もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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仲間ってなんだろうな②

 1学期が終わって夏休み。もう8月か。あたしは練習三昧、バイト三昧の日々。そして今日でライブまであと10日。早いもんだ。絶対ライブ成功させてやる! と息巻いてるけど、やっぱネックはチケットノルマ。ロインで聞いてみたけど、喜多ちゃんとリョウはノルマ達成してるみたいだ。

 あたしもなんとか昨日でノルマ達成だ。前回のライブでやらかしてることもあって、結構苦戦。やっぱ高校生に1500円プラスドリンク交通費他は負担がデカい。結局ライブ来てくれる交換条件で、ダチのライブや知らない劇団、地下アイドルのライブも行くハメになってしまった。金銭的にはプラマイゼロかよ。

 やっぱシモキタは芸能で成功したい奴らが多いからな。みんなそれぞれ夢があるんだよ。あとは男子連中を喜多ちゃんのルックスで釣ったり。リョウは中身がバレてるからエサにはならなかった。とはいえ、こういうトモダチ頼みな売り方には限界がある。早く固定ファンを作ってリピーター確保しないとな。

 

 さて、問題はぼっちちゃんだ。今日の自主練来るかと聞いてみたが、返事が無い。ちょっと心配だ。ついでにノルマ進捗も聞いてみたのがまずかったか?

 

 

 

 

 

 ぼっちちゃんを除く3人で早めに集まったんで、スターリー店内でいつものダベり。隅っこのテーブルが結束バンドの定位置だ。話題は自然とノルマの話に。喜多ちゃんは1学期が終わる前にはノルマが捌けてたみたいだ。すげぇな喜多ちゃん。

 

「私は部活や委員会の助っ人みたいなことしてるから、そのお礼だって買ってくれるんですよね」

 

「へぇ。そんなことしてるんだな。でも大変だろ?」

 

「そんなことないですよ! 困っている人を助けるのは当たり前のことですし、私も感謝されると嬉しいですから!」

 

 そしていつものキターン!!

 

 爽やかいい人オーラが眩しい。喜多ちゃんはホントにいい娘なんだよな。バイトでもめちゃくちゃ働き者だし。何処ぞの山田とは大違いだな。

 特にスゴイと思ったのが、バイトしてた日のライブ中にお客さんが倒れた時のこと。救急車が来るまで誰よりも率先してお客さを介抱してくれたんだよね。駆け付けた救急隊にも褒められた。こういうところ、尊敬する。

 

「で、リョウも売れたんだよな」

 

「ん。なんか売れた」

 

「なんか売れたって……」

 

 リョウはあたしたちにスマホの画面を見せる。そこにはリョウが前居たバンドのメンバー2人と楽しそうに写ってるリョウの姿。お前こんな笑顔出来たんだな。バイトとかでも、やってくれたらいいんだがな。

 

「え、これは! 『ざ・はむきたす』勢ぞろいじゃないですか! キャー! この3ショット! 解散してもう見れないと思ってました!」

 

「仲直り、出来たみたいだな」

 

「3人で言いたいこと言い合って、大喧嘩になったけど。思ってたこと全部ぶちまけたら、昔のことなんかどうでもよくなった」

 

「そっか」

 

「バンド辞めて……初めて友達になれた気がする」

 

「よかった。本当に」

 

「いい顔してますよ、先輩」

 

 喜多ちゃんもちょっとしんみりしてる。で、詳しく聞くと元メンバーにちゃっかりチケットを売ってきたみたいだ。

 残り3枚は前バンドのファンたちに売ったらしい。ついでに金も借りようとしたらファンの女に『両刀使い』が居たもんで、危うくおいしく頂かれそうになったとか。ざまぁ。

 結束バンドの音、その人たちに聴かせても、恥ずかしくないモノにしないとな。

 

「ありがとう。星歌、郁代」

 

「あああああ! なんで郁代って呼ぶんですかー! 折角隠してたのにー!」

 

 な、なんだよ突然!喜多ちゃんが荒れだしたぞ! ……ん? イクヨ? 喜多ちゃんってそういう名前だったのか。知らなかった。

 

「ああーん! この名前嫌いなんですよー! こんなシワシワネーム!」

 

「な、なんで? かわいい名前じゃん」

 

 と、すかさずリョウ。

 

「うんうん!」

 

 あたしも力強く頷く。

 

「えええん! 伊地知先輩みたいな星の歌なんて書く素敵ネームの人にはわかりませんよぅ!」

 

「いや、あたしにそんなこと言われても」

 

 星歌って名前だってキラキラネームとか言われること結構あんだぞ、この野郎。

 

「だってー!ダジャレみたいでしょう? キター! イクヨー! だって! あはははは! アホかーい!!」

 

 あ、確かに。

 

「落ち着けよ。そんなのみんな気にしないって!」

 

「私の名前は喜多喜多です……」

 

「おい喜多ちゃん! ……ぶっ壊れたぞ」

 

 それはそれで、なんかヤバい感じになるから止めろ。……この間ぼっちちゃんが踊ってた『ふしぎなおどり』を幻視した。なぜ!?

 

「ぷっ。なんか弱ってるの新鮮でおもしろい」

 

「お前、性格悪いな」

 

 一瞬だけマジ困惑したリョウも、あたしにはちょっと新鮮だったけどな。つーか憧れの人に名前で呼んでもらうとかサイコーじゃん?あたしだってギターヒーローさんに星歌って呼んでもらいたいよ!

 

「オホン。取り込み中のとこ悪いけどさ、スタジオ空いたよ。バカやってないで、さっさと練習入りなさい」

 

「げ! 姉貴! いつから居たんだ!?」

 

「いつからとはご挨拶ね。ちょっと前から。ほら、郁代ちゃん起こしてあげなよ」

 

「はひゅぅ……もう郁代でいいです」

 

 あ、分かっててトドメ刺したな姉貴。

 

「喜多ちゃーん! しっかりしろー!」

 

 とりあえずぼっちちゃんには『今日は3人で練習しとく』とロイン。さて、練習行くか。

 

 

 

 

 

 練習は少し休憩。いまだぼっちちゃんから返事は無し。ロインとか律儀に返すタイプのぼっちちゃんにしては珍しい。うーん。やっぱりあたしのロインが追い詰めてたりしないだろうか?

 

「ねぇ郁代。ぼっちって学校だと、やっぱりぼっちなの?」

 

「聞き方! まあ、あたしもぼっちちゃんって、学校でどうしてるのか気になるな」

 

 想像できるっちゃ想像できるけど……。

 

「学校での後藤さんですか……。そうですね、クラスが違うのであまり分からないですけど、誰かと一緒にいるところは見たことがありませんね」

 

「そうか。……おい! まさか、虐められてるとかないよな!?」

 

「いやいや、そんなことはないみたいですよ。うち結構平和な学校ですし。そういう噂はすぐ広まりますから」

 

「……よかった」

 

 万が一ぼっちちゃん虐めてる奴とかいたら、ぜってーシメてやるとこだったよ。

 

「後藤さんが引っ込み思案なこともあって、みんなどう扱っていいか分からないって感じで……」

 

「そっか」

 

「ぼっち、おもしろいのに」

 

「そうなんですよ!」

 

 でもぼっちちゃんはぼっちちゃんなりに、努力はしてるんだよな。あたしは知ってるよ。……全部空回りしてるけど。

 

「とりあえず、練習再開するか」

 

 なんとなくイヤな予感がするけど、今は練習あるのみ!




ぼっちちゃんが路上ライブ頑張っている裏側。

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