ミッド『それではこれより!表彰式に移ります!』
雄英スタジアムの上空に色とりどりの花火が幾つも打ち上げられる中、巨大な表彰台の前に立ったミッドナイトがそう宣言した。
三位、常闇踏影。同じく三位、轟焦凍。
準優勝、爆豪勝己。
優勝、華谷銃我。
それぞれの表彰台に4人の選手が順に上がると、その都度に大きな拍手が起きる。マスコミや観客のカメラのフラッシュもあちこちで輝きを放っていた。
ミッド『メダル授与よ!今年、一年生にメダルを贈呈する人はもちろんこの人!!』
マイト「私が!メダルを持って『我らがヒーロー、オールマイトォ!!』き…た…のに……」
ミッド(ご、ごめ〜ん…)
メダル授与のため、格好良く登場するオールマイトだったが、不幸な事に台詞が被ってしまい、彼の登場シーンはグダグダになってしまった。悲しさに身を震わせるオールマイトに、ミッドナイトは手を合わせて謝る。しかし、すぐに気を取り直したオールマイトは早速、メダルの授与に取りかかった。
マイト「常闇少年、おめでとう!強いな君は!」
常闇「もったいないお言葉。」
マイト「個性には相性差がある。これを覆すには個性に頼りっきりじゃ駄目だ。もっと地力を鍛えれば取れる択も増えるだろう。しかし、時には圧倒的に相性が悪い相手と戦う事もある。今回のようにな」
常闇や生徒たち以上に、観客席のプロヒーローたちがオールマイトの言葉に大きく頷いた。弱点の無い個性などそうそう有りはしない。プロとして活躍する彼等は、その事を良く知っている。
マイト「だが、あまり気に病む事は無い。確かに今回は敗北してしまったが、それは試合という形式であった為だ。実戦形式であれば、結果はまた変わっていただろう!弱点をカバーするコスチュームやアイテム、相手の裏をかく戦術。地力と個性に加え、それらの要素を上手く組み合わせれば、圧倒的に相性が悪い個性だろうが勝てる可能性は十分に出て来る。それが実戦というものだ!常闇少年、落ち込んでいる暇は無いぞ!更に向こうへプルスウルトラだ!」
常闇「…!御意!」
マイト「逆を言えば、圧倒的有利な個性だったとしても負ける可能性はあるから、絶対に油断しちゃ駄目だぞって事なんだけどね」
オールマイトの励ましとハグを受けた常闇は、肝に銘じたように恭しく頭を下げた。そんな彼に忠告も付け加えたオールマイトは、常闇くんの隣に立つ轟くんの前に移動する。
マイト「さて、轟少年。おめでとう。今まで炎をあまり使ってこなかったのは、ワケがあるのかな」
轟くんは無言で頭を下げてメダルを受け取る。そんな彼にオールマイトが優しく声をかけると、僅かな逡巡の後に轟くんは口を開いた。
轟「緑谷たちからキッカケをもらって……分からなくなってしまいました」
昼休憩の時の銃我の言葉。そして、緑谷くんの身を削った無茶苦茶な説得。それは父を見返すためだけにNo.1ヒーローを目指していた轟くんを大いに悩ませた。
轟「俺もあなたのようなヒーローになりたかった。ただ…俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃ駄目だと思った。清算しなきゃならないモノがまだ有る」
マイト「顔が以前と全然違う。深くは聞くまいよ。今の君ならきっと清算出来る」
憑き物が落ちたような、それでいて未だに心憂げな表情を残す轟くんをオールマイトは抱きしめ、背をポンポンと軽く叩いて励ました。小声で礼を述べる轟くんの様子を、オールマイトはウンウンと何度も頷いて見届けると、今度は二位の表彰台へと向かう。
マイト「爆豪少年、惜しかったな。しかし準優勝だ。見事な成績じゃないか!」
爆豪「…ッ!2番なんて意味ねぇんだよ、オールマイトォ…!1番以外に…ッ!何の…何の価値もねぇ…!」
オールマイトがニカリと笑いかけたが、爆豪くんは歯を食いしばり、震えるほど悔しがっていた。銃我にあんなに大口を叩いたのに最終結果はおろか、どの競技でも一位は取れなかった。彼にとって、これほど悔しい結果は無いだろう。
マイト「む。爆豪少年、そんなことは無いぞ。皆、理解してくれているはずだ。2番だって立派な――」
爆豪「世間が認めても、俺が認めなきゃゴミなんだよ!」
爆豪君が吼えた。慰めは逆効果だったようで、彼の怒りは全く治まらない。爆豪くんは銃我に負けた事をどうしようもなく理解していた。つまり、これは負けてしまった自分自身へ向けた怒りなのだ。その姿を衆目に晒すことで己への戒めとしていた。
マイト「うむ、君の信念は分かった。相対評価に晒され続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない。なればこそ受け取っておけよ!“傷”として!忘れぬように!」
爆豪「止めろッ!要らねェッ!」
2人は “受け取りなよ!”“要らねェッ!”の押し問答を繰り返した後に、オールマイトが爆豪の首にメダルを無理矢理かけた。しかし、このままでは頭を大きく振るうだけで簡単に外されてしまう。なので、オールマイトは彼の首が絞まらない程度に首掛けのヒモの部分を優しく結んであげた。爆豪くんは両手を動かせないように拘束されているので自分ではもう外せない。
爆豪「畜生!外せねぇ!解けェッ!」
マイト「華谷少年、優勝おめでとう!」
頭をブンブンと振って嫌がる爆豪くん。
そんな彼を尻目に、オールマイトは銃我の前に立った。やはり優勝者への表彰とあってか、観客の歓声やカメラのフラッシュも凄い。まるで白く輝く花火に囲まれているようだった。
銃我「ありがとうございます!」
マイト「いやぁ、強いな、君は。」
銃我「いえ、僕だけの力ではありませんよ。」
マイト「?」
銃我「周りの人が支えてくれるから今の僕があるんです。現に今も支えられていますし。」
そう言うと那子の方を見る。
銃我「…(ニコッ)」
那子「っ///」
マイト「なるほど、その人のためにも頑張らないとな!」
銃我「そうですね。」
マイト「さァ!今回は彼等だった!しかし、皆さん!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!ご覧頂いた通り、競い!高め合い!更に先へと昇っていくその姿!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!てな感じで最後に一言!皆さん、ご唱和下さい!せーの!」
「「「「プルス『お疲れ様でした!』ウル…えっ!?」」」」
皆「そこはプルスウルトラでしょ!?オールマイト!」
マイト「ああいや…疲れただろうなと思って……」
最後の最後で再びグダってしまったものの、雄英体育祭はこうして幕を閉じた。
教室では担任の相澤先生から、明日と明後日が休校になる事、そして休み明けに職場体験の指名事務所の発表を行うと伝えられて下校となったのだった。
〜体育祭が終わって〜
銃我「ただいま〜」
那子「お、おかえり…」
リビングに向かうと那子がソファに座っていた。
銃我「…着替えてくる。」
那子「うん…」
銃我「…」ガチャッ
那子「…!」
ソファに座る。
二人「「…」」
銃我「あ、あのさ…」
那子「はっ、はい!」
銃我「優勝したからさ、お願い聞いてもらってもいい?」
那子「うん…」
銃我「僕の…、恋人になってください!」
那子「…はい!」ギュッ
銃我「…!」ギュー
その時の那子の笑顔は、僕には眩しすぎた。
僕たちは恋人同士になった。
ここからもっと二人の恋も書こうかなって
次回から職場体験編です!