ウマ娘の新アプリがリリースされました   作:たかなしゆういち

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迷えるウマ娘へ

 人は様々な趣味を持つように、ウマ娘にも様々な趣味を持つ

【ウマ娘トレーニングサポーター】で担当するウマ娘も多種多様な趣味を持ちLane(レーン)(アプリ内で担当ウマ娘とメッセージのやり取りをする無料トークアプリという設定、だった。緑のアイコンをしている)での会話でも色濃く反映される

 

 アニメ好きなウマ娘は『今』放映しているアニメの感想を言ったり

スポーツ観戦が好きなウマ娘は『今日』の試合結果に一喜一憂し

スイーツ大好きなウマ娘は『最新』スイーツを食べたいとおねだりする

 

 AIが発達したとは言え、リアルタイムに、的確に、違和感もなく『本人』が行っているかのようにメッセージでの会話行えたこのアプリは、プログラムの事をよく知らない私にとってはただただ感心するだけだった

(一時、優秀なアルゴリズムを求めてサーバー攻撃があったとニュースが流れたが、すぐさま逮捕された)

 

 そんな数ある趣味の中で担当ウマ娘がやっていると周囲から羨ましがられる物がある

 

 『占い』である

 

 ウマ娘と仲が良くなれば毎朝今日の占いを出してくれるとのことでそれに反応を示すだけでも会話の起点となったり、相談事にも対応してくれる上にアドバイスも的確だと噂なのであった

 

 


 

 

 「『幸せを呼ぶ小屋』?」

「そ、『クローバーレース(レーちゃん)』、トレセン学園に生徒が占ってくれる場所があるの、行ってみない?」

 

 梅雨前線による雨と晴れの入れ替わりが激しいこの時期、トレセン学園に通うわたしと仲の良いクラスメイト三人は、授業が午前の授業が終わったお昼休みに集まってご飯を食べていました

 

 「なんか…胡散臭い」

「それってー、キチンと生徒会に承認されているんー?」

「一応されているみたいよ?占い大好きな先輩方から受け継いだ物らしいし」

「んー、占いかぁ…」

「むしろー、レーちゃんがパワースポット扱いなんよー」

「時たまに…切羽詰まった先輩が、机にお菓子を置いていく」

「わたしに『必勝祈願』のご利益はないんだけどなぁ…」

「お願い!一人じゃ心細いから着いてきてくれない⁈ちょっと悪い結果とか言われたらなんかヤなの!」

「みんなどうする?」

「…少し、興味なくはない、冷やかしでいいなら…見たい」

「ウチ、練習オフだからいいよー」

「まぁ話の種ぐらいにはなる、か。いいよ」

「ありがとう!みんな!」

 

 


 

 

 「…ここ?用具入れとかじゃなかったんだ」

 

トレセン学園内の木陰が涼しいエリアにポツンと建っているプレハブ小屋、扉には紐に吊るされた小さな看板で『OPEN』の文字がありました

 

「…この小屋、出来てから間もない…」

「噂では『シラオキ様のお告げ』やら『風水的に』とかの理由で結構な頻度で場所も変えて建て直しているみたい」

「んーまぁG1ウマ娘の指摘だったら、ねぇー」

「これ、入っていいの?」

「Laneからは準備オッケーだって」

「じゃあ…今回の言い出しっぺが…どうぞ」

「勢いよく、どーんといけー」

「…スゥ…フゥ…行きます!」

「模擬レースより気合い入ってない委員長?」

 

 

 「たのもぉ!」

「時たまに変なテンションになるよね委員長」

 

 扉を開けると壁の棚に所狭しと並べられた招き猫や七福神、縁起物の動物の置物、色とりどりのパワーストーンとおぼしき鉱石に水晶玉、その他にも様々な(推定)幸運グッズが飾られていました

 壁はいかにもこう…占いの館、って印象を受ける幾重にも巡らされた濃い紫系統の布で囲われていて雰囲気が出ています

 

「いらっしゃい、そこにお座りになって下さい」

 

 部屋の中央、床まで垂れた長いテーブルクロスに覆われた机の向こう側、トレセン学園の夏の制服に口元を覆う黒いフェイスベールをつけたウマ娘が座っていました

 

 「よろしくお願いしましゅ!」

「ガチガチやん、大丈夫かー?」

「ウケる…」

「ほら、一回深呼吸しとこ?」

「うるさいよみんな!」

「ふふっ、お願いしますね」

 

 

 「改めまして『トーラウェイト』と申します。今日はよろしくお願い致します」

「よろしくお願いします…」

「お伝えしたとおり、私はタロットカードによる占いをしております。本日は何を占いましょうか」

「そ、そのデスね?本格化してレースに出れるようになったんですけどぉ…出るレースに悩んでいまして…」

「なるほど…トレーナーはなんと?」

「まずレースに出て雰囲気を感じてみようって」

「ふむ…ご自身は、どう考えてますか?」

「…ちょっとまだ自信持てなくて…どうしようかなって。模擬レースでもあまり結果良くないし…」

「なるほど…ではまず、レースに出た時の運勢を見てみましょうか、カードをシャッフルして下さい」

「は、はい…!」

 

 

 「…出たカードは『女帝』の逆位置、『力』の正位置…、これはレース自体の結果は一位は厳しいかもしれません」

「…やっぱり挑戦には早いですかね…」

「ですが、悪くありません。レースに出ることによって自信を得たり、目標へと向かう意欲が湧き出ると出ています」

「おー、いいじゃん高評価」

「つまり…反骨精神?」

「へー、委員長もデビュー戦かぁ」

「ま、まだ決定じゃないし…でも、もう一度トレーナーと話し合ってみようかな…」

「お連れの方も占ってみますか?時間はあるので大丈夫ですよ?」

 

 

 

 「ウチの姉貴がトレーナーにアタックしてるんだけどー、トレーナーが鈍感すぎて上手くいってないんよー。姉貴にアドバイスとか出来るん?」

「なるほど…ではシャッフルしていただいて…お姉様とトレーナー様の出会いはいつ頃なのですか?」

「去年の6月ぐらいー」

 

 「…『女司祭』の逆位置…お相手のトレーナー様は知識、いや経験が少ないからアプローチをアプローチと気づかない可能性があります。そして、過去の運勢が『塔』の正位置と『力』の逆位置…お姉様とトレーナー様の仲は最近までうまく行ってなかったのではないでしょうか」

「うわ、当たり。ウチ考案のラキスケ作戦からギクシャクしちゃってさー、どうにかしたいんよ」

 

「…当てる、のか」

「え、ひょっとして千里眼とか持ってるの?」

「知らない…友達から良く当たるとは聞いてたけど」

 

 「現状の運勢が『愚者』の正位置、未来は『星』の正位置、その次の未来は『隠者』の逆位置………元の状態に、和解は出来そうですね、未来は幸運にてお互いにとっていい結果、しかしながらその後はどちら側からか距離を取りそうな気配がします」

「まー前例があるとは言えトレーナーと学生だからねぇ…なんとかならん?」

「では一枚引いてもらって…『皇帝』の逆位置…距離を取られそうになったら、こちらからしっかりとした言葉での主張が必要なのではないかと」

「ふむ…参考にするー」

 

 

 

 「追試を…回避したい…」

「勉強して下さい」

 

「ド正論来たよ」

「笑顔でバッサリだねー」

「そりゃそうでしょ」

 

「そこを…!そこを何とか…!」

「…取り敢えず、占いますね?」

 

 

「委員長って最初は頭良いんだろうなって、わたし思ってた」

「ウチもー」

「に、苦手な物は苦手なんです!」

 

 

「…『月』の正位置、『死神』の逆位置……次のテストの追試を回避するためにはもう一点特化の山を張るしか無さそうです…」

「…まぁ、いつも通り」

「そうならないようにする為には普段からの積み重ねが必要なのですが…」

 

 

「耳が痛いね」

「同感ー」

「流れ弾が…」

 

 

 

 「よ、よろしくお願いします」

「えぇ、では占いたいことをお願いします」

 

 フェイスベールをつけたトーラ先輩に見透かされているような感じがする

同じトレセン学園の制服を着ているはずなのに、たった一枚のベールを着けただけでこうもミステリアスな雰囲気が増すものなのか

 

 

「えぇっと…わたし、『日本ダービー』を目指してまして…その、なにか気をつけた方がいい事、なんて、出来ますか?」

「そうですね…でしたらまず、夏合宿の練習の運勢なんていかがでしょう?」

「あ、じゃあそれでお願いします」

「はい、ではカードのシャッフルをお願いします」

 

 そう言われ、机の上に散りばめられた裏向きのタロットカードを両手で混ぜる

 

 「それでは、この中から七月の運勢、八月の運勢の2枚お引き下さい」

 

わたしから見て綺麗な『()』となるようにカードが並べられ、自分で引くように促される

 

 

 「七月、『太陽』の逆位置、八月、『皇帝』の逆位置…そうですね…思うように結果が得られなくて苦しい時期になりそうですね。特に七月は無理しては駄目ですよ、空回りして疲れてしまいます」

「そ、そうなんですか…?」

 

「…あの幸運ウマ娘でさえ、悪い結果…?」

「幸運と運命は、別なのかー?」

「回避!なんか回避とか出来ませんか⁈」

「どうして委員長が言うのさ…出来ます?」

「それでは残ったカードから一枚お選びください」

 

 

 促されてカードを一枚選ぶ

トーラ先輩が流れるようにカードをめくって出たカードは

 

 『審判』

 

というカードでした

 

 「『審判』の正位置、これは今までの行動の結果が強く現れるカード。劇的に未来を変えるのではなく、地道な日々の積み重ねが良い結果を呼びます」

「…つまり…」

「焦って無理な練習をせずとも確かな成長はあります。夏はウマ娘が飛躍的に成長する時期、結果を求めるのなら秋がいいでしょう」

「は、はい…!」

 

 

 「「「「ありがとうございました!」」」」

「また、いらして下さいね?」

 

 

 「す、凄かった〜!」

「これ、お金取れるのでは…?」

「今度は姉貴を連れてこうかなー?」

「わたしもチームのみんなにも教えようかな…」

 

 わたしたち四人は小屋を後にし、思い思いに話しながら寮へと帰っていきました

部屋に戻った後、わたしはトーラ先輩に言われたことを頭の中で繰り返すのでした

 

 


 

 

 今日は【ウマ娘トレーニングサポーター】制度でサブトレーナーとして『クローバーレース』のトレーニングを見ている

日に日に暑くなっていくので部屋でも出来る体幹トレーニングがメインとなっていた

 

 トレセン学園の夏は合宿があるので暫くはトレーニングを見ることがなくなる

それは少し寂しくなるが、私では成長に大事な時期のトレーニングの指導など出来ないので仕方がない

 

 「後10秒…5、4、3、2、1…終了」

「…はぁっ!終わり!」

 

 床に敷いたマットにドサっと音を立てながら沈むクローバーレース

全身に重りを付けているので響く後も重々しい

 

 「今日のメニューはお終い。お疲れ様」

「ありがとう、ふぅ、ございました」

 

 本トレーナーである三橋(みはし)トレーナーから指示されたメニューが終わってウェイトを外す彼女にタオルを渡す

お礼を言って受け取ったタオルで彼女が汗を拭いている間にオレンジジュースとスポーツドリンクを準備する

 

 「はい、クローバーレース」

「ありがとうございます、〇〇さん」

「少し休んだら…軽くゲームでもするか?」

 

 およそ厳しいトレーニングを積むアスリートへの発言としてはいかがなものかと思うが、最近の彼女はどこか前のめり気味なのが気になる所だった

(三橋トレーナーからもそれとなくみていて欲しいとも言われた)

 

 「そうですね…シャワー浴びた後、勉強の前にちょっとだけやってもいいですか?」

「え、あぁ、いい、ぞ?」

 

 行ってきます、とシャワーを浴びにいったクローバーレース

元々、遊んだ後に彼女の苦手な勉強を見てあげるつもりだったから予定通りではあるのだが、彼女の方から意欲を見せたのは珍しい

 

 

 「…パーティーゲームなら丁度1時間ぐらいですかね?それで良いですか?」

「…大丈夫だ」

 

 何かしらの心境の変化があったのだろうか

最初に出会った時と比べて成長する彼女に改めて『この世界』が現実(リアル)だと思わされるのであった

 




 地震に台風に繁忙期に…何かと大変ですがなんとか生きてます

普段は何処かに出かけるのにいい時期ですが、身の安全が第一なので
皆様もお気をつけください
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