樹々の葉が色づき始め、肌寒さを感じるようになった秋のとある日のトレセン学園にてそれは起こった
「寮長、『コレ』はなんですか?」
トレセン学園には二つの寮がある
その一つである『美浦寮』の入り口にて、寮長と呼ばれたウマ娘が複数のウマ娘達に問い詰められていた
「なんですかって…見りゃわかるだろ」
『寮長』と呼ばれたウマ娘は何故そんな質問をしたのか分からないとでも言いたげな表情をしていた
「分かりますよ!えぇ!私たちは、なんで『コレ』が寮の入り口にあるのかって事を聞いているんです‼︎」
問い詰めているウマ娘が指を差したその先には、正方形の板に四角の辺から一本垂直に棒が伸びており、先端にはメーターを内蔵した円状の器機が付いていた
体重計である
「体重計なんだから体重を量る為に置いてあるだろ」
「いい加減にして下さい!」
「体重計は玄関に置く物じゃないんです!」
「わざわざメモリが周りに見えるタイプじゃなくてもいいじゃないですかー‼︎」
「アタシらが右往左往する姿を見て楽しいのか!」
「私のこんな…!こんな姿を見て…!笑っているんですか⁉︎」
抗議するウマ娘の一人が膝を折り、顔を手で覆って泣き崩れた
そのウマ娘のお腹は自身の不摂生により豊満であった
「楽しんでる訳ねーだろ、アタシは寮長だぞ?お前らがしっかりと学園で学べるように、レースに乗り込めるようにする為にいるんだぞ?」
「なら…なんで体重計に乗らないと帰れない仕様になっているんですか⁉︎」
「毎年毎年食欲の秋だーって食い過ぎるから抜き打ちで早めに現実を叩きつけるんだとよ。トレーナーが居るやつは直接データが送られる」
「おのれ管理社会…!チーム『ファースト』の策略ですか⁈」
「あそこは徹底した管理を信条とするトレーナーなのは確かだが、他のチームまでそれを押し付けはしねーよ」
「こんな所には居れられません!『栗東寮』に移らさせて貰います‼︎」
「向こうは寮長自身によるボディチェックだぞ?」
「えっ⁈いやでもあの人に触られるのならば…」
「無表情で機械的に、淡々と体重とスリーサイズを正確に読み上げられるがいいか?」
「どうしてスリーサイズまでわかるんですか‼︎」
一部絶望の顔を浮かべながら寮の前の体重計に乗るウマ娘達
中には「走ってくる」と告げて踵を返したり、少しでも消化してから戻ろうと決めて保健室に眠りに行ったりする者も居た
「うわっ、何この行列?」
粛々と己の行いの末路を数字として突きつけられる中、寮の玄関前の現状(惨状)を知らずに戻ってきたウマ娘も現れた
死の宣告を告げられる直前のような心情のウマ娘達の前で声を出したのは『クローバーレース』と呼ばれているウマ娘だった
「「「【幸運体質】だ‼︎吊るせっ‼︎」」」
「ナニ⁈なんでこっちに向かってくるの⁈」
「幸運持ちでしょ⁈太らないんでしょ⁈」
「どれだけ食べても適正体重なんでしょ⁈」
「そのスリムな身体を見せつけやがってー!」
「オイ楽しいか?食事制限してるアタシらの横で食べるパフェは美味しいか⁈」
「ネタマシイ…ワタシノクルシミヲアジワウガイイ」
「わたしでも食べ過ぎれば太るよ!助けて寮長ーっ‼︎」
「ハイハイ、止めなお前ら」
なんの罪もない(もしくは存在自体が罪だったのかもしれない)ウマ娘への暴動騒ぎを収めた美浦寮長は、お腹周りが気になるウマ娘達に話し始めた
「体重を減らしたいお前らに、三つのプランがある」
「「「みっつのプラン?」」」
「一つは徹底した自己管理を頭と身体にじっくり覚えさせるCプランだ、講師として特別にクリスエス先輩を呼んでいる」
「あ、あのめっちゃ怖い先輩が講師?」
「じっっっとこちらを睨みつけてくるんだよねあの人…今まで怒られた事一度もないけど…」
「つーかなんでCから言うんだ?」
「二つ目はブルボンコーチによる坂路で限界に挑み続けるBプラン」
「こっちの限界をギリギリまで攻めてくるコーチじゃん、痩せるまでずっとあのベリーハードメニュー?」
「無理無理無理。体重増えてる時に坂登るのはしんどいって。坂路の申し子ルートは精神的にもキツイ」
「C、Bと来たら次はAか?」
「そしてAプラン、痩せる薬による時短プラン、担当として…」
「絶対コレ一択じゃん‼︎」
「適正体重まで最短距離!」
「…Aで薬ってまさか」
「サポート科に居るアグネス研究員がデータを取る為に来てくれる」
「C!!C一択!!モルモットはイヤ!!」
「急がば回れってね!!じっくり理論を学びます!!」
「そう簡単に美味しい話なんざねーよな!!地道にやってやんよ‼︎」