もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

33 / 70
もしもJK星歌ちゃんだったら。②

 ぼっちちゃんとふたりきりの楽屋。タオルで頭を拭いてから。本番の衣装に着替えてリョウと喜多ちゃんを待つ。

 

「う、なんか、き、緊張しますね」

 

「あたしも。つーかぼっちちゃん髪の毛結構ボサボサじゃん。今日は大事な本番だし、ちゃんとしなきゃダメだろ」

 

「あ、すみません。美容院行く勇気が無くて伸びっぱなしですみません……」

 

「はあ……もう、一応女子なんだからさ。伸ばしてんだろ? だったらしっかりケアしないと。ほら、座って。髪整えてあげる」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 ぼっちちゃんの長い髪に櫛を入れてやる。髪質自体はサラサラで悪くないんだけど、手入れがイマイチなせいか枝毛とか目立つよな。少しずつ髪を整えて、前髪は余り触らないように。ヤベーことになっても困るし。そしてあたし愛用の香水を振りかけてやる。

 

「わぁ……とってもいい香りがします」

 

「うん。いいだろこれ」

 

 柑橘系のさわやかな香り。主張が強すぎないところが好き。

 

「よし! これで終わり。綺麗になった!」

 

 ぼっちちゃんに手鏡を向ける。

 

「えへへ……。いい感じかも、です」

 

 少し照れるぼっちちゃん。5月ぐらいなら同じことしたら溶けそうになってたけど、昔よりあたしに心を開いてくれてるってことでいいのかな。こういうの妹が出来たみたいでなんかいいな。

 昔は姉貴にこんな感じでブラシを掛けてもらってたっけ。でもたまにはお姉さんの気分を味わってみるのも悪くない。

 

『しっかりやれよ』

 

 ――お姉ちゃん?

 

 なんださっきの? あたしなのか? いやそんなはずない。あたしは伊地知星歌。あたしの姉貴は伊地知虹夏。

 そうだ。あたしの姉貴は虹夏お姉ちゃんしかいない。

 

 ――じゃあ誰の声だよ?

 

「おはよう。二人とも早いね」

 

「おはようございます! 伊地知先輩! 後藤さん!」

 

 リョウと喜多ちゃんが来た。頭をタオルで拭きながら楽屋に入って来る。

 

「お、おはようございます」

 

「おはよ。早速だけど準備するか」

 

 

 

 

 

 リョウと喜多ちゃんもバンドTに着替えて椅子に腰かける。喜多ちゃんはさっきからスマホとにらめっこ。

 

「雨どんどん強くなるみたいですね。ライブの前ぐらいがピークになりそうですって」

 

「うーん。厳しいな」

 

「チケット売った人たちから、さっき来れないって連絡あった」

 

「私もです……。この天気じゃ外出るのもキツいですよね」

 

『ごめんせーちゃん! 駅までは来たけど、さっき電車止まったって』

 

 ダチのリナからロイン。

 

「こっちもダメ。やっぱ電車止まってるのがキツいよな」

 

「あ、私も両親から来れないって連絡ありました……」

 

 チケット買ってくれた人には本当に申し訳ないと思う。あたしたちツキを『持ってない』のかな……。

 

「もういっそライブを映像配信して、最初から無観客ライブってことにしよう……」

 

「いまさらやって、そんなの誰が見るんだよ! 少ないけどお客さんだって来てるんだぞ!」

 

 他のバンド目当ての人たちだけど……。

 

「とにかく! 今来てくれてるお客さんのために頑張るしかないだろ!」

 

 あたしは努めて気丈に振る舞う。バンドやっていくなら、このぐらいの理不尽は乗り越えてやるって覚悟はしてたけど、いざこうなると正直キツいな。

 

「ですよね! まだ時間あるし、これから増えてきますよ!」

 

「そ、そうですよ! 私たちの事、みんなが待っていてくれてるんだからー!」

 

 この間ぼっちちゃんパパが掛けてたオモシロメガネ! 装備するな! そしてなんだよ『一日巡査部長』ってタスキは! どこで売ってんだ?

 

「ぼっちちゃん、今日は真面目なライブなんだから。その恰好だけは絶対やめろ!」

 

「後藤さん、それ気に入ってるのね」

 

 なんで引かないんだ喜多ちゃん……。

 

「え、あ、まあ……」

 

「でもそんなのより、メイクしましょう! 後藤さん!」

 

 そうだよ、ぼっちちゃんかわいいのにもったいないよな!

 

「ええ! わ、私がお化粧なんてしても需要ありませんよ……」

 

「そんなことないって! ぼっちちゃんはかわいいんだから! それに今できるベストを見せることがステージに立つ者の義務だ。分かるよね?」

 

 後半は姉貴の受け売りだけど。

 

「くんくん……。星歌の匂い。なんで?」

 

 ぼっちちゃんの頭を嗅ぐリョウ。いきなりどうした?

 

「あ、それは星歌ちゃんにつけてもらいました、いい匂いですよね」

 

「ふーん……」

 

 表情には出ないけど、威嚇のオーラがビンビンに出る。

 

「ひぃ!」

 

「リョウ! ぼっちちゃんをビビらせるな! 香水ぐらいいいだろ?」

 

「まあいいじゃないですか。リョウ先輩は私とお揃いの匂いにしましょうね♪」

 

 後ろから抱き着く喜多ちゃん。そういうのは後でやってくれ。

 

「郁代、暑苦しい。ぼっちは匂いだけじゃなくてビジュアルも頑張ってみようか。ダイヤの原石はしっかり磨かないと」

 

「そうですよ。後藤さんだけノーメイクじゃ恰好付きませんよ! ここは私に任せて! すぐ終わるから! ね、後藤さん!」

 

 今日は3人ともメイクばっちりキメてるんだよな。あたしとリョウはあんまりお化粧とかしないんだけど、今日は特別。特に喜多ちゃんは学校のない日はかなりこだわってるみたいだし。化粧っ気全くないのはぼっちちゃんだけだ。

 

「あわわ……」

 

「女は度胸。なんでも試してみるもんさ!」

 

 さあ、観念しなよ。ぼっちちゃん。彼女の両肩をしっかり手で掴んで座らせる。




お気に入り、感想、高評価、ここすき、誤字修正などいただければ喜びます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。