5月29日。何の変哲もない日。でもあたしたち姉妹にとっては特別な日の1つ。なのに、姉貴は仕事関係の飲みで遅くなるから先に寝といて、だとさ。明日も学校あるしもう寝ようかなって思ったけど、寝付けなくてテレビのニュース見てる。
今、芸能ニュースに出てるバンド結構好きなんだよね。特にギターがさ……ってそいつのスキャンダルかよ!
『バンドは陰キャでも輝けるんで』
なんて言ってたあいつは5股がバレて目下炎上中。ついでにバリバリヤンキーだった過去も暴かれて、今までのは陰キャ営業だったの? ってファンから総スカンらしい。自業自得だ。
まあ、あたしはいずれ復活してほしいかな。ライブも何回か見に行ったし。曲は好きだし。……ついでに顔も良いし。
「おーい! おねーさまのお帰りだぞー! おええぇ!」
日付が変わる少し前、姉貴が帰ってきた。うるせぇ、今何時だと思ってんだ!
「やっと帰ってきたのかよ姉貴。って酒臭っ!」
ぐでんぐでんに泥酔してる。姉貴がこんなに酔っぱらうのは滅多に見ない。
「せーかちゃんの、愛しのおねえさまだぞぅ! さっさと介護しやがれー!」
「ったく……。ほら、しっかりしろよ! 肩貸すから」
フラフラな姉貴の体を支える。今日は随分荒れてんな。愚痴はまた今度聞いてあげようか。
「うぷ。吐きそう……」
「げ! やめろ! 吐くならトイレ!!」
「うーん……こらぁ! おにゃかさわるなぁ!」
ちょっとお腹プニプニしてた。最近結構食べるしなぁ。シャワーは無理そうだし、部屋で寝かせよう。
「ほら、姉貴のベッドだよ。今日はもう寝ろ」
「んー? ……にじたん、せーかちゃんのお膝じゃなきゃネンネやーやーなの!」
「は? いや、何言ってんだよ! いい歳して」
いやいやいや! 正直引くわ。妹相手にこれはキモいだろ!
「……今日ぐらい、いいでしょ?」
瞳を潤ませ上目遣いに見つめてくる姉貴。……悔しいけどかわいいよなこの三十路。
「あーもー! 分かった、分かった! ほら……おいで」
「えへへー! ありがと星歌ちゃん」
しょうがないな。今日だけは特別。姉貴の頭を膝の上に乗せてやる。……昔は姉貴に耳掃除で膝枕してもらってたっけ。
――誕生日おめでとう。大好きだよ。
「……うん、ありがと」
姉貴はすぐに寝てしまった。幸せそうにスースーと寝息を立てている。タオルケットをかけてあげたら、そっと部屋に戻ろう。
プレゼントは用意してるから、明日渡す。手作りのドアプレートお揃いにしたよ。
「さて、あたしも寝るかな。……おやすみ、虹夏お姉ちゃん」
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