もしもJK星歌ちゃんだったら。   作:三十路スキー

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1年前の夏

「父さんお盆帰れないのか?」

「うん、今年も忙しいって」

 

 今日もセミが五月蠅く鳴いてる。あたしたちは長い坂道を登って行く。

 姉貴と2人で母さんの墓参り。お墓は今住む家から少し遠くにある。

 

「バンド、解散するの? 星歌ちゃん」

「そうするつもり」

「……そっか」

 

 中学の軽音部から始めて、高校に入ってからも続けてたバンド。

 もう解散するつもりでいる。みんな進路もバラバラで集まるだけでも大変だ。

 バンドへの熱意に温度差もある。最近は意見の衝突も多い。

 今度あたしから切り出すつもりだ。みんなと友達でいられるうちに。

 

「リョウちゃん新しくバンド始めたんだって?」

「高校入ってから。本気でプロ目指すって。すごいよな」

「へぇ、そうなんだ」

 

 今日はお互い言葉少ない。普段2人でいる時はもっとおしゃべりなんだけどさ。

 

「着いたね。さっさと始めようか」

「おう」

 

 坂を上った頂点にある墓地。ここに母さんが眠ってる。

 

 

 

 

 

『伊地知家之墓』

 

 持ってきた掃除道具でお墓をよく磨き上げた。お花を飾ってお供え物をする。

 線香を上げて、2人で手を合わせる。

 

「お母さん、星歌ちゃん高校に上がったよ。私と同じ下北沢高校に入るとはね」

「母さん、挨拶に来るの遅くなってごめん」

 

 本当は春にも一度来たかったけど、みんな忙しかった。

 

「もうすぐ私の夢も叶えられそうだよ。前々から準備していたライブハウス。無事オープン出来そう。来年の春先にはなんとかなるかな」

 

 姉貴はずっと準備してたんだよな。何年も苦労してようやくメドが立った。

 

「まだ店の名前も決まってないけどね」

 

 あたしも姉貴を支えたいと決めてる。まだ何も言ってないけど。

 

「これからもお母さんとの約束、守るから。世界一仲の良い姉妹でいるよ。ね、星歌ちゃん?」

「うん。約束する」

「じゃあ、帰るね。今度はお父さんと3人で来るから」

 

 

 

 

 

 帰り道。今度は長い下り坂。ずっと下り続きだと上りよりもしんどいな。

 

「なあ、聞いていいか?」

「なによ、あらたまって」

「姉貴はなんでバンド辞めたんだ? あんなに人気あったのにさ」

「飽きちゃったんだ。バンド」

 

 姉貴の声が変わる。やっぱ聞かれたくないんだな。

 

「そんなわけない。あんなに一生懸命やってたのに。それにライブハウスやるのと矛盾するだろ」

「……今は言いたくない。いつか話すから。それまで待ってよ」

「わかった……」

 

 姉貴の声が暗い。あたしもこれ以上は詮索しないことにする。でも、いつか聞ければいいな。

 

「それより晩御飯何がいい?」

 

 姉貴の声が一転して明るくなる。ちょっと無理してるな。顔見りゃ分かる。

 

「ハンバーグがいい」

「相変わらずおこちゃまよね」

 

 クスクスと笑う姉貴。29だっていうのに、妹のあたしから見てもかわいらしい笑顔だ。

 

「いいだろ別に」

 

 少しムクれるあたし。なんだよ、飯の好みは自由だろ。いつまでも子供扱いしてさ。

 

「ごめんごめん。はなまるハンバーグ作ってあげるから」

 

 母さんがよく作ってくれたハンバーグ。目玉焼きがポイントなんだ。

 

「うん。ありがと」

 

 

 

 

 

 家に帰って来た。もうすぐ日が暮れる。晩飯が出来るまで漫画を読みながら待つことにする。

 

『ご愛読ありがとうございました! しめじまき先生の次回作にご期待ください』

 

 暫し茫然。『まんがきらきら』で楽しみにしてた漫画が今月で打ち切り。3回で打ち切りとか突き抜けすぎだろ。でも納得かな。

 内気でぼっちな女の子が主人公なはずなのにぼっち感が全然ガチじゃない。それに高校生バンドがこんなになんでも上手くいくわけないだろ。その割にはバンド仲間は妙にギスギスしてるし。

 

「このキャラ、なんか親近感感じるよな」

 

 それにライブハウス店長のキャラ、扱いがひどすぎると思う。一見するとクールビューティでいい感じなのに。実際は女子高生を付け狙うキモいロリコンってなんだよ! 少し不器用なだけだろ。あたしには分かる。

 ああいうキャラは主人公を導くいいオトナって相場が決まってる。でも、いいとこ見せる前に終わっちゃったぞ!

 

 絵はかわいいから期待してたのにな……。まあ、仕方ないか。

 

「晩御飯出来たよ。お皿とか出しといて」

 

 姉貴の声だ。

 

「はいよ」

 

 それに答えてあたしは腰を上げる。旨そうな匂いが広がる。

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