結局勢いでぼっちちゃんをメンバーに誘ってしまった。1日だけのサポートギターなんだから、ギャラ払ってバイバイで良かったはずなのに。
「やっぱかわいいよな。あの娘……って何言ってんだ、あたし!」
やっぱあの娘をほっとけない。連れて来たからには責任もって面倒見なきゃ……って捨て犬拾ってきたわけじゃあるまいし! それじゃぼっちちゃんに失礼すぎる。
とにかくこれで新生結束バンド結成! 次のライブまでにボーカル探さないと、だけど。
『今後の活動についてみんなで話し合おう。明日スターリーに集合。いけるか?』
『はい、大丈夫です』
『ん』
2人にロインを入れておく。初ライブから数日後、バンドミーティングをすることになった。ついでにぼっちちゃんには大好きなギターヒーローのアドレスも送っておこう。ネットに疎いあたし唯一の『推し』と言える人。何の変哲もない演奏動画なんだけど、あたしの心を捉えて離さない。
「もうギターがとんでもなく上手い! 最高だ!!」
名前や自称超リア充JKなコメントは結構イタいけど、身バレ対策なんだろう……たぶん。でも、動画で少しだけ見える体のラインや長くて綺麗な髪、皮は分厚くなってるけど長くしなやかな指。あたしは同年代の女子であることだけは間違いないと思ってる。顔も声もわからないけど、こんなギターうまい奴が世界のどこかにいるってだけで燃えてくるんだ! あたしはギタリストじゃないけど、同じロックをやる人間として負けられない! リョウもかなり演奏上手かったって言ってたし。ぼっちちゃんもきっと気に入るはず。
さあ、明日はバンドミーティング頑張るぞ! って何話そうか?
『まずは会話を楽しむところから始めたら?』
姉貴もそう言ってたし、まずはぼっちちゃんと仲良くなりたい。
バンドミーティング当日、スターリーの入り口をうろうろする不審な全身ピンク。リョウはもう少し鑑賞してたいとかほざいていたが、さすがに居たたまれないので中へ案内する。一応スタッフさんたちには話を通してある。
ぼっちちゃんにも着いたら中に入っといてとは言ってたけど、入るの躊躇しまくってたな。スタッフさん見た目厳つい人多いし。特にPAさんとか、ぼっちちゃん確実にビビるだろう。こればかりは慣れてもらうしかない。みんな話してみたら、とってもいい人たちなんだけど。
今日は姉貴……じゃなくて店長は、商店会の用事とかで朝から出かけてる。夜には帰ってくるみたいだけど。営業開始までは許可をもらってる。端っこの丸テーブルに3人で陣取って、ミーティングを始めよう。
「えーと何話そうか。思えば全然仲良くないから何話せばいいかわからん」
「み、身も蓋もない! あ、すみません」
「ぼっち、ナイス突っ込み。星歌、こんなときはこれを使おう」
「でかしたリョウ! でも、これどこから?」
「そこに落ちてた」
リョウの手にはテレビ番組でたまに見るトーク用のサイコロが。ここにあったってことは、よそのバンドの忘れ物か。まあ、店の落とし物として預かるとして。
ごめんなさい、少しだけお借りします……。こういうので親睦を図るのも手だよな!
「てい! なにがでるかな~っと♪」
大きなサイコロをテキトーに振って、出た目を確かめる。バンジージャンプとか出たらどうしよ。
「学校の話~」
「略してがこばな。ぼっち、どうぞ」
「あっ、そういえば2人とも同じ高校……」
「おう、下高だけど」
「2人とも家が近いから選んだ」
「ぼっちちゃんは秀華高だろ? 家はここらへん?」
「あっ、県外から片道2時間です」
「え、なんで?」
「高校は誰も過去の自分を知らないところにしたくて、学校での浮かれた話とか全然できませんし、それに……」
「終了! 学校の話終了!」
あ、こりゃやばい。
「まあ、あたしもリョウもダチはあんま多くないし」
「私は友達、星歌だけ」
独りが好きでロクにダチを作らないリョウはともかく、あたしだってダチとかそんなに多いわけじゃない。学外でバンド活動してるあたしたちは、お堅い進学校では正直浮いてる。
特にあたしは、言いたいことハッキリ言う性格だからか、人相が悪いからか、いろいろアレなリョウとつるんでいるからか、教師やパイセン連中から不良扱いされることもある。別にいいけど。しょーもない連中に媚び売るよりは好きな奴らとつるんでたいし。
で、結局続いているのは音楽を通じて仲良くなった連中ばかり。リョウもそうだ。とりあえず現状には満足してる。
でも……もし、あたしがドラムをやってなかったら、そもそも音楽が好きじゃなかったら、あたしも『ぼっち』だったのかな。
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