「うーしっ!!四人揃ったな!」
私、『ムラクモヒメ』はルームメイトのグリちゃんこと『セレーネグリマー』と一緒に、トレセン学園が誇る仮想空間にフルダイブしてトレーニングができる『メガドリームサポーター』を使い、仮想空間内に居ます
お互いにジュニア期、更にはグリちゃんは12月にG1レースを予定していてトレーニングに集中しなければならない時期ではあるのですが…
「しゃあっ!!今から来たる春のトレセン学園ファン感謝祭に向けて特訓を行う!開会の宣言をしろぉ!!ムラクモォ」
「えぇっ!えっと、その…」
「ぃよーし!じゃぁ選手紹介を行うぜ!…コホン、
『それでは、選手の紹介を行います。1番、セレーネグリマー』」
「はーい!頑張ります!」
「『2番、ムラクモヒメ』」
「ひゃい?!頑張ります…?」
「『3番、タテジマックイン』」
「皆様、よろしくお願いいたしますわ!」
「お願いしまーす!」
「…え?!あの、もしかしてメジ「他人のそら似ですわ」あ、そうですか…」
「『4番、ゴルシちゃん』…オッシ!第一競技行くぞぉ!」
トレセン学園一の破天荒ウマ娘に巻き込まれ、謎の特訓をすることになりました
[バスケットボール]
「エアバスケで鍛えたこの実力、魅せてやるぜぇー!!ヘイ、マックちゃん、パース!」
「…今回のルール、四人でゴールを奪い合う個人競技なんだけど」
「えぇっと、こう?ですの?」「グハァ⁉︎」
「ボールが顔面に吸い込まれていった?!ドッジボールじゃないですよ!マックさん!」
「あら?」
[ゴルフ]
「以前、パーマーが優勝していましたわね。エイ!…なかなかまっすぐ飛んでくれませんわね」
「…エイッ!うぅ、空振り…」
「ヘ…!このゴルシちゃんに任せな」
「それってパター用じゃぁ…もの凄く飛んでいった!」
[クリケット]
「…私、この競技よく知らないんですけど…」
「うーん、野球に似ているってことだけは」
「バッティングは任せてくださいまし!」
「投げる人は双方オート、対戦相手は三女神が相手してくれるぜ。ま、お試しだから気楽にやろーぜー」
[大食いダービー]
「ここは仮想空間ですからね!どれだけスイーツを食べても!カロリーゼロですわ!」
「え?!チーズケーキをホールで何個も食べきっても?!」
「ZERO…ですわ!」
「ZERO…なんて背徳的で甘美な響き…!」
「グリちゃんグリちゃん…戻ってきて」
「マックちゃんよぅ…ノルマのカロリー消費量はまだまだ先だぞ?優勝祝いーっつって食べて増えた体重はZEROじゃ無いんだぜ?」
「言わないでくださいまし!」
[メガトンパンチ]
「オラァ!地球を真っ二つにしてやるぜぇ!!」
「かった!!硬いよこの瓦!」
「…タイミングよくAボタンを押さないから…」
「Aボタン、とはなんのことでしょうか?」
[的あて]
「己の得物で的を撃ち抜くんだ!ニワトリには当てんなよ!アタシはこのゴルシバズーカだぜ!」
「フフン、実は弓の扱いは得意なんだよね」
「わたくしは野球ボールですわ。コレシカナカッタカラ、シカタガアリマセンワネ」
「…ヒメちゃん何その、銃でもない、大砲?の小さな模型?」
「アタシが用意した12.7cm連装砲」
「貴方はまた変な物を…」
「…一発だけなら誤射、一発だけなら…」
「ヒメちゃんヒメちゃん、落ち着いて」
[大障害]
「ッシャア!最終競技、大障害レースだ!妨害ありだからそこんとこ注意しろよな!」
「コースの説明に商店街とかプールとか民家とかあるんだけど…」
「流石に現実ではやらないよね?走らないよね?」
「在学中、民家内までコースにしているとは聞いたことありませんが…」
「へー、トレセン学園のOGだったんですねー」
「エ?!イエ親戚にトレセン学園に通ってらした方が居てですネ?!」
(…グリちゃん…わざとかな…)
「プールゾーンだ!マックちゃん『ムラクモ』には気をつけろよ!補正が入っから!」
「泳ぐわけでもないのになんの補正が…」
「?!取舵イッパーイ!!」
「一体何を…爆発?!」
「なんか後ろから飛んできたけど何をやったのヒメちゃん?!」
「大丈夫…爆発のエフェクトだけだから…」
「あの、派手に吹っ飛んでいる方がいるのですが…」
「ついにレース場まで戻って来たぜ、一着はアタシだぁ!」
「いいえ!たとえ一線を退いていようとやすやすと負けてあげませんわ!」
「私だって負けたくない!勝負!」
「…!」
最終の第四コーナー
様々な競技で先輩後輩の垣根を越えて時に協力し、時に蹴落とし合い、そしてようやくウマ娘らしくレースでの勝負になりました
しかし相手は卒業したとはいえ、G1レースを勝利したウマ娘
トゥインクルシリーズを走り始めたばっかりの私と比べて、要所でのコース取りやコーナーでの練度がまるで違います
同時期にデビューしたグリちゃんは私よりもスピードもパワーも上回っています
末脚でもグリちゃんの方がきっと上
このコーナーが終われば最終直線
四番手で末脚も劣っていて、このまま走っても追いつけないでしょう
たとえここで負けたとしても、トゥインクルシリーズの成績に影響なんてありません
でも、それでも
「…ぶち抜いてみせる!」
魂が叫びだす
負けたくない、走れ!と
自分でも測りしれないありったけの感情を脚に込めて、ターフに叩きつけました
「よーし、お疲れさん!あ、今日の運動量はお前らのトレーナーに報告がいくからな!あ、マックちゃんには消費カロリーも記載しておいてやったぜ」
「余計な事しないでくださいませ!」
仲がいい二人の先輩方を眺めながら、グリちゃんと一緒にストレッチを行います
仮想空間内では効果が薄いですが、クールダウンがしっかり行えているかもAIに指摘してもらえるので、効果的なストレッチを身につけるべく一つ一つ意識しながら行います
「ヒメちゃんは春、どんな競技に出るー?」
芝に座り、身体をあちこち伸ばしながらグリちゃんが問いかけてきました
「ん…春までまだ時間があるから、わからないかな?春にレースが入らないわけでもないし」
「まーそうだよね。ちなみにどのレースに出たい?桜花賞?」
「マイルは…短いからパスかなぁ、それだったらまだオークスの方が…。グリちゃんは?」
「んー、こっちもまだ決めてないんだよね。トレーナーとは近々相談するけど。次のレースの結果次第かな?」
話をしているうちにストレッチを終えたグラちゃんは立ち上がりました
そして入念にストレッチを行う私を見て宣言しました
「負けないからね、ファン感謝祭も、レースも」
見上げた彼女の表情は、普段の彼女のレースでも見せない程の闘争心が溢れていました