2つに分かれた未来世界の話   作:和室でバドミントンしたい

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今回は山坂夏という人物の視点で進行します。


1話 靴下裏表逆

「あとお前だけなのに、お前だけなのに…」

 

いつものやつか…と思う。

私の顔をブラシのようなもので擦りながら「お前だけなのに」と誰かが連呼する夢を毎日のように見る。

いつからかも忘れてしまった。

こんな夢を毎日見るから私は寝るのが好きではない。

もちろん寝なければ生きていけないから寝るのだが、これでは休めている気が全くしない。

 

私は目を覚ました。

毎日見てるのに起きた時には顔は忘れてしまう。

まあ夢なんて所詮夢だし、どうでもいいかなと思っていたら、違和感を覚えた。

そこは変わらず自分の部屋で毎日寝て起きる場所だが、なぜか全く違う場所に感じるのだ。

空気が違うというか、まるでコピーされた偽物の世界のように感じた。

何かが足りない…。

そんな気持ち悪い感じがした。

 

そんなことを考えていると突然電話がかかってきた。

そこに出てきた見慣れた名前を見て先程の気持ち悪さが少し薄れてきた。

親友の春歌夕から電話がかかってきたので出たところ、

「あんた何やってたの!?全然電話に出ないじゃない!!」

と急に怒鳴られた。

「いやまだ朝の7時だし、普通に今起きたところなんだけど…」

と言ったら、

「なんで寝てたの!?あんたまで消えちゃったかと思ったじゃん…」

と言われた。

消えた?

どういうことなの?

「消える…ってなんのこと?」

「菜々がいないの…」

「いない?」

笹絵山菜々は私と夕の親友だ。

いないとはどういう意味なのか。

「存在しないのよ…」

「え?」

意味がわからなかった。

存在しないはずがない。

昨日だって一緒にいたのに突然消えるなんてことは考えられない。

「存在しないってどういうことなの?」

「菜々の連絡先が消えてて、誰か何か知ってないか聞いたんだけど、菜々のことを私とあんたと華と裕司以外みんな覚えてないの…」

「なんで…」

月光華と寺山裕司も私たちの親友だ。

それ以外みんな覚えてないなんてことがあるのだろうか。

菜々はクラスメイトに普通に人気があったのになぜそんなことになったのか。

「本当に全員にかけたの?」

「それが、半分くらい連絡先が消えてたのよ…」

半分?なんで?

「菜々以外の連絡先が消えてた人のことを電話が繋がった人全員に聞いたら誰も覚えてなかった…」

放心状態だった…。

今まで見てきたものは夢だとでもいうのだろうか。

でも、そんなはずはない。

覚えてる人はいるから。

今見てるものこそ夢だと思いたい。

そして、先程感じた気持ち悪さは増していった。

「とにかくいつもの場所に集まるわよ!!」

「すぐに行く…」

そして電話は終わり、いつもの場所へと向かった。

昨日もそこで菜々に会っていた。

消える予兆なんてなかった。

あまりにも非現実的すぎる話だ。

 

菓子屋だった場所の前に3人が集まっていた。

「お前も無事だったんだな…」

裕司にそう言われた。

「一体何が起きてるの?」

「全校生徒の名前が書いてるやつを見たんだが、どうやらクラスメイトに限らず全学年に影響が起きてるらしいんだ…」

全学年…。

もしかして世界中で起きてたりするのかなと思っていたら、とある異常に気づいた。

菓子屋だった店そのものが消えているのだ。

「そうだ、店が消えてるんだ。」

昨日まであったのに急に工事で全部撤去できるものなのか。

いや、普通に無理があるだろう。

「ここまで歩いてきて、やけに人とか家とかが少ないと思わないか?」

「確かに…」

その通りだ。

これはつまり世界人口の半分が消えたというのだろうか?

ますます意味がわからなくなった。

「あんたこんな状況でよく冷静に分析できるわね。」

と夕が言った。

「冷静ではない。でも俺が慌ててたら収拾がつかないだろ。」

確かに夕は慌ててるし、華はしょんぼりしてるし、私は放心状態だ。

裕司は混乱をいつもまとめてくれるのだ。

「菜々にまた会えるのかな…」

華が言った。

「会えるかなじゃなくて会うのよ!!いつまでもしょんぼりしてたって何も変わらないわよ!!」

と夕が言う。

「でも会えるかなんてわからないじゃん!!」

「会えないこと考えてたらホントに会えなくなるわよ!!」

またはじまった。

この2人は会うと一度は必ず喧嘩が起きる。

「そんなんだから華はいつも靴下が裏表逆なのよ!!」

「そんなんだから夕はいつも筆圧が強いのよ!!」

「筆圧が強い方がはっきり見えるからいいじゃない!!」

「なんで逆なのいつもすぐ言ってくれないのよ!!筆圧強すぎたら紙が破けるでしょ!!」

一瞬で全く関係ない話にシフトしてしまった。

こんなのが毎度行われる。

「とりあえず落ち着け、はやく手がかりを探さないとだろ。」

いつものように裕司が2人を沈めた。

そして見守る私と菜々…。

そうだ、菜々はいないんだった…。

やっぱり結構寂しい。

「とりあえず遠いけど菜々の家に行ってみよう」

裕司が言って皆歩き出した。

 

歩いて1時間…。

田舎なので電車がほとんど通っておらず、こんなにも歩かなければいけなかった。

2223年にもなるというのにまだ整備が行き通っていないガチの田舎なのだ。

そして菜々の家を見ると、

「やっぱりないわね…」

夕が言った。

家ごと消えていた…。

やっぱりそうなのかと思っていたら、

「諸君は異次元の存在を信じているかい?」

と言う声が聞こえた…。

その人は妙な仮面を被って、ボイスチェンジャーを使っていた。

「次元の狭間とは不安定だ。少しでもバランスが崩れてしまえばこの世に大きな影響が起きてしまう。そのシステムがあるのは神の悪戯なのかそれとm…」

「ねーちゃんなんでそんなへんなかっこうしてるの?」

「…え?なんでここにいるのよ!!後でアイス買ってきてあげるからお家に帰ってて!!」

あっ、弟さんなのかな?

これ結構気まずいのでは。

「……それとも人間が起こしたものなのか。でも、2つの世界を繋げる手がかりがある、それが…」

えっ、続けるの?

「いや無理があるでしょ」

「へ?」

「あんた誰よ」

「へ??」

「あのー、そーいうのってあとで黒歴史ってやつになりかねないからやめた方がいいですよ」

「へ???」

「勧誘は間に合ってます」

「へ????」

そして私たちは逃げるように去ろうとしたが、

「ちょっと待ちなさいよ!!」

そう言われて聞いたことのある声だなと思って振り向くと彼女は仮面を外し、ボイスチェンジャーも取っていた。

そして皆が驚愕した。

「菜々!!あんたこんなとこで何やってんのよ!!」

明らかに顔が菜々そのものだった。

しかし、なんでこんなことをしてるのか。

「私は笹絵山菜々ではない、空波菊夜というものよ」

別人だと菊夜と名乗る者は言った。

確かに菜々に弟なんていなかったはずだ。

「もしや、菜々の親戚とかか?」

と裕司が言うが、

「いや、血の繋がりは全くない。まあ簡単に言えば知人ね。」

と言った。

明らかに血の繋がりが全くないように見えない。

顔も身長も声もそのままだからだ。

「それでなんであなたは仮面つけて、声変えてたの?」

と私が言うと、

「雰囲気作りは大切でしょ?」

と言った。

なるほど、変人か。

「それで私はこの事件の真相がなんとなくわかるの」

おっと変人と言って悪かったね、やっと手がかりが出てきたか。

「私と菜々は対の関係、空波家と笹絵山家で生まれる長女は必ず同じ容姿になるという呪いみたいなものがある。そして菜々は異次元に飛ばされてしまった…」

あっ、だめだこれ。

聞かない方が良かったわ。

「中二病って後々本当に後悔するからやめておいた方がいいですよ本当に…」

普段あまり知らない人に話しかけない華が喋った。

それくらい心配なのだろう。

経験者だからこそ…。

「中二病なんかじゃないわよ!!本気で言ってるの!!なんならあなたたちに見えないだけで隣に菜々がいるの!!」

何を言ってるんだこの人は…。

本当にやばいのでは?

「そうね…山坂夏!!」

「はい!?」

急に本名を言われ、びっくりした。

「あなたどうやら小2くらいの時、地球儀を壊したら地球が壊れちゃうと思って絶対に触らないようにしてたみたいじゃない?」

「なななんでそれを!?」

「春歌夕!!」

「何よ!?」

「あなたは昔は月光華のことをおねーちゃんって呼んでたみたいね?」

「わあああああっっ!!!」

「月光華!!」

「はひっっ!!」

「靴下裏表逆!!」

「忘れてた!!あれっ私は黒歴史とかじゃないn…」

「寺山裕司!!」

「はい?」

「あなたは幼稚園での将来の夢が雑草仮面だったらしいわね!!」

「それだけはやめてくださいお願いします」

「これでわかったでしょ?隣に菜々がいるからわかることよ!!」

もしかしてガチなのか?

でも菜々本人だったりは……しないな、やっぱり弟がいるらしいし、あまりにも性格が違いすぎる。

「ねえなんで私だけ靴下の話なの?」

納得のいかなかった華が問い詰めるが、

「だって菜々がそういうから…」

と言った。

そういえばいつも喧嘩で夕に指摘されるがその後直すのを忘れて、菜々にもう一度指摘されてやっと直していた。

「どうやら信じてみるしかなさそうね…」

そう私が言うと、皆もそう思ったのか賛同するしかなかった。

「それで菜々はなんであなたには見えるのよ」

と夕が聞いた。

「見えるわけじゃない。私と菜々はもともと互いの場所がなんとなくわかって、テレパシー的なこともできるの」

「非現実的すぎるね…」

と私が言うが、

「そもそも起きてる事件自体非現実なんだから今更。」

と菊夜に返された。確かにその通りだ。

「菜々はなんで俺たちには見えなくなってるんだ?」

と裕司が聞くと、

「さっきも言った通り、異次元的な何かに行ってしまったと考えられる。つまり異次元でのこの位置に菜々はいて、菜々にはあなたたちは見えていない。それがあなたたちにも起きてるってこと。」

とのことだ。

ややこしいな…。

まあでも菜々とコミュニケーションがとれるというならいいことだろう。

完全に信用したわけではないし、そこに菜々は見えないのでまだ素直に喜べないが、崩れていた希望が少し蘇ってきているように感じた。

 




2話もすぐに投稿するかもです。
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