もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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ココロの距離②

 メインストリートから少し外れた人通りの少ない道を通って、今日の昼飯スポットを目指す。この通りは昔からの住宅やアパートが立ち並ぶ。夏休みだけど昼間は人通りが少ない。今日すれ違ったのはおばあちゃん1人だけ。

 

「ここここぉ! こんにちわ!」

 

 すれ違う時にぼっちちゃんが率先して挨拶した。偉いぞ。笑顔は相変わらずアレだけど。前よりはずっとマシだ。バイトの成果が出てるな。あたしがフォロー出来る範囲内だ。

 ギターと上着はスターリーに置いてきてる。今日のぼっちちゃんは厳ついバンドTだ。ウニクロで売ってたコラボシャツ。下はいつものジャージだけど。シャツはあたしと同じだ。ちょっとペアルックみたいになってる。なんか嬉しい。

 

「シャツお揃いだな」

 

「わ、私みたいなミジンコ女子が星歌ちゃんと同じシャツだなんてすみません! 直ちに切腹してお詫びを!」

 

「しなくていい! やっぱこのシャツイケてるよな! ぼっちちゃんも好きなんだよな?」

 

「あ、はい」

 

「……えと」

 

「う……」

 

 あれ? バイトの時やスターリーに居る時みたいに上手く喋れない。2人きりっていうのが久しぶりだからだろうか、それとも……。最近ぼっちちゃんのことヘンに意識してしまうんだよな。ドキドキする。煩いんだよ心臓が。

 

「歩くの早くないか?」

 

「い、いえ、大丈夫です」

 

 やたら重いあのギターが無い分、ぼっちちゃんの歩くペースも気持ち早い。

 

「……そうか」

 

「……」

 

「そういや『悪滅の侍』あたしも読み始めたんだ。おもしろいなアレ」

 

 ぼっちちゃんが好きだって言ってた漫画だ。音楽以外で数少ない共通の話題かも。ちなみにあたしオススメの『まんがきらきら』はぼっちちゃんの好みに合わなかった。少し残念。

 

「そ、そうですね。へへ……」

 

「あたしは伝次郎が好きかな。いかにも主人公って感じでかっこいいし」

 

「わ、私は善一郎が好きです……。普段は頼りないけど、いざってときには、キメてくれる感じに……憧れますね。私なんかと違って」

 

「私なんかなんて言うなよ。ぼっちちゃんだってカッコイイよ。オーディションの時とかめちゃくちゃかっこよかったし」

 

「あ、ありがとうございます。えへへぇ……」

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 道中数分間の気まずい沈黙。1対1で会話が続かねぇ。あたし口下手だし、ぼっちちゃんはぼっちちゃんだし。

 

「着いたぞ。ここが言っていた場所だ」

 

 いくつかの公共施設が入った建物の裏側にちょっとしたスペースがある。ここは賑やかな表側と違って休日でも意外と人が来ない。あたしもたまに散歩の帰りとかにここで休憩したりする。大きな木があって木陰が涼しいんだよね。地べただけど、シートを用意してたから問題ない。2人で腰掛ける。

 

 ピコン♪

 

 座ってすぐにスマホにオーチューブから通知。私がチャンネル登録してるチャンネルは数えるほどしかない。まさか…ギターヒーローさん? あたしはウキウキ気分で画面を確認する。

 

「うふふふ……」

 

 嬉しすぎて笑みがこぼれる。我ながらキモい。

 

「え、せ、星歌ちゃん……」

 

 やべ。不気味過ぎたか。ぼっちちゃんが引き気味だ。

 

「オ、オホン。ぼっちちゃん! ギターヒーローさんが更新してるぞ! 一緒に見よう!」

 

 通知をタッチして画面を確認すると……青いジャージ! 手には白いベース。これギターヒーローさんじゃないぞ! 投稿者コメントが目に入る。

 

『私を見て』

 

 なんだこれ? アカウント名は『世界のYAMADA』これリョウのアカウントか!?

 

「な、なんだろ……これ?」

 

「さ、さあ」

 

 いつもみたいにからかってるだけなんだろうけど、あたしに聴かせるためだけに動画投稿とか手間掛けすぎだろ。そしてコメントが怖い。2人でイヤホンを片方ずつ付けて、音を聴いてみる。

 

「結構上手いな」

 

「そ、そうですね」

 

 いや、普段よりかなり上手い。悔しいけどやっぱリョウは才能あるよな。

 

 

 

 

 

「と、とりあえず昼飯食おう」

 

「あ、はい」

 

 ぼっちちゃんは鞄から弁当箱を二つ取り出す。あれ? 2つ?

 

「ぼっちちゃんのお母さん、やっぱ料理上手だな」

 

 唐揚げに卵焼き、ハンバーグなど。小学生男子が喜びそうな弁当だ。盛り付けも綺麗だ。

 

「き、今日のは私も一緒に作りました! おかず作りすぎちゃったんで星歌ちゃんの分もあります。よ、よろしければ……」

 

 そう言うとぼっちちゃんは弁当箱を1つこちらに渡す。

 

「いいのか? ありがとう! いただくよ!」

 

「あ、いえ。お母さんが少しは女の子らしいことしなさいって。だからお手伝いしました。せ、星歌ちゃんいつもおにぎり1個とかでお腹足りるのかなって……」

 

「ま、あたしは昔から小食だからさ」

 

 あたしは食に執着が薄くて、食べるのがめんどくさくなるタイプだ。姉貴がいなかったら1日1食で済ませるかな。

 

「わ、私が焼いた卵焼きです。せ、星歌ちゃん! あ、あーんしてください!」

 

「いや、自分で食えるから!」

 

「こ、この間の、お返しです。え、遠慮しないで、召し上がれ」

 

「あむっ……!」

 

 ぼっちちゃんがあーんしてくれた卵焼き。ちょっと焦げ味するけど、甘めの卵焼きだ。昔に母さんが作ってくれた味に近い。

 

「ど、どうですか……やっぱり私なんかじゃ……」

 

「ママ……」

 

 一筋の涙が頬を伝う。

 

「な、泣くほどマズかったですか!ミジンコ料理人でごめんなさいぃ!」

 

「違う違う! めっちゃウマい! 感動した! すげぇよぼっちちゃん!」

 

「え、あ、ありがとうございます!」

 

「あたしが男だったら、ぜってー惚れてた!」

 

 男だったらね。でも、あたしは女だ。だからぼっちちゃんとはあくまでも友達。それ以上には、なれないのかな……。

 

「え、あ、そんな畏れ多い! 私みたいなプランクトンが……あわわわ!」

 

「いやいや、謙遜すんなって! こういう家庭的なことができる女の子はモテるから。女子力高けぇよ!」

 

 多分ぼっちちゃんはその気になれば、すぐ彼氏とか出来るんだろな。あたしなんかと違ってさ。

 

「こ、これくらいちょちょいのちょいですよ! うへへへ……」

 

 その不気味な笑顔で台無しだ。




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