もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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仲間ってなんだろうな④

「え? 廣井さん、なんでこのチケット持ってるんです?」

 

「あー。それはひとりちゃんって子が売ってくれたんだー! 一緒に路上ライブしたんだよー! ひとりちゃんはチケットノルマ捌けない悲劇の少女でね、私が一肌脱いだげたってわけ。バンドの名前は欠食バンドーだっけ?忘れちまったー!」

 

「……結束バンドです。あと私がリーダーです。で、本当に路上ライブしたんですか! あのぼっちちゃんと?」

 

「ほへ? ぼっちちゃん?」

 

 あ、やべ。さすがにこのあだ名は、初対面の人に言うのさすがにまずかったな。つーか路上ライブの話……本当だったんだ。

 

「あだ名です。ひとりちゃんだから、ひとりぼっちからぼっちちゃんだそうです。うちのメンバーが付けました。なんか本人は気に入ってるみたいです」

 

「へーぼっちちゃんー? ぶはははは! なんかおもしれーな! そのあだ名!」

 

 大爆笑する廣井さん。名付け親(ヤマダ)とベーシスト同士、通じ合うものがあるのか……。

 

「それでさ、はっけー? だったかでやった路上ライブ! もうすごかったんだから! そんでかわいいファンも出来ちゃって、めでたくチケット買ってくれたってわけよ。あの子は才能あるよ。絶対すげぇ奴になる! 私の勘は当たるんだ」

 

 はっけー? ああ、金沢八景といえば、ぼっちちゃんの地元だ。

 

「そ、そうなんですか。……ちょっとまだ信じられない」

 

「えー? ホントだよー! 嘘じゃないよぉ!」

 

 廣井さんの目つきが変わる。

 

「いや、そうじゃなくて! あのド陰キャ少女なぼっちちゃんが路上ライブでチケット売るなんて考えられないっていうか……」

 

「んー?」

 

 ……また酒飲んでる。

 

「そりゃぼっちちゃんに失礼じゃない? あの娘が勇気出して頑張ったから、路上ライブ上手くいったんだよ。私も少し助けてあげたけどさ」

 

「ぼっちちゃんは、たまに見栄張ってありもしない嘘とかいう子だから、正直疑ってました。あまりにメチャクチャな話だし」

 

 廣井さんは、ぷはーっとパック酒を1箱飲み干して、2個目に手をかける。

 

「あーあの子、そういうとこあるみたいだね。私にもヘンなコト言ってたし。でも君が、ハナから信じないってのはあんまりじゃないかな。もしかして、ぼっちちゃんのこと下に見てるわけ?」

 

「そんなことない! ……です」

 

「じゃあ、君はノルマ分のチケットどう捌いた?」

 

「友達に頭下げて頼みました……」

 

「まあ、そんなもんだろね。駆け出しバンドマンは。でも、ぼっちちゃんはライブして自分の力でチケットを売ったんだよ?私と出会ったのは偶然だったとしても、チャンスを掴んだのはぼっちちゃんだ。それを頭ごなしに嘘だっていうのはどうかなって思うよ?」

 

「そ、それは……」

 

「ちゃんとサシで向き合った?メンバーのことも信じてあげられないのに、それでバンドリーダーなの? 笑っちゃうよね。私だったら、そんなリーダー嫌だね」

 

「で、でも! あたしは先輩として! ぼっちちゃんのお世話とか! い、いっぱいして! あげてるもん!」

 

「ぬ?」

 

 廣井さんの酒を飲む手が止まる。

 

「あたしはぼっちちゃんの面倒を誰よりも沢山見てあげてる! バイトのことだって! バンドのやり方だって! 気弱で泣き虫でクソめんどいぼっちちゃんを慰めて! 励まして! 友達だから! 仲間だから! 好きだから! だから嘘つかれたと思ったときはショックだった。……あたしなんかじゃ頼りないのかなって」

 

 なんで、初対面の相手にこんなキモチぶちまけてんだろ? あたしどうかしてる。

 

「だから何? ぼっちちゃんはキミのペットか何か? 違うでしょ。……仲間ってそういうもんじゃないよね?」

 

 目の前のアル中女から緩みきった笑顔が消え、なんとも言えない表情(かお)をする。

 

「こんな酔っ払いに図星突かれて悔しいの?」

 

「そ、そんなこと……」

 

 あたしは思わず目を逸らす。

 

「はぁ……。」

 

 廣井さんはため息をついてから、こちらをはっきりと見据える。

 

「敵を見誤るなよ。星歌ちゃん」

 

「……アンタに何が分かるんですか」

 

「分からないね。だからさ、いっぺんぼっちちゃんと腹割って話し合ってみるべきじゃない? ん-? ちょっとクサいこと言ったかな。たはー!」

 

 そう言いながら廣井さんは、最後の酒を飲み干す。またあのだらしない笑顔だ。

 

 

 

 

 

 気がつけば日が暮れている。マナーモードだったから気づかなかったけど、スマホには着信履歴がびっしり。買い出しの帰りだったの忘れてたわ。こりゃ後で姉貴から大目玉だな。

 

「スターリーに行かなくていいんですか? 昔馴染みが来れば姉貴も喜ぶと思いますよ」

 

「うん、今日は帰るわ。どうせライブに行ったら会うんだし。お酒のストック無くなったから、そろそろ酔いも冷めそうだしねぇ。シラフで会うのはちょっと気まずいんだ。開店祝いも行かなかったしさ。それとも、酒代貸してくれる?」

 

「イヤです。むしろお酒は控えるべきです」

 

「はっきり言うねー! そういうとこ、ホント先輩みたいだわ」

 

「どうも」

 

「じゃ、私帰るわー! あーあ、帰りの電車賃でギリだわ」

 

 廣井さんはぶんぶんと手を振り別れを告げる。

 

「……すみませんでした!」

 

 感極まって廣井さんに思いっきり頭を下げる。

 

「えー? なになに? 頭上げなよ、妹ちゃん! そんじゃあねー! ライブ必ず行くから。ぼっちちゃんによろしくねー!」

 

「はい! お待ちしてます!」

 

 下駄をカラカラと鳴らしながら廣井さんは去っていく。

 

「おろ!?」

 

 あ、コケた。




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