もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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ドキドキの初ライブ
それ宿題だから①


「褒めて遣わす。よしよし」

 

「うへ、うへへへ」

 

 イヌをあやす様にぼっちちゃんのあごから首筋を撫でまわすリョウ。イヌなんか飼ったことないくせに妙に手馴れてる。ぼっちちゃんもされるがままだ。

 

「もー! なんで急に謎の絆が生まれてるのー! 私も入れてくださいよー!」

 

「諦めな」

 

 アー写撮影の翌日、目に大きなクマを作って来たぼっちちゃん。徹夜で歌詞を仕上げたらしい。それに応えるように、リョウは数日でオリジナル曲を完成させた。これまた大きなクマを作って。ああ! このバカ兄弟め! 無茶してると体壊すぞ! 大体、作詞作曲も計画性を持ってだな……。

 でも、歌詞も曲もめちゃくちゃいいな!確かにぼっちちゃんの歌詞は暗い。でも、暗さや攻撃性の中に妙な前向きさや、斜に構えた図々しさみたいなものを感じる。あたしはそこが好きだ。細かいことはわかんねーけど、めちゃくちゃロックじゃねぇか!

 目の前にいるピンクジャージのか弱い生き物が、こんな凶暴で奔放な世界観を秘めているなんて、いまだに信じられない。普段見せないワイルドな本性が超イケてる!

 それをリョウの曲が上手く引き立てる。ぼっちちゃんの世界を最大限尊重しつつも、リョウの自己主張を曲に刻み付けてくるような感じ。もうカッコイイんだ! す げぇよ! 二人とも才能の塊か!

 

『オレのものになれよ……星歌』

 

『はい……ぼっちちゃ……ひとり様』

 

 へへへ……ワイルドなぼっちちゃんってこんな感じかな? いきなりの壁ドンにあたしの心はもうメロメロ!

 

「うへへへ……私は世界のTKをも超える女……」

 

「ひとり様ぁ……すきぴー!」

 

「ぼっち、星歌……やべぇな。ダブルでトリップしてキモい」

 

「ある意味似た者同士なんですかね……」

 

 

 

 

 

 最近、妄想癖がひどくなっていけない。まさかぼっちちゃんの影響か? それはそれとして、喜多ちゃんはギターがみるみる上達してる。もう初心者レベルってもんじゃない。後藤センセイのおかげだな。

 そしてぼっちちゃんも合わせ練習の度に、少しずつ周りに合わせて演奏できるようになってきた。リョウ曰くソロ弾きは上手いだろうとのことだから、実力が発揮できるようになってきたってことかな。

 リョウのベースは堅実に上手いし、あたしは……リーダーとして潤滑油としてだな、役立ってる。多分!

 

「なんか、バンドらしくカタチになってきたかな。今ならいけるかも」

 

 となれば、思い立ったが吉日! 勢いでいくぞ!

 

「よし! 来月ライブ出来るように頼んでくるか!」

 

「え? まだ頼んでなかったんですか?」

 

「星歌、ライブはまだ早すぎる」

 

「大丈夫だって! この前もすぐ出させてくれたし。みんなで頼みに行こう。ほら、ぼっちちゃんも行くぞ!」

 

「へ! あ、はい!」

 

 正直うちはブッキング埋めるのもヒィヒイ言ってるような弱小ライブハウスだし。大丈夫だろ……多分。

 

 

 

 

 

 

「は? 出す気ないよ」

 

「え? 前はすぐに出させてくれたじゃん」

 

「あれはたまたま急なキャンセルがあったから。それに思い出作りも兼ねてだよ」

 

「ほ、ほら、オリジナル曲もできたし、ノルマ代もあるし」

 

 みんなのバイト代から集めたお金。ぼっちちゃんと喜多ちゃんが初めて貰う労働の対価から徴収するのは気が引けたけど。

「そういう問題じゃない。はっきり言って今のキミたち、バンド活動をナメてるようにしか思えないな」

 

「そ、そんなこと!」

 

「前のクオリティじゃ出せないから。うちだって遊びじゃないんだよ。放課後仲良しクラブはお呼びじゃない」

 

「……」

 

 そんな言い方しなくたって……。ブーツで身長ごまかしてんの知ってんだからなー!

 

「ライブ出たいならオーディション。実力を見せて頂戴。……って、ぼっちちゃん何してんの!?」

 

「せ、精一杯服従心を表現しようと……ワン!」

 

 仰向けになっておなかを見せながら、イヌがやる服従のポーズをするぼっちちゃん。緊張したムードに耐えかねて、おかしくなったか。ぼっちちゃんにはよくあること。

 

「全くもう。ぼっちちゃんテンパるとすぐ奇行に走るんだから」

 

 そう言いながらパシャリと写メを撮る姉貴。いや撮るなよ! てか、ぼっちちゃんおへそ見えてるぞ! 縦長の綺麗なおへそ。……あとでデータ貰おう。

 

「で、1週間後にオーディションするけど、どうする?」

 

「……やらせてください。店長」

 

「「「「お願いします!」」」」

 

 4人で思いっきり頭を下げる。タイミングが見事にバラバラだ。

 

「よろしい。……せいぜい頑張りなさい。バンドとしての成長、期待してるから」

 

 

 

 

 

「わかりやすくスネてる」

 

「スネてねぇよ」

 

 姉貴め、なーんか普段より厳しいな。

 

「……勢いで頼んじゃったけど、やっぱりライブ出るのは時期尚早じゃない?」

 

「みんなで言ったんだから、やるしかねぇだろ」

 

「1週間じゃ頑張りようがないと思うけどね。まだ合わせだって少ししかできてないし」

 

「熱意が大事なんだって! ぼっちちゃんも喜多ちゃんも、最初よりは全然上手くなってるし!」

 

「う~ん……?」

 

「いや、そこはフォローしろよ」

 

「2人のパートはオケ流すから、当てぶりの練習だけはしっかりしてくるように!」

 

「はい!」

 

「は、はい!」

 

「エアバンドじゃねーんだぞ!」

 

「合格の基準が曖昧過ぎない?」

 

「むしろ明確だろ? とにかく姉貴を納得させることさえできればいいんだからさ。バンドとしての成長、見せつけてやろう!」

 

 あたしも口では威勢よく言ってるけど、正直不安になってきた……。




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