ウマ娘の新アプリがリリースされました   作:たかなしゆういち

75 / 106
【閑話XX】バットエンドは突然に

 

 青い空から夕方のオレンジ色に変わり、そして夜の黒色と至る前にほんの少しの時間だけ薄紫色が空一面を塗り潰す

 幼い頃に見たその空は、まだオバケもサンタも居ると信じていた自分にとって身近にある『非日常』の瞬間で、自分の町が何時もの町と違う様に思えて無邪気に喜んでいた

 

 大人になってその空が『逢魔時(おうまがとき)』と言って、災厄に遭いやすいとされた時間である事を知って少し複雑な気持ちになったが

 特に神社にお参りする際にはこの時間帯はよろしくないとされる

日が沈み始めると共に神様が神社から帰り、神様がいなくなったのを見て妖怪や悪霊が入り込んで参拝客に悪さをするからだ

 

 まぁ、何が言いたかったのかと言うと

この『逢魔時』というのは様々な作品にも使われるオカルト色の強い時間だという事だ

 

 


 

 

 ---長らくこの世界で過ごしてきたが、ようやく帰る目星がついた

魔法もチートもないただの日本人として生きてきたのに、目が覚めたらソシャゲの世界に迷い込んだなんて今じゃありふれた題材の小説の主人公のような存在になってしまったが、これで元の世界に戻ることが出来る

 

 …この世界で世話を焼いてくれた彼女には悪いとは思っている

が、何の力も後ろ盾も持たない存在である俺が圧倒的な身体能力と実績を持つ彼女と釣り合うわけもない

収入面でも社会的地位でも圧倒的に負け、このままいけば彼女の『ヒモ』一直線である

 

 

 初めて会った時から抱えきれないほどの好意を向けられてきたのも謎だった

 催眠でも洗脳でもされたかと思うほど従順で献身的

彼女の友達が謎の信頼を寄せる正体不明の男に警戒をするのも当然だと思う、その度に彼女が此方を庇って言い争いになるのも数えきれないほどあった

 

 このまま彼女の好意に甘え続ければ駄目になってしまう

そう思って元の世界に戻るべく秘密裏に情報を収集して分かった事は『逢魔時』に『学園』の女神像に迷い人が現れるという話

 向こうの世界からこの世界に『来る』ならば、この世界から向こうの世界に『行く』事が出来るかもしれない

向こうの世界が俺の居た世界と同じ世界でない可能性だってあるが、このまま彼女に飼い慣らされるよりはマシだ

 

 

 今後『学園』から遠く離れた場所に住む事を考えると、この世界から離れる最大のチャンスは今しかない

 女神像前にさり気無く『逢魔時』に辿り着くように行動を開始すると、スマホより着信を知らせるメロディが鳴った

 

 

 …表示された名前は彼女の名前であった

少し躊躇って電話に出る、今出ないと過保護な彼女がケモ耳を忙しなく動かし、尻尾をばたつかせて俺を探してすっ飛んでくるからだ

 

 

 「…もしもし」

 

[あ!●●さん!夜には私の両親との顔合わせの時間ですよ!今何処に居ますか?]

 

 

 元気な彼女の声が響く

俺はこれから逃げ出そうとする事を悟られないように努めて平静に会話を続けて歩く

 

 「いや、これから暫く離れるから最後に『学園』でも回ろうかなって」

 

[そうだったんですね、なら誘ってくれても良かったのに…]

 

「あー、うん、誘えば良かったな、忙しそうにしていたから、さ。誘いづらかったのさ」

 

 心臓の動きが早くなった、気がする

 

 落ち着け

今急いでも結局のところ『逢魔時』のタイミングで女神像の前にいないと意味が無い

 女神像は目立つ場所にある上に周囲を水で囲われている

その場所にいる時間が長ければ長いほど誰かに見つかりやすく、女神像に行く為に水の中に足を踏み入れようとすれば誰かに止められるだろう

 

 

 だから一人で女神像まで—-

 

 

 

 「[因みに女神像に行こうだなんて考えていませんよね?]」

 

 

 

 

 

 

 

 

 背筋が凍る

スマホから聞こえた声と、スマホを当てた逆の耳から聞こえた同じセリフ

声とセリフの主は、後ろから

 

 「[ちなみに逢魔時に行っても無駄ですよ?だって逢魔時にこの世界に『来る』のならば、『行く』のであれば逢魔時の逆、即ち夜と朝の境目…『彼は誰時(かはたれとき)』でなくっちゃ]」

 

 心臓がうるさい

後ろに恐らく彼女がいる、振り向きたくない

 

 「なんでそんなこと知っているかって思っていますね?

 

 

   私が●●さんを呼ぶ為に実家の禁書を一通り調べたからですよ」

 

 

 弾けるように横の茂みに飛びこみ舗装されていない道をガムシャラに駆け出し彼女から距離を取る

 …正直、ここで逃げ出しても夜明けまで逃げ切れるかどうかは分からない

しかし、例え勝率が0に近かろうが逃げ出す事がバレているのならば実行する他無い

 

 

 「…貴方が選んだこの服を汚したくないんだけどなぁ……はぁ、仕方ない」

 

 

 逃げながらも一つ確信した

毎朝早い時間に彼女が俺を起こしに来た理由が、俺を逃さないための行動であった事

 つまりは、『彼は誰時』に女神像に行けば良いって事だ

 

 

 「…絶対に逃さないから」

 

 


 

 

 「…プロローグが長いんだよ‼︎」

 

 我輩は異世界転移系黒猫魔王なVtuber配信者である

名は名乗らずとも(リスナー)は知ってるだろう

 

 今、我輩は我輩の家臣(ファン)に勧められたゲームをプレイ中であった

 

 「そりゃなんか最初から不穏な空気出してたけどさぁ⁉︎見ろよ『スピッツチアー(駄犬)』なんか耐性ないからフリーズしてんぞ‼︎」

「…ッハ!ゾンビやお化けじゃないのに気絶してたッス」

「まぁ『●鬼』とかの探索型で接触一発ゲームオーバーなゲームだろう、じゃあ進めていくぞー」

「うぅ…銀髪で狐耳の可愛いキャラだというのに怖いッス…」

「うおっ?!茂みからいきなり…」

『ずっと一緒ですよ?』

「ひぃぃい?!目が怖いッス!!」

「おい、まだ序盤でそんなんじゃ最後まで持たんぞ?」

 

 尚、バットエンド全種集める耐久配信にして相方の反応を楽しませる配信に切り替えた模様

 




エイプリルフールネタ

え、エイプリルフールは午前中まで?
間に合わなかったんや…(投稿時間から目を逸らす)




書き始めた頃、物語の終わりとして構想していた
これだとここまで続かなかったかもしれない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。