春の嵐とも言うべき強烈な雨風が通り過ぎると、それまでの冷たい空気を纏めて吹き飛ばしたかのように穏やかな春の陽気が顔を出し、コートと赤いマフラーとの一時の別れが近づいた
少し遅い春の訪れと、春休みで
去年いきなり『クローバーレース』と出会い、流されるままに【ウマ娘トレーニングサポーター】制度のサブトレーナーとして駆け抜けてきたが、なんだかんだ充実した一年だったと思う
このまま『この世界』のままなのか、『元の世界』に戻されるのか
いまだに帰る術に関しては手掛かりもないまま過ごしてきたが、願わくば、彼女の卒業まではこの目で見届けたい
「それじゃあミーティング始めるわよー」
日本各地から有望なウマ娘を集め、歴史に名を残すアスリートを育成するトレセン学園内、その中にあるチーム《モサラー》と呼ばれる集団が集まるチーム部屋
ホワイトボードの前に立つトレーナーである事を証明するバッチをつけた女性と、チームに所属するウマ娘四名が机を囲んでいた
椅子に座るウマ娘は四名、しかし、彼女たちの座る場所は人数を考えればアンバランスであった
女性トレーナーの左側の列に二人、そして真向かいに一人、右側の列には女性トレーナーに近い方の椅子は誰も座らず、遠い方の位置に一人となっていた
トレーナーは特に気に留めず話を続ける
「入学式前ではあるけれども、学園の寮には新入生が入っているわ。チーム勧誘は禁じられているけれども偵察する分には問題ないから良さそうな子が居たら情報を頂戴?」
「
トレーナーの発言に、左の手前側に座るクローバーの髪飾りをつけたウマ娘が質問をした
その問いかけにトレーナーは首を横に振った
「有望株は実績の乏しい私達のチームは敬遠されやすいのよ」
「地元じゃ持て囃されてるからプライド
「今いるメンバーも、重賞勝利者は『
「『スノウエンゼル』、卑下する事はないわ。重賞に出れるまでになるのだって並大抵の事ではないもの」
トレーナーの回答に左隣に空席のある額に傷跡があるウマ娘が発言し、それに対してトレーナーと真向かいに居る真っ白な髪と尻尾を持つウマ娘が反応する
「今までのメンバーを勧誘した時ってどんな感じだったんスか?」
額に傷のあるウマ娘の真向かいに座る小柄なウマ娘がトレーナーに尋ねた
「……」
「…エンゼル、お前がチームに入った時はどんな流れだった?」
「え、ワタクシ?走りに夢中で髪も尻尾も砂だらけでボサボサになっていた所をケアしてもらって、その縁で会話するようになって、最終的にワタクシが頼み込みましたわ?」
「んで、サポーター組二人は学園から経験が浅くてメンバーも少ないチームに推薦だったよな?」
「そうッス、【ウマ娘トレーニングサポーター】制度の試験運用の意味もあるって聞いたッス」
「シュシュ先輩は『
「あぁ」
((((自分から勧誘して成功したの“ルル先輩/フルール”だけ…?))))
なお、チーム加入への言葉はトレーナー側であったが、知り合うキッカケを作ったのはウマ娘側であったのは
「ともかくっ‼︎チーム的な事情で一人は欲しいからガンガン情報は流しなさい‼︎」
「お?勧誘解禁後、俺等で勧誘かけとかなくて良いのかぁ?」
「誰彼構わず受け入れても面倒見切れないから最終判断はアタシよっ‼︎」
「(一人称変わるほど荒ぶってるッス…)」
「おぅ、『クローバーレース』。部屋の掃除は大丈夫か?」
ミーティングが終わり、わたしが所属している
「大丈夫ですよ寮長。いくら二人部屋で一人だからといって、部屋全部を占拠してる訳じゃないんですから」
「まぁ一応確認には行くけどな。新入生だから色々と教えてやりなよ?」
「まっかせて下さい!いつ頃来るんですか?」
「もうすぐだと…」
「こんにちはーっ‼︎」
背後から元気いっぱいな声にビックリして、思わず尻尾が跳ね上がった
「今日からお世話になりますっ‼︎『ペチュニアガール』ですっ‼︎よろしくお願いしますっ‼︎」
明るい茶色の髪でボブカット、左耳に赤い花をあしらったアクセサリーをつけた元気なウマ娘
それが私の新しいルームメイトになりました