寮からはムラクモヒメ、セレーネグリマー、そして寮長自らが参戦!」

「正直パワーバランスが心配ですが、ハンデがあるとの事」

「鬼役は全員虎柄のパンツとヘソ出しノースリーブ!もちろん角が付いたカチューシャもです!」

「寮長除く鬼たちの恥じらう姿、役得です」

 

 

 「さぁっ!後1分で鬼が開放です!因みにハンデって何ですか?」

「…時期に(わか)る…」

「どうしたんですか?歯切れの悪『やぁ、アオバマル。ちょっといいかな』ふぇ?」

 

 長机を前にしてネオメタバースと共に座っていたアオバマルは、背後から鬼役として準備をしているであろう人物から話しかけられた

 その人物は笑顔であった

が、その笑顔が見せかけである事をアオバマルは経験から理解出来た

 

「『私が写った写真をポニーちゃんが持っていたのだけど、あれ、何時撮ったのかな?』」

「…あっはっはー、何のことですかね?」

「先月借りたドローンから撮られたようなアングル、メイド服でのポーズ、料理特訓中…色々あるけど、どれも許可した覚えは無い」

「…三十六計逃げるにしかずってやつですよ!」

「『いけないポニーちゃんだね?』」

 

 「ハンデは、アオバマルが捕まるまで、鬼ごっこには参加しない…。さらば、盟友…」

 

 この日、本物の鬼が現れたと噂になった

 


 

 

 「急なお電話申し訳ありません、〇〇さん」

「いえ、家で寛いでいただけですし…何かありましたか?」

「そうですね、今後の【ウマ娘トレーニングサポーター】での活動何ですけど…」

 

 休日、【ウマ娘トレーニングサポーター】で面倒を見ている『クローバーレース』の正トレーナー、三橋トレーナーより電話がかかって来た

 クローバーレースとの活動、と言われ、何か不備があったのではないかと不安に陥る

 

 

 「クローバーレースが料理をしようとしたら、全身全霊で止めていただけませんか?」

「…今、なんて?」

 

 クローバーレースに、料理禁止令が命じられた

 

 





フレーバー的スキルはダイスを振って上手さを決めます
…どうして前回の料理と同じ値を出す人がいるんですかねぇ…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。