もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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ぼっちちゃんやさしい①

「なにやってんだろ? あたし」

 

 両手にエナドリ満載の買い物袋を持って、ふと思う。バイト初日を乗り切ったぼっちちゃん、次の日風邪を引いて熱出したらしい。学校とバイトを数日休むことになった。なんだよ、また明日って言ったくせに。……心配だな。

 そこからの月曜日が今日。風邪が治ったぼっちちゃん復帰の日。学校が終わったらスターリーにやってくる。あたしがシフトの穴埋めしてやったんだから、今日からはバリバリ働いてもらうぞ! なんてな。

 

『EDMガンガンにかけまくってエナドリ片手に踊り狂っていてください!』

 

 学校からの帰り道、ぼっちちゃんから意味不明なロインが届いた。マジでわけわからん。でもぼっちちゃんから何か頼んでくるなんて初めてだな。まあ、できるだけのことはしてあげたい。

 スターリーへの通り道にあるドラッグストアでちょうどエナドリ大セールが開催中だったので、たくさん買った。両手にエナドリ満載の買い物袋を持って、ライブハウスへの道を急ぐ。こんな理由でバイトに遅刻したら大目玉だ。

 

「リョウ、袋一つは持てよ」

 

「やだ。私は買う必要ないって言ってるのに。星歌が勝手に買ったんだから、星歌が持つべき」

 

 とか言いながら一本飲んでんじゃねぇよ山田。そうこうしていると、向こう側にぼっちちゃんが見えてきた。ピンクすぎて遠くからでも目立つ。……やっぱ服装は注意した方がいいな。ちょっと遠いけど、早速声をかけてやろう。

 で、なんか誰かと一緒だけど、あの制服はぼっちちゃんの高校だっけ。標準服ってやつか。後ろ向きで顔がよく見えないけど、学校で出来た友達かな?

 

「おーい! ぼっちちゃーん! よくわからんけどー! エナドリ沢山買っといたぞー! これでいいかー?」

 

「え? あ、ありがとうござ……んぶぅ!」

 

 え? あいつ、ぼっちちゃんになにやってんだ? つーかどこかで見たことあるような?

 

「ごめん後藤さん! 私やっぱり帰る! 理由は言えないけど、どうしてもそこには行けない! ここに来たことは絶対にその人たちにも言わな……」

 

 ん? ぼっちちゃんの隣の子、見覚えがある。……あ、あいつは! ……まずは袋を置いて、と。

 

 

「あー! 逃げたギター!!」

 

「あひいいいいいー!!」

 

「喜多! てめぇ! そこを動くな!」

 

「星歌!」

 

 リョウ止めんな! あいつだけは!

 

「あわわ! ……あの! わ、私!」

 

 あいつビビって腰を抜かしてる。だが許さん!!

 

「やめて……ください!!」

 

 

 どたぷん!!!

 

 あ、なんか柔らか……。え!?ぼっちちゃんの、胸! ぼっちちゃんが抱き着いて、あたしを体で止めようとしてくる! てか、なんであいつと一緒にいるんだよ!

 

「ぼっちちゃん! どけ! そいつ殴れない!」

 

「おおおおおお、落ち着いて!」

 

 あ、バランスが崩れて、あたしがぼっちちゃんに押し倒される形になった。ジャージに引き締められて、なお存在を主張する大きなたわわが、あたしの顔にのしかかる。夢心地だぁ……。って何考えてんだあたし! とりあえず、ぼっちちゃんの胸を押しのける。

 

「……いや、お前が落ち着け」

 

「星歌、鼻血出てる。……スケベ」

 

 リョウが真上から見下ろしてくる。ギャー! あたしの鼻から大量の血が。そして、ぼっちちゃんのジャージいっぱいに鮮血が広がる。やっちまった!

 

「あ……ぼっちちゃん、ごめん! てか、スケベちげーし! ちょっと頭と顔打ったからだろ……たぶん」

 

「あ、いえ、だ、大丈夫です。こ、こちらこそ、無駄で無意味な脂肪の塊を押し付けてすみません……」

 

「いや、大丈夫じゃねぇし! ぼっちちゃん、ジャージは洗って返すから! ホントごめん!」

 

 必死にぼっちちゃんのジャージをハンカチで拭きながら謝罪する。あとソレについては、無駄とか言うのやめろ! 敵作るぞ!

 

「……スターリーに、行こうか」

 

「お、おう」

 

「あ、はい」

 

 ゆっくりと立ち上がるぼっちちゃんとあたし。ここはシモキタの街中。周りの視線が痛い。早く店へ入るに限る。

 しっかし、ぼっちちゃんが止めてくれなかったら、危うく暴力沙汰を起こすところだった。ありがとな、ぼっちちゃん。それからリョウも。

 

「ほら……立てる?」

 

 腰を抜かしたままの喜多に手を差し伸べるリョウ。

 

「あ、あうう……リ、リョウ先輩……」

 

 喜多は目をキラキラさせながら、ガシッとリョウの手を掴んでる。なんつーか、現金な奴。とりあえず営業開始前のスターリーで事情を聞くことにする。

 

「大変申し訳ありませんでした! 何でもしますから! あの日の無礼をお許しください! 私をめちゃくちゃにしてください!」

 

「とりあえず落ち着け! 頭上げろって!」

 

 ライブハウスに入店早々、見事な姿勢の土下座を披露する『逃げたギター』こと喜多。一心不乱に頭を打ち付けてるのを見ると、さすがにあたしも気の毒になってきた。ざわつく店内。姉貴やスタッフさんたちもめっちゃ見てくる。

 あーもう! 正直困るんだけど!

 

「お、お、お許しください! めちゃくちゃ!」

 

 そしてなぜか一緒に土下座するぼっちちゃん。いや、お前はいいよ!汚れたピンクジャージは脱いでもらったが、下に着てるTシャツなかなか厳ついな。やるじゃん。センスがいかにもロックって感じだ。

 

「とりあえず、理由を聞かせて。話はそれから」

 

 リョウは動きで席に座るよう促す。リョウの言う通り、あたしも理由が知りたい。何故ライブ当日に逃げたのか。……その前に、鼻血塗れの顔を洗わせて。




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