もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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今回はぼっち視点。


もしもJK星歌ちゃんだったら。①

 今日はライブ当日。電車が止まると困るので、かなり早めに家を出た。台風については逸れてくれることを祈るしかない。

 

「お迎えに上がりましたお姫様」

 

 星歌ちゃんが駅前にいる。なぜか昔の漫画で見たような王子様っぽい動きで出迎えてくれる。

 

「お、おはようごじゃましゅ……ってええ!?」

 

「なんてな。おはようぼっちちゃん」

 

 か、かっこいい……。声もポーズもすごくキマってる!

 

「ど、どうしたんですか星歌ちゃん?」

 

「迎えに来たんだよ。雨もちょっと強くなってきたしな」

 

 外は雨が結構降っている。家を出た時はまだ小雨だったのに。

 

「そ、そんな畏れ多い……」

 

「ヘンに畏まるなって。ま、あたしもじっとしてると落ち着かないからさ。そのスカート、あたしたちが家に行ったときのなんだな」

 

「あ、はい。ライブでジャージのズボンじゃカッコ悪いってお母さんに言われましたので……」

 

「似合ってるよ、それ。上も前の奴にしてくれたらなお良かったんだけどなー」

 

 上着はいつものピンクジャージだ。これ何故か落ち着くんだ。

 

「そ、それは無理です……。やっぱり、いつものが落ち着きます」

 

「まあいいけどさ。どうせ本番はバンドTに着替えるしな」

 

 お揃いのTシャツ。みんなで案を出し合って考えたバンドT。結局星歌ちゃんの案を採用することになった。ロゴの『ン』が留めた結束バンドになってるのは店長さんにアドバイスを貰ったものだ。私も結構気に入っている。なんか結束感ある感じだ。

 でも正直、かっこよさだけなら私が出したデザインの方が断然カッコイイよね。あくまでバンドのイメージに合わないだけ。うん、多分そう!

 

「あ、星歌ちゃん、き、今日の髪型、前みたいに纏めてるんですね……」

 

「まあ、随分と伸びて邪魔だからな。ちょっとおしゃれだろ?」

 

「は、はい! 似合ってます、とっても!」

 

「ふふ、ありがとな」

 

 星歌ちゃん、今日の髪型は家に来てくれた時のやつだ。確かサイドテールだっけ? やってる人はたまに見る。この髪型の星歌ちゃんを見るのは2回目だけど、見てるだけで何となく落ち着く。

 

「天気予報外れたな。結局台風は逸れてくれないらしい。夕方から夜がピークだって」

 

 私たちの出番前後ぐらいが大雨のピークだなんて。これじゃあお父さんお母さんも来れそうにない。電車も止まるだろうな。おばあちゃんにふたりの面倒を見てもらう予定だったけど、家に行くのは無理だろうし。

 

「あ、てるてる坊主効果なくてすみません!」

 

「いや何でお前が謝るんだよ? あれはあれで楽しかったからいいよ。みんなで作ってさ」

 

「でも……」

 

「そんなことより、早く傘に入れよ。大きめの傘持ってきたから2人でも十分入れるだろ?」

 

「え、いや、私も傘持ってますし。相合傘になっちゃいますけど……」

 

 わ、私みたいなミジンコ毛虫が星歌ちゃんと相合傘なんて畏れ多い!

 

「言っただろ、迎えに来たって。それとも嫌か? これは陽キャ特訓のレッスン2でもあるからな」

 

「は、はい! 入ります!」

 

 やっぱり陽キャって言葉に私弱過ぎる! それに星歌ちゃんと相合傘うれしい!

 

「よし! じゃあ出発!」

 

 駅からスターリーまで10分ぐらいの道のりを相合傘で行くことになった。

 

「くんくん……ふあぁ……」

 

 やっぱり星歌ちゃんいい匂いするなあ。ちゃんとした女の子の匂いって感じ。

 

「急に嗅ぐの止めろよ! ぼっちちゃん! 恥ずかしいだろ……」

 

「す、すみません! すっごく女の子の匂いがするもんだからつい!」

 

「これはコロンの匂いだし。ぼっちちゃんにも後でしてあげようか? つければ同じ匂いになるから」

 

 星歌ちゃんの慈悲深く、そして地獄のような提案に思わず震えてしまう!

 

「ガタガタガタ……せ、星歌ちゃんと同じ匂いなんて! ああああ畏れ多いです!」

 

「ああ、もう! 暴れるなって! 傘からはみ出るぞ」

 

 星歌ちゃんの第一印象は『なんか怖い人』だったけど、ホントはとても優しい人だって今は分かる。あの日、強引に手を引いてくれなかったら私は一生バンドなんて組めなかっただろうし、ヘタすりゃニート引き籠り一直線コースだった。

 

「さあ、スターリーはもうすぐだ」

 

 雨はますます強くなる。

 

 

 

 

 

 今日は台風のこともあって、特別に早く店を開けてもらった。スタッフさんの入りもまだだし、リハーサルまでけっこう時間がある。

 

「おはようございまーす」

 

「お、おはようございます、店長さん」

 

 店長さんは一人で開店準備を始めている。

 

「おはよう。楽屋もう入ってていいよ」

 

「姉貴、準備手伝わなくて大丈夫か? なんか落ち着かなくてさ」

 

「何言ってんのよ、今日のキミたちはバイトじゃなくて出演者なんだから。自分たちの事やりなさい」

 

「分かったよ」

 

 店長さんは星歌ちゃんの肩に手を乗せて、真っすぐに目を見据える。

 

「星歌ちゃん、今日はしっかりやるんだよ」

 

「当たり前だろ。任せとけ!」

 

 私にも同じように店長さんは肩に手を乗せてこちらを見据える。でも私が視線を怖がるの知ってるからか、目線はあまり強く合わせないようにしてくれる。やっぱり店長さんやさしいな。

 

「ぼっちちゃんも頑張ってね。ちゃんと見てるから」

 

「あ、はい。が、頑張ります!」

 

 ごめんなさい。それでも目を逸らしちゃいます……。

 

『頑張ろうね! ぼっちちゃん』

 

 あれ? 誰だろうこの人は。私より少し小柄で満面の笑顔が似合う女の子。

 

 ――虹夏ちゃん? いや、あなたは誰?

 

「どうした? ぼっちちゃん」

 

「あ! はい、すみません。ぼんやりしてました……」

 

「おいおい、しっかりしろよ」

 

「う、す、すみません」

 

「それじゃ楽屋入るか。リョウと喜多ちゃんにも連絡入れとく」

 

 ――星歌ちゃんだ。見た目や声はちょっと怖いけど、はにかんだ笑顔が素敵な大人びた女の子。独りぼっちだった私と、友達になってくれた人。

 

 私の大好きな人。私の大好きな星歌ちゃん。

 

 今は余計なこと考えちゃダメだ、後藤ひとり!

 私たち結束バンドのライブ、絶対成功させるんだ!




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