「ぼっち、確保」
「わ、わお~ん!」
「な、なにすんだいきなり!」
どたぷん!!!
いつも通りスターリーに来たら、ぼっちちゃんに突然抱き着かれた! またしてもぼっちちの破壊力が! お前はぼっちちゃんじゃなくてえっちちゃんなのか!?
「よし今だ」
「はい! リョウ先輩!」
リョウに髪を纏められて、喜多ちゃんにウイッグを付けられる。
「お似合いですよ! 伊地知先輩!」
喜多ちゃんに鏡を見せられる。そこに写った姿は……キノコ? 所謂マッシュヘアーってやつか。前髪が長くてウザったい。つーかみんなキノコヘアー!?
「いや、なんだよこれは」
「バ、バンドの成長を見た目で、表現だ、そうです」
と、ぼっちちゃん。
「ふふん」
……なるほど主犯は山田かい。
「イマドキのバンドマンと言えばキノコヘアー。そして伝統の酒、タバコ、女遊び」
「イメージがコテコテすぎる! オーディションまで時間無いのにアホなことやってる場合か!」
それに、あたしはこういう『女殴ってそう』な髪型の男は嫌いなんだよ!
「あ、あの! お、女遊びとか無理です……。私とあ、遊んでくれる女の人が居ません」
「大丈夫。シモキタのビレパン前でギター背負って気だるそうにしとけば寄ってくるから」
「無垢なギタリストに偏った情報を教えるな! さっさと練習行くぞ!」
「先輩!その前に……はい、きのこ~!」
喜多ちゃんがスマホで撮影してくる。あたしもあたしで、カメラを向けられるとついポーズをキメてしまうんだよな。
「キャー! 伊地知先輩もカッコイイ! 次は4人で撮りますよー!」
「あたしなんかがやってもダサいだけだろ。4人で撮ったらすぐ練習な。見た目よりも中身! バンドとしての成長が大事なんだよ!」
ま、こういう写真もイソスタでバンド宣伝するネタにはなるか。あれから喜多ちゃんの強い勧めもあって、とりあえずイソスタ始めてみた。あたしだっていつまでも『ツチノコ女子』じゃいられないからな。でもメンバーとダチを何人かフォローしたり、たまに飯の画像あげたりするぐらいですぐ飽きた。
バンドのアカウントなのに、今のところ喜多ちゃんが美容関連の話ばかりやってる。ライブさえ決まれば本格的に告知もできるんだがな。姉貴が作ったスターリーのアカウントもフォローしたけど、こっちは最低限の告知ばかりでイマイチ味気ない。
『#最高の仲間 #followme 』
ハッシュタグってやつか。喜多ちゃんのアカウントは、なんかもう陽キャ過ぎて眩しい。ダチにも陽キャはいるけど、ちょっとヤンキー寄りで喜多ちゃんとは人種が違うんだよね。
リョウもアカウントあるけど『世界のYAMADA』ってなんだよ? 中二病め。アイコンはあたしが昔書いたリョウの似顔絵だ。何年か前の誕生日プレゼント。今見るとヘタクソだな。なんか照れくさい。
ぼっちちゃんにもバンドメンバーとしてアカウント作ってほしかったけど、誘ってみたらいきなり発狂して怖かったから諦めた。
『ぴぎゃあああああ!!!』
……久々にヤバかったな。ぼっちちゃんの新しい奇行バリエーションが増えた。まあ、私が楽しむ分にはいいけどさ。バイト中とかマジやめてほしい。
「バンドの成長……か」
練習が終わって家でひとりごつ。オーディションが決まってからはメンバーに何度も言ってる言葉だけど、あたし自身は本当に成長出来てるんだろうか。ドラマーだった姉貴の姿に憧れて、小学校から音楽教室でドラムを始めた。中学では3年間軽音部で頑張った。高校になってからも中学からのバンドを学外で続けたけど、メンバーのバンドに対する温度差やらで、グダグダになって自然消滅。
高1の冬に、フリーになったリョウと今のバンドを組んだ。それから喜多ちゃんが逃げて、ぼっちちゃんを捕まえて、喜多ちゃんが戻ってきて。なんだかんだ今は高校生にしてはそこそこやれるつもり。……なーんて思ってるのは自分だけで、実際は『長くやってるだけのヘタクソ』なのかもしれない。
「あたしは、成長……できてるのかな?」
リョウはこのバンドで、今度こそ自分の音楽をやる。喜多ちゃんはみんなでなにかをやりとげることに憧れてる。そしてあたしはメジャーデビューして売れっ子になって、それから……。
「叶えたい、その先がある」
そういえば、ぼっちちゃんはどうなんだろ?聞いたことなかったな、ぼっちちゃんの夢。バンドに誘ったのも、その場の勢いだったし。無理させてないかな?本当はあたしたちとバンドするのイヤだったりしないかな?
ぼっちちゃんとは少しずつ打ち解けてきたと思う。あたしのダチには居なかったタイプの娘だけど、一緒に居て楽しい。見た目は全然違うけど、考え方とか結構似てるとこあるんだよね。ぼっちちゃんの気持ちや考えてることも、少しはわかるようになってきたつもりだ。
でも、肝心なとこ何も分かってないよな。
「……確かめないと」
オーディションまでに確かめる。――ぼっちちゃんの想いを。
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