ウマ娘の新アプリがリリースされました   作:たかなしゆういち

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〈外伝〉黒猫は異次元に(おのの)

 吾輩は企業所属のVtuber(黒い猫耳魔王)である

(知名度)はまだ無い

 

 『この世界』とは別な次元より迷い込んだ吾輩ではあるが、騒ぎ立てても帰れる保証もなく、当面の暮らしを凌ぐ為に『この世界』に適応している

 

 まぁ元の世界とさして変わらず、今いる世界の居心地も悪く無いのでこのままでも良い

目下の悩みはライバルが多く、動画が伸び悩んでいる事だろう

 

 そう、動画業界は『ウマ娘』なる存在が話題を席巻しており、老若男女ウマ娘、全てが等しい実力主義の群雄割拠な世界で強大な相手なのだ

 

 吾輩の上司は悩んだ

如何にして吾輩達(同期はいる、ボッチではない)を売り出すか

そして吾輩に授けられた策は、一人より二人。目には目を、ウマ娘にはウマ娘を、と、配信中の乱入者というピンチをチャンスにすべく、吾輩は(不本意ながら)吾輩の右腕となるウマ娘も一緒に動画に出演させる運びになった

 

 

 「今日はいい天気ッスね〜!どうスか?外の空気は?」

「耐久配信後の睡眠を邪魔されなかったら最高だったよ」

 

吾輩は今、暴走する右腕、もとい『スピッツチアー』という小型犬系ウマ娘に連行されて近場の運動公園に居る

 

 ペアで動画に出すと言ったが、毎回出演してくる事はない

このちんまいウマ娘でも、かの有名なトレセン学園の生徒

つまりはトップアスリート様なのだ

普段の彼女はトレーニングに明け暮れる日々を過ごしているので動画ではレアキャラ扱いだ(そして出演した日の動画の伸びがいい、複雑)

 

 吾輩に対して何故かタイミングが悪い時に来るので、乱入者が来ない金曜日の夜に耐久配信をすれば伸び伸びと配信できるかと思い、ひたすらインクでサケをしばき倒すバイトゲームをしていたのだが、吾輩のもう一つの顔である【ウマ娘トレーニングサポーター】のサブトレーナーとして、翌朝外に放り出される危険があるのなら今後の配信を考えねばならない

(本来、事前にスケジュールが決められ練習を見るシステムのはずだが、スケジュールの決定権が何故か母親にあるのが謎である)

 

 「…とりあえずアップがてら吾輩の飲み物をゆっくり走って買ってこい、エナドリがベストだがコーヒーでも構わん」

「エナドリもコーヒーも御母様から禁止令が出されてるッスからスポドリ買ってくるッス」

「吾輩の担当なはずだろうっ?!何故命令権が母に…って、待て話は終わってないんだよ駄犬っ!!」

 

 こちらの言葉はバ耳東風

颯爽と駆け出した小さな風の子はすぐに見えなくなった

取り敢えず、少しでも休むべく追い払うという最低限の目標を達成したので良しとする

 


 

 「…あの、大丈夫ですか?」

 

 近くのベンチで乙女らしからぬ表情で横になっていると、不意に声をかけられた

正直頭痛と眠気がヤバいのだが仮に座りたかったのであれば不当に占拠するのはよろしくない

 

 「問題無い…カメラ?」

 

声をかけてきたのはジャージを着たオレンジの長い髪のウマ娘だった

顔は逆光でよく見えないのだが、頭の横にレンズが付いた機械が装着されているのは確認出来た

 

 「はい、走っている景色を撮るために」

「…なるほど」

 

上手く共感ができなかった為、簡潔に返答をしつつ体を起こしてベンチに座り直す

スピッツチアー(駄犬)が見えなくなってから二十分ほど時間が経っていた、いや遅くね?

 

 「要らぬ心配をかけた。そのうち連れが来「持ってきたっすよー!!」叫ぶな頭に響く、そして何故三本も買ってきた?」

「二本目買ったら当たったッス」

「今どき当たり付き自販機なんて置いてあったのか…まぁ丁度いいか。良かったらどうぞ、余り物ですし」

「え!?…ありがとうございます」

 

 吾輩を気にかけてくれた親切なウマ娘にスポドリを差し出す

少し困惑しながらも長いオレンジの髪の緑のメンコのウマ娘は受け取った

 

…って異次元の逃亡者ご本人ではないか!?

 

 「あの!あの!宝塚記念見ました!サイン欲しいッス!!」

「はい、どうぞ」

 

どうやらスピッツチアーも気づいたらしい

急な邂逅な為こちらに持ち合わせが無いため、スポーツ飲料ペットボトルにサインをねだっている

 丁寧な対応をするメインキャラ様は突然のお願いに慣れているのかペンをスッと取り出して、流れるようにサインをした

 

 「ありがとうございまス!今日は関東圏(こっち)に来てるんスね!お会いできて感激ッス!」

「えぇ、また学園で新しいトレーニングコースが出来たから、コースのデータをAIに提供する為に走らせて貰えるの」

「AI?に、提供?」

 

 (いわ)く、トレセン学園の誇る『メガドリームサポーター』は、仮想空間内で使用者達の五感を再現させ、現実同様にトレーニングすることが出来るのだが(肉体に反映される原理は謎)、現実の『素材』があればある程きめ細かく再現できるため、インプットしやすい聴覚情報、そして視覚情報を収集し続けているとの事

 トレセン学園の生徒の故郷を再現したり、ランニング中の景色を絶えず変え続け、飽きが来ないようにしたり、山の中で木々のざわめきや鳥の鳴き声を足すことにより臨場感を高めたりするそうだ

 

 「今日新しい景色が見れると思うと楽しみで、つい飛び出してきてしまったわ」

 ふんわり微笑むが、常日頃から走ることしか考えてないのは今でも健在のようだ

 

 まぁせっかくのレアイベだ、サブトレらしいことを実行することにする

「このウマ娘は「スピッツチアーッス」…逃げウマだがゲートで落ち着きが無くてな、スタートの集中力に関して何かアドバイスを頂けないか?」

「‼︎よろしくお願いするッス‼︎」

「わかったわ………」

「…(期待の眼差し)」

「………」

「「…」」

 

 「…集中、ってどうすればいいのかしら?」

この先頭民族は走りたくて頭の中がいっぱいなので、雑念が無いだけのようだ

 

 

 「アップは大丈夫かしら?」

「オッケーッス」

 お詫びというか代わりというか、並走することになった二人のウマ娘

「って待て!流石に今日は背負うな、二日酔いでヤバいんだよ!」

「え…二日酔い?」

「こんな身体(ナリ)だがこれでも成人だ」

「嘘でしょ…⁉︎」

「自分と背が同じくらいッスけど、事実ッス」

「慣れているから気にするな、そしてお姫様抱っこなら大丈夫というわけじゃ無いんだよおいこら待てって駄犬んんん‼︎」

「気分悪いのに一人にしとく方が危ないッス」

 

 普段より揺れが穏やかだったので乙女の尊厳は護られた

 

 

 その後の仮想空間内のトレーニングで、イケメンなウマ娘がトレーニング相手をお姫様抱っこしながら走るのが流行ったそうだ

 




VTuberとしての名前が思いつかねぇ…
いい感じの名前があったら頂きたいぐらい

各々好きに名前を付けてください

追記 二日酔いの理由
金曜配信 [オヤブン倒すまで終われま戦 
  〜バイト失敗ごとに清めの日本酒(お猪口)〜]
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