「……今日は、以上だ」
「「「あ、ありがとうございました〜」」」
トレセン学園の生徒達への今日の講義を終えて、教室から退出する
「………あ〜ヤッバ、緊張する〜〜」
「なんていうか…オーラ?を放っているのよね。卒業して何年か経っているのにまだ衰えてないのかしら…」
「やっぱりG1を勝利すると風格?って奴が出んのかねぇ…」
「逆よ逆。そういう素質持っているウマ娘が勝つのよ」
「…私達は?」
「………えぇ!そうね!」
トレセン学園を卒業した後、ウマ娘用のビジネススーツを身に纏い、各地で日本のレースを盛り上げる次世代の原石を探していたが、余り良い成果とは言えないまま数年が経った(名刺を渡そうとすると、怖がられて、トラブルに発展する。difficult、難しい、ものだ)
そんな中、現役時代の徹底した自己管理のノウハウを伝授して欲しいと連絡を受け、再び母校へと戻ってきて教鞭を持っている
トレセン学園は、『
授業を程々にし皆んなが準備をして、ウマ娘を応援してくれるファンの為に行う秋のファン感謝祭は、ハロウィンの時期である事を活かし、参加者の殆どが古今東西様々なmonster…
「舞台装置や衣装は間に合いそう?」
「人手は確保したよ、後は指示出来る人を付けてこっちは演技の稽古かな?」
「ちょっと!台本が大幅に変更されてるんだけど大丈夫なの⁈」
「内容に納得いかないって口出したのはアンタだろう?それよりも『
「小道具班、順調。要望があれば対応可。変更、ある?」
複数のウマ娘がこちらに見向きもせずに通り過ぎて行った
『聖蹄祭』では出店、教室でカフェ、レース場で特別レース、ライブ、体育館でバンド、そして学生による劇が行われる。話の内容から彼女らも劇をするmemberなのだろう
……劇
私が、not、私達が聖蹄祭で演じた劇を思い出す
多くのウマ娘に慕われ、皆をcrewとしてまとめ上げ、劇の成功を支えた彼女は今も面白い事を探しているのだろうか
パソコン片手に悪態を吐きながらも、最善への道を静かに導いた彼女は今もデータを集めているのだろうか
時にレースで競い合い、そして共に『別れ』とは何かを追求した彼女は、今も何かを壊し、創造しているのだろうか
全員に指示を出し、裏方をこなしながらも共に舞台に立ち、笑顔を振りまく彼女は今も笑顔でいるだろうか
昔を懐かしみつつ歩いていたら、校舎の外に出た
校舎には垂れ幕がかけられており、つい先日トリプルティアラを達成したウマ娘を称えていた
私のRoom mateも同じく素晴らしい成績を残したウマ娘だった
互いに話すことは少なかったが、彼女のレースに賭ける想いと徹底した自己管理はとても参考になった
「…ほんとに行くの?大丈夫?」
「大丈夫、クリスコーチの知り合いから教えてもらったから」
「でもでもでも…あんなストイックにトレーニングも食事も管理していた人が食べるかなぁ?」
「塩分とか脂質とか、厳しいと思うの」
次の講義の準備をしなければならない
時間に余裕はあるが、早いに越したことは無い
トレセン学園に導入されたAIの『ターク』に要請して生徒たちの食事や普段のトレーニングのデータを集めてもらおう
「あ、あの!クリスコーチ!」
次やるべきことを頭の中で纏めていると、生徒から声をかけられた
「…何か、あったか?」
視線を声をかけてきた、Cloverの髪飾りを付けたウマ娘に向ける
後ろに居た彼女の友人と思しきからは『ピィ?!』と、自分にとって聞き慣れた悲鳴が聞こえた
「放課後ラーメン!です!」
放課後ラーメン…誘い文句
ラーメンを誰よりも愛していた、いつも笑顔の彼女が教えてくれた言葉
「…フッ」
(え?!今、笑った?!)
(まさかの大のラーメン好き?!)
「…行き先は、任せる」
「あ!みんなと一緒でも良いですか?」
「構わない…全員、私が奢ろう」
「ええぇぇ?!い、いいんですか?!」
「あぁ…」
「じゃあ、『愛蘭』で良いですか?!あそこのラーメンはオススメですよ!」
「問題ない」
…『別れ』
トレセン学園を卒業すれば、友人らと会う機会が減る
その事を悲しいと捉える、それも一つの回答だ
だが、進む道が分かれても私達の歩みは止まらない
私には私の進むべき道があり、彼女たちもまた同じであるから
今日も、明日も、私は進み続ける