『初めまして……だね。私がギターヒーローです。星歌ちゃんのためにオシャレしてみたんだけど、どうかな?』
なんでギターヒーローさんがスターリーにいるんだ? いつもの野暮ったい服装じゃなくて、桜色の綺麗なコーディネート。なんかオトナの女性って感じだ。顔はモヤみたいのが掛ってよく見えない。でも絶対綺麗なんだろうなって分かる。
『星歌ちゃん、ドラム上手だね。私も……本気出しちゃおうかな?』
って、気づいたらスタジオでセッションしてる!?ギターヒーローさんと2人だけのセッション。うふふ……夢みたいだなぁ。
『ねぇ星歌、キスして。私、星歌とは友達じゃイヤなの』
ギターヒーローさんの唇が少しずつ迫ってくる。キ、キス? あたしたち女の子同士だよ! そ、それに夜のセッションは心の準備が……ってお、落ちる!?
「――いか! 星歌! いい加減起きなさい!」
「おわ! ってぇ!! ……なんだ、夢か」
くそぅ! いいところだったのに! ベッドから落ちて目が覚めた。それにしても妙な夢だったな。あたしは、あくまでギターヒーローさんの演奏が好きなんだよ。こ、恋人になりたいとか、そういうシュミじゃないし!
「全くもう。いつまで寝てんのよ? 今日はバンドのみんなと遊びに行くんでしょう?」
「遊びじゃねぇよ! アー写撮るんだよ!」
「はいはい。もうリョウちゃん来てるわよ」
「もちゃもちゃ……。おはよう星歌」
「いや、当たり前のように朝飯タカってんじゃねぇよ」
オーチューブは今日も通知なし。1か月ぐらいギターヒーローさんの更新無いな。ちょっと前までは、ほぼ毎日更新してたのに。忙しいのかな?少し寂しい。さて、朝飯も済んだし下北沢駅に行くか。
「それでさ、あの鋭いストロークが絶妙で」
「星歌、最近ギターヒーロー? のことばっかりだね。そんなに好きなの?」
「おう!ギターヒーローさんの演奏が一番燃えるんだよ!」
「ふーん。でもその人、確かにギター上手いけど動画はカバーばっかりでワンパターン。顔も出してないじゃん。何がいいんだか」
「んだよ、感じ悪ぃな。リョウもちゃんと聴いてみろよ、絶対ハマるからさ!」
「興味無い」
……なんでムクれてんだよ? ヘンな奴。それは元からか。さてはギターヒーローさんのウデに嫉妬してんな? あの人、若いのにもうプロレベルだしな。リョウもギター弾けるけどギターヒーローさんには敵わないだろうな。
喜多ちゃんとは途中で合流。今日はアー写撮影ってことでそれぞれ結束バンドにふさわしい服で来るように頼んである。リョウはシックで中性的な雰囲気。なぜかやたら肌を隠すよな。喜多ちゃんは正統派のキレイめスタイルがよく似合う。今日は学校が無いからメイクもばっちりだ。
あたしはシンプルなTシャツにダメージジーンズ。姉貴には『男の子みたい』って言われたけど、いいんだ。あたしは硬派なバンドマンなんだよ。……姉貴みたいにかわいくないもん。
まだ時間に余裕はあるけど、待ち合わせ場所には、もうぼっちちゃんが居るみたいだ。相変わらずの恰好、他に服持ってないのか……。
「おまたせ、ぼっちちゃん」
「この度は申し訳ありません! 私は罪人です!!」
え? ウエルカムドリンクならぬウエルカム土下座……斬新すぎるだろ。とか言ってる場合じゃない!
「とりあえず街中で土下座は止めろ! めちゃくちゃ見られてるし!」
「き、今日はアー写撮影と見せかけて、作詞全然出来てない後藤ひとりを吊るし上げてSATUGAIせよ!! の集まりじゃないんですか?」
「そんな外道なことしないわよ後藤さん!」
「ふっ。ロックすぎるぜ、ぼっち。……作詞は焦らなくていいから」
リョウが頭を上げたぼっちちゃんに手を差し伸べる。
「キャー! いいなー! 後藤さんそこ代わってー!!」
喜多ちゃんは相変わらずだ。普段はまともだけど、リョウのことになるとすぐこれだ。しかしリョウはちょっとした動きでも、いちいちかっこいい。今だってまるでおとぎ話の王子様みたいだ。天賦のスター性ってやつか?
「それじゃ、アー写撮影の旅にレッツラゴー!」
「は、はい!」
「ぷぷっ」
「あははっ、なんか言い方がオジサンみたいですね」
「うるせぇな、いいだろ別に」
姉貴の口癖が移ったんだよ。……確かにオヤジくさいけど。
撮影は事前にバイトの時やロインで話し合った場所に行ってみる。公園、階段、フェンス、植物とかいろいろ。一通り当たってみたがどれもピンと来ない。ちなみに『みんなで結束バンド大作戦』は3人の猛反対であえなく没に。なんでこれの良さが分からんのかな。サイン入りで650円だってイケるのに。
「ひぃ! オバケ! ……ってぼっちちゃんか! 脅かすなよ!!」
いきなり! 気配ゼロで! 肩叩くな! あたしはこういうのが大の苦手なの!
「あばばば!!! す、すみませんんん~」
「ぷはっ! 星歌反応ヤバすぎ」
「伊地知先輩、ちょっと大袈裟すぎますよ! でも、ちょっと可愛かったかも」
「で、なに?」
「あ、あの! あっちに、い、いい感じの壁が」
「でかしたぼっちちゃん! 行ってみようか」
あーでもないこーでもないと、いろんなポーズで写真を撮りまくったけど、なかなかピンとくる1枚にならないな。4人のキャラがバラバラすぎて纏まりに欠けるっていうか。でもその中で、喜多ちゃんはどんなポーズでもキマってるよな。ちょっと羨ましい。
「しっかし、喜多ちゃんはどの写真でも可愛いな」
「えーそんなことないですよぉ」
とか言って自分の事、絶対可愛いって思ってるな、こんにゃろう。
「でも、私写真慣れしてるんです。イソスタに写真よく上げるので!」
ほら! っとイソスタのページを見せつけてくる。キラキラな写真がたくさん並んでいる。リア充っ子め。……べ、別に羨ましくないし。
「ヴッ!」
案の定ぼっちちゃんの精神に大ダメージ。
「私が下北沢のツチノコです……ノコノコ」
「キャー! 後藤さんが痙攣しながらヘンなこと言ってるわー!」
「いつもこんなもんだろ」
ぼっちちゃんの奇行は、バイトで散々見て来たからもう慣れたもんだ。慣れたくないけどさ。
「ところでイソスタって何が楽しいの? あたしネット疎いからよくわかんないんだよね」
「楽しい気持ちのお裾分けっていうか、友達が楽しそうだと楽しくないですか?ていうか伊地知先輩も女子高生なんだから、イソスタぐらいやらないと!」
キターン!ってまた謎の光が! 部活って居場所はあったけど、中学のクラスでは隅の方が定位置だったあたしには、ツライのよね。このキターン! ってやつは。
「あたしも下北沢のツチノコだったわ……ノコノコ」
「キャー! 伊地知先輩までおかしくなったわー!」
「稀によくある」
……うう、あたしたちのアー写撮影はまだ始まったばかりだ。日が暮れるまでには、なんとかベストショットを撮りたい!
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