ウマ娘の新アプリがリリースされました   作:たかなしゆういち

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受け継がれるバトン

 

 関東圏で雪が降り始めた

 

 冬なのだから当然と私は感じるが、それは雪が降るのが当たり前の地域の話

滅多に降らない地域では対策必須のハプニングなのである

 

 交通機関の遅延、高速の速度制限、慣れない雪道、氷道での転倒、他にも様々あるが、雪が珍しい地域ではニュースに大きく取り上げられる出来事なのだ

 

 定時よりも早く帰れと厳命され(そして早朝の出社をお願いされ)帰宅準備をしていると、ちょうど良く下校時間だったのか雪に興奮してはしゃぎ回る小学生の声が聞こえ、自分の子供時代の思い出が蘇った

 

 「先輩先輩!雪ですよ!雪!」

 

 興奮するのは子供だけではなかった

会社の後輩の石川は雪の降らない地域出身であるのも相まって、子供の様にテンションが上がっている

 

 「自分、雪合戦してみたいです!積もったらやってくれませんか⁉︎」

「石川、言わなきゃいけない事がある…」

「…!何ですか…?」

 

 おおよそ大人らしからぬ提案をする後輩に真剣に問いかける

 

 

 「雪玉をキャッチしたり、手刀で(はた)き落とすのは有りか?」

「雪合戦にそんな技術(テク)あるんですか⁈」

 

 有効打じゃないからセーフ、子供界隈(かいわい)でよくある話だ

 

 


 

 

 「我々はぁ!炬燵で鍋パを要求する‼︎」

「いきなり何言ってんのよあんた達は」

 

 府中にあるトレセン学園でも雪が降り始め、練習場には早くも積雪が見られる午後

 私のチーム《モサラー》に所属するメンバー達が突拍子も無いことを言い出した

 

 「ここはチーム部屋よ?居間じゃないわ」

「でもでもでも!前任は炬燵で鍋を囲んでいるじゃないッスか!アルバムにも貼ってあるッスよ!」

「炬燵で同じ鍋をつつく…チームの結束を高めるのにうってつけですわ!」

「あれは前任がおかしいのよ、基準にしないで頂戴」

 

 メンバーである《クローバーレース》、《スピッツチアー》、《スノウエンゼル》の懇願をいなす

幸か不幸か今日は全員の休養日なので時間が有り余っている

ミーティングだけで後は自由時間なのだがどうしたものかと悩んでいると、急に入口のドアが開いた

 

 「三橋(みはし)ぃ!窓に鍵がかかってるじゃねぇか!」

「どうせ『雪合戦やろうぜ!』って来るだろうと思ってたわよ」

 ちょくちょくチーム部屋の窓を開けて遊び(という名のトレーニング、憎たらしい事に効果がある)に誘ってくる同期トレーナー(男)

 窓を叩いてきても無視していたが、直接乗り込んできたか

 

 「だって雪だぜ⁉︎なら今しか出来ない事をやるべきなんだよ!人生は一度きりなんだから今あるチャンスを逃したら次は無いかもしれないんだぞ⁈」

「その意見だけには概ね同意するけど」

「そうですよ!だから炬燵で鍋パしましょうよ!」

「あんたは食べる専門でしょうが」

「あ、後片付けとか買い出し部隊です!」

「何なら俺らのチームで合同で雪合戦の後でやろうぜ?炬燵も置いてあるし」

「「「トレーナー‼︎」」」

「ハイハイ分かったわよ」

 

 私のチーム部屋で歓声があがる

そして簡単な打ち合わせをして外へと駆け出していった

 

 「遅れました…あれ、皆は?」

「時間は合っているわよ、『ポムフルール』。外で雪合戦してその後鍋パする事になったわ」

「そっか…急に何食べたいって聞いて来て何かと思ったら、そういう事だったのね」

「……貴方も早く行きなさい。私は鍋の準備をしてるから」

「いえ、トレーナーも楽しみましょう?せっかくの雪ですし」

「私は寒いの苦手なんだけどねぇ…まぁ、行きますか」

「あの子も来るかしら?」

「貴女が呼べば渋々来そうだけど?」

 

 

 

 「はっはっはっ!残ったのはお互いに一人ずつ!例え生徒だとしても敵チームであるのならば大人気無く勝ちに行く!」

「わたしはぁっ!ぜぇったいにぃ‼︎負けなぁあい‼︎ルル先輩が助けてくれたもの!例え相手が強敵であろうと勝ってみせる‼︎」

 

 二つのチームで軽くぶつけ合って遊び、そろそろ鍋の具材の買い出しに行こうとした所、一発当たったら退場ルールで負けた方が買い出しに行こうと提案されたので乗った(お金は七割向こう持ちは魅力だった)

 最初は以前の野球の経験が活きたのか、順調に相手チームの数を減らしていったのだが、序盤にトレーナーを守りつつ雪玉を溜め込む作戦だったらしく、ラスト一人のトレーナーの大人気ない雪玉の弾幕に押し返された

 

 そして、二人同時撃破を狙った、大量の雪玉を両手で抱えての一斉投擲に、ポムフルールがクローバーレースを身を挺して背中で受け脱落、一対一にまでもつれこんだ

 

 「これで決める!てやぁあ‼︎」

 

 クローバーレースは相手トレーナーに向かって…ゆっくりと山なりに投げた

 

 「…⁈何してるんスか⁈」

「あれじゃあ簡単に避けられてしまいます!」

「いえ、あれは囮よ」

 

 ふんわりと投げられて、しかし相手にとって至近距離に落ちる軌道

当たりはしないが万が一を警戒して…視線が上を向く

 

 クローバーレースは雪玉を二個持っていた

あのトレーナーは雪玉の軌道を見て回避出来る

しかし、見えてなければ…!

 

 相手へ確実に当てるためにコントロール重視で投げられた雪玉は…身を捻られて回避された

 

 「残念だったな。もう少し速かったら危なかったかもな」

 

 


 

 

 フィールド外から短い悲鳴が上がる

あと少しで勝てる所から手からすり抜けていった、トレーナーとしてはあまり聞きたくない声が

 それでも勝負事には手を抜かない

膝を着きつつ両手で雪を掻き集めて雪玉を作り上げた男が見たものは…投球モーションに入っているクローバーレースだった

 

 (なっ⁈雪玉は両手で一個ずつなはず…ブラフか⁈)

 

 


 

 

 雪合戦について、〇〇さんの子供の話を聞いた

子供ながらに投げられた雪玉を相手が視線で追う事に気づき、高く放り投げて相手を無防備な状態にさせて狙い撃ったと言う

 しかし…相手も雪合戦巧者

もしかしたら通じないかもしれない

けれども、ルル先輩が庇ってくれた後、相手から見えないように少しだけ盛り上がった山の後ろに、作って隠した雪玉がある事を教えてくれた

 

 絶対に当てる

チーム皆んなの頑張り、〇〇さんから教えてもらった技術、そしてルル先輩の献身…

 わたしは、皆んなの為に、勝利してみせる!

 

 「当ったれぇえ‼︎」

 

 全身全霊

膝をついてまで避けて、体勢の崩した相手に対して投げた雪玉は…胴体に吸い込まれていった

 

 


 

 

 「…見事だ、俺の、負けだな」

ゆっくりと立ち上がり、両手を挙げて降参のポーズを取った

 

私のチームから歓声があがる

クローバーレースはポムフルールに駆け寄り勢いよく抱きついた

 

 向こうはトレーナーを囲み脇腹を突いたり、頬をつねったりしている

ウマ娘達は悪態をついているが、そもそもトレーナーを最後まで残す作戦をすんなり実行しているので、信頼した上でのじゃれ合いだろう

 

 「んじゃま、具材揃えてくるわ、料理の方はよろしく」

「お肉は牛肉でよろしくね?」

「勘弁してくれ、ウマ娘の食べる量ってもんが…」

「元々私の料理を当てにしてたんでしょ?作る方も大変なんだから。ま、豚肉と半々で許してあげる」

 

 そうこうしているうちに、彼の担当ウマ娘二名が両サイドから腕をホールドして連行していった

あれは商店街で何か奢らされるだろう

 

 「ふふ、楽しかったですね?」

「えぇ、ポムフルールも楽しめた?」

「えぇ、楽しめました」

 

 

「卒業前に、いい思い出になりました」

 

 




 雪道、お気をつけ下さい
自分だけ気をつけても車がスリップして…なんてありますし


 レース描写よりも先に雪合戦の描写が出来るとは…
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