「お久しぶりです!〇〇さん‼︎」
夏の強烈な陽射しが続く9月、その最初の日曜日に『ウマ娘トレーニングサポーター』での私の担当である『クローバーレース』が久しぶりに我が家にやってきた
「じゃがいものスナックに生キャラメル、ロールケーキ…ではなくて『よいとまけ』?その他にも沢山…」
北海道に行ったお土産を持って来てくれたのは嬉しいが、少し量が多い
「…わざわざ持ってこなくても
「わたしが直接渡したかったので!」
「…そっか」
「はい!」
そこまで言うならもう何も言うまい
台所に向かい『よいとまけ』を包丁で切り分け皿に乗せる
「オレンジジュースでいいか?」
「はいっ!ありがとうございます!」
夏の合宿のため暫く会っていなかった為か、普段より彼女のテンションが高いように思える
コップに二人分のジュースを注いで彼女に持たせ、お菓子を運んでテーブルに置いたら彼女の向かいとなるように座り、手を合わせてお菓子を頂く
「…それでですね!その牧場であの日本総大将と呼ばれたウマ娘と会いまして……牧場の畑がほんっとに広くてですね!……『
「うんうん」
合宿中のエピソードが止まらない彼女の話に相槌を打ち、様々な種類のお菓子を堪能する
今日のトレーニングの予定は無し
酷使した心身を休め、近づく彼女の『メイクデビュー戦』に向けての英気を養う為の日
その後は一緒にゲームをして遊び、『ウマ娘トレーニングサポーター』で支給されていた『マニー』で少し奮発して夕食を外注して楽しく過ごした
彼女が晴々とした顔で寮へと帰ったが、夏の間会えなくて寂しかったのは私も同じだったようで、静かになった部屋が広くなったような錯覚を覚えた
「…珍しいわね?貴方のようなベテランが、私に頼み事なんて?」
トレセン学園のチーム〈モサラー〉のチーム部屋で今後のレースプランを考えていると、『ムラクモヒメ』のトレーナーが尋ねてきた
過去に様々なウマ娘を勝利に導き、彼のチームへの所属がG1出走への近道とも言われた程だが、今は年齢を理由に一人、多くても二人までの指導に留めている
「…そんなに珍しい事でもあるまい。任せた方が上手くいくなら、任せる、それだけの事だ」
「…私が貴方に勝ってることなんてLiveの指導ぐらいだと思うのだけど?」
「卑下することはない…それは、立派な才能だ。頼みたいことも、そのLiveの指導だからな」
「…?『
「合宿中はトレーニングに専念させてたからな、ここらで一度叩き込みたい。それに、対価はある」
そういうと彼は鞄からダブルクリップで纏められた紙の束を机に置いた
「『菊花賞』出走ウマ娘の直近の記録を纏めた資料だ、トライアルレースから出そうなウマ娘も幾つか纏めてある」
「…それはまたご大層な物を…」
クラシック三冠路線の最後のレース『菊花賞』には私のチームメンバーの『スノウエンゼル』が出走予定である
レース出走ウマ娘がどのような走りをするか、相手するにあたって気をつけることは何か、そんな事を考えずに勝てるウマ娘など一握りだ
故に、勝利するために相手の情報収集はトレーナーの必須業務
私だって有力なウマ娘の動向は追いかけていたのだが…彼の情報収集能力に比べれば月とスッポンといったところか
「…これだけ調べる時間があったなら踊りの指導だって出来るじゃない」
「先ほども言ったが、任せた方が上手くいくなら任せるだけだ。それで、どうだ?」
身一つで夏合宿で学園に居らず遠方で合宿しているウマ娘達のデータをどうやって集められたのか、気になるところではあるが、ベテラン故にコネやツテがあるのだろう
Liveの指導に取られる時間とベテランの観察眼によって収集された情報を天秤にかけて…
「いいわ、ただし、放課後のみの三日間で叩き込むわよ」
「交渉成立、だな。反故にはするなよ?」
「そんな事心配しないでちょうだい。私はちゃんと対価を貰ったのなら仕事を全うするわ」
「頼もしい限りだ」
そう言って用事は済んだと言わんばかりに出口の扉へと歩いていく
そして部屋から出ようとした所で立ち止まり、こちらに振り返った
「伝え忘れたが、楽曲だが…」
「『彩 Phantasìa』でしょ?ティアラ路線の…」
「『winning the soul』だ、クラシック路線の、な。反故にするなよ?」
そう言って部屋から出て行った
「あんのジジイ!」
そもそも何故クラシック三冠レースの菊花賞出走予定のウマ娘のデータを集めていたのかを疑問に思うべきだった
当然ながら、彼にとって既に不要となった資料の中に『ムラクモヒメ』の資料など存在しない
年末に向けて仕事の追い込みが大変な中、どうにか投稿出来ました
クリスマス?年末?
どっちも仕事ですがなにか?(涙)