もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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仲間ってなんだろうな①

「表出ろ! 山田ァ!」

 

「上等」

 

「2人とも! ついさっき喧嘩はナシって言ったところじゃないですか!」

 

 オーディションに無事合格し、反省会と流れで軽い練習。……音楽のことは、ちょっとしたことでついヒートアップしちゃうんだよね。

 

「あ、あの!」

 

 久々にぼっちちゃんが口を開く。

 

 ぐぅ~……。

 

 その時、気の抜けた音がライブハウスに響き渡る。顔を真っ赤にして俯くぼっちちゃん。腹の虫ってやつか。

 

「……ぼっちちゃん、腹減ったのか?」

 

「は、はい……」

 

 ……喧嘩とかバカバカしくなるくらい見事な腹の虫。

 

「ごめん星歌。さっきは言い過ぎた」

 

「いいよ。こっちこそ、ごめんなリョウ」

 

「なんか急に仲直りしてるー!」

 

 気が付いたら6時過ぎ。ちょうど晩飯時だ。ぼっちちゃんは、オーディション後に胃の中身全部出したからな。腹も減るよな。

 

「じゃあ飯行くか。近くのファミレスとかどう? オーディションお疲れ様会ってことで」

 

 近所のガスゼリア。最近新しく出来たんだよね。

 

「はい! 行きましょう!」

 

「星歌、奢って」

 

「奢らねぇよ。毎月このあたりで小遣い貰ってるの知ってるからな」

 

「星歌のいけず……」

 

「リョウ先輩! 私が奢ります!」

 

 お得意のキターン! でもやらせねぇよ。

 

「駄目だ! 金のことでリョウの相手まともにしてたら、いくらあっても足りねぇよ!」

 

「あ、お母さんに食べてくるって連絡しとかないと。あ、み、みんなで外食とか、初めてですね」

 

「そーいやそうだな。バイトや練習終わりだと時間遅くなるしな。ぼっちちゃんは片道2時間だし」

 

 それに初ライブの後、すぐ帰っちゃったしさ。

 

「す、すみません! 終電早くてすみません! し、死刑ですか?」

 

「すぐ死刑って……発想が小学生か!」

 

 

 

 

 

「オーディションお疲れ! 乾杯!」

 

「乾杯ぁい!」

 

「乾杯」

 

「か、カンペイ!」

 

 ドリンクバーのジュースで乾杯。近所のファミレスでささやかな打ち上げ。ウチはみんなキャラがバラバラだけど、飯の好みまでみんなバラバラなんだよな。

 

「はーい! パスタこっちでーす!」

 

 喜多ちゃんはよくわからん名前のカラフルなパスタ。イソスタ映えする限定商品らしい。サラダも添えてバランスが良い。

 

「キャー! 友達の言ってた通り、これすごい映えるー!」

 

 パシャパシャと写真撮りまくる喜多ちゃん。食うのそっちのけで撮影に夢中。

 

「写真ばっか撮ってないで早く食え。冷めるぞ」

 

「はぁい。じゃあお先にいただきますね」

 

 喜多ちゃんは食べる時の作法が綺麗だ。育ちの良さを感じさせる。

 

「うん。意外と悪くない」 

 

 リョウはビーフカレー単品。あいつ昔からカレー好きなんだよね。

 

「やっぱりビーフが至高。揚げ物乗せるとか邪道」

 

「この間、うちで姉貴の作ったカツカレー旨そうに食ってたじゃん」

 

「むむむ……」

 

「なにがむむむだ」

 

 そしてぼっちちゃんはハンバーグセット。ソースはデミグラス。ご飯は大盛。なんか男子みたいだな。その割には細いよなぼっちちゃん。……ある部分を除いては。

 ハンバーグやご飯を、小さなお口で一生懸命頬張る姿が愛おしい。いや愛おしいってなんだよ。1歳しか違わないのに。

 

「ぼっちちゃん、口の周り汚れてるぞ。ほら、顔こっち向けて」

 

 紙ナプキンでぼっちちゃんの口を拭いてあげる。焦って食べるからだよ。しょうがない奴だ。

 

「ん……んむぅ……。あ、ありがとうございます」

 

「もう! 伊地知先輩! 後藤さんを甘やかしすぎですよ! このままじゃ後藤さんダメダメ人間になっちゃいますよ!」

 

「うるせーな。このぐらいはいいだろ?」

 

「星歌、私も汚れたから拭いて」

 

 リョウはなんでわざと口の周り汚してんだよ。

 

「いや、自分で拭けよ。……ああもう! こっちに寄れ」

 

 ……ぼっちちゃんに対抗意識燃やしてんのかこいつは。相変わらずよくわからん奴。でも最近ヘンに甘えてくるよな。

 ヘンといったら、なんか最近は『ギターヒーローなんかより私を見て』とか言ってギター持ってきて弾きだしたことあったな。ギターヒーローさんに勝てる高校生なんて日本にはいねぇよ。しかもそのギターをなぜかあたしの部屋に置いていく。

 持って帰るのめんどくさいってなんだよ。近所じゃねぇか。

 

「ん……。星歌やさしい」

 

 結局綺麗に拭いてやった。

 

「こら、ベタつくな。暑苦しい」

 

「あーん! レアショット! 甘えん坊なリョウ先輩もカワイイ!」

 

 そしてパシャパシャ撮りまくる喜多ちゃん。リョウ狂いにも程があるな。

 

 最後に遅れて来たのは、あたしの唐揚げ定食。普段はドリアとか頼むことが多いんだけど、今日はなんとなくガッツリいきたい。ファミレスはこういう幅広いメニューがいいんだよね。

 うーん。小さめだけど、唐揚げが6個もある。小食なあたしにはちょっと食べきれないかも。だから……。

 

「ぼっちちゃん、唐揚げ1個あげる。頑張ったご褒美。ほら、口開けて。あーんして」

 

「あ、大丈夫です」

 

 遠慮するぼっちちゃんもかわいい。奥ゆかしいな。

 

「遠慮すんなよ」

 

 唐揚げを箸で掴んで、熱いのをフーフー冷ましてからぼっちちゃんの前に持っていく。左手は添えるだけ。唐揚げの誘惑に抗えないのか、ぼっちちゃんはそのままパクッといく。

 

「うまいか?ぼっちちゃん」

 

「あ、おいしいです」

 

 おいしそうに食べるぼっちちゃんは、とってもかわいい。唐揚げ頼んだの、実は確信犯なんだよね。ぼっちちゃん唐揚げ好きって言ってたから。

 

「星歌、私にもちょうだい」

 

「お前は先に金返せ」

 

 借金は忘れてやらないからな。

 

「ケチ」

 

「リョウ先輩は私のを召し上がれ!」

 

 こんな感じでバカやったり、いろいろ普段しないような話をした。最近は練習とバイトばっかりで暫くはゆっくり出来なかったしな。ライブのことやチケットノルマは一旦忘れよう。どうせ明日以降向き合っていくことなんだし。

 バンドとして皆で頑張って夢を追うことも大切だけど、みんなとの思い出もいっぱい作りたい。『夢を叶えていく過程を楽しむことが大事』って姉貴も言ってたし。あたしは欲張りなんだ。

 

 

 

 

 

 リョウと2人の帰り道。テキトーに喋りながら帰る。いつもは不愛想なくせに、今日は妙に明るいな。

 

「前居たバンドの人からロインあったんだ。3人で会えないかって」

 

「……会うのか?」

 

「うん。ちゃんとけじめは付けたいかな。どうなるか分からないけど」

 

「そっか」

 

「ヨリを戻したいって話なら断るから安心して」

 

「なんだよそれ。恋人じゃあるまいし」

 

「私は、結束バンドでやりたいから」

 

「リョウ……」

 

「だからお金貸して。実はもうお金ない。食事ぐらいはするっぽいし。お願い」

 

 うるうると瞳を潤ませながら頼み込んでくるリョウ。……しょうがねぇな。

 

「ほら。来月のバイト代から強制返済な」

 

 財布の中から野口を何枚か渡す。高校生には大金だぞ! ああ、シフト増やせないかな……。あいつが金が無いのはどうせ無駄遣いやツケだろう。

 でも大事なところでダチに恥かかせるわけにはいかないし。

 

「そんなご無体な!」

 

「当たり前だろ! 貸してもらえるだけ有難いと思え」




幼馴染のアプローチには鈍感なツチノコ女子。

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